
●声まで変わって
新年度。桜舞う4月。
長年高校の教師をやっていれば、年一回の入学式も慣れたもの。
「……それじゃ体育館へ行く前に、軽く出欠だけ取るぞ~。呼ばれたら元気良く返事しよう」
それでもこの季節、まだまだ制服に着られた感のある初々しい新入生を見るのは良い。こちらまで若々しくなる気分だ。
「志堂~……あれ? 志堂・直美(しどうなおみ)~?」
点呼半ば。数度呼んでも返事がない。
教室内を見回すと、1つだけ机が空いていた。
初日から遅刻とは後で軽く叱ってやらねば、考えていると、大きな音を立てて教室の引き戸が開く。
「すいませぇ~ん! いろいろ準備してたらおそくなっちゃいました~!」
「……まって、ちょっと待って。ええと、君、誰? どちらさん?」
「誰って……やだ、センセ! 面接の時にお会いしましたよね? 志堂直美death☆」
「えぇ……?」
確かに志堂直美と言う少女を面接した記憶はある。
生真面目で、成績優秀。
地味、もとい物静かで引っ込み思案のきらいはあったが芯はしっかりした子……という印象だった。
……が、今しがた教室内に侵入してきた彼女は頭髪が真っ金金の、無駄に紅いルージュを引いて、はだけた胸元に、やったら短いスカート丈。
当時の面影はあるというか面影しか残ってない。
声も何か違う気がする。
頭の天辺から爪先まで完全に校則違反(アウト)であり、そもそもこの高校の制服は学ランかセーラー服であってブレザーでは断じて無いのだ。
しかし、そんな彼女の仕草は妙に蠱惑的で、見るたびに叱る気力も削がれていき……。
「ま、良いか!。ほら、早く席に座んなさい」
良くない。
●ナオミちゃんも年頃なんだから、もうちょっとお洒落に気を使ってみたら?
「……と言う親戚のおばさんの何気ない一言がそもそもの発端でした」
親戚のおばさんに罪は無いのですが、と、見嘉神・鏡司朗(高校生エクスブレイン・dn0239)は語る。
「その言に彼女も思うところがあったのでしょう。高校進学を機に一念発起し色々と試行錯誤した結果……はっちゃけてしまったようで」
はっちゃけてしまったらしい。
「粧(めか)し化けると書いて化粧と読みますが、彼女が本当に淫魔へと化けてしまう前に止めてほしい、と言うのが今回の依頼の大筋です」
鏡司朗は事件となる高校全域の見取り図を広げた。
本校舎は3階建て。特筆すべき点のない極々一般的な高等学校だ。
普通の高校にある施設・備品はこの高校にもあるだろうし、逆に普通の高校に無いような特別な施設・備品はこの高校にも無い。
最速で事件に介入できるタイミングは、彼女が教室の引き戸を開けた後。
「説得に関してですが、ストレートに正気に戻れと諭した所で、現状の廃……ハイテンションの前では逆効果でしょう。正気に戻る、イコール地味な姿に戻ると言う事ですからね」
ならばどうすればいいか。
「いっそ褒め殺してしまいましょう。手段は問いません」
エクスブレインは柔和な顔で鬼畜だった。
「『もっと目立ちたい! 綺麗になった私を見て!』と言うのが彼女の、あるいは淫魔の内なる欲求ではありますが、同時に『目立ちたくない! 恥ずかしい!』という相反する意識……理性も存在しています。『闇堕ちしかけ』ですからね」
そもそも素の彼女は容姿を褒められる事には今までの人生経験上慣れていないので、あらゆる手段を駆使して褒め殺してしまえば、気恥ずかしくなって正気を取り戻す糸口になるだろうと鏡司朗は言う。
言うが、それは無事彼女が正気に戻ったら恥ずかしさの余りもんどりうつ結果にならないだろうか。
