炎獄の楔~フォッサマグナの蛇炎

    ●緊急連絡
    「垓王牙大戦は、惜しくも敗北に終わってしまいました。しかし、皆さんの決死の奮闘によって、ガイオウガも深く傷ついて地中に潜り、回復に専念するしかない状況のようです」
     春祭・典(大学生エクスブレイン・dn0058)は固い表情で、まだ戦争の疲労が癒えきっていない灼滅者たちを見回し、緊急作戦について語り始めた。
     戦争により傷ついたガイオウガは、回復のために、日本各地の地脈からガイオウガの力を集めようとしている。もし、日本中の力が、復活したガイオウガの元に統合してしまえば、最盛期の力を取り戻してしまうだろうというのだ。
     場の空気は、恐怖にも似た緊張感でぴんと張りつめている。
    「この事態を防ぐため、皆さんに、日本各地の地脈を守るガイオウガの力の化身……強力なイフリートの灼滅をお願いしなければなりません」
     今回の作戦には、特殊な事情がある。
    「地脈を守る強力なイフリートの周囲には、取り巻きのイフリートが多数守備を固めているようです。ただ、これら取り巻き達は、『協調するガイオウガの意志のイフリート』たちにより、戦闘の意志を無くして、無力化する事が可能です」
     『協調するガイオウガの意志のイフリート』とは、垓王牙大戦で尾を切り離すことで救出に成功したイフリートたちのことだ。
     しかし、この意志の力も、ボスである強力なイフリートには影響を及ぼせないため、ボスはあくまで灼滅者の手で撃破する必要がある。
     また、取り巻きの戦闘の意志を抑えるためには、戦意を刺激しないよう、少数精鋭で戦いを挑む必要があるので、かなり危険な任務となるだろう。
     ここまで説明した典は、一旦言葉を切ると、ためらいがちに。
    「場合によっては、闇堕ちをしなければ、強力なイフリートは倒せないかもしれません……」
     と、告げた。

    ●倒すべき炎獣
     典は気を取り直すように地図を広げた。示したのは山梨県南部の山中だ。
    「僕が予知できたのは、静岡ー糸魚川構造線南部に潜む大蛇型の強力なイフリートです」
     人里離れた山中であるが、ターゲットの大蛇の元には『協調の意思を持つイフリート』が誘導してくれるという。
    「ターゲットは構造線の近くにある、竜脈に棲んでいます。広い地下空洞になっており、そこが戦場となります」
     崩落などの危険は特にない。
    「戦場に到着すると、協調の意思を持つイフリートは、取り巻きのイフリートの無力化をすべく力を尽くしてくれるはずです。ですから、皆さんは大蛇との戦いに専念してください」
     大蛇は当然ながら強力な炎のサイキックを持っているが、そればかりではなく長大な体を生かした力技を使ってくると予想される。
     突然、くしゃり、と広げられていた地図が握りつぶされた。地図を握りしめる、震える拳は典のもの。
    「今回の敵……『ジョカ』と呼ばれているようですが、ヤツに無傷で勝利するのは難しいでしょう。本当は、こんな戦いに皆さんを導きたくはないのです。しかし、この敵に打ち勝たねば、復活したガイオウガを止めることはできない……」
     典はぎゅっと目を閉じた。
    「どうか……どうか、ご無事で」


    参加者
    今井・紅葉(蜜色金糸雀・d01605)
    水瀬・瑞樹(マリクの娘・d02532)
    高峰・紫姫(辰砂の瞳・d09272)
    倉澤・紫苑(パンチングマシン・d10392)
    斎・一刀(人形回し・d27033)
    不破・九朗(ムーンチャイルド・d31314)
    ウィルヘルミーナ・アイヴァンホー(白と黒のはざまに揺蕩うもの・d33129)
    御伽・百々(人造百鬼夜行・d33264)

    ■リプレイ

    ●大地溝帯の地下深く
     ――彼女は長い微睡みから目覚めようとしていた。
     根源なる力からの召還の声、そして彼女の侵さざるべき神域へと侵入するモノたちを感知したのだ。
     長い首をゆるりと動かし、彼女は、まずは鋭い嗅覚で侵入者の正体を知ろうとする……。

