芸術発表会2015~こだわりハンドメイド・フェスタ

    作者:西東西


     芸術の秋。
     武蔵坂学園の秋を彩る、芸術発表会に向けた準備が始まろうとしていた。
     全8部門で芸術のなんたるかを競う芸術発表会は、対外的にも高い評価を得ており、武蔵坂学園のPTA向けパンフレットにも大きく紹介された一大イベントである。

     この一大イベントのために、11月の学園の時間割は大きく変化している。
     11月初頭から芸術発表会までの間、芸術科目の授業の全てと、特別学習の授業の多くが芸術発表会の準備にあてられ、ホームルームや部活動でも芸術発表会向けの特別活動に変更されているのだ。
     ……自習の授業が増えて教師が楽だとか、出席を取らない授業が多くていろいろ誤魔化せて便利とか、そう考える不届き者もいないでは無いが、多くの学生は、芸術の秋に青春の全てを捧げることだろう。
     少なくとも、表向きは、そういうことになっている。

     芸術発表会の種目は『創作料理』『詩(ポエム)』『創作ダンス』『人物画』『書道』『器楽』『服飾』『総合芸術』の全8部門。
     芸術発表会に参加する学生はこれらの芸術を磨きあげ、ひとつの作品を作りあげるのだ。

     芸術発表会の優秀者を決定する11月13日に向け、学生たちはそれぞれの種目ごとに、それぞれの方法で芸術の火花を散らす。
     それは、武蔵坂学園の秋の風物詩であった。


    「――というわけで。このたび服飾部門が行うのは、手芸作品の展示・販売を目的とした、『ハンドメイド・フェスタ』だ」
     案内を任された一夜崎・一夜(大学生エクスブレイン・dn0023)の声に、集まった生徒たちが顔を見合わせる。
     例年、服飾部門ではファッションショーを実施していたところ、心機一転。
     今年はファッションを含め、手芸全般の作品を扱うことが可能になったという。
    「『ハンドメイド・フェスタ』への参加にあたり、定められている規定は次の通りだ」

     (1)『出品者』が展示・販売する作品は、かならず『手作り』であること。
     (2)『出品者』は、『評価者』に対して作品のアピールを行うこと。
     (3)『評価者』は展示の閲覧や作品の購入などを通して、作品評価をおこなうこと。

     つまり、作品作りが好きなら『出品者』として。
     作品鑑賞に興味があるなら『評価者』として、参加方法を選ぶことができるのだ。

     もちろん、展示・販売とあわせて、例年通りコンテストも開催される。
    「面白いのは、『作品』と『アピール方法』、両方をあわせて総合的に評価されるというところだ」
     エントリーが決まった『出品者』には、当日、会場内に個別ブースが与えられる。
     手持ちの空間は自由に使えるので、作品にあった展示方法について考えてみると良いだろう。
     また、ブースの使用は必須ではないので、会場を歩きまわって評価者に直接アピールする。といった方法をとることも可能だ。
     ――己の作品を知り、いかに魅せるかについて想い巡らせる。
     まさに、芸術発表会らしい創意工夫がためされる場となるはずだ。

    「ちなみに今回は、私も『出品者』として参加する予定だ」
     一夜は『無事カエル』と名付けたカエルの編みぐるみお守りをたくさん作って、ブースをカエルまみれにするつもりらしい。
    「……みんなの作品。気になる」
     一方の七湖都・さかな(終の境界・dn0116)は、『評価者』として気ままに会場を見て回るつもりのようだ。
     ――ひとりで、こだわりの作品を作りあげるも良し。
     ――友だちと打ちあわせて、揃いの作品を作るも良し。
     ――気のあう仲間たちと協力して、合作や連作、大作に挑むも良し。
    「ひとの心に訴える、という要素が評価に直結するため、学業成績や身体能力に関わらず、だれもが同じ土俵の上で力を発揮することができる。せっかくの機会だ。興味があるなら、一緒に参加してみないか?」
     戦いの場とは違う、きみたちの新たな一面が見られることを楽しみにしていると告げ、一夜は参加希望者にエントリーシートを配って回った。


