松戸密室掃討作戦~惨殺マジックショー

    ●ハレルヤからの情報
    「ハレルヤさんの救出成功は、本当にホッとしましたよね」
     春祭・典(高校生エクスブレイン・dn0058)の言葉に、白藤・幽香(リトルサイエンティスト・d29498)は深く頷いた。
     彼女が学園に戻ってきたこと事態ももちろん嬉しいが、帰還と共にもたらしたMAD六六六に関する情報が、大変重要なものだったのだ。
     ハレルヤは、MAD六六六の幹部として警備を担当していたこともあり、松戸市の密室の詳しい情報を得る事ができた。
    「その情報を元に、松戸の密室を一掃する作戦を行うことになりました」
     
    ●マジックショー
    「幽香さんが目をつけていた奇術師の六六六人衆も、MADに加わっていたのですね……序列五七〇番、血塗・絡繰(ちまみれ・からくり)と名乗ってまして、このホテルを支配しています」
     典は松戸の地図を広げ、市街地にある大型ホテルを指した。
    「そしてホテルの大ホールで日夜、残虐なマジックショーを繰り広げているそうで」
     普通のマジックも見せるようだが、人体切断や剣刺し箱などで本当に一般人を殺してしまうのはもちろん、気まぐれに刃物のトランプを射出したり、凶暴な鳩を大量に飛ばしてターゲットにされた者を突き殺してしまったり……。
    「本当に残虐ね……」
     幽香は眉を顰めた。
    「ホールには100人ほどの一般人が集められていますが、ホテル全体では、客と従業員合わせて1000人ほどが閉じ込められているようです」
     その1000人のうちの100人ずつが、順繰りにマジックショーを無理矢理見せられ、更にそのうちの数人ずつがショーのたびに犠牲になっているというわけだ。
    「ホテル自体へ入ることは難しくありません」
     六六六人衆に勘づかれないことだけ気をつければ、玄関からでも通用口からでも入ることができる。
    「ホール近くにロビーがありますので」
     典はハレルヤからもらったホテルの見取り図を広げて。
    「ここで一般人のふりをして待機していてください。マジックショーの夜の部が19時に始まりますので、その時に集められた100人に紛れてホールに入り、とりあえずはショーを見てください」
    「ショーが進んで、惨殺マジックを行おうとしたら、そこで介入ね?」
    「はい、それがいいんじゃないでしょうか」
    「一般人はどうしたらいいかしら? 戦闘序盤に六六六人衆をステージにひきつけておくとかして、何とか逃げてもらいたいわ」
     ホール内にいるのは、六六六人衆に怯えきっている100名。
    「ホテルのホールですから、幸い出口はたくさんあるそうです。混乱が生じないように誘導すれば、素早くホールから出てもらうことが出来るのではないでしょうか」
     ホールの出入り口は5か所。役割分担とESPを工夫すれば、避難は可能だろう。
    「作戦が成功し、密室を一掃できれば、迷宮殺人鬼・アツシが引き篭もる密室への侵入も可能になるそうなんです。アツシを引きずり出し、決着をつけてやりましょう!」
     典の激励に、幽香は力強く頷いた。


    参加者
    咬山・千尋(高校生ダンピール・d07814)
    ウェア・スクリーン(神景・d12666)
    一宮・閃(鮮血の戦姫・d16015)
    鷹嶺・征(炎の盾・d22564)
    香坂・翔(青い殺戮兵器・d23830)
    押出・ハリマ(気は優しくて力持ち・d31336)
    平・和守(国防系メタルヒーロー・d31867)
    遠波・瑠璃花(波間の迷い子・d32366)

    ■リプレイ

