肉球戦隊・猫レンジャー!

    ●漁港の町で
     園観・遥香(天響のラピスラズリ・d14061)が仲間たちを連れてきたのは、関東地方のとある小さな漁港の町だった。
    「漁港の町に野良猫さんはつきものですが、この町の猫さんたちは特に逞しいのだそうです」
     町にまことしやかに伝えられている噂によると、市場や台所の魚をかっさらうのはお手の物、港で荷揚げ中の魚を群で襲い一籠分のアジを攫っていったとか、鴉の群を一睨みで追い払ったとか、夜中のお寺で盆踊りをしていたとか……。
     それらの噂の真偽はさておき、何せ世間は猫ブーム、ワイルド且つ賢い野良猫たちの都市伝説は、段々とエスカレートしていった。
    「そしてついに、天敵である犬さんを襲うようになりました」
     お盆前あたりから、各家庭で屋外飼育されている犬が、猫の群に襲われる事件が毎晩1件ずつ起きているという。
    「噂をまとめたところによると、群は相当大きな猫が5匹のようです。そしてここからはホントに与太話っぽくてアレなのですが……」
     遙香はびみょーな表情になって。
    「猫たちは『我々は、肉球戦隊・猫レンジャーにゃん!』と名乗ったというのです」
     ……猫の敵である犬をやっつける正義の味方を気取っているのだろうか。
     遙香は気を取り直すように町内の住宅地図を仲間たちに配った。赤い×と青い〇印が幾つもつけてある。
    「赤印は襲われてケガをした犬さんのお家、青印はまだ被害にあっていない屋外飼育の犬さんがいるお家です。それで、地図を見てもらうとわかると思うのですが、3丁目のあたりはまだ被害が出ていません」
     この地図、遙香が歩き回って調べた成果である。
    「なので、今夜あたり3丁目に猫レンジャーが出没する可能性が高いと考えられます。3丁目界隈を我々でパトロールし、もし猫レンジャーと遭遇したら退治しようと思うのですが、いかがでしょう?」
     仲間たちは力強く頷いた。
    「ありがとうございます……被害に遭った犬さんの傷の具合や、町の噂によると、猫たちは強力な肉球パンチを使ってくるようです。当然、鋭い爪も武器にしているでしょう。更に、犬さんを錯乱させる妙な術を持っているんじゃないかという噂もありました」
     しかも遙香が調査している間にも都市伝説はどんどんエスカレートしており、つまり猫レンジャーのパワーも高まっているかもしれないという。
    「それから分かっていることは、猫レンジャーはそれぞれ柄が違うようで、三毛、トラ、黒、白、そしてスコティッシュフォールドっぽい子だそうで……」
     遙香はつい5匹の猫を思い浮かべてしまったのだろう、うっとりと言葉を途切れさせたが、すぐにハッと我に還り、
    「と、とにかくですね、猫レンジャーの活動をやめさせないと、犬さんの被害が広がるばかりか、せっかく平和に暮らしている普通の野良猫さんたちにも影響が及ぶと思うのですよ」
     いよいよとなったら、町民が野良猫の駆除に踏み切ったりするかもしれない。
    「そんなことにならないよう、どうか力を貸してください!」


    参加者
    志賀野・友衛(大学生人狼・d03990)
    小鳥遊・優雨(優しい雨・d05156)
    備傘・鎗輔(極楽本屋・d12663)
    竹尾・登(ムートアントグンター・d13258)
    園観・遥香(天響のラピスラズリ・d14061)
    富山・良太(復興型ご当地ヒーロー・d18057)
    秋山・梨乃(理系女子・d33017)
    栗須・茉莉(助けてくれた皆様に感謝します・d36201)

