三人衆は山を駆け

    作者:霧柄頼道

     赤く色づく、秋めいた山中を走る三つの影がある。
    「いやあ今回もウハウハ大漁でござったな!」
    「そうでござる! これもそれがし達三人が力を合わせればこそ!」
     漆黒の忍装束に身を包む彼らは、背中に担いだ大袋を見せて互いの成果を報告し合う。
    「裏卍殿、次はどこを襲撃するでござるか?」
     これでもかと詰め込まれた袋を背負い直し、一人が問いかける。
    「うむ。次は黒鳥殿のフィギュアを補充しにイベント会場を襲う予定でござる!」
    「おおっ、テンション上がるでござる!」
    「その後はシャチ殿のために現金輸送車を襲撃するでござる。拙者の獲物は最後で構わんでござる」
    「裏卍殿は話が分かるでござるなぁ!」
    「なぁに、これも我らが結束のため。三人揃えばどのような任務も鮮やかに達成できるでござるよ!」
     ふぁっはっは、と笑い声が響く。
     彼らは強盗を繰り返す羅刹達。今日も忍者衣装に身を包み、欲望を満たすため町を駆けるのだ。
     
    「……てな具合に、羅刹三人組が悪さをしているらしい」
     神崎・ヤマト(中学生エクスブレイン・dn0002)が、集まって来た灼滅者達へ説明を始める。
    「取り立ててどこの勢力にも所属していない、あるいは弱すぎて弾かれた羅刹達が集まったんだな。三人それぞれ狙うものが違うんで、一つの事件は損害が軽微でも積み重なれば無視もできなくなる。ここはお前達の力でこの小悪党どもをしばき倒しちまってくれ」
     羅刹達は目立たないようにするため忍者っぽい格好をしている。要するにコスプレだ。
    「口調も拙者だのござるだの、いちいち盗品を袋に入れて運んだりだの、ステレオ過ぎていろいろ間違ってる気もするが本人達は忍者のつもりだ。だから逃走ルートも人目につかない路地や森を選択する。今回の奴らはすでに仕事を済ませ、この山中を抜けて拠点へ戻ろうとしてるぜ」
     ヤマトが地図を広げて指し示す。この山で羅刹達を探しだし、倒すのがおおまかな流れとなる。
    「連中は三人一組で逃げているから、しっかり索敵すれば発見できるだろう。だが戦闘中旗色が悪いと判断すると、それぞれ別々の方向へ逃げようとしやがる。それこそ盗品を投げ捨てでも一目散にだから、逃がしたくなければ戦略を工夫したりする必要があるぜ」
     この任務は羅刹を一人以上灼滅できれば成功だが、俺としては今後の事件の再発を防ぐためにも全員倒しちまって欲しいと思ってる、とヤマトは言う。
    「奴らの戦力だが、一人一人の強さは同じくらいだ。刀で斬りつけたり、火遁の術とか言って銃弾をブッ放して来たり連携もそれなりに良い。ポジションも状況に応じて切り替えるし、逃げたと見せかけて奇襲を仕掛けてくるかもしれない。忍者っぽく」
     むしろそういう手合いを相手にする感覚でいった方がいいかもしれねぇな、とヤマトは補足する。
    「無事に盗品を取り返せたら学園の方で処理しておくから、できるだけ回収しておいてくれ。裏卍は重火器類、シャチは現金、黒鳥は同人本やフィギュアだ。頼んだぜ!」


    参加者
    黒守・燦太(影追い・d01462)
    エルメンガルト・ガル(草冠の・d01742)
    笙野・響(青闇薄刃・d05985)
    朝倉・くしな(初代鬼っ娘魔法少女プアオーガ・d10889)
    安楽・刻(ワースレスファンタジー・d18614)
    ガーゼ・ハーコート(自由気ままな気分屋・d26990)
    安藤・ジェフ(夜なべ発明家・d30263)
    荒谷・耀(護剣銀風・d31795)