    ■リプレイ


     数日前。
     イベント会場では、出品者たちが各ブースの準備に勤しむ。
     揃いの三角帽子に魔女風の黒いローブを身にまとうのは、【あおぞら空想部】の5人。
    「みんな似合っていていいね!」
    「目指せ魔法使い☆」
     統弥(d20758)と蓮(d21742)が楽し気に衣装をひるがえす中、
    「い…いらっしゃい…ませ」
     あずみ(d26838)は懸命に売り文句の練習を繰りかえし、本番にそなえる。
     ――目指すは、完売!
    「力をあわせて販売するよ!」
    「ファイトだぜっ」
     蛍姫(d27171)、銀都(d03248)の掛け声に、仲間たちの声が重なった。

     大掛かりな設営を行うのはクラブ【the 201st Ave.】。
     大道具搬入とブース設営は、供助(d03292)の担当だ。
     バックに設置する白クロスを貼ったパネルの上に、黒布を影絵風に切った背景を重ね、シルエットだけで街並みを作りあげていく。
     空。
     電柱。
     電線に留まる烏。
     連なるビル群。
     シンボルタワー。
     信号機。
     そして、先に続く看板群。
    「よし」
     作り上げた街並みを実際に歩き、出来を確認。
    「こっちは終わったぞ」
     その声に、ブースの入口に立っていた民子(d03829)が、ぐっと拳を固める。
    「今回は、制作、販売プロジェクトである201を広く知ってもらう良い機会!」
     気合十分。
     発表会当日へ向け、より完成度を高めるべく最後の確認に入る。


     発表会当日。
    「賑わいをまともに見て回るのは初めてだな……」
     会場内に視線を走らせ、行き交う学生たちを観察するのは有無(d03721)。
     ――祭のキャンパスに、彩のカンヴァス。
     ふと、脳裏に浮かんだ単語を手帳に書き留め。
     そこで、ほのかにただよう香りに気づいた。
     ラベンダーで飾った紫月(d35017)と柚羽(d13017)のブースを見つけ、足を向ける。
    「ここで扱っているのは、匂袋かね」
    「そう。中身のポプリは、乾燥させたラベンダー」
    「作品名は、薫衣弧袋(くのえこぶくろ)。といいます」
     紫月の言葉を引き継いだのは、柚羽。
     ラベンダーの別名は『薫衣草』。
     それが詰められた小袋、だから。
     薄紫のリボンで口を結んだサシェのひとつを手に取り、有無は気付いた。
     ブース内に飾られた小瓶の花は、造花のラベンダー。
     ――造花なら、サシェの香りをころさない。
    「布はラベンダーで草木染めして、ベージュになった。刺繍してもラベンダーの色を殺さない色、かと」
    「その指は」
     見れば、紫月の指先は刺し傷だらけで。
     サシェに刺されたラベンダーの柄は、ひとつとして同じではないことにも気付く。
    「遊びがある方がいい…ってゆーさんが」
     そう言って、紫月が柚羽へと視線を向けて。
     言葉少なくとも、ブースから、サシェから、確かな気遣いと手仕事が伝わる。
     ――やはり創作物はいいよ。
     胸中でひとりごち、有無はひとり、笑みを浮かべた。

