●
クラブハウス『guardian angel』。
その薄暗い店内で、今夜も赤いライトとミラーボールの光が絡みあう。
大音量で刻む低音のビートは、途切れることなくダンスホールを満たしている。
かかっているのは、ダンスミュージック――なかでも、『トランスミュージック』と呼ばれる系統のものが多いようだ。
ホールでは若い男女が、音楽にあわせて思い思いに踊り続けていた。
「今晩も、ぶっ倒れるまで踊り明かそうぜ」
集まった者たちに語りかけるのは、ダンスイベントの主催者、DJ ECHO。
未来的なフォルムを描くサングラスにモノトーンの上下。
おそらく二十代ほどと思われる金髪の男だ。
金曜の夜からはじまるこのダンスイベントは、彼が企画し、彼が支配している。
このクラブに集まる者たちは、すでに彼の熱狂的なファンとなっていた。
毎週毎週、彼の音楽に揺さぶられるために集まり、夜が明けるまで踊り明かす。
その多くは会社や学校に行くことをやめ、日常生活を犠牲にしても、なおクラブに集まっていた。
「……オレたちの『守護者様』が力を得るためには、こんなもんじゃ足りねえ。もっともっと、ひとを集めないとな」
DJ ECHOはニヤリと笑うと、次に流す曲の選定をはじめた。
●
「ダークネス・ソロモンの悪魔。その『配下』の動きを察知した。ついては、きみたちに灼滅願いたい」
一夜崎・一夜(高校生エクスブレイン・dn0023)が、集まった灼滅者たちに向かって説明をはじめる。
配下が現れるのはクラブハウス『guardian angel』。
『ナイトクラブ』や『ダンスクラブ』といわれる、若者が集い、音楽を聴きながら踊り明かすダンスホールのひとつだ。
サイケデリックトランス、ゴアトランス等の『トランスミュージック』を得意とする小規模のクラブで、金曜の夜から土曜の朝にかけて毎週ダンスイベントを開催している。
「イベントを取り仕切っているのは、DJ ECHO(ディージェー・エコー)という男だ。ソロモンの悪魔を崇拝し、クラブに集まる者を堕落させ、やがては一斉に闇堕ちさせようとたくらんでいる」
灼滅者たちはこのダンスイベントに参加し、ソロモンの悪魔によって強化された一般人の対処を行うことになる。
「当日夜20時ごろ、イベントの開催時間前に乗りこんでもらいたい。参加者が増える前に、イベント自体を潰すためだ」
クラブハウスの扉には『CLOSED』の下げ札がかかっているが、扉自体は開いているので、そのまま入ってしまえば問題ない。
中にはDJの熱狂的なファンが数名と、クラブハウスの従業員、そしてDJ ECHOが居るはずだ。
戦闘が始まればDJのファンは灼滅者を敵とみなして襲いかかってくるが、彼らはKOすることで戦闘後に改心させることができる。
一方、クラブハウスの従業員とDJ ECHOはソロモンの悪魔によって強化されており、殲術道具を受け取った者たちだ。
特にDJ ECHOは魔法使い同様のサイキックを扱うこともでき、その戦闘力は灼滅者数名と互角になるという。
「彼らの処遇については、直接対峙するきみたちに判断を委ねたい。だが、強化一般人をも救おうとして、きみたちが危険な目にあうようなことは、できれば避けて欲しい」
ソロモンの悪魔は大量の闇堕ちを促す性質のダークネスだ。
一般人であれ、配下である以上、その対処は厳正に行わなければならない。
「きみたちの無事の帰還と、朗報を待っている」
一夜はそう告げると、灼滅者たちの背を見送った。
参加者 | |
---|---|
志倉・桜(中学生魔法使い・d01539) |
レニー・アステリオス(珀のバイブル・d01856) |
神鳥谷・千弦(一閃・d01862) |
神夜・明日等(火撃のアスラ・d01914) |
朽榧・オロカ(スケルトンライアー・d04798) |
黒御門・凜々子(幻想に咲く黒百合・d05833) |
リーンハルト・リーチェル(魔砲使いの弟子・d07672) |
コルネリア・レーヴェンタール(幼き魔女・d08110) |
●Wait a minute.