     灼滅者達は、5頭の猫型イフリートに導かれ、地下世界へと深く侵入していた。
     入り口は、いかにも大地溝帯らしく古い地層が露頭している谷の、巨大な岩盤の割れ目であった。狭い岩の隙間を歩き、這い、すりぬけ、自然の造形でもなく、人の技とも思えない箇所を幾つか通りひたすら降りていき、辿り着いたのは。
     四方の壁面に、床や天井に、どくり、どくりとマグマの息づかいを感じる、広大な地下空間であった。
     そしてその空間の中央では、朱炎をまとった巨大な白蛇がとぐろを巻いていた。
     蛇は鎌首をもたげていたが、その目は閉じられていた。とはいえ覚醒しつつあるらしく、首はゆるゆると揺れ、瞼がひくひくと震えている。
     白蛇の周辺には、数十体もの取り巻きのイフリートが、主を囲むように蹲っている。は虫類型や土棲動物型、小型の竜種だ。取り巻きも主と同じく微睡んでいたようだが、侵入者にいち早く気づいたものが数体、ぶるりと体を振るわせて立ち上がった。
     人類の、蛇への本能的な恐怖というものは如何ともし難く、灼滅者達は咄嗟に空間入り口近くの大岩の陰に隠れてしまったのだが、協調派イフリートたちは全く躊躇することなく、取り巻きの中へと駆け込んでいった。
     そして一斉に吠えた。
     肉食獣の咆吼が、地下空間に響く。

     ――聞き慣れぬ吠え声に、彼女がじわりと瞼を上げると、自分を守っているはずの取り巻き達が、じりじりと空間の隅の方に押しやられていくのが見えた。
    『何ガ起コッテイル? 妾ガ丸裸ニナッテシマウデハナイカ』
     取り巻きたちから戦意を奪い、彼女から引き離そうとしているのは、猫型のイフリート5頭であった。
    『同族……イヤ、地下ノモノでも、竜種デモナイ』
     彼女――大蛇ジョカは、急速に目覚めつつあった。
     猫型イフリートが、大きな力とつながっている気配をわずかに感じたが、しかし彼女を脅かすものは皆敵である。
    『許サヌ』
     ゆるゆると、長大な体が動きだし……。

     灼滅者達の視線は、大蛇……これから戦わなければならない敵・ジョカに釘付けになっていた。
     世界最大の蛇とされているのはニシキヘビやアナコンダで、体長10数メートルという記録が残っているが、彼らの敵はそれを遙かに上回っていた。30メートル近くあるだろうか。真珠色の鱗に朱い火をまとわせ、うっすらと開いた瞳は猫目石の輝き。
    「ふつーに蛇だけど……すごいね、こりゃ」
     不破・九朗(ムーンチャイルド・d31314)が思わず呟く。
     その大蛇がゆるりと動き出し、そして声が響いた。
    『……騒ガシイ事ヨノウ。根源ナル力ニ召還ヲ受ケタト思ウタラ、スグサマソレヲ邪魔スル者ガ現レルトハ』
     猫目石の瞳がカッと見開かれ、協調派イフリートたちを睨みつけた。
    「(まずい、協調派イフリートが……!)」
     彼らがいなければそもそも此処まで来られなかったし、ジョカとの戦いにも臨めない……それに。
     高峰・紫姫(辰砂の瞳・d09272)が決然とカードを解除した。
    「協調派イフリートたちがせっかく力を貸してくれているのですから、先の戦いの決着、何としてもつけないといけませんよね。争わなくてもよい、最善の未来のために」
     彼女の手を、傍らの倉澤・紫苑(パンチングマシン・d10392)がきゅっと一瞬握りしめ、
    「人の生活に仇なす可能性があるのなら……厄災を招くのなら、全力で止めなくちゃ」
     仲間たちは肯いて次々と装備を整えた。
     そして怖じけそうになる心を奮い立たせ、協調派イフリートたちが開けてくれた戦いへの道……強敵の正面へと飛び出していった。
     
