ガイオウガ決死戦

    作者:うえむら

     その時。

     鶴見岳のすべて……山頂から山麓までが、一瞬にして赤熱する。

     次の瞬間、轟音と共に鶴見岳が砕け飛ぶ……!

     長き因縁のあった地、鶴見岳……。

     しかし今や、その山は消え去った。

     鶴見岳を灰燼に帰し、再びその巨躯を現した『ガイオウガ』。

     既に人々の避難は完了し、戦う事に憂いは無い。

     灼滅者達は、『ガイオウガ決死戦』へと赴く……!




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    ●プレイングの決まり
     プレイングの最初の1文字目には必ず、「A・B・C・D」のどれか1文字を入れてください。
     それらの文字に応じて、下記のどの部隊として行動するかが決まります。
     もし最初の1文字目にそれ以外が入力されていたら、強制的に「B」部隊での参加となりますので、あらかじめご注意ください。

    (A)先行突撃部隊
     全ての部隊に先んじて突撃し、敵の先制攻撃を一手に引き受けます。
     敵の先制攻撃の手段は、「ガイオウガの破片」と「キバノホムラ」の2種類です。
    ・「ガイオウガの破片」は、ガイオウガの体表から剥がれ落ちた「竜種イフリート」です。どれも強敵ですので、ある程度の「グループ」で固まって対処にあたることが求められます。
    ・「キバノホムラ」は、生き延びて吸収された『ガイオウガの化身』の数に応じて下記の回数だけ放たれる、一撃必殺の対灼滅者広域破壊熱線です。
     0体   1回
     1~2体 2回
     3~4体 4回
     5~7体 7回
     8~12体 12回
     13~36体 無限
    「炎獄の楔」を生き延び吸収された化身は『アラハオウ』1体のみなので(シナリオ「炎獄の楔~黒金の炎龍」参照)、つまり今回、「キバノホムラ」は「2回」放たれる事となります。
    「キバノホムラ」は「ひとかたまりの軍勢」を「一撃で戦闘不能もしくは重傷」にする程のダメージを与えます。また、仮に運良く生き延びたとしても、2回キバノホムラを受けた者は「必ず死にます」。
     散開したり複数回受けないようにする為の作戦が不可欠ですが、あまりばらばらに行動すると、ガイオウガの破片やキバノホムラが「A以外の部隊」に襲いかかってしまう危険があります。
     この部隊はガイオウガにトドメを指すことができませんが、後に続く全部隊の戦況に大きく影響します。

    (B)主力戦闘部隊
     ガイオウガの「脚」から駆け上り、「胴」を越えて、硬い殻に包まれた「頭部」を破壊し、垓王牙焔炉に通じる「ガイオウガの口」を開かせる部隊です。
     敵は「A部隊のうちもらした破片」と「ガイオウガの全身を動き回る巨大なトゲ」、そして「広域に被害を齎す火山コブ」となります。
     いずれも、殲術再生弾が無い状態では「致命的な威力」となるため、B部隊のキャラクターは、自分が全力を出す戦場を「脚」「胴」「頭部」からひとつ選択し、プレイングに記入してください。
     それ以外の戦場では力を温存すると共に、続くC、D部隊の守護に専念する事となります。
     全ての戦場になるべく均等な人数を配置できれば、主力部隊は最大の効果を発揮することができます。
    (なお、戦場の指定が無い場合は、どの戦場で戦うかはランダムとなった上、不意の攻撃に依る重傷・死亡率が若干高まります)
     また、この辺りから、「ガイオウガの意思」が頻繁に灼滅者に語りかけてくるようになります。これまでの経緯を鑑みて、かつ「尾は既に斬り落としている(友好的な意思は残っていない)」という前提の上で、何か語りかけることができれば、続くC、Dに何らかの良い効果をもたらすかもしれません。
     言うまでもなく、この部隊にはもっとも多くの人数が必要となります。
     また、もし万一、対象となる敵を全て倒しても余裕があった場合には、C部隊に合流します。