「そういう行動がとれるのも、自意識があってこそでしょう。生きてさえいればいくらでも挽回は効きますし、笑い話にする事だって出来ます」
幸い、堕ちかけの彼女は蠱惑的に振る舞うが、一般人に手を出すつもりは毛頭無い。
見られたい、と言う内なる欲求が表に出てきてしまっている以上、人を払う行動は説得においてマイナスに働く。
今回は衆人看視の中で戦ったほうが良いと言う事だ。
直美のポジションはキャスター。サウンドソルジャー、魔導書と同性質のサイキックを使用する。
「この季節に散るのは桜の花弁だけで十分でしょう。可能な限り彼女の救出を、お願いします」
| 参加者 | |
|---|---|
![]() リュシール・オーギュスト(お姉ちゃんだから・d04213) |
![]() 百舟・煉火(イミテーションパレット・d08468) |
![]() 黒岩・りんご(凛と咲く姫神・d13538) |
![]() 四季・彩華(白き探求者・d17634) |
![]() 天原・京香(信じるものを守る少女・d24476) |
![]() 白臼・早苗(静寂なるアコースティック・d27160) |
![]() ウィルヘルミーナ・アイヴァンホー(白と黒のはざまに揺蕩うもの・d33129) |
![]() 伊万里・紗雪(やおいハンター・d36402) |
●視線
ウィルヘルミーナ・アイヴァンホー(白と黒のはざまに揺蕩うもの・d33129)がセクシー系アルバイト制服に身を包めば、生まれ持ったスタイルの良さが更に強調され、それはもう……皆の視線を釘づけだ。
(「今回の作戦に効果ありとは思いますが……や……やっぱりこの格好は恥ずかしい……です」)
彼女にとってそう言う視線にさらされるのはキツい。
が、若干の気持ち良さも感じる……のは気のせいだろうか。
灼滅者達が人の海を割り、件の教室の戸を開くと、そこに居たのはやや驚いた表情の志堂直美だ。
「まさか……私と同じか……それ以上の美力(オーラ)を持つ存在がいるなんて……!」
聞いた事の無い単語だ。勢いのまま即興で作り上げたものだろう。ハイテンションって怖い。
「そう……そういう事ね。なら良いわ」
どういう事なのか。
「ココは少し狭すぎる。誰がより美しいか、相応しい場所で決着をつけましょう!」
直美が何一つ此方の意図を理解していないと言う事だけはわかった。
さぁそれじゃあ行きましょうと、彼女は灼滅者達を校庭へと律儀に案内し始める。
……六名の灼滅者はラブフェロモンで周囲の一般人達を魅了した。
ならば魅了された一般人達の『視線』は当然、灼滅者へと注がれ……直美にとってそれは、自分への注目を阻む新たなるライバル出現的なイベントであり、より一層燃え上がる結果となってしまったらしい。
つまり墓穴を掘った事になる。
自ら進んで問題を大きくしようとする直美自身が、であるが。
●軟派作戦
なにやらイベントをやるらしいと聞きつけ、校内に居た一般人の大半が校庭に集合し、さながら文化祭か体育祭の様相を呈している。
「あ、そこより中は誰も入っちゃダメですよ?演技の邪魔ですから」
リュシール・オーギュスト(お姉ちゃんだから・d04213)が手際良く生徒達を誘導し、更に何事かと状況を把握しようと現れた教師陣を、
「先生……今日だけはブレイコウ? で許してあげて下さいね。子供からの精一杯のお願いです」
可憐な上目遣いで一発KOした。
仲間達が展開しているラブフェロモンで作られた場の雰囲気に飲まれたか。
黒岩・りんご(凛と咲く姫神・d13538)の思惑としては、あまり大騒ぎにならないように配慮したかった所ではあるが、致し方無いとみるべきだろう。