     様々なブースを前に、眼を輝かせるのは陽桜(d01490)。
     まず最初は、カエルの編みぐるみを並べた一夜(dn0023)のブースへ。
    「やあ。縁起かつぎに、編みぐるみはいかがかな?」
    「あたしが連れて帰っても、いいのですか?」
    「もちろん。気に入ったのを連れカエルと良い」
     それならこれをと、一番大きな作品を選べば、
    「羽柴の守りは、頼んだよ」
     カエルの首に桜色のリボンを結び、手渡してくれる。
     一夜に見送られ、陽桜が次に向かったのは瞳(d13296)のブースだ。
    「わぁ、お花いっぱいだぁ!」
     スペースいっぱいに咲くガーベラの花は、ビビッドカラーの天然素材・クロッシュコットンで編んだもの。
     ワッペンやコースター、ブローチやコサージュ。
     瞳自身も編み繋げたストールやブランケットを身に着け、『重ね繋がる轍~希望の花車』をアピールする。
    「決して枯れない真心込めた希望の花。おひとついかがかしら?」
    「ひお、七色の花びらのと、ストールのが好きですっ」
     眼を輝かせ告げれば、続くように他の学生からも声が続いて。
    「陽桜ちゃん、ありがとうね♪」
     丁寧にラッピングした品を、感謝の気持ちとともに陽桜の手へ。
     すこし歩くと、瑞樹(d02532)の姿が見えてくる。
     扱う品は女性用のアオザイと、髪飾り等のコーデアイテム。
     テーマは、動く事により真価を発揮する『チラリズム』!
    「腕を上げた時、わき腹がちらりと見える絶妙なスリット。もちろん、ズボンの股上の深さも計算してあります」
    「スリットが深くてびっくりですけど、とっても動きやすそうです…!」
     陽桜が告げれば、実際に着用していた瑞樹がくるりと一回転。
    「こんな風に、花開くように裾が広がるのもポイントだよ」
     マオカラーの禁欲さと、時に無防備に見えるわき腹に萌えて頂きたいと、連れだって歩く学生カップルにも積極的に声をかけていく。

     一方、【あおぞら空想部】は高さ1mほどの螺旋状の棚にランタンを並べ、販売開始。
     ESP『怪力無双』で鉄板を曲げて作ったこの棚も、今日のために彼らが手作りしたという。
    「全部で26個! 一つ500円です。いまならロウソクも付いてお得ですよ♪」
     蓮が笑顔で呼びかける傍で、あずみも懸命に背伸びして。
    「か、カボチャさんのランタン…可愛いですよ。いかがですか?」
     三角帽子で目元を隠しながらも、しっかり作品をアピール。
     皆が売り手にまわるなか、銀都が担当するのはランタン作りの実演だ。
    「まずはマジックで、南瓜に目と口を書いて」
     手慣れた様子で中身を繰りぬけば、飾りつけまであっという間で。
    「ほい、一丁上がり!」
     次々とランタンを仕上げていく手並みに、まるで職人のようだと見物する学生からも歓声があがる。
     客足が減ったとみれば、蛍姫の出番だ。
     ローブを脱ぎ捨て、へそ出し猫娘の仮装姿に変身!
    「買ってほしいにゃーん! ひとつ見ていってくれないかにゃー?」
     文字通り、ひと肌脱いでの呼び込みにかかる。
     お客が商品を選ぶため棚の前に立てば、
    「ワン、ツー、スリー…、はい!」
     統弥がランタンを一斉に光らせる手品を披露し、拍手喝采!
     南瓜ランタンは次々と学生の手に渡り、5人は完売を目指すべく、さらに声を張りあげた。
    「球体ガラスを使った、オリジナルのアクセサリー作っちゃうよ~」
     ライトアップした回転盤に作品を並べ、呼びかけるのは闇子(d33089)。
     呼び声に惹かれやってきたのは、硝子細工に目がないさかなだった。
    「ストラップ…ほしい」
    「了解しました! では、この中から好きな色のガラス棒を選んでね」
     選んだのは、湖水を思わせる青緑。
     ガスバーナーによって千変万化するさまに魅入っているうちに、見る間に形になっていく。
    「はい、完成したよ。どうぞ~」
     球に閉じこめた星が、きらきらと瞬いて。
    「大事にする、ね」
     鞄に付け、揺れる様を満足げに見やった。