    (C)最終決死部隊
     ガイオウガの口の中に飛び込み、ガイオウガを統括する「垓王牙焔炉(垓王牙大戦第8ターン参照)」と戦います。
     垓王牙焔炉は、先の戦争と同じ能力とサイキックを持つ配下達を引き連れています。
     また、こちらには殲術再生弾が無い為、戦闘不能は致命的な結果となる事があります。
     A・B部隊の結果次第では、そもそも垓王牙焔炉に辿りつけず、撤退の支援をして終わる(敗戦)可能性もあります。垓王牙焔炉を灼滅しなければ勝利にはなりませんが、ここに多くの灼滅者を割り振ると、そもそも辿りつけなくなってしまうかもしれません。
     垓王牙焔炉を灼滅すれば、ガイオウガもまた灼滅されます。

    (D)決死調査部隊
     A~Cとは別に、垓王牙焔炉で、世界の謎につながる何らかを発見しようとする部隊です。
     ガイオウガは、明らかに「世界の秘密」に近い存在です。探ることができれば、今後の戦いに非常に有利となることでしょう。ガイオウガは大地そのもの。イフリート以外の勢力に関する知識が得られる可能性も非常に高いです。何を調べたいか、なるべく具体的に書いてください。
     その他にも、この部隊の人数が多ければ多いほど、ガイオウガの持つ様々な秘密を得ることができるでしょう。
     ただし、「それらが有効な情報とは限りません」し、「この部隊への参加は非常に危険」ですし、かつ「戦闘には貢献できません」。それを承知の上で参加してください。

    ●闇堕ちをするには
     闇堕ちをしても構わない場合には、その旨や条件等をプレイングに記入してください。
     記入が無ければ、闇堕ちは行いません。
     また、今回のような危険な戦いでは「闇堕ちした後の戦闘で死亡する可能性」もあります。通常のシナリオにおける闇堕ちより危険度は高いので、くれぐれもご注意ください。



    ■リプレイ

     灼滅者達は「万全の態勢を整える事ができた」と断言しても良いだろう。
     先の化身戦の重傷者が居るにも関わらず集まった圧倒的な人数。
     そして、短時間で考え抜かれた巧みな作戦内容など、いずれも非の無きものである。
     だがそれでも、思わず身が竦んでしまう。
     敗戦の記憶と、今まさに眼前に聳える、あの偉容。
     灼熱の大地と化した別府の爆心地で迎撃体勢を取る、途方も無き巨躯の怪物……。
     ガイオウガは、灼滅者達の接近に気付くと、体表から無数の「破片」を放った。破片はたちまちの内に獣となり、竜となり、灼滅者の眼前に立ちはだかる。
     ガイオウガこそはイフリートの集合体。破片のひとつひとつすらも、当然の如く、「竜種」と呼ばれる最強のイフリート達であったのだ。

