永久の眠りを

    作者:長谷部兼光

    ●炎の終わり
     逢魔が時の鶴見岳。
     朱に染まる山の頂で、一匹の炎獣が沈みゆく夕日をじっと見つめていた。
     艶やかな金色の毛並みがそよぐ。
     心地よい風に身を委ね、金色狐の脳裏を過るのは四季の景。
     気の向くままに山野を駆け、花鳥を愛で、誰も知らぬ秘湯に身を浸す。
     悠々とそんな日々を過ごすのも悪くなかったが、しかし、『時』は来たのだ。
    (「ならば、この身、ガイオウガと一つになる事に何の躊躇いがあろう」)
     金狐が吠える。
     遠吠えは山々に木霊して、それが何処にも聞こえなくなると、金狐の周囲には無数の火球が生まれた。
     無数の火球が、雨の如く金狐に降り注ぐ。
     自ら生み出したそれを全て受け、金狐はやがて息絶える。
     すると金狐の骸は一塊の炎に変じ、大地に染み込んで、
     後にはただ、夕陽だけが残された。

    ●自死か灼滅か
     見嘉神・鏡司朗(高校生エクスブレイン・dn0239)は語る。
     サイキック・リベレイターによるガイオウガの復活を感じ取ったイフリート達が、鶴見岳に向かっている。
     鶴見岳に辿り着いた彼らは山頂で自死し、ガイオウガの力と合体しようとしているようだ。
     イフリート達が、ガイオウガと合体を繰り返せば、ガイオウガの力は急速に回復し、完全な状態で復活してしまうかもしれない。
     件の狐も、その為に鶴見岳へと訪れたものの一体だ。
    「これまでひっそりと誰も近づかない山奥で暮らしていたようで」
    『この日』の為に、他勢力との衝突を極力避けていたのかもしれない。
    「彼女の目的は穏やかなる死……つまり、ガイオウガとの合体。こちらがそれを阻もうとすれば全力で抵抗するでしょうし……」
     阻まなければ言葉を重ねる事も出来るだろう、と鏡司朗は言った。
    「……そうですね。あえて過去の宿敵達の言葉を借りるなら、『絆』や『縁』を結ぶ余地がある、と言う事です」
     彼女の自死はどうあれ避けられない。
     イフリート達はそれが極々自然な行動だと認識している。
     だが、合体してガイオウガの一部となるイフリートは、その経験や知識をガイオウガに伝える役割もあるらしく、イフリートと友好な関係を築けたのならば、ガイオウガへの伝言を頼み、敢えて阻止せずにガイオウガとの合体を行わせる……と言う選択肢もありうる。
    「中々に難しい話ですが、不可能ではありません。何せあなた方には過去、イフリートと『それら』を結んだ実績があるのですから」
     この作戦をとる場合、イフリートと接触した後、友好を深めたり、伝えたい内容を確実に理解してもらうといった準備が必要となる。 
     ただし、彼女に言伝を頼む事は可能だが、彼女から情報を引き出すことは出来ないだろう。
     鏡司朗は地図を広げ、炎狐と接触出来るポイントを指し示す。
     場所は鶴見岳中腹。ここで接触しなければ、灼滅するにしろ、友好を深めるにしろ、意図しない状況に陥る可能性が高い。
     戦闘の際、炎狐のポジションはスナイパー。
     天星弓、ファイアブラッドと同性質のサイキックを使用する。
    「どちらの選択肢にも正誤の別はありません。かの炎獣へどのようなアプローチをかけるかは、実際に接触する貴方がたにお任せします」
     どうか悔い無き選択をと、鏡司朗はそう締めくくった。


    参加者
    彩瑠・さくらえ(弦月桜・d02131)
    迅・正流(斬影騎士・d02428)
    リュシール・オーギュスト(お姉ちゃんだから・d04213)
    文月・咲哉(ある雨の日の殺人鬼・d05076)
    淳・周(赤き暴風・d05550)
    木元・明莉(楽天日和・d14267)
    明待・唯(芍華燃ゆ・d20932)
    厳流・要(溶岩の心・d35040)

