京都府伏見区――その地には、さながら戦国時代から躍り出て来たような、巨大な城が出現していた。
石垣は高く掘は深く城壁は長く、広大かつ堅牢。たなびく無数のペナントが侵入者を寄せ付けない威容を放っている。
日本各地の名産品をペナントとして掲げるご当地怪人達はもちろん、無骨な刀剣、鎧兜のペナントを配置する武者アンデッド達、そして天海大僧正の元を離れた羅刹達が己の暴威を示すかのようにペナントへ地獄絵図を描き散らし、見る者に恐怖を与えずにはいられない。
非戦闘員でありながらも正社員として援助するレプラコーン達やいけないナースの姿もそこにはあった。彼女らによって今この瞬間にもペナント怪人が生み出され、刻一刻と軍団は強化されているのである。
圧倒的な城郭。恐るべきダークネス達の武力。無尽蔵に生成される兵団。もはや敵はなし、と内部の意気はいやがおうにも高まる一方であった。
「ククク……久々に胸躍る、ってヤツだな、これは」
歩兵とも言うべきペナント怪人達と、共に天海大僧正へ反旗を翻した仲間の羅刹達。
彼らを率いる蛮刹は、愛用のバスターライフルを肩に担ぎ、抜き身の刀を手元でぶらつかせながら城内を歩いていた。
「問題はこのお祭り騒ぎでどれだけ爪痕を残せるか、ってこった」
狡猾な手口で追っ手をまき、まんまと安土城怪人の元へたどり着いた蛮刹は、ここでもさらなる飛躍への道筋を思い描く。
「勝つのは当然。だが安土城怪人の野郎に捨て駒として使われるのも御免被る。だからよ……」
蛮刹はにやりと口の端を上げ、号令するかのように大広間へ続く扉を乱暴に蹴り開けた。
「――やってくるクソどもを血祭りに上げて、天海大僧正の首を獲る! それで俺達の天下だッ!」
同時に、暴れる機会を今かと待ち望んでいた羅刹達が武器を突き上げ雄叫びを上げた。
「来てくれたか、お前達。たった今天海大僧正側から連絡が入ったところだ」
神崎・ヤマト(中学生エクスブレイン・dn0002)が引き締まった表情で、集まった灼滅者達を出迎えた。
「こっちの準備が整う前に、安土城怪人勢力が攻撃を仕掛けて来た。結果京都周辺は奪われ、伏見区に巨大な城を築かれちまったんだ」
勝利を確信している敵軍の士気、戦力は非常に高く、先手を打たれた天海大僧正勢力はどう見ても分が悪い、とヤマトは渋い顔をする。
「天海大僧正のじいさんは精鋭を動員して伏見城を攻略し、その勢いでもって琵琶湖の敵拠点を攻め落とす気だ。軍団を分けた安土城怪人達の逆を突き、各個撃破を狙うつもりってわけだな」
同様に武蔵坂学園へも協定による援軍要請が入っている。
伏見城は天海大僧正達が陥落させ、学園にはその後、琵琶湖に存在する敵拠点へ攻め寄せる助勢を頼みたいとの事。
「伏見城へは天海大僧正軍の主力、スサノオ壬生狼組が出撃するようだ。連中はたしかに強い。だが大方の予想では、この戦いは両者共倒れという見方が大きい」
スサノオ壬生狼組の死をも恐れぬ奮戦によって伏見城は落とせるが、こちらもほぼ全滅は必至。
伏見城から撤退した安土城怪人軍は、琵琶湖の拠点へ向けて合流しようとするだろう。
武蔵坂としては伏見城が落ちるのを待って、琵琶湖へ向かえばいい。
だが、とヤマトは指を立てた。
「スサノオ壬生狼組と共闘できれば、伏見城から脱出するはずのダークネスどもの数を減らす事ができるだろう。さらにスサノオ壬生狼組も生き残れば、琵琶湖での決戦時に援軍として駆けつけてくれるかもしれねぇ。どうするかはお前達に任せるが、指をくわえているよりは参戦した方が戦略的に大きなメリットではある、と言っておくぜ」
そして、肝心の敵兵力についてヤマトが説明を始める。
「今回相手にするのは、天海大僧正勢力を裏切った羅刹どもだ。ここまで生き残って来ただけあって手練れが揃い、一筋縄じゃいかないぜ」
数は八体。様々な武器を用い、ポジションは前衛が多めとの事。
「加えて連中が従えてるペナント怪人部隊も配備されていて注意が必要だな。リーダーは蛮刹という男で、ポジションはスナイパー。多くのサイキックを使いこなすから全力でかかってくれ」