    ●死闘の始まり
    「別に死にに来たわけじゃない。目的を果たして生きて帰るために来たんだ」
     竜種の群れを前にしても、ニムロド・バルティエリ(黒獅子の子・d31454)が臆する事は無かった。彼は連携を希望していた灼滅者達と即席のチーム【道草アイス】を結成し、これより始まる長き戦いの先鞭を付けた。
     ニムロドの放つマジックミサイルと同時に、三角・啓(蠍火・d03584)が戦場へと飛び出す。彼等の背後には、数多くの後続部隊が待機している。死地へ赴く彼等の為に「道」を確保する事が役割であると、彼は覚悟を決めたのだ。啓の螺穿槍が、分厚い竜種イフリートの皮膚を抉じ開けていく。
     咆哮と共に放たれた竜種の反撃を、迷彩服に身を固めた片桐・慎也(グリーンホーン・d25235)が、がっちりと受け止める。返す刀で神霊剣を放ち、同時に周囲を取り囲もうとする他の竜種達に対する警戒を強める。
     ……彼はガイオウガのいち破片に過ぎない竜種達が、いずれも灼滅者を凌ぐ力を誇る事を、身をもって体感した。だがそれを知って尚、彼は己が身に、竜種達の注意をひきつける。
    「めっちゃでかい♪ 火吹くとかっこいいー!
     ……は、見とれてる場合じゃなかった!」
     激戦の中でもいつものペースを崩さない真波・悠(強くなりたいと頑張るココロ・d30523)は、慎也と共に前線を維持しながらも、前方に聳える巨大なガイオウガの偉容を観察していた。ガイオウガの放つ「キバノホムラ」の兆候を、見逃さぬよう注視する為である。
     彼等以外にも、数多くの灼滅者と竜種イフリートが戦場へと参戦し、戦場は既に、開始数分にして混迷を極めていた。黒井戸・結城(黒の淵から観る者・d14711)とフリル・インレアン(小学生人狼・d32564)の両者は、ジャマーとして妨害と支援に徹していた。
     実力に裏打ちされたフリルのギルティクロスとオールレンジパニッシャーが、その混迷を確実に味方の有利へと進めていく。
     しかし、竜種の数はあまりにも多い。数多くのディフェンダー達の防御をくぐり抜け、乱戦の中で彼等も数多く被弾してゆく。
    「がはッ! くそッ、こんな所で……!」
     大量の竜種に殺到され、結城は腹部に不意の致命的な一撃を受けてしまう。
    「間に……合って……!」
     フリルは咄嗟に癒しの矢を放つが、結城の傷は深く、塞がる気配は無い。
     その時、結城をかばうようにして、炎の翼……フェニックスドライブを纏った、一体のアンブレイカブル現れた。
    「見やがれ、これが武蔵坂の旗印だぜ!」
     血みどろの戦場の中で、その身に竜の因子を刻んだアンブレイカブル……バスタンド・ヴァラクロード(リザードヒーロー・d10159)は、そう高らかに宣言する。
     彼の中に刻まれた竜種の記憶が、ガイオウガの波動を受け、鋼の肉体を通して炎の翼となって燃え上がってゆく。
     闇堕ちしたバスタンドは、燃え上がる本能のままに戦場の敵を粉砕してゆく。だが、それだけではまだ、戦場の趨勢が左右される事は無かった。それ故の「決死戦」であり、緒戦において闇堕ちが可能となる程の危機が訪れた理由なのであった。
    「いきなり、露払いという状況でも無くなったのですか……!」
     霧野・充(月夜猫・d11585)は覚悟を決め、この即席チームの皆を守るべく、紅蓮斬やヴァンパイアミストで体力を維持しつつ、戦端を切り開いてゆく。バスタンドの放つ炎の渦にも護られ、【道草アイス】はこの死線をかろうじて生き延びていた。

     安土・香艶(メルカバ・d06302)は、他の竜種を圧倒するほどに巨大な、マンモスにも似た竜種イフリートと対峙した。
     竜種は香艶に告げる。
    「我が名は告死獣ベルゴール。灼滅者よ、大地の意思たる垓王牙に逆らう汝らに、何の大義があろうか!」
    「知るか! 俺は、自分の手の届くところに居る友を助けたいだけだ。みんなが笑って過ごせる世界を望むだけだ! さあ、俺の命、奪えるもんなら奪ってみろ!」
     香艶はそう返し、渾身のバトルオーラ「一霊四魂」を叩きつける。
    「私も加勢するよ!」
     鏡・エール(高校生シャドウハンター・d10774)は香艶の元に駆け寄ると共に、周囲で遊撃作戦を展開していた【TG研A班】にも要請し、素早く対ベルゴール戦を「1対6」の体制に整えた。エールは皆を補助するべく、中間距離で癒しの矢を放ち続ける。
     支援を受けてベルゴールに攻撃が通りやすくなった【TG研A班】は、徐々に戦いを有利に進めてゆく。竹尾・登(ムートアントグンター・d13258)と富山・良太(復興型ご当地ヒーロー・d18057)が、クラッシャーとしてベルゴールの両翼から飛びかかる。
     登が閃光百裂拳を放てば、反対側から良太がご当地キックを放つ。
    「自分達の不始末は、自分達でつけないとですからね!」
     中央で対峙する香艶も合わせた強大な火力、そして、