    ■リプレイ

    ●こんないい日に
     自死、と聞いて良い印象を抱く事は難しい。
     ましてその為に山中を彷徨する輩なら、往々にして失意や負念を漂わせている物だ。
     だが、灼滅者が邂逅した炎獣・金色狐はその身しなやかに、個の自信と種族の誇りを持って翳りなく、何より精気に満ち満ちていた。
     合体・統合。『幻獣種』故のものなのか、スサノオと在り方が似通っているな、と淳・周(赤き暴風・d05550)はふと思う。
     しかし……イフリート達が自らを捨ててまでも蘇らせたいと渇望する首魁・ガイオウガ。
     どれほどのカリスマや、あるいは力に溢れた存在なのだろうか。
    「こんにちは。今日は綺麗な空ですね」
     リュシール・オーギュスト(お姉ちゃんだから・d04213)達灼滅者は、見えた金狐に一礼する。
     ごく自然体で、群れて戦に来たとは見えぬ様。
    「おや。狐の姿を見て怖気づかぬとは何とも鷹揚な。さて、尋常の者では無いと見るが、如何か」
     何者か、と金狐は問うた。
    「初めまして、だな。俺達は灼滅者……だが、貴女とは戦いたく無いんだ」
     文月・咲哉(ある雨の日の殺人鬼・d05076)の言に、金狐は実物を見るのは初めてじゃとつぶやいた。
    「ガイオウガとの融合も邪魔したくない。ただその前に少しの間、穏やかに話をさせてくれないだろうか。俺達の事を知って貰った上で、ガイオウガへの伝言を頼みたいんだ」
     ほう、と金狐は目を細める。
    「そう。俺達はアンタを邪魔しに来たわけじゃない」
     咲哉の言葉を継いで、深呼吸を一つした後、厳流・要(溶岩の心・d35040)は語る。
     イフリートの灼滅には何度か関わったが、今回のように面と向かって話をするのは初めての体験だ。
     眼前にあるのは、見定めるような金狐の視線と、澄んだ圧力。
     それらに曝され身体が少し、強張る。
     緊張は脚部に伝播して、膝が微かに笑う。
     半人前の自分が情け無いと胸中でごちながら、それでもなるべく物怖じせず、かつ敬意を持って話そうと、腹を据えた。 
    「ガイオウガの力を狙って他のダークネスが動いてる。俺達はそいつらの襲撃を警戒してるんだ。護衛ってわけじゃないけど、同行させて貰えないか?」
     無用な衝突を避ける性格なら、此方も同じ気持ちだと判ってくれるはずだ。
    「その通り。以前ガイオウガの力を奪ったご当地怪人アフリカンパンサーを初め、スサノオの姫・ナミダや、ソロモンの悪魔達もガイオウガの力を狙っておりますれば……」
     迅・正流(斬影騎士・d02428)は、右の手刀で自身の左掌を切り裂いいた。
    「炎血の同胞として、彼奴等にガイオウガの力を渡す事はできませぬ!」
     その傷口から溢れ出るのは、即ち真っ赤に滾る炎血(ファイアブラッド)。
     同じ炎の血が流れる者同士、是が非でも友好を結ばねば。
     そんな思いが正流にはあった。
    「……左様か」
     しばらく正流の炎血をじっと眺めていた金狐は瞼を落とし、ゆっくりと頷くと、
    「しかし」
     目を見開き、
    「謀られまいぞ!」
     炎が、爆ぜた。