     ――炎猫に尾の一撃を見舞おうとしていた彼女……ジョカは、別方向から現れた小さき者……人間達に気づいた。
     そして悟った。
    『人間ヲ妾ノ神域ニ引キ入レタノカ!?』
     猫達への怒りは募るが、まずはこしゃくな人間共を排除しなければ。
    『一振リデ吹ッ飛バシテクレヨウゾ!』
     ジョカが灼滅者達の方に向きを変えたその瞬間、振り上げかけた尾に、何かが猛烈なスピードでぶつかってきた。

     真っ先に強大な敵に飛びかかっていったのは、御伽・百々(人造百鬼夜行・d33264)だった。
    「如何に強大なれど個であれば、数の利にて勝利を掴もうぞ!」
     小さな体が岩を踏み台にして高々とジャンプし、礫となって尾に鋭い跳び蹴りを見舞った。
     予期せぬ先制攻撃だったのだろう、ジョカはわずかであるがバランスを崩した。
     そこに灼滅者たちは殺到していく。紫苑が頭に振り下ろした杖は惜しくもかわされたが、避けたところに紫姫の鋼の帯が猛烈な勢いで突き刺さった。今井・紅葉(蜜色金糸雀・d01605)が影を延ばして縛り付け、すかさず九朗が蹴りを入れる。影を振り払った勢いで水瀬・瑞樹(マリクの娘・d02532)のレーヴァティンは跳ね返されたが、ウィルヘルミーナ・アイヴァンホー(白と黒のはざまに揺蕩うもの・d33129)のイージェ・パッションが深々と魂を抉る。斎・一刀(人形回し・d27033)はビハインドに援護させながら、2体の操り人形を繰り、鋼糸を放って捕縛を図る……と。
    『キシャアアァ!』
     ジョカが怒りの声を挙げた。そして頭を振り立てた。
    「来る!」
     灼滅者たちは、敵が蛇体であるからには、主に頭部と尾部を使って攻撃するだろうと予想しており、果たして、ジョカの口から前衛に向けて激しい炎が吐き出された。
    「防ぎます!」
     ウィルヘルミーナが紫姫の、ビハインドが瑞樹のカバーに入り、クラッシャーは護られた。
     されど。
    「……凄い」
     すぐさま吹いてきた紅葉の聖剣からの癒しの風を受けながらも、ウィルヘルミーナは、ジョカの炎の威力に驚愕していた。
     列攻撃にも関わらず、この威力……2人分を受けたせいもあるが、ディフェンダーなのに、メディックからの回復だけでは癒しきれない。
    「(単体攻撃で直撃を受けたらどうなるのか……)」
     何としても攻撃陣を護らねば、という思いが強まると共に、強大な敵と対峙する不安も高まってくる――そこに。
     一刀がサッと縛霊手を振り上げて光を浴びせかけた。回復しきれなかった分をフォローしてくれたのだ。
     目を上げれば、すでに攻撃陣は果敢に大蛇に2撃目を浴びせかけている。
    「敗北の失態を挽回するため、決死の覚悟で挑もうぞ!」
     百々が凛々しく叫び、日本刀を尾に振り下ろした。
    「(ガイオウガ自体は、大きな力であるだけで、何をするわけでもない……それを倒そうとする武蔵坂は、ダークネスの覇権争いの単なる一派に成り下がりつつあるのではないか……)」
     ウィルヘルミーナには、そんな割り切れない思いもある。
     けれど、別府の悲劇を再び繰り返さないためには……懊悩を振り払い、武器を握るしかない。