     ペーニャ(d22587)とゆま(d09774)がひらく【刹那】のブースには、愛らしい動物のぬいぐるみが並ぶ。
     ペーニャの作品は、猫のぬいぐるみ。
     水色リボンの赤毛猫に、紅い髪飾りの白猫。
     猫耳ニット帽を被った黒猫もいる。
    「ほらほらバーナーズ卿、全員女性ですよ。どなたがお好みですか?」
     寝転がっていた羽猫紳士は面倒くさそうに主を見やるも、歩き来る乃麻(d34109)の姿を認め、ひょこんと身体を起こした。
    「紳士を自認するのでしたら、ちゃーんとエスコートして下さいね?」
     急に店主の顔を装うペーニャにあきれつつ、恭しく帽子を取りご挨拶。
    「どれも可愛くて、思わず持ち帰りとうなるなぁ」
     顔をほころばせる乃麻へ、赤毛猫がゆま、白猫が乃麻、黒猫が自分をイメージしたのだとペーニャが告げて。
    「ほえ? この赤い猫さん、わたし?」
    「まるで猫の集会みたいや。ゆまさんの森は可愛いし、丁寧な作りやなぁ」
     フェルトと毛糸で作製した森の花畑には、羊毛フェルトの熊、兎、狐、リスが仲良く遊んでいる。
     箱庭として眺めても楽しいが、花はアクセサリーに。動物たちはストラップにもなるという。
    「八蘇上さん、終わったらどぞ、お好きなの持って行ってくださいね?」
     ひとしきり動物の話題で盛りあがった後、乃麻の視界に入ったのは一体の霊犬。
     ――道往く皆さま、ご覧くださいな。
     パッチワークのホルダーを胸に、霊犬『塩豆』が誇らしげにお客様をご案内。
     ブースにたどり着けば、千穂(d02870)とイコ(d05432)がそろって客人を歓迎してくれる。
     2人が扱うのは『スレカホルダー』。
    「灼滅者の御仕事場は過酷ですから、防水加工も勿論ばっちり!」
    「カルトンを使った栞風なんて、読書好きさんにいかが?」
     レースや星模様などの乙女嗜好から、レザー等の手帳型。フェルトに和布に毛糸にデニム。
     それぞれが得意な作業を担当し、バリエーション豊かに仕上げた。
    「おおー! 綺麗やし、凄いしっかり作っとう」
     霊犬を追いかけやってきた乃麻は、数ある作品にすっかり眼を奪われて。
    「道行く貴方の彩りを、ここから見つけてくれたら嬉しいわー」
    「どうかあなたのお気に入りと出逢えますように」
     あれこれ悩むのも楽しく、時間をかけてようやく、心に決めた1点を手に取った。
    「あっ。あそこにも霊犬がおる」
     桃香(d03239)と愛里(d15543)のブースには、めかしこんだ霊犬『まっちゃ』が鎮座して。
     ベロアの白布の上には、銀河を閉じこめたイヤリングに、懐中時計のフレームに星座盤を収めたペンダント。
     ガラスやシェルパウダーを閉じこめた透明感のある小物がならび、煌めきに魅せられた学生たちが次々と足を止める。
     桃香は一同の眼前に作品をさしだし、
    「こうやって、蓄光粉が入った作品にUVライトを当てると――」
     手にしたペンライトをスイッチオン!
     明かりを受け、掌上の星空は淡く、青く輝いて。
    「光にあてたり、角度を変えて見てみると、違った表情を見せてくれるんです」
     勧めるのは、水色と青の2色のガラスを込めた作品。
     かざし見れば、まるで水中にいるかのよう。
    「レジンて、作る人によって全然作風が違うんやなぁ」
     それぞれの美しさに感嘆の声をこぼせば、
    「個性やセンスが見られるのは楽しいですし」
    「奥深いですよね…!」
     桃香と愛里が頷き、3人はそろって微笑み交わした。