スサノオ壬生狼組は壊滅するまでに敵軍を半数近くまで削るため、撤退する所を襲撃する場合、敵戦力は半減している事になる。
途中で救援する場合は、タイミングにより戦況が変わる。
スサノオ壬生狼組に最初から同行、あるいは早めに助けに行けば羅刹達はほとんど無傷のまま、スサノオ壬生狼組が劣勢ならば羅刹達も弱っている、という具合だ。
「そして伏見城内での戦いでは、地の利を得ている羅刹どもの戦闘力は一割ほど上昇している。だがこちらが素早く敵を撃破し、その上で余力があればレプラコーンやいけないナースといった後方支援のダークネス達を倒せるかもしれねぇ」
また、味方部隊が天守閣を制圧した場合、城内戦においての敵の能力向上は打ち消される。
「達成できれば自分達だけでなく、他の戦場の仲間をも援護する事につながる。狙ってみる価値はあるぜ」
言って、ヤマトは灼滅者達へ頷きかけた。
「スサノオ壬生狼組に手を貸すか、無理をせず追撃戦のみにとどめるか。……どうするにせよ、俺はお前達が無事に帰って来られるよう信じてるぜ。気をつけてな!」
参加者 | |
---|---|
一橋・智巳(強き魂に誓いし者・d01340) |
花園・桃香(はなびらひとひらり・d03239) |
室崎・のぞみ(世間知らずな神薙使い・d03790) |
待宵・露香(野分の過ぎて・d04960) |
桜井・夕月(もふもふ信者の暴走黒獣・d13800) |
東堂・八千華(チアフルバニー・d17397) |
ルフィア・エリアル(廻り廻る・d23671) |
アリソン・テイラー(アメリカンニンジャソウル・d26946) |
●交渉
伏見城へ至る道中。整然と隊列を組み進んでいたスサノオ壬生狼組へ、アリソン・テイラー(アメリカンニンジャソウル・d26946)達灼滅者が追いついた。
「ヘーイ、ヘロー! ナイスートーミートー!」
呼びかけてみると、壬生狼組は足を止め怪訝そうに振り返る。
「む……お主らは」
「援軍に来ました……」
問いかけに、室崎・のぞみ(世間知らずな神薙使い・d03790)が生真面目な面持ちで答えた。相手は一度は敵対した組織、やはり礼節や距離感は大切だろう。
「援軍だと……? 灼滅者がか」
「援軍と言っても100名程、天海大僧正の要請には影響はありません」
「スサノオ壬生狼組さん、義によって助太刀するわ」
のぞみに続き、待宵・露香(野分の過ぎて・d04960)も頷きかける。
壬生狼組は当惑したように互いに目を見交わし合ったが、やがて組長と思われる屈強そうな壬生狼組が進み出た。
「好きにしろ……。だが、使えぬようなら見捨てていくぞ」
「大丈夫です! 足手まといにはなりませんよー!」
「よ、よろしくお願いします……!」
桜井・夕月(もふもふ信者の暴走黒獣・d13800)がはきはきと応じ、東堂・八千華(チアフルバニー・d17397)は緊張気味に会釈する。
ここに灼滅者と、スサノオ壬生狼組との共闘関係が結ばれたのだった。
壬生狼組との道すがら、花園・桃香(はなびらひとひらり・d03239)は対伏見城のための策を口にする。
「私達が羅刹兵達の戦力を削ります。あなた方にはご当地怪人の方をお願いできますか……?」
「我らを走狗のように扱うつもりか?」
いや、と一橋・智巳(強き魂に誓いし者・d01340)が否定した。
「指図するつもりはねぇ。……俺たちがあのボスヤローまでの道を開ける、その間にそっちは片付けられるか? って話だ」
「……構わん。どのみち敵は全滅させる心算だ」
「……ハッ、愚問だったか! 遅れを取れねぇな!」
了承を取り付け、智己がにやりと笑う。その青陣羽織と鉢巻を巻いた格好に、壬生狼組も妙な顔をしている。
「……あ、これか? まぁなんだ……義を見て……ほら、何とやらだよ」
「聞きたいんだけど、あなた達は天海大僧正や安土城怪人、灼滅者の事をどう思っているの?」
「お主らには関係なかろう。その問いが此度の戦において役立つのか?」
露香の質問に、壬生狼組はすげなく返す。
「ならばこれはミー達の友好の証! ささ、お近づきの印にこれをお納め下されでござるヨ!」
と、アリソンがフレンドリーに山吹色のアレ――コロッケを取り出し、英気を養ってもらおうとする。