    「ダルマ仮面、中君、わんこすけ、サムワイズ、皆を守れ!」
     備傘・鎗輔(極楽本屋・d12663)と【TG研A班】のサーヴァント達が、盾役として確実な牽制と回復に集中する。
    「グガアアア、オノレ、オノレ灼滅者ァァァァァ!!」
     完成度の高い布陣の前に、ベルゴールは何一つ戦果を上げること無く、戦場の濁流に飲み込まれていった。
    「さあ、まだ戦いは始まったばかりですよ!」
     後方より皆にエンチャントを付与していた秋山・清美(お茶汲み委員長・d15451)が、皆に呼びかける。彼等はこのまま一丸となって、他チームの撃ち漏らしを駆除する作戦を始動したのであった。

    「こっから先は進ませないのだ。皆潰すんだよ」
    「あんたらはここで全部潰す!」
     柳谷・凪(お気楽極楽アーパー娘・d00857)と木島・御凛(ハイメガキャノン・d03917)が、周囲のイフリートを着実に潰していく。

     しかし、先行部隊の灼滅者達に対して放たれた『ガイオウガの破片』の数はあまりにも多い。功刀・慧悟(鮫歯の蒼き風・d16781)と天乃・柯白(仮面とナイフと・d25821)達デモノイドヒューマンが戦場の中心で盾役として攻撃をしのぎ続けているが、状況はやや劣勢のまま推移する慧悟のグラインドファイアとイフリートの火炎攻撃が混ざり、戦場を混乱の坩堝に陥れる。
    「すみません、ここで退きます」
     深手を負った天乃・柯白は、周辺にいた灼滅者達にラビリンスアーマーを施した後、猫変身で自らのウイングキャット「ジャック」に運ばれ、戦場を撤退する。
    「戦況が動いた……か?」
     柯白のラビリンスアーマーを纏った霧亜・レイフォード(黒銀の咆哮・d29832)が、虎型の巨大イフリートをオーラキャノンで灼滅させ、人心地をつく。サーヴァントのゼファーをキバノホムラの囮役に送り出しつつ、同じくラビリンスアーマーを纏ったもうひとりの方を見やる。
    「見せ場でしかないんですよね、こんな戦場は……。
     灼滅者さん方の邪魔はさせませんよ、同族」
     椎葉・花色(グッデイトゥダイ・d03099)は、猫化した柯白を匿いつつ、戦場の只中に飛び込んでゆく。
     柳谷・凪、木島・御凛、功刀・慧悟、霧亜・レイフォードらを近くに集めつつ、回復支援とスターゲイザーによる攻撃で、着実に戦果をもぎ取ってゆく。
     死ぬつもりはないが、負けるつもりもない。
     それが、花色の覚悟であったのだ。

    「徹やん、絶対守ったるで!」
    「……それは、こちらの台詞だ」
     斑目・立夏(双頭の烏・d01190)は、藤谷・徹也(大学生殺人機械・d01892)と共に背中合わせとなり、戦場で破片達と戦っていた。ふたりで防御に徹しつつ、イフリートを1体づつ狙い、着実に灼滅してゆく。立夏は、常に他の灼滅者チームと共同して事にあたり、個別撃破されないように気を配り続ける。
     そんな立夏のソーサルガーダーによって何重にも装甲を固められた徹也は、前方に聳えるガイオウガの「かすかな気配の違い」を、感じ取っていた。