    ●惨殺マジックショー
    「レディース・アンド・ジェントルメン! 今宵も血塗絡繰のブラッディ・マジックをとくとご覧あれ!」
     ステージの上では、細身の長身に、タキシードを着込んだ男がハイテンションで口上を述べ、BGMにはおなじみの『オリーブの首飾り』が軽やかに鳴っている。
    「何とも趣味の悪い……」
     一宮・閃(鮮血の戦姫・d16015)は小声で呟き、傍らの平・和守(国防系メタルヒーロー・d31867)も全くだ、と頷いて。
    「ヤツらにとって、殺人が存在意義というところまでは何とか納得できるが……趣味が悪いにも程がある」
     灼滅者たちは首尾良く、密室ホテルのマジックショーに潜入することができた。ステージの上では、毒々しい笑みを顔いっぱいに浮かべたマジシャン……血塗・絡繰が、薄手のスカーフを何もない空間からひらひらと何十枚も出現させているが、そのスカーフも生々しい血の赤だ。今宵はまだ血が流れていないのだが、どす黒い赤は約100名の一般人たちのギリギリまで張りつめている神経を、更にすり減らす。
     灼滅者たちは、身じろぎもしない人々から、怯えの匂いをひしひしと感じていた。ショーを観たくて来ているものは当然ひとりもいない。言いつけられた順番通りにホールに来なければ、ショーの生け贄よりももっと酷いことが起きると脅されているから……もしくは実際起きているから、やむを得ず集まっているだけなのだ。人々はステージを食い入るように見ているが、もちろんマジックに見蕩れているわけではない。犠牲がいつ出るのか……何人出るのか。どうしたら自分が逃れられるのか。今宵の主役に向けられているのは、緊迫し血走った視線ばかり。
     ホールには、微かな血の匂いも漂っていた。一見綺麗に整えられているが、洗い流しきれない殺戮の痕が染み着いてしまっているのだろう。
     ショーはコインマジック、リングマジックと進み、鷹嶺・征(炎の盾・d22564)は演目間に敵の死角を縫ってステージにじりじりと近づいていく。
    「次は、ドキドキハラハラのナイフ投げをお見せしましょう!」
     ナイフ投げ、と聞いた途端、人々はびくりと体を強ばらせた。恐怖の匂いも一層濃くなった。
    「的になってくれる方はいらっしゃいませんか?」
     マジシャンは拘束具付きのパネルを示しながら会場に笑いかけた。赤黒い舌と白く尖った歯を、楽しくてたまらないというように剥き出して。
     当然、客席は静まりかえっている。絡繰はそれを舌なめずりしながら見回し、
    「では、そこの女性の方、お願いします」
     無雑作に指したのは、真ん中のあたりに座っていた母子連れの母親の方。
     ひい、と母親はひきつった悲鳴を上げ、
    「か、勘弁してください許してください私にはこの子が」
     傍らの小さな男の子を抱きしめ必死に訴える。
    「なるほど。確かに子供はお母さんを失うと困ってしまいますよねえ」
     絡繰は納得したように頷き、
    「では、子供さんの方に的になっていただくことにしましょう」
     ガタッ、と椅子が倒れた。母親が立ち上がったのだった。
    「そ……それだけはさせない」
     全身をがたがたと震えさせながら、それても決然と母は足を踏み出した。
    「子供を殺されるくらいなら、私が」
     血走った目はうつろ。しかし子供を一時でも長く生き延びさせるために、母は処刑台に向かう。
     泣き叫び、母を追おうとする残された子供を周囲の人たちが、彼らも泣きながら抑えている。
     母親の足が、ステージに上る階段にかかった。
     灼滅者たちは素早く視線を見交わした。
     ――こんな惨いショーは、これ以上続けさせられない!