     気ままに会場を歩いていた有無は、【the 201st Ave.】の合同ブース前に来ていた。
     外国風の看板が目印で、アーチをくぐればシルエットで描かれた街並みが広がる。
     もっとも、有無が興味を持ったのは、統一された世界観とブースの演出そのものだ。
     見れば、さかなが迷わずアーチをくぐり、中へ入っていく。
     声をかけようかどうか迷った末――そのまま、背中を見送る。
     中に入ったさかなはというと、
    「ようこそ201へ!」
    「いらっしゃい!」
     民子とエルメンガルト(d01742)が熱烈歓迎。
    「これ。一夜から」
     『見立てを頼む』と書かれたカエルのメッセージカードを民子に手渡せば、
    「OKOK! 七湖都。この中ならどの服が好き?」
     心得たりと、hypnotizeのワンピースを手にコーディネート開始。
     聞けば、さかなは私服を持っていないという。
     制服ばかり着ているため、自分の好みもよくわからない。
    「オレはさ、普段は着ない服着れると嬉しいし、こんなアイテムどうって薦めてもらうのも楽しい」
     だから、お客サンも+1を楽しんでってくれたらイイなと語るエルの言葉に、さかなが頷く。
    「おすすめ。しりたい」
     喜ぶエルと民子によって全身コーデが整えられ、お次は佐井(d26955)にバトンタッチ。
     選んだ服と、髪型と、それを作り上げていく過程。
    「ハッピーな気持ちを引き出すのが、オレの仕事」
     そうして、くせのあるぼさぼさの髪を丁寧にブローしていく。
    「オレの一押しなんだけどさ、このふわふわしたエクステとか、チャームとかつけてみない?」
     スタイリングが完成すれば、多岐(d09003)の出番だ。
    「容姿なんて二の次で、要は気の持ちようだ」
     さかな当人は相変わらず無表情ではあったが、どことなく楽し気に見える気はする。
     そんじゃ始めるかと、カメラはあえてタブレット端末を使用する。
     ブロガー風からミニチュア加工まで、幅広く対応できるからだ。
    「ちゃんとした撮影なんて、案外しねぇだろ」
     せっかく着飾ってんだ、こういう機会がもっとあってもいいと零しながら、多岐はあっという間に画像を編集していく。
     その場で印刷されたポストカードに、さかなの目が釘付けになった。
    「しらないひと、みたい」
    「でも、気に入ったんじゃない?」
     イイ顔してるもんねとエルに言われ、こくこくと、懸命に頷く。
     うまく言葉には、できないけれど。
    「201が、貴方の日常の中の特別な1つであるように」
     色白の頬がほんのり紅潮しているのを見て、民子が笑って。
    「おー、雰囲気変わったじゃん」
    「折角だし一緒に撮る?」
     供助もやってきて、一夜崎にも見せてやらないとなと、呟いた。


     閉会間近の、夕刻。
     【the 201st Ave.】のモノクロの街並みに、供助が色を乗せ、街を夕暮れへと変えていく。
     その頃、会場内の最も日の当たる場所では、良顕(d21094)が黙々とマフラーを編み続けていた。
     糸がなくなれば、次の毛糸を編み足して。
     伸ばした分は、自分の首に巻いていく。
    「それ。ください」
     ふいに告げたのは、ブースの前でずっと様子を見ていたさかなだ。
     じょきじょきと無造作に切ったマフラーを、手渡して。
     代金の代わりに「暖かそうなのを、何か置いてって」と告げる。
     さかなはしばし考えた後、
    「毛糸で編んだ、氷の結晶」
     こころまで、凍らないように。
     オマジナイだと告げるそれを眠たげな眼で見やり、受け取る。
    「ん。あったかい」
     早速マフラーを首に巻いた少女は、無表情のまま、満足げに頷く。
    「さかなおねーちゃん!」
     呼び声に振り返れば、陽桜の姿。
    「素敵なもの、たくさん見つけましたか?」
    「ん」
     201芸祭特別仕様のショッパーから、イメチェン姿を写したポストカードや、淡色のスレカホルダーを見せ、陽桜は?と問い返す。
    「あたしは、ほら、こんなにたくさんなの!」
     両手いっぱいの品を見せる様子は、とても誇らしげで。
    「瞳の。おそろい」
     わたしも買ったと、さかなも七色のガーベラを見せれば、やがて会場を満たすほどの大音量で、アナウンスが響いた。
    『2015年、芸術発表会「服飾部門」の入賞は! 「誰でも特別になれる」をテーマに、様々なクリエイターが気持ちの上がる+1を提案した、クラブ【the 201st Ave.】に決定しました!』

     ――光無くして闇非ず。
     ――闇非ずして光無し。
    「たまには、晴れを体験しておくのが良いね」
     有無はひとり歓声に背を向け、夜闇へと消えていった。
     
     

    作者:西東西 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年11月13日
    難度:簡単
    参加:25人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 6/キャラが大事にされていた 4
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