けれども、壬生狼組はちらりと一瞥したのみで。
「そんなものを持ち込んで、物見遊山でもしに来たのか?」
「オウ……ミブ・ウルフは手厳しいネ……」
怒られてしまう。
「やっぱり狼さん達、あんまり私達と仲良くする気ないんですねー……」
「ですね……」
頑なな態度に夕月が呟き、桃香も複雑な表情で小さく頷く。
だがそれでも、刃を交わして知った強い意志と士道を貫く壬生狼達を、見殺しにする事はできない。
「まあ、借りは返すさ……それに、ここで全滅されても後味悪いしな」
ルフィア・エリアル(廻り廻る・d23671)も仲間には同意見だが、ここで敵の戦力を削げば後で楽が出来るという打算もある。
「もっと私達を頼ってくれてもいいのに……」
彼らにとって灼滅者は『重要な戦力』に過ぎないか『自分達の戦に必要以上に巻き込みたくない』のどちらかだろうと、のぞみもまた思う所があるのだった。
●攻城
「城攻めだー!」
伏見城に突入し、通路を突っ走りながら夕月が叫ぶ。
智己も鉢巻を巻き直し、戦闘態勢に入っていた。
「殿中……いや、天誅でござる! ってか?」
「殿中でござる!」
露香もなぜか電柱を振り回して続く。
「殿中で充電中!」
携帯の充電器を廊下にあるコンセントに差し込んでみたり、殿中で天誅とテンションは上がる一方のようだ。
「……この城、どっからでてきたのかしら。ていうか邪魔なんだけどどうやって片付ければいいのかしら」
かと思えばふと冷静になってぼやく。
「城攻めか……任せろ私は城攻めのプロフェッショナルだ。何故なら通信教育で城攻めを学んだからな」
「ヘイ!? 通信教育でニンジャになれるでござるか!?」
「うむ。流石は新聞の折り込みだ」
「アナログでござる!?」
ルフィアのたわ言にさっそくアリソンがおかしな方向に騙されている。ただ壬生狼組は乗って来ず、ちょっと寂しい。
「えと……それじゃ、作戦通り、お願いします」
八千華がもう一度一礼すると、壬生狼組も視線を合わせ。
「そちらも、役目を果たすがいい」
分かれ道で灼滅者達と離れ、怪人達を倒しに走り去っていくのだった。
「……では、私達も行きましょう」
その背中を見送った桃香は、首から下げた懐中時計にそっと触れ、意を決したように目の前の大広間へ通じる扉を開け放つ。
「ククッ……良く来たな、灼滅者ども!」
出迎えたのは血気盛んな羅刹団。それを率いる蛮刹であった。
「自ら死に場所に来るとは馬鹿な奴らだ。こっちには多勢の怪人部隊がいる。生きては出られねぇぜ」
「そっちは壬生狼組の皆が行ったよ。あなた達の助けは来ない!」
八千華の言葉に一瞬蛮刹は驚いたようだが、すぐに顔を歪めて笑う。
「手間が省けたぜ、てめぇらを片付けた後は犬っころどもも皆殺しだ!」
蛮刹が銃口を上げて引き金を引くと、解き放たれた鬼達が一斉に襲いかかって来た。
「ほぅら、ちょっとでも掠ったら……地獄行きだぜッ!」
我先にと群がる羅刹兵めがけ、智己が前のめりに杭をぶち込んで衝撃波を発生させる。
「さて、始めるか」
よろめく羅刹達へルフィアが接近し、巨大化させた鬼の腕で思い切り殴りかかった。
「狼さん達が合流する前にやっつけて驚かせちゃいましょー! ね、ティン!」
霊犬のティンと一緒に戦場へ躍り込んだ夕月も、立ちふさがる羅刹へ鬼神変を振るう。ティンも銭弾を発射しつつ疾駆、仲間への攻撃を防いで回った。
「伏見区一帯、返してもらうわよ」
荒ぶる羅刹達へ告げた露香が、牙の名を持つマテリアルロッドを水平に構える。
「始原にして根源たる混沌を縛る唯一の法、冒されえぬ絶対の純粋<力>よ! フォースブレイク!」
そうして狙い定めた切っ先を羅刹へ突き入れ、魔力を込めて炸裂させた。
「目の前に集中っ……ここからは一匹も逃がさないつもりでっ……!」
戦況を見渡しつつ、クロスグレイブを持ち上げた八千華が詠唱。砲門を解放された巨大な十字架が、ひしめく羅刹達を輝く光条で薙ぎ払う。
そんな彼女へ狙いをつける羅刹には、ウイングキャットのイチジクが猫パンチでびしばし追い払っていく。
「死ねおらァ!!」
「うお!?」