金曜日の夜、20時。
エクスブレインに指示されたビルの前に、灼滅者たちが集まっていた。
「クラブって初めて来るなあ……」
神鳥谷・千弦(一閃・d01862)が明滅する店のネオンサインを見あげ、感慨深げにつぶやく。
「おっ。えらい!」
お姉さんぶって褒めたリーンハルト・リーチェル(魔砲使いの弟子・d07672)の声に、口をとがらせる。
「当たり前だろ! 小学生なめんな」
腕組みをして尊大な態度で応える少年に非礼を詫び、リーンハルトは笑う。
「そういうボクも初めてなんだ。クラブハウスって、縁がないと行く機会ないよね」
ネオンの輝く繁華街。
平日の終わりを前にスーツ姿の会社員たちが夜を謳歌するそこは、どこか自分たちには場違いな空間のように思える。
「夜の街……私の知らない世界……」
アルコールの入った男がテンション高く通り過ぎていき、コルネリア・レーヴェンタール(幼き魔女・d08110)は胸元で固く手を握りしめる。
屋敷に閉じこめられて育った少女にとって、夜の繁華街はまさに未知の世界だ。
飛び交う怒声やクラクションの音ひとつにも身を縮め、緑の瞳をおどおどと周囲に向ける。
(「怖い……。けど、頑張らなくちゃ……」)
見るからに夜の街を歩きなれていないコルネリアをフォローするよう、レニー・アステリオス(珀のバイブル・d01856)はさりげなく側に立ち、車や人を避けてやっていた。彼にとっては、この程度レディーファーストのうちにも入らない。
地下へ通じる階段を降りながら携えた本を服の内にしまい、
「人間は楽しませたらイチコロだから、こういったイカしたクラブは効果的だろうね」
「もっとも、快楽につけこむのは許せないけど」と、冷ややかに笑う。
「中にいるのは、ソロモンの悪魔の配下なんですよね」
思慮深くつぶやく志倉・桜(中学生魔法使い・d01539)は、胸中では「負けられへん。絶対に勝ったる!」と意気ごむ。
黒御門・凜々子(幻想に咲く黒百合・d05833)はパーカーに埋もれた手に、スレイヤーカードを準備し、つぶやいた。
「配下とはいえ、まだ人間。……できることなら、手をかけたくはないな」
「一人でも多くのひとを、正気に戻したいわね」
神夜・明日等(火撃のアスラ・d01914)も頷き、続ける。
正直なところ、明日等には多数の一般人を交えた戦闘に不安があった。だが仲間に気弱なところを見せるわけにはいかないと、固く唇を引き結ぶ。
朽榧・オロカ(スケルトンライアー・d04798)は同行者たちの会話を聞きながら、首にかけていたゴーグルを装着。古ぼけたそれは光を反射し、硝子の奥の瞳を覆い隠した。
一同がスレイヤーカードの封印を解き終えたころを見計らい、レニーが皆に声をかける。
「さあ、はじめようか。今夜のダンスは、長くなるよ」
オロカは前衛を導くべく、『CLOSED』の札がかかった扉に手をかけた。
「それじゃ皆さん、よろしくお願いします。……切実に」
●Open the door.