    ●触発
     狐の金毛すべて逆立ち炎を纏うと、周囲の空気は熱を孕み、歪む。
    「主らが我が一部の朋輩達と友誼を結んでいる事は承知しておる」
     だが、と金狐は灼滅者達を睨めつける。
    「我らが悲願、ガイオウガの復活を再三再四阻んできたのもまた主らであろう!」
     それが此度に限ってなんの邪魔も成さぬとは余りに甘言!
     金の狐は燃え盛る。
    「敵ではない。阻まない……口先だけでは何とでも言えよう。ならば、『何を以って』その証とする?」
    「勿論、『何も持たずに』」
    「……何?」
     木元・明莉(楽天日和・d14267)が金狐に翳した掌中にあるのは灼滅者の生命線、スレイヤーカード。
     それは本来の機能通り灼滅者達の武器と、防具と、アクセサリーと、サーヴァントを封印し、日常生活を送るに不必要な身体能力を抑え込み――。
    「武器は当然持っている。けど、話をするには必要無いから仕舞ってる」
     この場にいる灼滅者全員は、文字通りの無防備だった。
    「何を、ばかな。そんな物は唯の狂言に過ぎぬ」
    「……戦う気は最初からないよ。君達のやりたいと思うことを邪魔したいなんて思ってないから」
     信用できないなら、僕らに攻撃して確かめてもいい。
     彩瑠・さくらえ(弦月桜・d02131)はそう金狐に促した。
    「それくらいの気持ちでこの場にいるからね」
     それが証になるのなら、と。
    「良かろう。ならばその、人の容(かたち)の化けの皮、我が焔にて灼いて滅してくれようぞ」
     金狐の纏う炎が一点に集まって、高熱量の火球を形成する。
     防具を持たず武器を携えず。
     一度当たれば大怪我どころでは済むまいが、それでも灼滅者達は武装しない。
     友好を深めるのに失敗したとても、灼滅しないと事前に決めた。
     だからもう一つ、深手を負う覚悟程度も決めてしまわねば、以後、以前、灼滅者達の全ての発言が、金狐の言う甘言に過ぎなくなってしまうだろう。
     周は元より相手を傷つける効果のあるサイキックを一切活性化せず、明待・唯(芍華燃ゆ・d20932)は迫る巨大火球から仲間を庇い……。
     果たして火球は……灼滅者達を一切掠めず、夕焼け空にほどけ、そして消えた。
    「全く、不可解な。主らには狐に対する敬意がある。不意を討つ機会は幾らでもあったのに、終ぞ、そうせなんだ。ならば狐も、敬意を持って主らに接しよう。他を見下して得る誇りなど、誇りとは呼べぬが故に」
     この不可解さを解消する為には、主らの事を知らねばならぬ。
     故に仔細を話せと金狐は言った。
     死出の道行きに、一つの曇りもあってはならぬと。
    「一つの事柄に向けて、個々のやり方は違えど気持ちは同じ、それが俺達だよ」
     明莉が、人間は個々に様々な考えを持っている……種族的な『当たり前』の基準が違うのだと伝えると、金狐は若干、首を傾げた。
    「ふうむ。紆余曲折こそが人の粋であると? 面白い」
    「……歩きながら少しお話できませんか? それ以外邪魔はしませんし、見られたくなければあなたの最後の姿だって見ませんから」
     本当に、全く後悔のない穏やかな死出ならば、リュシールは金狐に対し敬意さえ覚える。
    「時間少ないけど、ちょっとでも仲良くなれたら良いなって。仲良くなれば、むやみに傷つけ合おうとか、思わなくなるよね、お互いに」
     金狐が此方に興味を持ったように、唯も金狐に興味がある。
     意思の疎通ができるなら、山、花、鳥、虫……色々な事柄を金狐に話したり聞いてみたい。
    「……要するに俺達は、アンタと友達になりたいのさ。どうかな」
     要の提案に、それは構わぬと金狐は頷く。
    「炎血の、勇ましき騎士殿が居るのなら、我が道行きも安全じゃ」
     金狐はそう言って、正流へ柔らかく笑んで見せた。