     激しい乱戦状態の中で、黄嶋・深隼(風切の隼・d11393)はようやく、神谷・蒼空(揺り籠から墓場まで・d14588)を探し当てた。
    「終わったら一緒に帰ろうな、蒼空ちゃん?」
    「深隼先輩がいれば心強いです。一緒に帰れるように頑張りましょう」
     ふたりは乱戦の中で応戦しつつも、防御力をひたすらに高めていく。それは彼等も、直感で「気配の違い」を感じ始めていたからであった。
     すなわちそれは、「キバノホムラ」発射の兆候。
     何があっても、この人だけは守る。
     言葉に表さずとも、互いの考えは同じであった。

     各戦場を駆け回るメディック達の活躍も目覚ましい。
    「みんなでハロウィンを迎えたい、です!」
     草薙・結(安寧を抱く守人・d17306)が全員の防御力を高めて周り、覚悟と共に手首のシュシュを握りしめたリオン・ウォーカー(冬がくれた予感・d03541)が、清めの風で灼滅者達を癒やして回る。
     
    「はわ、皆さんを回復するの。頑張ってなの~」
    「みんなが殴ってくれるぶんには、楽でいいしー」
     黒部・瑞葵(ナノ魔法少女・d03037)と雨衣・くもり(鉛色ファンタズム・d33876)も、戦場全体を支援して回っている。

    ●兆候偵察
    「うにゅ!? みんな、そろそろ来るかも!」
    羽刈・サナ(アアルの天秤・d32059)は、戦場中に割り込みヴォイスで伝令する。
     その伝令を受け、マーガレット・リバー(氷弾の狂姫・d21079)は箒で大空に飛び出す。飛行で戦場から離れ、ガイオウガの動向を冷静に観察する為だ。そしてマーガレットは、同じく箒で飛行している空木・天音(不知始・d04258)と共に、ガイオウガの口中から発せられようとしている、微かな光を見て取った。
     天音はそれを、皆に大慌てで叫ぶ。
     
    「有栖川、見えたか!?」
     地上で一手に攻撃を受け続ける愛宕・時雨(小学生神薙使い・d22505)は、そう有栖川・真珠(人形少女の最高傑作・d09769)に声をかける。
    「時雨、私のためにまだ立っていなさい……」
     そして有栖川・真珠は、飛行班の報告も踏まえて、キバノホムラの性質を割り出す。
    「おそらく、先程飛行班の皆さんが叫ばれた推測は正しいですわ。キバノホムラの発射方向は、ガイオウガの顔の向きで決まるのではありません」

     東雲・ありす(小さな魔法使い・d33107)は、全員に伝えられたキバノホムラについての情報を復唱する。
    「ガイオウガの口の炎の中に、うっすらと見える『光の牙』の向きが、キバノホムラの発射方向なんだね。じゃあ、進路を作るよー!」
     ありすは箒で空を飛び、緒戦で傷ついた人達の為の退路を作ろうとする。飛行班達の努力によりキバノホムラの射線を見切る事ができなければ、退路の確保は混乱を極め、死傷者の数は遥かに膨れ上がっていたことだろう。

    ●キバノホムラ第一撃
    「よし、こっちに来たぞ……!」
     クレンド・シュヴァリエ(サクリファイスシールド・d32295)、賽目・茶羅(言葉盛々マン・d36537)、柏葉・宗佑(灰葬・d08995)、提橋・千珠(ダルマーニャ・d11268)からなる【キバノホムラ対策班α】 は、キバノホムラの射線が真っ直ぐに「自分達」に向けられた事に、キバノホムラ対策作戦の成功を確信した。
     彼の周りには、他の灼滅者達から集められた、33体の「サーヴァント軍団」が展開していた。
     サーヴァントは倒されても、主人たる灼滅者が健在であればそのうちに蘇る。それは当然、ガイオウガ側も承知の上だ。
     だがそれは、ガイオウガが「今回の戦いに勝利する事」についての重要事では無い。サーヴァントが戦闘中に蘇るわけではないのだから、とにかく頭数を減らすことはガイオウガにとっても友好だったからだ。
     とはいえ、サーヴァント部隊だけでは、キバノホムラを引きつけることは叶わなかった。一撃目の被害を最小限に抑える努力は叶いつつも、非情なる一撃目が、クレンド達も含めた、灼滅者の一群に放たれる……!