クラブハウス『guardian angel』内。
薄暗い店内は、その日もいつも通り赤いライトで満たされていた。
ミラーボールはイベントがはじまってから回すつもりで、まだ動かしていない。
電子機器がセッティングされたステージ上には、イベントの主催者であるDJ ECHOの姿があった。
早々に集まった熱烈なファンたちが、DJを前に口々に話しかける。
「ECHO、今日は何をかけるの?」
「今週の新曲もかけてくれよ。あれで踊れたらサイコーだぜ!」
リハーサルがてら曲を回しながら、DJは「始まってからのお楽しみ」とはぐらかす。
従業員を呼び寄せ、飲み物でも頼もうとした時だ。
入り口の扉が勢いよく開かれ、見たこともない一輪バイクが飛びこんできた。
なにごとかと疑問を口にする間もなく、店内に銃声が響く。
音楽をさえぎるほどの轟音。
ステージに着弾し、火花が散った。
音楽は止まっていない。だが、いくつかの機材が損傷したようだ。
「くそッ」
バイクに続いて現れた灼滅者たちの姿を認め、DJはすぐに彼らが『守護者の敵』であると悟り、叫んだ。
「今すぐあいつらをブチ殺せ!」
明日等のライドキャリバーに続いて駆けこんだリーンハルトは、バスターライフルを構え、声を張りあげる。
「キミたちに正しい魔法の使い方、教えにきたよ!」
放った光線はファンの一人を貫いた。
「お願い、師匠!」
その足元をオロカの霊犬『師匠』がすばやく駆けぬけ、斬魔刀で一閃。
凜々子のビハインド『幽子』もすべるように移動してファンの前に立ちはだかると、DJを狙い霊障波を放つ。
DJはとっさにリングスラッシャーを分裂させ、攻撃を弾きかえした。
従業員3人の援護射撃を、ディフェンダーに立ったサーヴァントが身代わりになって受ける。
「おまえら! 全員ぶん殴ってやるから覚悟しとけよ!」
サーヴァントの影から飛びだした千弦は、叫びとともにファンのひとりを手加減攻撃で気絶させた。
「こっちもいくで!」
桜の声が響いた瞬間、天井にプリズムの十字架が輝く。
「……なんだ?」
「十字架?」
美しさに目を奪われたファンに向かい、数多の光線が降りそそいだ。
「いいかげん、目を覚ましなさい!」
続く明日等が2丁のバスターライフルを構え、円盤状の光線で複数のファンを一気になぎ倒す。
すぐに凜々子が駆け、体力を削った者に慈悲の一撃を繰りだし、気絶させた。
「これで半分くらい、かな」
混戦するダンスフロアにあって、オロカは光輪の盾をまとったDJを見据え、静かにガンナイフを構える。
「……踊らされるのは御免だから、踊ってもらうよ」
つぶやきとともに、たて続けに銃撃を放つ。
弾幕の一部がDJの光輪をすり抜け、その腕を貫いた。焼け焦げた傷跡が、赤黒く染まっていく。
一方、店内を満たす大音量の電子音を前に、コルネリアは苦渋の表情を浮かべていた。
コルネリアにとってなじみのある音楽といえばクラシックだ。それもほど良い音量で聴けばこそ、身体に響くほどの音量で響く音は、もはや『音楽』ではなく『騒音』に等しい。
「耳が……! 押しつぶされてしまいそう……!」
それでも戦い続ける仲間たちに気持ちを奮いたたせ、自らを覆うバベルの鎖に意識を集中させる。
コルネリアのナノナノ『ふぃーばー』が彼女の意志に応えるように、未だ立ちはだかるファンに向かってたつまきを放った。
レニーは傷を負ったファンに迫り、改心の光を使用する。
だが、ファンは何の変化もなくレニーに攻撃を仕掛けてきた。
ESP『改心の光』は通常の一般人に効果をなすものであり、敵の支配を受けている状態の彼らには効果がないのだ。
「手間が省けて、かえって助かるよ」
レニーはすぐさま方針を変え、鋭い回し蹴りでファンを気絶させた。
敵の支配を受けているとはいえ、ファンの攻撃はバベルの鎖に阻まれ、灼滅者たちにかすり傷を負わせるに過ぎなかった。
一同は体力を削ったファンを見定め、手順良く気絶させていった。
こうした初動からの迅速な行動と状況判断により、およそ2分が経過したころには、ファン全員の無力化に成功していた。
「みなさん、ごめんなさい……」
コルネリアはそうつぶやいたものの、ファンたちは幾人かが傷を負ったのみで、重傷の者は出ていない。
戦闘が終了すれば、敵の支配からも解放されるだろう。
一同は残るDJと従業員を見据え、改めて武器を構えた。
●Pray now.