    ■リプレイ

    ●3丁目のパトロール
     夜更けのとある港町3丁目を、2人の女子がパトロールしていた。
    「園観ちゃん先輩、猫レンジャーは誰がリーダーだと思う?」
     歩きながら問いかけたのは、秋山・梨乃(理系女子・d33017)。彼女の頭の上にいるのはウィングキャットのミケ。
    「私はスコティッシュフォールドだと思うのだ。それ以外はニホンネコにも居るからな」
     後輩の問いかけに答えたのは、園観・遥香(天響のラピスラズリ・d14061)。
    「園観ちゃんもリーダーはスコティッシュフォールドだと思います。想像しただけで……うっ、かわつよい!」
    「うん、確かに猫さんは可愛い。うちのミケも可愛い。だが、犬イジメをするような悪い子にはお仕置きが必要だな」
    「そうですよね!」
     と頷きつつも、遙香のポケットには猫じゃらしとマタタビが入ってたりして。
     いやもちろんそれだけではなく、一斉メールとGPSアプリを仕込んだスマホももちろん入っている。他3班の仲間たちも同じように仕込んだ携帯を持っており、通信の準備は万端だ。

    「ここの犬さんは大丈夫そうだね」
     鰹節を吊した竿を肩に、竹尾・登(ムートアントグンター・d13258)は地図に青丸印が付けられていたお宅の庭を覗いている。フェンスの向こうでは、大きな白い秋田犬が、わざわざ犬小屋から出てきて尻尾をふりふりニコニコしている。愛想がよくて可愛いが、番犬にはならなそうだ。
    「しかし猫レンジャーって、レンジャーを名乗ってるのに、やってる事が犬イジメって……正しい正義の味方のあり方を教えてやらないとね」
    「ええ、犬をイジメるレンジャーを許しておくことはできません」
     小鳥遊・優雨(優しい雨・d05156)は真顔で頷いた……が。
    「徹底的にもふらなければ……いえ、懲らしめなければなりませんね」
     発言の一端に本音が垣間見えているような。
     なにはともあれ、秋田犬にバイバイ、と手を振って、2人は次の犬のいるお宅へと向かう。

    「猫が5匹も……しかもしゃべるとか……可愛い」
    「僕も犬よりはよっぽど猫のほうが好きだよ」
    「都市伝説なら、なおさら放ってはおけないな。犬たちや他の野良猫たちのためにも頑張ろう」
     一見のんきそうに会話を交わしている志賀野・友衛(大学生人狼・d03990)と、相方の備傘・鎗輔(極楽本屋・d12663)だが、灯りで油断なく夜道を照らしているし、更に霊犬を塀や屋根に上らせて、高い位置からも警戒させており……と。
     そのわんこすけがある家の屋根の上でぴたりと足を止め、緊張した様子で鼻をピクピクとうごめかせた。
    「――何か見つけたのか?」

    「私たち、見事にRB組になりましたねえ……」
     栗須・茉莉(助けてくれた皆様に感謝します・d36201)が相方の富山・良太(復興型ご当地ヒーロー・d18057)(良太)を見上げながら苦笑を漏らす。
    「ついでにリア充も探します?」
     いえいえ、今夜はいいですよ……と良太も苦笑を返し、
    「今回の敵は、何と言いますか……ゆるキャラとマイナー戦隊が勘違いをして暴走している感じですね……っと」
     良太があわててポケットを探った。スマホの振動を感じたのだ。
     しかし借り物のスマホなのでどうしても操作に手間取ってしまう。貧乏ゆえの悲しさだ。
    「えっとえっと……」
     やっと開けた、友衛・鎗輔組からの一斉メールには『ターゲット発見』とある。
    「見つけたそうだよ!」
    「早いですね! どこのお宅でしょう?」
    「GPSで確認できるはずだよね……えっとこれをこうして……」