    ■リプレイ


     ひんやりと肌寒く、紅葉舞う山の中を灼滅者達は羅刹達を探して歩いていた。
    「忍者! 最近ダークネスの間では忍者流行りなのですかねっ?! 魔法忍者少女を目指している私としては中々に興味深いですよっ!」
     元気よく進むのは朝倉・くしな(初代鬼っ娘魔法少女プアオーガ・d10889)だ。
     魔法忍者少女を目指して修行していたものの忍者倶楽部が凍結したので、新たに忍者となるには忍者を倒せばいいじゃない思考で臨む気満々である。
    「オレ、忍者好きなんだよね。どんな忍法見せてくれるんだろうな!」
     と、隠された森の小道を使い怪しげな集団を探しているのはエルメンガルト・ガル(草冠の・d01742)。
     彼も忍者学部に在籍しているのだが、別に詳しいわけでもないため相手がなんちゃってでも楽しみだったりする。
    「羅刹にもいろんなのがいる、ねー。そのチームワークをもっと他のことで使ったらかなり脅威だったかもしれないけど……なんていうか、残念系、だね」
     笙野・響(青闇薄刃・d05985)が軽くため息をつく。巨大な組織から烏合の衆までピンキリなのが羅刹というものなのだろう。
    「欲望を満たすために力を振り翳し、犯罪に走る集団……。もちろん見逃してはいけない悪事ですし、倒そうという気概はあるのですが……。なんだか……入って行き難い空気を感じるな……ちょっと、帰りたい……」
     妙な羅刹と対峙する事を思い、DSKノーズを用いながらも弱音が口をついて出る安楽・刻(ワースレスファンタジー・d18614)。ビハインドの黒鉄の処女はあまり興味なさそうについてきている。
    「人から鬼と畏れられたダークネスが、群れてこそこそと泥棒の真似事ですか……。こそこそしてる分、人的被害が出ずらそうなのはいいですけど……上位者としての誇りは無いのでしょうか」
     もし万が一堕ちたとしても、こんな小悪党にだけはなりたくはないですね、と荒谷・耀(護剣銀風・d31795)が漏らす。
    「ま……小者とか思ってないよ、だって羅刹だろ。どんな相手でも、全力でぶっ倒す相手には変わらないんだからさ」
     木々を縫い、茂みに身を隠しながら黒守・燦太(影追い・d01462)も呟く。敵は腐ってもダークネス。侮っていい相手でないのは違いない。
    「お、あれじゃないー?」
     その時、木立の隙間から先を覗き込んだガーゼ・ハーコート(自由気ままな気分屋・d26990)が指差す。
     その向こうには大袋を背負ってえっちらおっちら歩く三つの影が。
    「なんともシュールな光景ですね……」
     忍装束を着込んだ三人組を目にし、ウイングキャットのタンゴを連れた安藤・ジェフ(夜なべ発明家・d30263)が静かに仲間達を呼び集める。
    「やはり萌えのある時代はいいものでござるな、黒鳥殿!」
    「裏卍殿もようやく理解したでござるか! しかし本物の通は萌えに燃えを感じてこそ!」
    「そ、それがしにはあまりついていけない話題でござる……」
     熱い談義を繰り広げる三人に聞こえるよう、エルメンガルトがわざと大声を張り上げる。
    「あの同人誌最高熱かったし高く売れるよね!」
    「むっ、どこからか同士の声がっ!」
    「多分違うでござるよ黒鳥殿……」
     ばばっ、と忍者羅刹達が周囲を見回すのに合わせ、灼滅者達も一斉に飛び出した。
    「ゴヨウダ! シンミョウニ バクニツケ!」
    「ぬぬ、何やつ!」
     ジェフの声に時代劇っぽく裏卍が返し、そこへくしなも負けじと名乗りを上げる。
    「いざゆかん! 悪い忍者なら闇に還す! 鬼っ娘魔法少女プアオーガ! ここに推参也っ! 闇に生きて闇に消えよっ!」
    「我らに挑むとは命知らずでござるな!」
    「返り討ちでござるーっ!」
    「ござるがゲシュタルト崩壊してござるが移りそうでござるー」
     戦闘態勢へ入りながらもガーゼ殿の言う通り、微妙に締まらないまま大捕物は始まったのでござった。