    ●奇襲と避難
    「これ以上、やらせません」
     ステージ直近まで近づいていた征は、敵の目前に飛び込むと、鬼の拳で先手を取った。閃が続いて、
    「ゲンナリした気分の落とし前をつけさせてもらうぞ!」
     炎を宿したエアシューズで後ろ回し蹴りを見舞う。押出・ハリマ(気は優しくて力持ち・d31336)は、大きな身体の割にはぽんと身軽に舞台に飛び乗り、連続攻撃にわずかだがよろめいた六六六人衆に雷を宿した拳を叩き込んでから、客席の方に顔を向け、
    「ヒーローが来たからには、こんなつまんないショーなんて終わり! これ以上傷つけさせないっすよ!」
     割り込みヴォイスを使って呼びかけを始める。和守はシールドを展開しつつ母親をステージから遠ざけ、
    「こいつは俺たちが相手をする……今のうちに外へ!」
     香坂・翔(青い殺戮兵器・d23830)も赤く光る交通標識で牽制しながら、ステージの真ん中で、
    「皆、早くホールから出て!」 
     客たちに呼びかけたが、反応は鈍い。密室の絶望と恐怖に縛られ続けた一般人たちの心と体はそう容易く動かない。
     だがその反応は想定内である。プラチナチケットで従業員のふりをした咬山・千尋(高校生ダンピール・d07814)が、出口の扉を次々開け放ち、冷静に誘導を始めた。更にラブフェロモンを発動したウェア・スクリーン(神景・d12666)が、
    「皆さん、速やか且つ迅速にお逃げくださいね」
     瞼は閉じたままながら穏やかな笑みで出口を指し示すと、人々は彼女の魅力に心を開かれたか、一斉に出口へと向かい出す……しかし。
    「まだショーは終わっていませんよ!」
     マジシャンの叫びが上がり、灼滅者の包囲をすり抜けて、影のナイフが客席にしゅるりと延びた。狙うのは、今正に合流しようとしていた例の母子。
    「!!」
     母親には付き添っていた和守が咄嗟に覆い被さり、子供の方は、
    「絶対、守る……ですっ」
     遠波・瑠璃花(波間の迷い子・d32366)が小さな体で精一杯抱きしめた。その背中を、黒々とした刃が切り裂く。
    「お……おねえちゃんっ!?」
     飛び散る血飛沫に子供は怯えた声を上げる。
     瑠璃花は痛みをこらえて笑顔を作り、
    「大丈夫、おねーちゃん達、こー見えて強いんです」
     無事に和守に連れられてきた母親に、子供を引き渡す。ひしと母にしがみついた子に、
    「バトンタッチ、今度はキミがおかーさんを守る番……です。ね?」
     母子はふたりに見守られながら避難の列に加わった。
     同時に閃の放った包帯が瑠璃花の背に巻き付いて傷を癒す。
    「瑠璃花っ」
     ステージの上、必死に敵を牽制しながら、義兄の翔が。
    「早くその人たちを逃がしてやって! そんで早くこいつを倒して、皆のところに帰ろうな!」
     傷を労る言葉は、今は敢えてかけない。その兄の気持ちが解るから、瑠璃花も。
    「翔さんも、無茶はしないで下さい……です。一緒にがんばるですよー」
     それだけ返すと、傷の痛みを堪えつつ、腰を抜かしているお年寄りを怪力無双で抱き上げ、
    「こっちが空いてんぞ!」
     千尋が手招きしている出口に向かって走る。
    「きっとお助けします、頑張ってください」
     ウェアも人々の手を引き、励まし、続々とホールの外へと送り出している。
     母親をステージから離した和守は、包囲の輪に加わりつつ殺界形成を発動した。まだホテルそのものから出ることは叶わないが、徐々にホールから遠ざかってくれることだろう。
    「ふうむ……」
     5人と2体のサーヴァントの包囲を見回して、絡繰は。
    「君たち、灼滅者とお見受けしますが?」
     余裕で問うた。
    「そうっすけど……客を帰さないショーなんて酷いっす! 腕も無いのに、無理矢理見せ続けてるようなもんっすよね?」