    ●猫レンジャー
    「あれが猫レンジャーか……ど、どの猫も可愛い……っ!」
     他組に一斉メールを送信し、人払いのESPをかけおえた友衛と鎗輔は、発見したターゲットを物陰から観察していた。
     現場となったお宅には、立派な犬小屋が玄関の脇に設えられている。
    「確かに可愛いけど……」
     鎗輔は今にも飛び出していきそうなわんこすけを抑えつけながら眉を潜めた。
     猫レンジャーは色違いのブーツと手袋、半仮面と短いマントを纏い、なるほど可愛らしい姿をしていた。だが、
    「これじゃリンチだよ」
     小屋の前で、猫に囲まれ、殴る蹴る引っ掻くの暴行を受けているのは、雑種だろうがシェパードっぽい立派な犬である。犬小屋のプレートによると、名前は『タイジ』。港町の犬らしいめでたい名前だ。タイジほどの大きな犬、普通だったら猫にそう簡単に負けるはずもないだろうに、魔術のせいなのか朦朧としているようで、やられ放題だ。飼い主が起きてくる様子もない。
     友衛も一度緩んだ顔を慌ててキリっと引き締め、
    「皆を待ちたいところだが、これじゃそうもいかないようだな」
     2人が見てる間にも、犬はボコボコにされていく。
    「うん、このままでは犬が虐め殺されてしまうよ」
     わんこすけにタイジの救出を命じると、2人は装備を調え、猫たちの前に姿を現した。
    「こらーっ、僕も犬は嫌いだけど、1匹を5匹で襲うってのはいただけないよ!」
     鎗輔が怒鳴ると、猫レンジャーたちは一斉に彼らの方を向いた。
    「にゃんだと?」
     赤い仮面とマントをつけたひときわ体格のいいスコティが2人を睨めつける。
    「犬どもは長年ボクニャンたちをいじめてきたのだにょ。その仕返しをしてにゃにが悪い!」
     そうにゃそうにゃと仲間猫たちがはやしたて。
    「犬の味方をするにゃら、お前らもボクニャンたちの敵にゃ! やっちまうにゃ!」
    「「にゃあ~~!」」
    「うおっ、来るっ!」
     友衛は鎗輔の前に立ちはだかりながら、
    「どんな攻撃が来ても怯むものかッ……わっ、飛びついてきて……あ、やめ……」
     ぷにぷにぷにぷにぷにっ。
    「うあ……ああああ……」
     5匹分の肉球に友衛は押し倒された。
     鎗輔は、この隙にわんこすけがタイジを家の裏手につれていくのを視界の隅に捕らえながら、回し蹴りで2匹の猫を振り払った。友衛も拳を握ってなんとかもう1匹殴りとばしたが、
    「友衛さん、何うっとりしてるの? そんで、何で手加減攻撃なわけ?」
     2匹の猫はまだ無傷で友衛にしがみついているし。やはり2人で5匹の猫を相手にするの大変だ……と、そこに。
     ズキューン!
     1発の銃弾が、また1匹を友衛から遠ざけた。
     振り返ると、そこには今駆けつけてきたばかりの遥香と梨乃がいた。遥香の指輪から放たれた銃弾は正確だった。そして相棒の梨乃は素早く縛霊手をかかげ、
    「こら、イジメはいけないのだ!」
     猫を叱りつけながら、肉球にボコられてうっとりしている友衛に癒しの光を浴びせかけた。
    「こいつらにも仲間がいるにゃ!?」
    「こうなったら、この悪人どもと戦うしかないにゃ!」
    「よし、気合いいれていくにゃ!」
    「にゃーーー!」
     退けられた猫たちは道路の方にひとかたまりになると、
    「「「我ら、肉球戦隊、猫レンジャー!」」」
     シャキーン☆
     ヒーロー風に名乗りをあげた。ちなみにポーズは、やたらと媚び可愛い。
     ずっきゅーん。
    「あ……園観ちゃんいま攻撃されたみたい……猫レンジャーさんの可愛いビームに違いないです……」 
     媚び可愛いポーズにハートを撃ち抜かれてしまった遥香は、消耗した様子で膝をついた……が、そこに。
    「弱いものイジメをするような猫は、ヒーローを名乗る資格はないよ!」
     飛び込んできてオーラを宿した拳で黒猫を殴りつけたのは、登。愛車・ダルマ仮面も突撃していく。
    「深大寺のご当地ヒーローのダルマ仮面が相手になるよ!」
     相方の優雨も到着していて、
    「さあいらっしゃい、もっふもふにしてやりますよ!」
     FragarachⅡを猫じゃらしよろしくひらんひらんさせて、ことのほかもふもふのスコティを狙う。
    「な、何がヒーローにゃ、乗り物なんかに頼ってヒーローを名乗るんじゃにゃい!」
     ついダイダロスベルトにじゃれつき、グサっとやられたスコティが登にいちゃもんをつける。
     登はキッパリと言い返す。
    「猫のヒーローがアリなら、バイクのヒーローが居たっていいじゃないか! ヒーローのクセに電人とか、喋る車とか知らないの?」
     ……登って実は何歳? とツッコミたくなるネタに、
    「……知らにゃい」
     仲間たちも、それ何……という目になっている。
     しかし激しく横道にそれたのは無駄ではなかった。
    「……吸血鬼ならぬ、吸生鬼……生気を吸い取られ続けると死に至るという」
     背筋を寒くさせる百物語が聞こえてきたと思ったら、
    「犬の悪の組織ならともかく、普通の犬を虐めるのは悪の戦隊ですよ。苗字は富山でも、山梨のご当地ヒーローの僕が相手をしましょう!」
     良太の杭がドカンと威勢良く撃ち込まれ、茉莉が槍を構えて飛び込んできた。
     これで全員揃った! 準備をしっかりしておいたお陰で、大きなダメージを受ける前に(自ら突っ込んだ者はともかく)迅速に集合することができた。
     灼滅者たちは気合いを入れ直し、そして猫レンジャーも。
    「うにゃ~! こんな悪人共に負けるにゃ、いくにゃ~~!」
     爪や肉球、そして敵意をむき出しにして飛びかかってくる。