    ●道行き
    「そう言えば、アンタの事は何て呼んだらいい?」
     要がそう尋ねると、金狐はさてどう答えたものかと窮す。
    「主らに名乗らせておいて狐が名乗らぬのは無礼に当たるか……しかし、困った。名などとうの昔に忘れて来た」
     不便ならば好きに名を呼べばいいと金狐が言うので、では此方で付けさせて頂きます、と正流が挙手した。
    「金(きん)と狐(きつね)で、『き』が二つあったので『嬉々(キキ)』は如何ですか? 良ければ以降はキキちゃんと呼びます」
    「……名前には特に異論がないが、ちゃん付けはやめよ。あくまでも、あくまでも感覚な話だが、ぎりぎり……きつい」
     精神年齢的にか、肉体年齢的にか、それはわからないが、今まで出会ってきたイフリート達よりも、彼女は少し年上なのかもしれない。
    「じゃあ嬉々さん。好きなものって何かある?」
     伝えなきゃいけないことは全部先輩たちが言ってくれる。
     唯もそれに異論はなく、あまり色々言って混乱させるのも悪かろう。
     ならば自分は他愛ない話をと、唯は嬉々に話題を振った。
    「炭酸」
     おそらく炭酸泉の事だろう。
     天然の炭酸泉は秘湯中の秘湯で、希少なものであるという。
     間違っても炭酸飲料の事ではあるまい。
    「じゃあ嫌いなものは?」
    「炭酸珈琲」
     ……この狐、山奥でひっそり暮らしていたと言うが、存外に俗っぽいのかもしれない。
     金狐の仕草を観察していたさくらえの口元が、思わず綻んだ。
     そのまま不意に金狐と目が合い、笑み返す。
     こんな細かな嗜好の話も、言葉を重ねなければきっとわからないまま終わっていたのだろう。
     唯としては山トークや虫トークには自信があったが、これは想定外だ。
     だが、金狐が楽しければそれでいい。
     最後くらい、楽しい話で旅立ってほしいと思うものの、会話を重ねるたびに情が沸き……少し寂しい。
     エゴ、だろうか。
     一歩、また一歩と地を踏みしめるたび金狐は死に近づく。
     しかし、夏の夕暮れはどこまでも穏やかで……。
    「この辺は春の桜や秋の紅葉、冬の霧氷も綺麗らしいが、日の力を存分に浴びた夏の木々も力強くていいもんだな」
     それでも、交流を楽しみながら互いを記憶に刻みたいと咲哉は思う。
     そんな咲哉の胸中を知ってか知らずか、嬉々は若い身空で良い感性じゃと上機嫌だった。
     種族が違うにも関わらず、景観談議に花を咲かせられるのが嬉しくて仕方がないのだろう。
    「嬉々はどんな景色が、どういう所が好きなんだ?」
     もう少しだけ、金狐自身の話を聞いてみたいと周は問うた。
     炎獣の目に映る世界とは、一体どのようなものなのだろう。
    「夏も良いが、狐が一番好きなのはやはり秋じゃ。全ての命が赤く燃え、燃え尽きて、次代へと繋がる種を残す」
     嬉しそうにそう語りながら、金狐はため息を一つついた。
    「……時折な、それがひどく羨ましく見える。人は勿論の事、草花や虫たちが行う当然の営みが、我らには出来ぬのだ」
     微かに項垂れる金の毛並みを、リュシールは優しく撫でた。
    「あの、嬉々さん。歌ってお好きですか?」
    「ああ、詩吟くらいは嗜むとも」
     花鳥風月全てを愛でるには、それに見合う語彙と声量が必要だと金狐は言った。
     他のイフリートより彼女が流暢なのは、そのせいだろう。喋り慣れているのだ。
    「ひとつ、鳥の囀り代りに道々聞いていきません?」
     荒らすこと、殺すこと。彼女もまた、それより愛でることが好きならば、依頼とは別に、叶う限り丁寧に送りたい。
     そう想いを込めてリュシールが歌うのは、彼女の故郷の歌。
    「外の国の歌か。詩の意味までは分からぬが、いい音色じゃ」