     ハリマが蹴りを入れるタイミングを計りながら言い返し、足下に控える愛犬の円……黒のニューファンドランド犬……も、グルルと剣呑に唸った。
     征は唇にうっすらと笑みを浮かべ、しかし目には冷たい光を宿して。
    「あなた、マジックの合間に殺しを行っていたようですが、単に失敗してただけじゃないんですか?」
    「インチキだよね」
     翔も糸を油断なく構え、
    「箱に閉じ込めた人を刺し殺したり、刃物のトランプで切り裂くなんて、マジシャンじゃなくたって出来るよ!」
     閃は端正な唇を歪めて、
    「マジックは本来楽しいはずなのに……これほど見たくないマジックは初めてじゃったぞ……種も仕掛けもありませんの方向性間違ってるじゃろうが!」
    「ははは、なんとでも言いなさい」
     絡繰には灼滅者たちの罵りは全く堪えていないようで、
    「私の芸術を、半端者になんぞ理解してもらわなくて結構。ただ……」
     纏っている殺気が、一段と濃くなった。
    「ショーの邪魔をした落とし前はつけてもらいますよ!」
     ブワアァァッ。
    「うわっ!!」
     絡繰の全身から吹き上がった殺気が黒々と立ちこめ、その勢いに前衛は思わずうずくまる。
    「ははは、どうです、私の煙幕は!」

    ●マジック・バトル
     天地さえ判らなくなりそうな濃い黒霧を、閃が素早く聖剣から風を起こして吹き払った。
    「頑張れ、まだまだいけるじゃろ!」
    「ああ……ありがとう」
     和守が顔を上げて、敵を睨みつけ。
    「なるほど、なかなか強いようだな……しかし俺は貴様らとは逆に、一般市民を守ることが存在意義だからな。これ以上は殺させん!」
    『耐PSYコーティング加工ライオットシールド』を掲げ、改めて前衛の防御を高め、征が慎重に、
    「逃がしませんよ」
     鋼と化した帯を放った。
     怯んでいる暇はない。千人もの命がかかっているのだ。とにかくこのホテルの密室を解除しなければ!
     続けて翔の放った鋼糸が、
    「観客がいなくても、殺しはできるだろ? さあ、オレ達にお前のマジック見せてみろ!」
     絡みついたところに、ハリマが、
    「奇術は面白いっすけどもうわべだけの技術じゃ人は感動もさせられないっす! ましてや血しぶきとか論外っす!」
     鋼鉄の拳で敵の周囲にまだ漂っていた黒い霧を打ち破った。
    「なかなかやりますね」
     縄抜けのようにぱらりと糸を振り払った絡繰は、面白そうに笑い、
    「でも、まだまだ、私を楽しませるには足りないですよ!」
     繰り出した右手にはいつの間にか黒いナイフが出現していて、それが肉薄していたハリマに迫る……と。
    「麗子!」
     閃の叫びに、ビハインドの麗子が敵とハリマの間に割り込んだ。ナイフはズブリとビハインドに吸い込まれ……麗子の姿がぐらりと揺らぎ、薄らいだ。
     すぐに霊犬が麗子に瞳を向けたが、それでもかなりのダメージだ。
    「残念、一撃必殺というわけにはいきませんでしたねえ」
     絡繰は素早くナイフを引いてまた笑う。
     五〇〇番台の六六六人衆の攻撃力は、やはり相当なもの。気は焦るが慎重に間合いを計らざるを得ない……そこへ。
    「――待たせたなッ!」
     鋭い槍の一撃が捻込まれた。
    「千尋!」 
     千尋がステージに跳び乗った勢いそのままに突っ込んだのだった。続いて、
    「密室という逃げ場のない空間でやりたい放題とは嘆かわしいことです……砕け散りなさい!」
     ウェアが鬼の拳を叩き込み、瑠璃花もポジションを定めつつ、武器を構えている。
     避難誘導係の3人が戦線に加わったのだ。
     見れば、ホールに一般人の姿はなく、扉は全て堅く閉じられている……ということは、全員逃がすことができた!