    ●猫、その愛
     戦いが本格化して、少し経った頃。
     愛車に機銃掃射でディフェンダーとおぼしきスコティを牽制させておいて、登は第一ターゲット、ここまで集中攻撃を浴びせてきたジャマーの黒猫に飛びかかった。
     ガツッ!
     鋼鉄の拳が深々とめりこみ、黒猫はびっくりしたように金色の目を見開いたまま消滅した。
    「黒っ!」
     悲鳴を上げて肉球手を上げたのは、色っぽいメスの白猫である。肉球からは癒しの光が発せられたようだが、間に合わなかった。
    「白がメディックだな」
     次のターゲットを見極めた友衛が切なそうに白炎灯籠を掲げて炎花を放った。鎗輔はそれを遮ろうとしたスコティを、
    「邪魔しないで」
     すかさず古書キックで退け、
    「戦隊を倒すには各個撃破が一番です!」
     良太は十字架から氷弾を撃ち込んだ。ビハインドの中君には、手強そうな三毛の相手を任せている。
     遙香が後衛に結界を張ると、
    「さあ、腹を見せてゴロゴロいいなさいッ!」
     優雨はFragarachをくにゃくにゃさせ猫ならではの隙を狙い、
    「一体ずつ集中していきましょう! ケーキ、負けずに肉球パンチを!」
     茉莉は愛猫にも攻めさせながら、槍から氷弾を放った。
     スコティが、息も絶え絶えの白猫を必死にガードしながら仲間たちに声をかけた。
    「こ、こうなったらアレをするしかないにゃ!」
    「わかったにゃ、アレにゃ!」
    「息を合わせていくにゃ、せーのっ!」
     一体何を、と身構えた瞬間、ビカーッと4匹の猫のつぶらな瞳が不気味に光った。その光は灼滅者たちを全員がっつりと捕らえ……。
    「ね……猫様……」
    「もふもふの毛皮が」
    「肉球が……肉球がーっ、あーっ」
    「なんって愛らしいのでしょう」
    「私は猫様の虜です!」
     灼滅者たちは、次々と猫様の前に跪いていく。
    「にゃっはっはっ、どうだ見たか、これぞお猫様の魔術、人間など我々の愛らしさの前では奴隷にすぎにゃいのにゃ!」
     スコティは高笑いし、
    「今のうちにやっつけるにゃ!」
     仲間たちに号令をかけたが、そこに。
     ジャジャジャーン♪
     後方から高らかに、ギターの音が鳴り響いた。
    「そうはさせない!」
     梨乃が癒しのメロディを前衛に浴びせる。彼女は、愛猫のミケに護られて魔術の影響を受けなかったのだ!
    「ミケは良い子なのだ、見習うといい!」
     梨乃は真っ先に癒したディフェンダー陣にも手伝ってもらい、全員を正気に返らせることができた。
    「――私は確かにお猫様の虜ですが」
     猫の魔力から解放された遙香が涙目で。
    「こんなやり方は許せません!」
     怒りを込めて指輪から弾丸を撃ち込み、仲間たちも溢れる猫愛を堪えて、ターゲットへと飛びかかっていく。