     異郷の歌に耳を委ね、金狐が辿り着くは九合目。
     金狐の命もあと僅か。
     さあ、と金狐は灼滅者達に促した。 
    「此処までの旅路の礼じゃ。それに『兆しなく』『時』が来た礼でもある。ガイオウガに伝えたき事があるのだろう?」
     恐らくは、灼滅者がイフリートより先んじて鶴見岳にいた時点でうすうす感づいていたのかもしれない。
     故に不可解だ、と。
    「……灼滅者は人間だ。だから俺達武蔵坂学園は、人への被害を抑える為に行動している。もしガイオウガの行動で多くの人が苦しむなら、俺達はきっと見過ごせず対処に向かうだろう。だが、逆に被害を抑えられるなら、戦わずに済むかもしれない」
     これまで幾多の難題があった。
     それら全てを最善手で乗り越えられて来た訳ではない。
     だが、咲哉の語る武蔵坂の理念は決して揺らぐ事は無く。
    「……あなたからガイオウガさんに伝わって欲しいんです。私達は知りたいって……あなた達が何をしたいのか、ダークネスって何なのか。時雄校長以外の視点でも」
     力を失い、エクスブレインとなったラブリンスター。
     同胞の死に涙したファフニール。
     並のダークネスより悪辣な人間、ミスター宍戸。
     校長が明らかにした情報だけでは、リュシールの疑問は氷解しない。
     故に知りたい。戦うべき相手をより正確に定められる様に。
    「だから、ガイオウガが復活したら一回話してみたいんだ」
     周は続けた。
     現時点では情報が少なすぎる。
     価値観は違うだろうが、ガイオウガの気性を知る機会があれば妥協点を探って殺し合わずに済む道を選べるかもしれない。
    「『灼滅者であっても、ダークネスとの共存の道を模索している者が居る事』をどうか覚えていて欲しい」
     咲哉の言葉を一言一句漏らさず聞いた狐は朗らかに笑むと、
    「さて、一介の女狐にはその様な難しい話の結末は分からぬ。しかし……」

    ●穏やかなる死
     山の頂。
     全てを照らす太陽はその半身を地に沈めながら真っ赤に輝き、
     人も、闇も、木々の区別すらなく、全てが一つに調和したその光景は、
     ――唯只管に美しかった。
    「狐は一時全てを忘れ、この景色を主らと見たいと思った。それを答えとしよう」
     十二分だ。
     しかし、明莉個人としては、共存を肯定出来ない。
     ダークネスと灼滅者は相容れないと考える。
     共存を肯定したら、知合いの闇堕ちをも肯定しなければいけなくなると思う。
     真に共存が成し得るとしたら、それこそ両者が何の力も持たぬ『人間』に回帰する必要が有るだろう。
     そんな世界を明莉は望むが、現状、その方法が存在し得ないことも重々承知している。
     だが。『一つの事柄に向けて、個々のやり方は違えど気持ちは同じ』なのだ。
    「……俺は、色んな想いが混ざって迷う、そんな人間の『当たり前』が好きだから一般人を守る」
     だから明莉は金狐に託す。
     ガイオウガを狙う勢力の情報と共に『無暗に敵対せずに共存する道を共に模索したい』と。
    「僕はこう思ってる。君の望む路があるなら、真っ直ぐ進めばいいって」
     あの時さくらえが結んだ翠色に輝く縁は今、この時に確りと繋がっていて、
    「君が想う事も、今からやろうとしている事も、君が、イフリートの誇りと強い意志で望んでいる事なんだろう? なら、僕にはそれを止める権利はない。見届けたいんだ。君の望んだ選択と、その先を」
     だからこそ。これはさくらえが望んだ選択でもあり、その先の路はあらゆる縁と交わって続いていくのだろう。
    「ガイオウガに伝えてくれないか? 『共に歩む道を一緒に探せないか』………俺達は友達になれないかって」
     しかと伝えたい言葉ならば、何度繰り返しても惜しくはない。
     要が握手を求めると金狐は満更でも無さそうに、人の形をとった。
     逆光を背負い、陰になって良く見えないが、年の頃は恐らく十の後ろか二十の前か。
     握手が終わると同時に日が沈み、和装の女性は再び狐の形に戻る。
     最期にガイオウガ『に』伝えたい言葉があるか、周が金狐に尋ねると、金狐――嬉々は驚いた後、はにかんで、
    「……そうさな」
     彩瑠・さくらえ。
     迅・正流。
     リュシール・オーギュスト。
     文月・咲哉。
     淳・周。
     木元・明莉。
     明待・唯。
     厳流・要。
     灼滅者達の名を一言一句違わずに唱え、破顔した。

     主たちは、狐に望外の結末をくれたのだ、と。

    「話、聞いてくれてアリガトウ」
     唯は静かに炎を見送り、
     正流は一人涙する。
     
     さよならは言わない。
     ガイオウガ復活の暁には、
     また、『友』として。

    作者:長谷部兼光 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年7月20日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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