    「おれたちを救ってくれた恩は忘れません……おれの役目は、続く皆さんをできるだけ無傷で送り届けること!」
     七不思議使い、四方塚・梔子(特異点の雨・d33353)は、ガイオウガの口が大きく開き、自分達の前にキバノホムラが放たれようとしているのを見て、逃げること無くその場に立ちはだかった。
     既に、これを予見して最大限の防御力上昇は施しているし、逃げてこの方面の戦力が減れば、想定外の方向にキバノホムラが放たれるかもしれないからだ。
     ガイオウガの口内に、光り輝く炎が集積されてゆく。
     その凄まじい光量に、もはや眼前の竜種の姿すらもよく判別できない程だ。
     だが、杜羽子・殊(嘘つき造花・d03083)は持ち場を離れず、キバノホムラの射線上で戦い続けていた。
    「死なないよ。死ぬ覚悟なんてさらさら無い。わたしは生きる為にここにいるし、殺さなきゃ行けない相手に、まだ会えていないから」
     殊はすれ違う仲間達と共闘しながら、発射の時を待つ。

    「場合によっては、命を捨てることも覚悟しないといけないですね」
     白雪・姫乃(影繰の巫女・d01193)もまた、ぎりぎりの戦いを続けていた。
     キバノホムラの発射が、ただそれだけで終わる筈が無い。敵は、キバノホムラによって壊滅状態に陥った陣営にトドメを指す為に、すぐさま追撃を仕掛けるだろう。ならば、キバノホムラ発射の前に一体でも多くのイフリートを倒し、追撃の手を緩めねばならない。

     一瞬の、不自然な程の静寂の後。
     凄まじい轟音と共に、遂に、最初のキバノホムラが放たれた!
     ガイオウガの口から放たれた白色の閃光が、クレンド達【キバノホムラ対策班α】 を中心に、数多くの灼滅者達を飲み込んでゆく。
     キバノホムラの直撃を受けた戦場は、たちまちのうちに大地が沸騰して蒸発し、膨大な破壊的サイキックエナジーの奔流となって、さらなる殺戮をもたらす。
     戦場は、光り輝く炎の地獄と化した。

    光の奔流は、【MM破片対処班】の右翼をも飲み込んだ。
    「くっ、ボクたちも巻き込まれたか……!」
     天からは閃光が降り注ぎ、大地は赤く沸騰する。
     目立たぬ服装でキバノホムラからの回避を考えていた経津主・屍姫(無常ノ刹鬼・d10025)であるが、喰らってしまった以上は、被害の拡大を食い止めなければならない。咄嗟に近くにいた犬童・蘭珠(バカって言うなー・d29977)と連携を取り、激しい痛みの中で戦場を見据える。

     そう、このキバノホムラもれっきとしたサイキックである。何らかの超自然的な力により、敵味方を選別する能力を持っているのだ。
     白きカタストロフの中、ガイオウガの破片……竜種イフリート達が、灼滅者の息の根を止めるべく追撃を仕掛けてきた。
    「死ぬんじゃねえ! あたしたちは、明日生きる為に今日戦ってんだ!」
     全身を砕かんばかりの痛みの中、白・美沙希(右手に破壊を左手に安楽を穿て・d19438)は仲間達にヒールを掛け続ける。
    「生きて帰ろう、その為に僕達は今ここに居る。ここで戦ってるんだ」
     油川・昌(ミスターエレクトロニクス・d18181)は、一撃目のキバノホムラを受けた灼滅者が少数であった事に感謝し、閃光で前後左右も分からぬ中、どうにか退路を切り開こうとする。