     メンバーが揃ったことと、避難の成功で、灼滅者たちの意気は上がる。しかし、この強敵を打ち負かさなければ、真に人々を救ったことにはならない。
     本番は、これから。
     征は表情を変えず、しかし気合いを入れ直して、
    「……少々痛いですが、仕方ありませんよね」
     十字架を振り回して殴りかかり、翔は赤く光る標識を叩きつけて混乱を誘う。ハリマは雷を宿した掌で強烈な突っ張りをかまし、
    「轟け! FH70ビームッ!」
     和守のご当地ビームが輝かしく突き刺さる。瑠璃花はシューズに炎を宿し、
    「地獄で閻魔大王サマでも愉しませてあげて下さい……です……あっ!」
     勇ましく突っ込んでいったが、その小さな身体を絡繰の足下から膨れあがった、真っ黒な……。
    「兎!?」
     巨大な兎がすっぽりと飲み込んだ。
     絡繰はハハハとまた耳障りに高笑いし、
    「演題をつけるなら『大兎と美少女』ってとこですかね。お気に召しましたか?」
    「よくも!」
     翔が再び義妹を傷つけられた怒りを漲らせて鋼糸を放った。千尋はステージの高さいっぱいに高く跳び上がって、キザなオールバックの脳天にかかと落としを、ウェアもステージの資材を使って跳躍し、
    「重力加算する脚撃を……」
     流星のようなキックを喰らわせた。
    「風よ、切り裂け」
     強烈な蹴りの連発に体勢を崩した隙を逃さず、征が風の刃を巻き起こして衣装を切り裂き、ハリマが炎を蹴り込んだ。
     その間に和守がトラウマに悶える瑠璃花を影兎の中から救い出し、閃が回復を施す。
    「……ちっ」
     全員揃っての連続攻撃に、絡繰が今夜始めて笑顔から真顔になり、小さく舌打ちを漏らした。髪と衣装は乱れ、そこかしこに傷を負っている。致命傷こそ与えてはいないが、ダメージは蓄積しているはずだ。ただそれでも、足下には影のロープが何本も蛇のように鎌首をもたげ、灼滅者を捕らえる機会を窺っている。それと睨み合って、槍を融合させた右腕を構えた千尋。
    「時間をかければ、君たちを倒すことはできるのでしょうが……」
    「そうかよ?」
     じり、と千尋が間合いを詰め、その分絡繰はじり、と退がり。
    「しかしこの密室が武蔵坂に知られてしまったということは、君らを殺っても、他の者がまたやってくるということですよね?」
    「当然だ」
    「あーあ」
     これ見よがしな溜息。
    「このステージ、気に入ってたんですがねえ。素材もたっぷりあって」
     素材とはつまり人間のことかと思い至り、灼滅者たちの怒りはより滾る。
    「仕方ない、最後にとっておきのマジックを見せてあげましょう」
    「なん……だと?」
     絡繰はポンと軽くステージの最奥に向けてバク転し、灼滅者たちは慌ててそれを追いながら遠距離攻撃を放ったが、
     ボウン!
    「うわっ!」
     再び黒々とした煙幕が巻き起こり……。
    「人体消失です!」
     誇らかな絡繰の声が聞こえて。
     閃とハリマ、和守の風が禍々しい殺気を吹き払った時には、マジシャンの姿は消え失せていた。
    「あっ!」
     翔がステージ最奥に屈み込んだ。
    「抜け穴がある!」
     見ればステージに深い縦穴がある。奈落に仕掛けを施しておいたようだ。
    「またインチキだ、追いかけよう!」
    「止めとけ、深追いするな」
     穴に飛び込もうとした翔を止めたのは千尋。
     ウェアも悔しそうに、
    「どうせなら、舞台からではなく、この世から脱出するマジックにさせてやりたかったですが」
     悔しいが、ステージや抜け穴の構造を調べずに追うのは危険だ。それに……。
    「千人を守ることはできたのだからな」
     和守が仲間を、そして自分を宥めるように言った。
    「守れたんっすかね」
     ハリマがホールを心配そうに見回し、
    「密室はどうなったのかなあ……それに、本当にこれで元凶のアツシに迫れるんっすかね?」
     そう呟いた途端。
     ――ガチャ。
     解錠の音が、ホテルいっぱいに響き渡った。

    作者:小鳥遊ちどり 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年9月4日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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