前線へ出ていた智己が、足を止めた瞬間したたかに二の腕を斬りつけられた。その上振り向いた時には、別の羅刹が顔面めがけ龍砕斧を振り下ろさんとしており。
「まっちゃ!」
桃香の叫びに応じるようにして霊犬のまっちゃが飛び出し、代わりに一撃を受けていたのだった。
「大丈夫ですか!?」
のぞみが急いで守護の小光輪を智己へ纏わせる。
礼を言いかける智己だが、間断なく殺到する羅刹の群れの中へ消えてしまう。
「なんて激しい攻撃……!」
敵ジャマーがまき散らす毒の風に咳き込みつつ、桃香は負けまいと黒煙を立ち上らせ、周辺は異臭の混じった空気に包まれる。
「ミーを忘れてもらっちゃ困るネー!」
大混戦の死角へ紛れるようにして飛び回るアリソンが、加速をつけた炎の跳び蹴りを羅刹へ放つ。
「ぎゃ!」
倒れかける羅刹へすかさず駆け寄ったサスケが容赦なく斬りつけ、とどめを刺した。
「ナイスヨ、サスケ!」
敵兵討ち取りにガッツポーズを取る二人。しかし次の刹那、撃ち込まれて来た極太光線にまとめて吹っ飛ばされる。
「図に乗るなよ、クソどもが!」
もう一人のスナイパーと連携し、蛮刹がバスターライフルを乱射。
疾駆する霊犬達がかばいに行くが、運悪く集中砲火を受けたまっちゃが壁面へ叩きつけられ、消えていった。
「まず一匹ィ! おいお前ら、死ぬ気で戦線守りやがれよ!」
と、蛮刹は高速演算モードを発動。敵前衛は指示通り守りを固め、じわじわと灼滅者達を包囲しにかかった。
●総力戦
戦闘開始から五分が経過。両者とも持久戦の構えを見せ、どちらが先んじて敵戦術を食い破れるかの勝負となっていた。
「背中を見せるのは御法度だぜ!」
サングラスをかけ直し、赤に染まる青陣羽織をなびかせて智己がシャウトする。
「とはいえ地力では敵方に分がある。チラシにはこういう時、荷物をまとめて撤退せよとあったな……」
「クモガクレ・ジツでござるか!?」
祝福の風を巻き起こすアリソンのツッコみを聞きつつ、ルフィアは鋭利な帯を射出し、敵陣形の合間を縫うようにして羅刹の胴体を貫き、また一人倒してのけた。
だがその矢先、羅刹達の連続攻撃をまともに浴びたサスケがぐったりと横たわり、消滅。
「こっちも消耗して来てる……まずいわね」
仲間と息を合わせて螺穿槍を突き出し、敵勢を後退させながら額に汗を浮かべる露香。
「うおー! 覚悟覚悟ー!」
けれどそんな時こそ士気を上げるべく、ティンに背中を任せた夕月が突撃し影を幾重もの刃へ変えて見舞っていく。
「うぐっ……ま、まだまだ……!」
光線が脇腹を貫通しながらも八千華は歯を食いしばり、イチジクに回復してもらいながら押し寄せる敵を斬り裂く。
一方ではのぞみが分裂光輪を舞うように薙ぎ、羅刹へ裂傷を与えながら仲間への支援も怠らない。
しかし、敵クラッシャーの猛攻を受けたイチジクがダウン。
シールドリングを懸命に行使する桃香の顔にも焦りがよぎった、その時。
「あれは……」
横合いの通路から突如として扉が開け放たれ、別行動をしていた壬生狼組が駆け込んで来たのである。
「奴ら……スサノオの!?」
蛮刹が驚愕する間にも壬生狼組が最後の敵ディフェンダーを斬り倒し、灼滅者達と目線を見交わせ合う。
「……大将首は任せる」
つまり、彼らはそれまでの露払いをしてくれるという事。
「……はい!」
桃香は大きく頷いた。
戦いは十分以上もの長期戦の様相を呈していた。耐えきれずティンが力尽きるも、壬生狼組が加わった事で灼滅者側の戦力は膨れあがり、羅刹兵を押し返していく。
「チィ……こんなところで、俺が負けるかよ……これから天下取りが待ってんだからな」
「天下を取る……ただの羅刹に過ぎない貴方には絶対に無理ですね……」
後方へ退いていた蛮刹を、のぞみ達が捕捉する。
「あなたは天海大僧正を含め、名だたる羅刹とは風格も器も違いすぎます」
「……ふざけんなァ!」
日本刀を振るう蛮刹を、紫のパイルバンカーを携えた智己が肉薄して抑え込む。
「結局手前ェは天下なんざ、とれねぇよ。そうやって「手柄を挙げよう」って思ってる時点でなァ!」
鍔迫り合いで身を裂かれながらも、歯をむき出して笑う智己は零距離から特大のオーラキャノンを食らわせる。