    「命を懸ける覚悟はしたが、ここで置いていけるほど安かねえんだよ。ヒトの命の炎の熱さを!護り刀を!なめんじゃねえぞ!!」
     敷島・雷歌(炎熱の護剣・d04073)は、その驚くべき膂力により迫り来るイフリートを無敵斬艦刀『富嶽』で斬り捨てる。
     そのまま退路を切り開き、戦場を離脱しようとするが、既にここまでの戦いで前線を張っていた疲労が彼の脚を鈍らせる。
     それを助けようと、氷室・ゆき(君に幸あれ・d34588)は怪力無双で雷歌を抱え上げる。
     だがその行く手には、新手の竜種イフリートが立ちふさがっていた。
     戦場でバッドステータスの付与に専念していたゆきに、この新手と対峙する力は残っていない。絶体絶命と思われた、その時。

    「盾となろうぞ」
     魔壁・てんさい(様・d21929)が、竜種イフリートの行く手に立ちはだかる。
    「俺様は、てんさいさまだ!!」
     てんさいの周りに、ガイオウガの『大地の力』が集まってくる。彼は直感的に理解していた。その力が、彼の知る『ご当地パワー』と同質のものであることを……!
     てんさいは瞬く間にご当地怪人へと変身し、植物の力で沸騰する大地に根を張り、味方の退路を確保してゆく。

    「スピネル、こっちだ!」
     狩生・光臣(天樂ヴァリゼ・d17309)は、サーヴァントを近くに呼び寄せつつ、闇落ちした仲間の背後で味方のヒールに徹する。清めの風がMM破片対処班を包み込んでゆく。
     型破・命(金剛不壊の華・d28675)も、自チームが生き延びるべくひたすら回復に徹するが、キバノホムラはまだ弱まる気配もなく、灼滅者達を容赦なく焼き滅ぼしてゆく。
    「回復が間に合わない……やるしかないのか!?」
     メディックの紅月・チアキ(朱雀は煉獄の空へ・d01147)が、キバノホムラの砲撃で限界に達し次々と倒れていく仲間を前に、己の闇堕ちを覚悟した。魂の中より黒き翼を開放しようとした彼を、しかし留める者がいた。

    「ここが、踏ん張りどころだな」
     ダイナマイトモードによる派手な服装に身を包んだ斎倉・かじり(筋金入りの怠け者・d25086)が、チアキを押しとどめたのである。
     同時に彼は、一匹の鼠の如き姿のイフリートへと、闇落ちしていく。木霊スル燐火と化し、次々と敵の追手を撃破していく彼を見、その意思を無駄にするまいと、チアキは速やかに戦場を撤退する。
     近江谷・由衛(貝砂の器・d02564)は、自分達のチームがキバノホムラの狙いとなった事を察知したと同時に、他陣営からなるべく離れるように回避行動を取っていた。それが結果的に、【MM破片対処班】の中央部隊を一撃目から遠ざけるという結果に繋がったのかもしれない。

    「……でも、まだ死んじゃだめだよ!生きて帰ろ!」
    「死ぬ気で戦うなよ、俺達、生きる為に戦ってんだから!」
    「この手が届く、その中の誰一人として殺させはしません!」
     自らもキバノホムラの直撃を浴びながら、その奔流の中で、初食・杭(メローオレンジ・d14518)、枷々・戦(異世界冒険奇譚・d02124)、普・通(正義を探求する凡人・d02987)達メディック班は、由衛のようにやや離れた位置の仲間をも救い、撤退に導いてゆく。
     だが、なおもガイオウガの破片達は、キバノホムラの中を追撃してくる。

    「脅威に向かい散ったとなれば、無価値なわたしでも言い訳が立つというもの。
     さあ、参りましょう。わたしを殺しに」
     公庄・巫音(停滞の迷い刃・d19227)のような人間が居なければ、全滅の運命は免れなかったであろう。
     生き残ることを一切考えない、捨て身の覚悟を決めた巫音は、鬼神変と月光衝を駆使し、イフリートの群れに斬り込んでゆく。
     そのウデは鬼の如く変わり、頭部からは黒き角が姿を現す。
     鬼神の如き働きで、巫音は無数のイフリートを次々と灼滅してゆく。
     ……だが、やがて。
     自らが仕留めた、おびただしい数の亡骸の上で。
     巫音もまた、その短い生涯を終えたのであった。