    ●女蛇との戦い
     巨体であるゆえ、灼滅者たちの攻撃はジョカに届かないことはなかった。
     しかしまた巨体であるがゆえ、灼滅者たちが受けるダメージも大きく、回復はしばしばメディック1人の手にあまり、ディフェンダーやジャマーのフォローを必要とした。回復を重視すれば、攻撃の手数が減り、必然的に戦闘は長引いていく。
     また、ディフェンダー陣は持久戦を戦い抜くために、ひたすら仲間を庇い続けており……10分ほど経った頃、とうとう。
    「護ります……これが私の皆さんへの恩返しですわ!」
    「やめて、ウィルヘルミーナさん、あなたはもう……!」
     ……ズゥン!
     紅葉が悲鳴を上げたが、ウィルヘルミーナは尾による衝撃を肩代わりした。列攻撃に足を取られ、ひっくり返ってしまったスナイパーには、守られた紅葉が剣を抜いて癒しの風を吹かせ、ウィルヘルミーナには一刀が駆け寄りながら縛霊手の光を浴びせかけた……が、彼女は起きあがれない。
    「大丈夫!?」
    「……へ、平気です、まだ戦えますわ……っ」
     意識はあるが、最後の体力を奪われてしまったようだ。
    「ケケッ」
     一刀が笑って怪力無双でウィルヘルミーナを担ぎ上げた。
    「な、何をするのです!」
    「一旦下がってきっちり回復した方がいいよ」
    「まだ戦えま……」
    「カカカッ。無理はよくない。皆で帰るためだからねぇ」
    「……!」
     言われてウィルヘルミーナは力を抜いた。
     侵入時に隠れていた岩まで下がろうと、一刀が駆けだした、その瞬間。
     ジョカの目が彼らを見て光ったことに、彼は気づいた。
    「ビハインド!」
     呼ばれたビハインドが間一髪盾となり、紅蓮の炎を一身に受け……そして、消えた。
    「ククッ、限界だったか」
     一刀は小さく笑いを漏らしただけで、傷ついた仲間の避難に専念する。
     灼滅者たちの胸を、冷たいものがよぎる。
    「(これで盾役はひとりに……)」
     しかも残った九朗とて、ここまでの死闘で、先に倒れた仲間と等しく体力的にはギリギリだ。
     ――消耗戦。
     序盤に比べれば、敵の動きは鈍り、攻撃力も若干弱っている感触はある。根気よく積み重ねてきたバッドステータスが効いてきているのだろう。
     ジョカと灼滅者たち、どちらが先に力つきるか……!
    「やるしかない……ガイオウガに力を与えるわけにはいかぬ!」
     百々が槍から頭めがけて氷弾を撃ち込み、紫姫が堕天使の黒翼で抑え込む。そこに、
    「怖いよ……怖いけどっ」
     紫苑がぐっと足を踏ん張って自分を奮い立たせ、
    「でも好きな人との暮らしを守りたいし、大好きな紫姫ちゃんと一緒だからきっと大丈夫!」
     力一杯杭を撃ち込み、瑞樹はオーラを宿した拳で連打を見舞った。
     避難を無事終え、駆け戻ってきた一刀が、その勢いで炎を蹴り込もうとした……その時。
    『グワアアアアァァ!』
     ジョカが口を開けて、大きな炎を吐いた。
    「うわあっ!」
     その炎は前衛を容赦なく舐める。
     こまめに回復も受け、幾度も庇ってもらってきたとはいえ、クラッシャー陣もずっと最前列に立ち続けてきたのだから、蓄積したダメージは小さくない。
     炎に苛まれる仲間の姿に、九朗は最後の力を振り絞り。
    「僕が相手だ!」
     盾でジョカの胴体を思いっきり殴りつけ、引きつけた。
    「やめて!」
     体力の限界に近い彼が、怒りでジョカを引きつけようとするなど危険すぎる!
     案の定、ジョカは尾で九朗を捕らえてしまった。
    「く……!」
     逃れようともがくが、蛇の体はより一層締め付けるばかり。
     仲間の危機を見て、紅葉の癒しの風を背中に受けながら、紫姫が叫んだ。
    「今助けます!」
     そして蛇めがけて果敢に飛びかかった。
    「(不思議なことに、守りたいと思うほど、盾ではなく剣を持っている……だからこれ以上誰かが倒れる前に決着をつけます……全力で!)」
     今救うべき対象はもちろん九朗だが、その思いの先には大切な人である紫苑も、もちろん含まれている。
     その紫苑も紫姫に続いてバベルブレイカーを構えて突っ込んでいき、百々はメスを光らせて急所に突き立てた……が、ジョカは九朗を離そうとしない。そればかりか、鎌首を振り立てて炎を浴びせかけた……!
     ――その時。
    『ガアッ!』
     唐突に、翼を持ったライオンが現れて、ジョカの首にがっぷりと噛みついた。
     灼滅者たちは呆然とライオンの姿を見上げ……そして悟る。
    「み……」
    「瑞樹さん……!?」
     ライオンは、瑞樹の闇落ちした姿だった。
    『ギャアアアァ!』
     さすがにジョカも、九朗を尾から解放した。一刀が素早く抱き上げて、紅葉の元へとつれていく。
     それを見て、ライオン=瑞樹も蛇の首から顎を外した。
     そして紫の瞳で仲間を見て言った。
    『――勝とうよ』
     ライオンの口調は、まだ瑞樹のものであった。
     言われて仲間たちは、張り裂けそうな心を堪えて深く肯く。
     皆の犠牲を、献身を。協調派イフリートたちの手助けを、無にしてたまるものか!
     首の噛み傷からどくどくと炎血を流す蛇に、百々の怨霊武者が、マグマの灯に影を黒々と膨れ上がらせて襲いかかり、それに怯んだ隙を狙って、一刀が糸を放ち、身動きできないよう力一杯捕縛した。回復を受けた九朗も、気力を振り絞って槍を構え、氷弾を撃ち込む。
     ドォン!
     連続攻撃を受け、巨体が地震いを伴って地に落ちた。
     のたうつジョカはもう起きあがれない。
    「ガイオウガに恨みはないけど、日常を守りたいのよ、ごめんね!」
     紅葉は必死に剣から祈りと共に聖なる風を送り続け、紫苑が呼んだ雷は猫目石の瞳を撃ち抜き、同時に紫姫が放った白姫の衣は、胴体に激しく突き刺さる。
     ジョカから夥しく流れる血は激しく燃えさかっている。しかしライオンはまるで苦にすることなく、瀕死の蛇に飛びかかった。そしてその腑を、炎を宿した牙で大きくバリリと食いちぎった。
    『グギャアアアアアァァァ!』
     断末魔の叫びは、地下空間に長々と反響し……。
     それが女蛇の最期となった。