「ちょっと、やり過ぎた感あるかなぁ……」
伊万里・紗雪(やおいハンター・d36402)が呟いた。
戦場を教室内に限定するなら、おそらく遮音するだけで良かったのだ。
……が、今回、エクスブレインは人を集めればそれだけ不利になるとは一言も言っていない。
やや意図とは外れた状況だが、これはこれで優位に働くかもしれない。
(「高校デビュー……私は来年だけど、どうなるんだろう……?」)
白臼・早苗(静寂なるアコースティック・d27160)はふと思い耽る。
一年先の未来はエクスブレインにだって見通せない。
いつもは美目麗しい少女のような出で立ちの四季・彩華(白き探求者・d17634)が、エイティーンを使用すると大人の魅力たっぷりの凛々しい青年へと変じるように、現在とはまるで違う姿、違う口調になっている可能性もある。
意外な姿、と言えば、早苗から見て今の天原・京香(信じるものを守る少女・d24476)もそうだ。
派手なメイクに少し動けば下着が見えそうなスカート。露出の激しい上半身。
敢えて直美と同系統のギャルギャルしい姿に扮する京香。
「初見だけど、アンタの恰好レベチ過ぎ~。やっぱ見た目通りパリピなの?」
そして口調もこの時のために頑張って覚えたギャル仕様だ。
「……? えっ、あ、ちょ、ちょっと待って……う、うん! そうレベチ? でパリ……ぱりぴ!」
京香にギャル語で褒められて気を良くする直美だが、この間慌てふためきながらスマートフォンを取り出して一生懸命単語検索していた姿は見なかったことに……しない。
「もしかしてギャル語知らないカンジ?」
「知ってるし!」
知らなかったようだ。
「まあまあ! 言葉遣いは格好に伴っていずれついて来るモノ。そして今の志堂くんの姿は素晴らしい! 頭の天辺から爪の先まで洗練されたこのスタイル! キミだけのスタイルを完成させ貫き通す……実に美しいなあ、皆もそう思うだろう!」
『思う~!』
男装姿の百舟・煉火(イミテーションパレット・d08468)の言葉に相槌を打ったのは、外野で観戦している一般人の皆様方だ。
「えへへ~。そうでしょそうでしょ。もっとほめて~!」
勿論だとも。煉火は頷くと……直美を本格的にオトしにかかった。
「しかし美しいねぇ、写メ撮っていいかい? ……いや、写真どころではない。どうやらキミはボクの心を奪ってしまったようだ………」
跪いて直美の手を取り、真正面から彼女を見つめる煉火。
「あわ、あわわわわわ……」
男装だとはバレていないらしい。まさかナンパされるとは思いもよらず慌てふためく直美だが、ここで情けをかけると直美の為にはならない。
ので! 灼滅者達は一片の容赦なく更に美男子を投入する。
「その輝くような金髪も、バッチリ決めたメイクも、大胆に胸元を開けた独特のファッションも凄く素敵だよ、とても綺麗」
今回唯一の男性灼滅者、彩華の登場だ。
心なしか、いや、確実に、彩華の周囲は少女漫画の背景の如くキラキラ輝いている。
「こんなコが街中で歩いてたらつい声をかけちゃうし、クラスメイトだったら凄く嬉しいよ。だからもっと見せて、君のその美貌……僕も見惚れてしまうから」
発言まで眩い。大人の色香漂うと言うべきか。
「こら! 彼女はボクのものだぞ、離したまえ!」
「フ。選ぶのあくまで彼女の意志だよね?」
大人の余裕たっぷりに、彩華は煉火にそう返した。
「これは……いわゆる黄金の『私のために争わないで』シチュエーション……!」
二人の小芝居に乗り、ここぞと早苗が囃し立てる。
「……惜しいなぁ。これで全員男ならなぁ」
紗雪の発言は意味深だ。
果たして直美の答えは?