    「いざいざ! かとんの術っ!」
     くしなは突撃しながら十字架を構え、無数の光線を放つ。それらは忍者羅刹達へ着弾するも、敵は袋を落とす様子も怯む様子も見せない。
    「それならオレは忍法、毒霧!」
     続くエルメンガルトも独特の構えを取りながら鏖殺領域をばらまいた。
    「おのれ、ちょこざいな!」
    「あなたのこだわり、みせてみなさい?」
     飛び退こうとする裏卍へ先回りする響が、atmosphere deflectorによるシールドバッシュでしたたかに一撃。
     さらにガーゼ、刻がそれぞれクロスグレイブから光線や砲弾を射出し、波状攻撃を浴びせていく。
    「そ、そこですっ!」
    「効かぬでござる!」
     一方耀が螺穿槍を打ち込むも、対象の黒鳥は堪えた風もない。
    「大口の割に大した事ないでござるな?」
    「そ、そんな……っ。やっぱり、私じゃ……」
     羅刹達を調子に乗らせるため、あえて気弱げな振りをしてみせる耀。
     とはいえ敵が強いのも事実。燦太はなんとか蹂躙のバベルインパクトをぶち込んでのけるも、黒鉄の処女とタンゴの両名はどちらも攻撃を外してしまう。
    「裏卍……イギリス生まれの僕に対する挑戦ですね」
     ジェフが裏卍めがけレイザースラストを放つ。これはくるりとかわされてしまうが、次手からの命中率は引き上げられた。
    「こんな強いなんて聞いてませんよ。3人とも雑魚と聞いたんですが」
    「雑魚はおぬしらよ、我が火遁の術を味わうでござる!」
     と、袋からガトリングガンを取り出した裏卍がこれでもかと銃撃を始める。
    「なんて火力なんだ……!」
    「あいたたたー……」
     劣勢に見せるため、銃弾を受けたくしなやガーゼは大仰に後ずさる。
    「毒入り手裏剣を食らうでござるーっ!」
     シャチが飛び上がり、空中から手裏剣を投げつける。ディフェンダーのかばいきれなかった分が降り注ぎ、燦太が舌打ちした。
    「……思ったより、やるな」
    「こんな攻撃、何発も耐えられそうには……」
     刻もおおげさに痛がり、じりじりと押されているように後退。
    「やだよ……痛いのは嫌ぁ……!」
     耀はかろうじて黒鳥の斬撃を避けるも、バランスを崩して転倒。その哀れな姿に黒鳥はにやつきながら迫っていく。
    「ぐふふふふ……運が悪かったと思うのでござるな!」
     忍者羅刹達の攻勢は続いた。一方的な攻撃にさらされ、徐々に灼滅者達の戦線は崩れていく。
    「中々近付けないですぞっ!」
     激しい弾幕にくしなは間合いを詰められず。
    「そんな、これで倒れないなんて、いったいどうしたら……」
     クロスグレイブを叩きつけても相手が倒れない事に驚く刻。そして反撃によってあえなく吹き飛ばされ。
    「皆さん、バラバラに攻撃してはこちらが不利……聞いてませんね」
     ジェフは苦しげに膝をつきながら、味方が指示を聞かず連携が取れていない事を強調する。
    「痛い……痛いよぉ……」
    「ぬほっ、もっといい声で鳴くでござる!」
     涙目になった耀の嗜虐心をそそる悲鳴にすっかり羅刹達は注意を引かれている風。
     だがそれらは一見しての事。攻撃を受けながらも灼滅者達はゆっくりと包囲を狭め、羅刹達を一気に倒せるようじわじわ均等にダメージを与えていっているのだ。
     そしてついに、状況が動く。