    「……あぁ」
     マグマに吸い込まれるようにして消えていく敵の躯を前に、灼滅者たちは地面にへたりこんだ。
     勝った。しかしギリギリだ。
     しかも……。
     佇んでいた炎獅子が、静かに口を開いた。
    『急いで待避した方が良さそうだよ』
     見れば、協調派イフリートたちが空間の出口付近で、早く来いというようにこちらを見つめていた。
    『協調派イフリートが去ると、取り巻きたちが戦意を取り戻してしまうのかもしれない』
     それはあり得る。
     灼滅者たちは疲れ切った体と心を引きずり、撤収にかかる。
     ケガの重い2人はライオンの背に乗り、8人再び地下通路へと足を踏み入れた。
     殿を受け持った一刀が、怪力無双で地下空間の入り口に崩落を起こして塞いだ。取り巻きイフリートたちが追ってきた際の時間稼ぎになるだろう。
     灼滅者たちは炎猫の先導に従って、黙々と地下通路を歩き続けた。
     疲労のため道ははかどらず、二度と出られないのでは……という漠然とした不安におそわれ始めた頃、やっと光が見えた。
    「……帰ってきた」
     岩盤の割れ目から山中に出ると、そこはもう夕暮れだったが、地下の暗さに慣れた目には充分眩しく――と。
     ドサドサッ。
     何かが地面に落ちる音がして振り向くと。
     ライオンの背に乗っていたはずの九朗とウィルヘルミーナが、落ち葉が積もった地面におろされ、目をしばたかせていた。
    「う、うとうとしてて……」
    「降ろされて気づいたら、もう……」
     炎のライオンは姿を消していた。
     2人を岩盤に降ろすと、すぐさま姿を消したらしい。
     気づけば、協調派イフリートたちもいない。
    「――瑞樹さん」
     7人は、炎の色に染まる空を見上げ、去った仲間に思いを馳せた。

    作者:小鳥遊ちどり 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:水瀬・瑞樹(マリクの娘・d02532) 
    種類:
    公開:2016年10月12日
    難度:難しい
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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