「ティンの仇、受けなさいって!」
血反吐を吐く蛮刹へ夕月が正確な軌道で風の刃を叩き込み、地面へ這いつくばらせた。
「引導を渡してあげる!」
逃れようとする蛮刹へ追いすがり、露香がその急所へレイザースラストを送り込む。
「が……ば、馬鹿な……天下人になる、俺がァ……ッ!」
一息に壁際までぶっ飛ばされた蛮刹は、そんな断末魔を残し……。
「しめやかに爆発四散! サヨナラ!」
アリソンが最期を実況し、乱戦のただ中へ立ちはだかった。
突進する羅刹兵へ逆手に持ったナイフで応戦するも、一歩及ばず膝を突く。
「これがニンジャの、散り様ヨ……」
「助かったぞ」
倒れ込むアリソンを、かばわれていたルフィアが後ろから支える。
同時に螺旋状に放たれた帯が体勢を崩している羅刹を串刺しにし、息の根を止めていた。
●誅伐
「蛮刹の野郎が死んだな」
「使えねぇ」
リーダーがやられたにも関わらず、残る二人の羅刹は大した感慨もない風。
「殺るか?」
「あぁ」
銃口がおもむろに八千華へ向き、死の光が放出される。
「しまった……!」
攻撃後の硬直を狙われ、回避できない。しかもこちらにはもう、かばってくれる仲間は。
直後、目前に壬生狼組の一人が現れ、掲げた刀で光線を弾いてのけていた。
「あ……ありがとう、ございます……」
「気を散じるな。死にたいのか?」
「そんな事ないです……!」
かぶりを振った八千華は間髪入れずに羅刹へ踏み込み、一閃。流れるような一刀のもとに斬って捨てる。
「……後を、お願いします……」
と、桃香は最後の力を振り絞り、血みどろの壬生狼組へ治癒の光条をもたらす。
「ふん……」
意識を失う桃香へ無感動に鼻を鳴らし、壬生狼組は執拗にすら感じる斬撃でもって敵を追い詰める。
「天誅だぜ!」
「てんちゅーです!」
挟み撃ちの形で近づいた智己が雷光を帯びたアッパーカットで羅刹を空高くかち上げ、続けざまに跳躍した夕月が鬼へと変じさせた豪腕で思うさま叩き落とし、ついに最後の一人を仕留めたのだった。
「天下を取りたいなら、せめて100年ぐらいは羅刹として修行するべきでしたね……」
羅刹も長い年月を生きると落ち着いてくるのではという持論を持つのぞみは、仲間達を回復しながら非戦闘員のダークネスを倒しに行くか考えた。
「これも戦いだ。敵戦力を減らしておくに越した事はない。こちらにもまだ余力はあるしな」
ルフィアが言って、智己は壬生狼組へ視線を投げる。
「そっちはどうする?」
「無論、城を落とすまで敵を斬る」
壬生狼組もがぜんやる気のようで、話は決まった。
倒れた仲間は負傷した他の壬生狼組とともに待機してもらい、戦えるメンバーだけが城の奥へと進む事に。
なのに、目的のダークネス達はどの部屋にもいなかった。
訝しく思っていると、味方部隊が天守閣を制圧し、伏見城を攻略したとの報が。
こちらは壬生狼組も健在ではあるが、荷物や器具も全部持っていっている所を見るに、敵もかなりの余裕を持ってすでに避難していたようだ。
「本戦は琵琶湖まで持ち越しって事ですー?」
夕月の言葉に、そうだろうと頷く他ない。もう少し作戦を練るか、あるいは別の選択をしていれば、敵を壊滅させられる展開もあったかもしれなかった。
「お城、獲ったどー! ……ごめんなんでもないわ」
そんな話をしながら天守閣までやって来たあたりで屋根へよじ登った露香が叫ぶが、急に恥ずかしくなったのかそのまま地上まであいきゃんふらい。なんか下の方で音がした。
「任務は終わった。さらばだ」
「あ、はい……お疲れ様でした」
一連の奇行を完全にスルーした壬生狼組が言葉少なに立ち去って行く。
彼らとはまた共闘する機会もあるのだろうか、と八千華達は思いを巡らせるのだった。
作者:霧柄頼道 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2016年2月1日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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