    「こっち来ないでぇっ!」
    「むほほほほほ。そう言われるとなおさら襲いたくなるでござる!」
    「く、計算違いですね……」
    「身ぐるみはいじまうでござる!」
     しかし、最初に異変に気づいたのは裏卍であった。
    「お、おかしいでござるな……そろそろどいつか倒せてもいいくらいには攻撃しているのでござるが……」
    「行くぞ忍法水遁の術!」
    「おぼぉっ!?」
     そこに意表を突いたエルメンガルトの妖冷弾と刻の黙示録砲が、シャチを氷づけにしてしまう。
    「ちょっと遅かったですね~投げ網の術っ!」
     くしなの見舞った除霊結界が三人をまとめて捕らえ、身動きを封じる。
    「う、動けんでござるっ」
    「皆さん、見事な演技でした。もう十分と思います」
     何事もなく立ち上がったジェフがリバイブメロディを鳴らし、仲間達の状態異常を治癒していく。
    「い、いかんっ……! きえええええっ!」
     それでも黒鳥は燦太へ斬りかかるが、直前で響に遮られる。
    「大丈夫かしら?」
    「ん、さんきゅ」
     燦太が礼代わりに黒鳥を巨大な鬼の腕で殴り飛ばし、地面へ這いつくばらせた。
    「今度はこちらが切り刻んであげます」
     と、見上げた先には今までとはうってかわった冷静な表情の耀。ゆったりと大鎌をかざすその姿に忍者羅刹達は震え上がった。
    「回復せねばっ……!」
     慌てたようにシャチが袋から現金を取り出し、素早くその量を数えていく。
    「出た、現金ー。それってなんで回復するのー?」
    「企業秘密でござる!」
     小首を傾げるガーゼの問いに、シャチは怒鳴り返す。
    「精神的なものー? 殲術道具とかー?」
     それでも気になるガーゼ。
    「うるっさいでござる! これ数えてると落ち着くのでござるよ!」
    「お金を数えるだけで満足なんだ……!」
    「忍法っていろんなのあるね。現金の術とか……?」
     凄まじい精神論にくしなは驚き、エルメンガルトは順調に忍者を勘違いしている様子。
    「良く分かんないからちょっと調べさせてー」
    「え、ちょっとま……ぎゃああああああっ!」
     のんびりと近寄ったガーゼが壮絶な拳の連撃を叩き込み、シャチをぶちのめす。
    「シャチ殿がやられたでごさる!」
    「く、黒鳥殿、一旦ここは脱出でござる!」
     とたんに逃げだそうとする裏卍へ抜け目なく響が斬りかかり、裏卍の袋から銃器を落とさせた。
    「ぬおっ、何を!」
    「あなたの重火器ってその程度なの? 一発逆転とかないのかしら?」
     間髪入れず挑発の言葉を投げかける。
    「ぬ……っ」
     余裕たっぷりに髪をかき上げる響に、裏卍の足が止まった。そこにジェフも口を挟む。
    「重火器は1人で持っていても意味が無い物ですよ。物によっては撃つだけでも複数人必要ですし、弾薬の補給があってこそ価値があります」
    「分かっておらんでござるな、それを一人で使いこなすのが真の萌えであり燃えというもの……!」
    「隙だらけだ」
    「のおおおおおーッ!?」
     思わず振り向いた裏卍を燦太のデスサイズが容赦なく斬り下ろす。
    「ところで魔法少女の最近の作品でいいのは何ですか?!」
    「と、突然何でござるか……!」
    「作品書かないの?!」
    「む……実は今構想を暖めているものがいくつか……」
     一方ではくしなのしつこい質問に、黒鳥は少しずつ乗り気になっているのか色々と答えてくれる。
     だがその背後から耀が忍び寄り。
    「悔い改めて下さい……いえ、もう手遅れですね」
    「あひぇっ!?」
     死角から斬り裂かれ、黒鳥はもんどりうつ。
     黒鉄の処女も距離を詰め、霊撃を食らわせて思うさま痛めつける。
    「ひいぃぃぃ……! で、でもなんでだろう、痛いし怖いのにぞくぞくするでござる!」
    「えー……」
     どん引きの刻。片や冷酷な耀、片やにやにやする黒鉄の処女に挟まれ、黒鳥はなんかいろんな意味で手遅れな何かに目覚めつつあるようだ。
    「逃がさないぞ、裏卍!」
     エルメンガルト達の追撃をさんざんに受けながらも、忍者羅刹達は別々の方向へ逃げ出してしまう。それを見逃すわけにはいかず、灼滅者達は裏卍に目標を絞って追跡を開始するのだった。