「棚上げ! 棚上げでお願いします!」
彼女の顔、もとい参考書から火が噴き出した。
彩華は間一髪抗雷撃で相殺し、煉火は跪いていた分一拍回避が遅れたが、寸前りんごが盾になり、事なきを得た。
「ふふ、照れる姿もとても可愛らしいですね」
敵意による攻撃、と言うよりは照れ隠しの『はずみ』であったらしい。
本人も参考書から炎が出て驚いている位だ。
「女の子ですもの、着飾りたい気持ちはわかりますよ……本人のキャラに合ったお洒落が1番だとは思いますけど」
言いながら、りんごは自らのダイダロスベルトをその身に纏う。
そして、神霊剣を呼び出したウィルヘルミーナが軽やかなステップで剣舞を披露すると同時……ふわり、と、柔らかな風が駆け抜けた。
●粧し化かすは
舞うは桜、戦ぐは金色の煌びやかな毛髪ばかりで、直美のスカートはどれほど彼女が激しく動こうと凄まじいまでに鉄壁だ。何たる理不尽な。
そんな逆境にもめげず、ガトリングガン・金陽の咆哮を繰る京香のスカートへ伸びるりんごの魔手。
「だからってこっちのスカートめくろうとしないの」
京香はツンだった。
「だってさっき、ちょっと一肌脱ぐとしましょうって……」
「今はそういう意味じゃなくて!」
「あれ!?、ギャル語忘れてる! 素が出てるよ」
彩華が京香にゆるりと突っ込むが、それだけの余裕があるのは敵対している直美の攻撃がそれほど激しくはない為だ。
自分を褒めてくれる人間を無下に扱う天邪鬼はそう居ないと言う事だろう。
「そこまで変われるなんて、すごい……!」
リバイブメロディをBGMに、そうですよね、と早苗が観衆に同意を求めると、外野からは歓声があがる。
ラブフェロモンの影響ではあるだろうが、そもそも直美本人が美人でなければこううまくは行かない。
「そんなお化粧、私にはできないなぁ……」
演技として褒めちぎっていたはずが、早苗の声色には僅かに感心の色が混じった。
内心で化粧に対する苦手意識を抱いていたからだろう。
自分で出向いて化粧品を揃えるのはいささか……敷居が高い。
「何だったらお姉さんがadviceしてあげるdeathよ!」
でもすっぴんでそこまで綺麗なら別にお化粧要らない気がすると、直美は早苗の目鼻立ちをじっと観察する。
「髪、綺麗に染まってますね……でも、折角のブルネットも勿体ない気がします。私、お姉さんの元の顔も見たいな」
リュシールがそう言った。
「そうねぇ。髪はいつの間にか染まってて、元の顔は……元の顔!? い、いやいや、それは」
「お姉さん、きっと美人ですよ。私、未来のオペラ女優が保証します!」
化粧とは、自分の顔を隠すためのものでもある。
それを剥がせと暗に勧めたが、未だ中々にガードが堅い。
●もっと自然に
「勿体ないなー。顔立ちがええから、それを活かさんと!」
直美の放った光線を回避しつつ、メイク道具片手に紗雪が彼女に迫る。
直美は一旦拒絶するものの『綺麗になりたくないん?』と殺し文句を言われればぐぅの音も出ない。
「関西のおばちゃんみたいなメーク、あかんあかん! もともと美人さんやから、それを活かさな! 勿論、肌の調子も整えて……」
お肌は第一にいたわるべきもの。メイク以上にスキンケアは重要なのだ。
「テレビに出るわけじゃないんやし、違和感のないメークじゃないとやなぁ……ほら、こーしてマスカラ使って――リップクリームで乾燥防いで。ちゅーしたくなる唇でないとな……こんな風になぁ」
「!?!?」
直美は驚いているが、なんのことは無い。
ちゅーしたくなる唇になったから紗雪は軽くちゅーしただけだ。全く問題の無い全年齢的な行為に過ぎない。
「ハイ完成~。あれやね! 一緒に連れだって可愛い服見るのも、ええかもしれんなぁ」
そんなこんなで、紗雪プロデュース・直美の仕上がりは……。
「うん。やっぱり今の私みたいな派手なメイクじゃなくて、そっちの方が可愛いし、皆に好かれるよ」
「やっぱりメイクは、……ナチュラルメイクが一番だと、思う」
京香と早苗からは好評で、
「可愛いなぁ――同性としても、魅力感じるわぁ。美人やんな!」
「ええ。直美さん、もともと素材もいいですし、惚れてしまいそうです♪」
紗雪とりんごからは大好評だった。
そして校庭に湧き上がる美人コールは、収まる気配を見せない。
「わたくしの手で、もっと可愛くしてあげたいですね」
りんごは蠱惑的な仕草で直美に迫り、そのまますっ、と妖しい手つきで彼女の頬を撫でる。その感触は柔らかく、心地良い。
「このまま妹にしちゃいたいくらいですわ……♪」
密やかに言の葉を囁くりんごの唇は直美のそこに急接近し……。
「妹か……ええなぁ、それ……ほら、この花、良かったら受け取って欲しいねん」
紗雪からは花束……フェアリー・ホワイトを手渡され……。
「たた、タイム!」
先ほどのナンパもそうだが、この手の事には疎いと見える。
直美は二人の魔手から逃げようとしたが、突如として現れた第三の魔手が彼女を掴む。
衆人環視に当てられたのか、蕩けた淫魔の如く爛々と眼を輝かせるウィルヘルミーナの姿がそこにはあった。
「アナタ、中々いい素材を持ってますわ。私のこの服と取り替えっこしてみません?すごく似合うはずですわ」
「い、いや、こんな場所で着替えは!」
いつの間にかウィルヘルミーナのテンションと直美のそれは逆転していた。逃げ場は無い。
「皆様も見てみたくありません?」
問答無用の見たいコールアンド美人コール!