    ●肉球よ永遠なれ
     猫と戦うにはまず、猫の魔力にハメられないことが肝心――それはまた、自らの猫への愛を抑制するという試練でもあるのだが。
     克己心を必要とする厳しい戦いのコツを掴んだ灼滅者たちの前に、メディックである白猫を倒された後の猫レンジャーは、なすすべ無く倒されていった。
     そして、ついに。
    「うにゅう……」
     残ったのは、リーダーのスコティッシュフォールドのみとなった。ターゲットにはなっていなかったとはいえ、ここまで散々仲間達の盾になってきたので、すでにボロボロだ。もふもふだった毛並みも、大掃除の後のモップのようになっている。それでもスコティは、
    「この町を猫の天下にするにゃ~!」
     諦めることなく肉球を振り上げて飛びかかってくる。
    「ああ……もう私は色々駄目だ」
     嘆きつつも肉球をかいくぐった友衛が手加減攻撃で殴りつけ、
    「……この期に及んでも手加減攻撃なんだねぇ」
     鎗輔が呆れつつも、タイジの避難から戻って来たわんこすけに援護させながらブックマーク・カタールで斬りかかる。
    「肉球ロケットパンチとか、首を取ってサッカーボールのように投げつけるとかしないと、もう驚きませんよ!」
     妙な都市伝説に慣れきった良太は、オーラを宿した拳で連打を見舞い、茉莉が炎のキックを蹴り込んだ。
    「うう……うっ」
     遙香が涙ぐみながら縛霊手でスコティを抑え込み、そこに勝負処と見て、フォローをサーヴァントたちに任せた梨乃も、
    「むう、いくら可愛くても、悪い子にはお仕置きなのだ!」
     キックで炎を畳みかける。
    「ぷぎゃっ!」
     集中攻撃にたまらずひっくり返ったスコティを、優雨が容赦なくCocytusで突き転がして。
    「とうとう腹を見せましたね。ゴロゴロ鳴いてごらんなさい!」
     屈辱的な姿をさらさせたところに、
    「――やっぱり、イジメはいけないよ!」
     登が飛び込んできて、炎を宿した雪風のステップで渾身の蹴りを入れると。
     ボウッ……!
     スコティは一瞬激しく燃え上がり……そして消えていったのだった。

    ●猫も犬も
    「――みなさん、一緒に来てくれますか?」
     茉莉が消えゆこうとしている猫レンジャーのエナジーに手を差し伸べている。自らの七不思議として吸収しようとしているのだ。
     その間に梨乃は、家の裏に避難していたタイジを小屋まで連れ戻した。
    「怖かったのか。もう大丈夫だぞ」
     タイジは尻尾を巻いてぶるぶる怯えている。特に、ウィングキャットにビビりまくりだ。
    「猫恐怖症になってしまったのかな、可哀想に」
     良太が気の毒そうに撫でてやる。
    「とりあえず、ケガの手当をしましょうね」
     遙香が持参の救急箱をとりだし、鎗輔も腰がひけつつも傷の具合を調べながら。
    「わんこすけ、手当が終わるまで傍にいてあげなよ」
     言われた霊犬がそっと傍によりそうと、やっとタイジは小屋の前におずおずと座った。
    「こんなに可愛いのだがなあ……」
     梨乃はひとつ溜息を吐くと、タイジのために、ミケをそっと隠してやった。

    作者:小鳥遊ちどり 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年9月1日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 6
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