     灼滅者達は刻の駆使するDSKノーズを頼りに追走しつつ、裏卍が足場の悪い谷間へ逃げ込むよう誘導していく。
    「せめてあなただけでも捕まえますよ」
     言ったジェフの側からタンゴが飛び出し、裏卍の背中へ強烈な猫パンチを打ち込む。
    「この巻物を受けよっ……なんて!」
     続いてエルメンガルトが跳躍しながらウロボロスブレイドの刃を滑るように繰り出し、回転を加えながら裏卍の足を絡め取る。
    「せ、拙者絶対絶命でござる!」
     裏卍が倒れ込んでいる間に包囲を固める灼滅者達。
    「ならば血路を開くのみ! 火遁の術っ!」
     裏卍はなおも弾丸の雨をまき散らす。けれどそれらは響とガーゼ達が防ぎ、仲間が攻め込む機会を作り出す。
    「みんな、今のうちにっ」
    「火遁、やぶれたりー」
    「よーし、それじゃこっちも、えーと、えーと……とにかく殴るっ!」
     とっさに術が思いつかなかったのか、くしなは結局火遁パンチで攻めて行く。
    「くう、八人がかりは卑怯でござる!」
     がら空きになった裏卍の胴体を燦太の神薙刃が斬りつける。
    「戦いに卑怯も何もないだろ」
    「その通りでござるっ」
     すると、燦太の声に応じるようにその場へ新たな影が飛び込んで来た。逃げたと思った黒鳥である。
    「おおっ、黒鳥殿! もしや助けに……!」
    「当然でござる! 同士を見捨てるわけがないでござるよ!」
     颯爽と現れたのはいいが、黒鳥の手には道中、あらかじめくしなが置いておいた同人本が握られていた。多分それでここへの到着が遅れたのだろう。
    「貴方達程度、本当は恐るるに足りませんよ。変態のこそ泥さん」
     援軍にも動じず、耀が得物を構え直し、黒鉄の処女はおもちゃが戻って来たとばかり笑みを大きくしている。
     戦いは最終局面へ移った。ジェフとタンゴを中心に回復役を増やしつつ、裏卍へ攻撃を集中。
     ついに裏卍が限界を迎えたのか、銃口がふらついている。そこに燦太の蹂躙のバベルインパクト、刻のDMWセイバーと続き、大きくよろめかせたところへくしなが突っ込む。
    「やっぱり最後は火遁で行くよっ!」
    「ならば拙者の火遁と勝負でござるっ!」
     もはや火遁とは何なのか分からないが両者は激突し、次の瞬間にはくしなの燃えるキックが裏卍を貫いていた。
    「ぐふっ……無念でござる……」
    「う、裏卍殿ーっ!」
     倒れ行く裏卍に、黒鳥が悲痛な叫びを上げる……すでにだいぶ距離を離しながら。
    「きょ、今日の所は負けを認めるでござるが、いつか目にものを見せるので覚悟しておくでござるよ!」
     などと、完全に戦意を失った黒鳥は捨て台詞を残し、同人本を抱えながら逃げ去って行った。

    「まあ、忍者ってあんまり義に厚くないもんね……。でもやっぱり忍者ってイイね! もっといろんな術が見たかったな」
    「僕はもういいかな……色々と濃すぎるし……」
     満足したようなエルメンガルトや違う意味でつやつやした笑いを覗かせる黒鉄の処女を見やり、刻はため息をつく。
    「終わったら、盗品返却だっけ? んじゃ、荷物自体は大事に扱った方がいんだよね、そういう趣味は分からないけど」
     燦太の言う通り、その後は裏卍とシャチの品を回収するため来た道を戻っていった。
    「なんだ、ただの現金だったのかー。面白みがないなー」
     残念な事にシャチの持っていた現金はただの紙束だったらしく、ガーゼはそれ以上興味をなくしたように、若干しょぼーんとしながらばらまかれた札束を大人しく拾い集めている。
    「重火器・現金・同人系、どうやって知り合ったのかが謎だけど、もうすこし面白ければコントでやっていけたかも、ね」
     まぁ戦ってみればすでに十分コントみたいなものだったのだが。
     響はくすりと笑い、髪をかき上げたのだった。

    作者:霧柄頼道 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年11月20日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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