「駄ー目ーでーすー! 学生の本文はお勉強! 不純異性交遊も不純同性交遊もちゅーも取り換えっこもこんな大勢の……前……で?」
散々に褒め殺されて、ようやく熱も引いたらしい。
後に残ったのは茹蛸の如く真っ赤になった直美の姿のみ。
「……指摘されたら素直に頑張ってみて、初めてのお化粧を一生懸命お勉強して、遅刻しちゃう位時間をかけて…お姉さん、本当に誠実で真面目な人なんですね」
賞賛に値すると、リュシールは本心からそう思う。
彼女が真面目の有難味を知らない人間ならば、決して正気を取り戻すことはなかっただろう。
「……ね、皆さんも判りますよね? 変わってみようって頑張る気持ち」
リュシールは縛霊手で淫魔を絡めとり、
「ああ。分かるよ。 ボクも志堂くんと同じく高校デビュー勢でね。中学までは地味で真面目で校則もきちんと守って……ずっと変わりたいと思ってた。だから変わった」
煉火は優しく、諭すような口調で無彩の長槍を傾ける。
「高校デビューの先輩から言わせて貰うとな、飾っても急に作ったメッキはいずれ剥がれるんだよ。ま、その頃にはキミは自分だけのスタイルを見つけてるだろうけどな!」
螺穿の一撃で直美の悪しき部分を貫くと、長槍に飾られた織布は虹の如き残像を描き出し……桜が吹雪いた。
すべてが終わり、周囲には入学サプライズイベント、と銘打ち逃げ切る事にしたが、これで何処まで誤魔化し切れるかは解らない。
願わくば早々に忘れ去ってほしい。
「……勢いで押し通しちゃった、なんか今更……恥ずかしい」
そう恥ずかしがってる早苗の横で盛大にもんどりうってるのが直美である。
「きっかけがどうあれ、人を引き付ける魅力を認識できたのは良い事かもしれません」
ウィルヘルミーナはそう直美をフォローしたが、
「あうぅ。し、死にたい……」
立ち直るには未だ時間が必要そうだ。
衣を正し、舞台化粧は一端落としましょう、とリュシールがクリーニングを施してくれたお陰もあって、先程までとはまるっきり別印象だ。声質も変化、否、元に戻っているのだろう。
「……派手にアピールしたい気持ちも分かるけど……」
「素のままの直美さんも十分魅力的ですよ。もちろん……貴女も」
早苗の言葉をりんごが引き継いだ。
「まぁ、ね」
化粧を落とした頬をかきながら、まんざらでもない様子で京香は笑む。
「綺麗に化けるのも大事だよね。でも、ありのままの自分も大切だよね」
彩華はエイティーンを解き、青年の姿から飾らない少女のような姿に戻った自分に誇りを持ち、直美へ語る。
「直美ちゃん、素顔の君もまた綺麗だよ。そして、君の力は皆を守る力……一緒に学園に来ないかい?」
「うぅ……こんな大騒ぎを起こした以上、それはむしろ望む所ですが、貴方達は、一体……?」
そう言えば、ちゃんとした自己紹介もまだしていなかった。
雰囲気に呑まれていたのは一般人だけでは無かったらしい。
灼滅者たちは顔を合わせ……はにかんだ。
「遅れてごめんなさい、私たちは灼滅者。そして私はリュシールって言います……あの、後でどこかでお話できません? お化粧の事もそれ以外も…お話したい事、色々あるんです……」
| 作者:長谷部兼光 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
![]() 公開:2016年4月13日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 7/キャラが大事にされていた 2
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