ファンの制圧に引き続き、灼滅者と従業員、DJによる攻防が繰りかえされる。
できれば全員、手加減攻撃でとどめを――当初はそう考えていたが、相手はソロモンの悪魔によって強化された一般人たちだ。
彼らは『守護者』のために必要なクラブハウスを死守しようと、自ら殲術道具を手にしていた。
攻撃はためらうことなく、灼滅者たちめがけて放たれる。
踏みこんだライドキャリバー、師匠、幽子が従業員によって蜂の巣にされるのを目の当たりにし、千弦は銃撃を回避しながら思考をめぐらせていた。
対峙する者たちにも家族があるはずだ。正気に戻せるなら、戻したい。
そして救える命があるなら、できるかぎり救いたい。
だが、自分たちが倒れてしまえば、それこそ元も子もないのだ。
「……悪いが全力でいかせてもらうぜ!」
千弦はすぐさま縛霊手を掲げ、巨大な腕で従業員の一人を殴りつけた。
「好き勝手はさせない、から」
オロカの声を受け、師匠が六文銭射撃で他の従業員を牽制。
「『魔砲使い』の力、見せてあげるよ!」
続くリーンハルトの炎の本流が、従業員一人に叩きつけられる。
彼女とて、従業員やDJに殺意はない。伸べた手を握りかえすなら、その手を握りかえそうとも思う。
だが、サイキックは彼らの意思の代弁者ではない。
それはダークネスがあやつる超常的な力の総称であり、己の魂に眠るダークネスから引きだした力であり、万能の力ではないのだ。
炎はリーンハルトの意思に関わらず、在るがまま作用するべく、従業員の身を焼いていく。
「ちくしょう! これじゃイベントが台無しじゃねえか!」
燃える従業員の姿を前に、DJが咆えた。
七つに分裂させたリングスラッシャーを縦横無尽に撃ち放ち、前衛・中衛に立つ者たちを容赦なく切り刻む。
ふぃーばーがライドキャリバーにふわふわハートを飛ばし、さらにレニーが清めの風を招き、仲間たちの傷を癒す。
「みんな、無理しちゃだめだよ」
「思ってたより、結構しぶといんやな……」
おもわず桜の口から関西弁がこぼれたものの、口調を改める余裕はない。
炎を受けた従業員に迫り、サイキックソードで敵を斬り裂く。
「アンコールは、いらないわよ!」
明日等の漆黒の弾丸が追い撃ちをかけ、従業員の一人が倒れた。
倒れたまま、動かなかった。
薄暗い店内では、彼がどれほどの傷を負っているのかはわからない。
オロカは倒れた従業員を意識の端に追いやり、思考をフル回転させることに注力する。
一手先、二手先を読み、『正しい状況』に至るべく己の立ち位置を探る。
(「もとより、殺すことに迷いなんてない」)
慈悲を捨てさえすれば、最善の一手は自ずと見えてくる。
仲間たちがどうあれ、己はそれを貫くまで――。
オロカは手を掲げ、残る従業員2人とDJに狙いを定め、彼らの肉体から熱を奪う魔法を仕掛けた。
目に見えない異質な攻撃。
だが、わが身が傷つき、同胞が倒れてなお、敵は攻撃の手をゆるめなかった。
凜々子へ向かって放たれた凶弾を阻むべく、ビハインドが弾丸の進路上に身を投げる。
「幽子さん」
短く呼ぶも、己の成すべきことは、ただひとつ。
ビハインドの身に大きな銃創が穿たれるのを見やりながら、凜々子は手にした手裏剣を投げかえした。
いくつもの爆音が耳をつんざき、従業員とDJの悲鳴が響く。
気がつけば音楽はやみ、店内には戦う者たちの息遣いが聞こえるばかりだ。
コルネリアは予言者の瞳を宿した眼をもって、高純度に詠唱圧縮した魔法の矢を放った。
矢は従業員を貫き、2人目に倒れた彼もまた、そのまま動かなかった。
最悪の状況が脳裏をよぎり、灼滅者たちに緊張がはしる。
だがもはや、彼らには倒すか、倒されるかしか道は残されていない。
リーンハルトは喉の奥から、声を絞りだした。
「キミの悪い心を、灼きつくす……!」
噴出した炎が武器に宿る。
撃ち放った弾丸が、言葉どおり、DJの服を、身を、焦がしていく。
ライドキャリバーの突撃を避けた従業員をめがけ、桜はガンナイフを撃った。
弾丸は対象を追尾し、ひときわ強く弾ける。
続く明日等のデッドブラスターが、さらに傷を重ねていく。
千弦は縛霊手を振りかざし、豪腕をもって従業員を床に叩きつけた。
その手をどけた後、やはり、3人目の従業員も動かない。
「くそっ……!」
乱暴に眼鏡の位置を整え、千弦は最後の敵を見据える。
「死ねぇええええ!!」
倒れた者の生死を確かめる間もなく、DJの光輪が灼滅者たちに迫る。
光輪の合間を縫って、師匠の刀が閃いた。
オロカは最後まで己の務めを果たすまでと、再びガンナイフを構え、前衛を援護する。
コルネリアがマテリアルロッドを掲げ、雷を招いた。
「お願いです、目を覚ましてください……!」
雷に撃たれても、DJは灼滅者たちに向かって己の勝利を叫び続けた。
「俺たちには『守護者様』にもらった力があるんだ! 負けるわけがない!」
凜々子はそこではじめて、わずかに、眉根を寄せる。
「その力を与えたのは、『守護者様』なんかじゃない」
言葉とともに、両手に集中させたオーラをDJめがけて撃ち放つ。
「ここは『guardian angel』だ! 俺には『守護天使』がついてるんだ!」
オーラの一撃を受け、血反吐を吐きながら、DJは『守護者』を呼び、立ちあがる。
レニーはこれで最後と見てとり、眼前に手を掲げた。
「『天使』と『悪魔』の違いもわからないようじゃ、捨て駒にされて当然だ」
「そんな――!」
ふと思いだし、懐にしまった聖書を取りだす。
彼の皮肉を体現するように、その書物の中身は、ほとんどが白紙だ。
契約の指輪がきらめき、石化をもたらす呪いが発動する。
「さようなら」
DJの伸ばした手は空をきり、どっと床に倒れた。
彼は硬直したまま、二度と動くことはなかった。
●Close the door.
戦闘が終わってしばらくすると、気絶していたファンの一部が目を覚ましはじめた。
すでにソロモンの悪魔の支配は消えうせたらしい。
明日等と千弦が、必要な者に応急処置を施す。
傷の深い者はふぃーばーに頼み、癒した。
「そちらは、どうでしたか……?」
「DJはもう……。従業員も、2人は生きてたけど、ひとりは……」
コルネリアは生き残った者だけでも説得を試みるつもりだったが、彼らは傷が深く、話をできそうにないとみて断念した。
レニーは亡くなったDJと従業員の側にたたずみながら、携えた聖書を開こうとして、やめた。
そっと膝をつくと、ただ静かにその瞳を閉ざしてやり、形だけでもと、冥福を祈る。
店を出る前、凜々子はファンたちに言い聞かせた。
「今日のイベントは無し。……もしここに他の人が来たら、そう伝えて」
桜が最後に店を出て、その扉に『CLOSED』の札をかけ直す。
オロカは夜の空気を吸いこんで、ようやく、古ぼけたゴーグルを外した。
疲れた表情を見せる仲間たちを振りかえり、
「おつかれさまです」
と、笑顔を向ける。
張子の虎であろうと、なんだろうと。
今は、そうするのが『正しい状況』なのだろうと、考えて。
ネオンに輝く天上に、霞むように、月が出ていた。
満月の夜だった。
作者:西東西 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2012年10月5日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 11/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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