    「クレンドクン、よくやった。さあ戻るぞ、生きるんだ」
     ラビリンスアーマーに身を包んだ白石・作楽(櫻帰葬・d21566)は、【キバノホムラ対策班α】でサーヴァントを指揮したクレンドを見つけ出し、保護する。
     爆心地に居たクレンドは、全身に無残な傷を負っていた。
     自らの負傷も厭わず、作楽はクレンドを抱きかかえると、命からがら戦場を後にしたのであった。

     先程まで仲間達のいた場所が、巨大な光と炎の壁と化している。
     灰慈・バール(その魂は無限の物語を織り成す・d26901)の咄嗟の判断により、チーム【業賭】は、すんでのところでキバノホムラをかわす事に成功していた。
     しかし、それによって敵の攻撃の手が緩むわけではない。炎の壁を突き破り、イフリート達が続々と襲い掛かってくる。下乃森・藩茶(中学生殺人鬼・d34680)と佐竹・芹那(悪魔に仕える女王・d31142)も懸命に応戦するが、地力と数の差でじわじわと追い詰められていく。そして……絶体絶命の窮地に追い詰められた瞬間、芹那に戦慄が奔る。彼女には、「彼」の考えが分かってしまったのだ。
    「お待ち下さい大王さま! 私は、地獄の果てでもお供いたします!」
     その言葉に対し、灰慈・バールは静かにかぶりを振る。
    「物語を継ぐ者がいる限り、我に死はない。
     魂が受け継がれる限り、我に死は訪れない……!」
     バールの全身をデモノイド因子が埋め尽くし、悪魔の如き姿へと変貌する。
    「征け、地獄の焔すら超える者達よ!」
     闇堕ちしたバールは、【業賭】や周囲の灼滅者達にそう声を掛け、周辺のイフリートを一掃すると、さらなる戦場へと、己が身を投じていった……。

    『我が身を清めよ、忘却の河よ』
     チーム【蒼鳥】の新路・桃子(崩斬・d24483)は、キバノホムラの炎の中で、影絵の如き姿のシャドウへと変貌を遂げていた。
     遊撃部隊として、深手を負いつつも多くのイフリートを仕留めたクラッシャーの影守・討魔(演技派現代忍者・d29787)が、キバノホムラの直撃で絶命の危機に陥った時、桃子は自然にこの姿を選択していた。

    「……だが、早く脱出しなくては!」
     熊谷・翔也(星に寄り添う炎片翼・d16435)とレイラ・サジタリウス(花影の紡ぎ手・d21282)は、脇目も振らず【蒼鳥】全員の撤退を決定する。闇堕ちは大幅な戦力増強となるが、戦闘不能になれば「灼滅」され命を落としてしまう為だ。
     桃子が闇堕ちしなければ、討魔の命は失われていた。だがこのままでは桃子が死んでしまう。

    「口惜しさは残るけど…あんまり命を粗末にすると怒られそうだもんね」
     ユリアーネ・ツァールマン(ゴーストロード・d23999)は、キバノホムラに焼かれながら、後方に血路を切り開けば、予めガイオウガの動向から安全圏の場所を推測していた四方祇・暁(ヤングブレード・d31739)が、その場所に【蒼鳥】の皆を誘導する。
    「我が剣と同じく、我が称号も【熾天狼】……天に抗う狼牙でござる。されど、十分な首級を挙げホムラも受けた。深追いは避け、後は仲間達に託すでござる」

    ●狭間にて
    「キバノホムラが、止んだ……!」
     光り輝く炎が消えたのを確認し、巴衛・円(くろがね・d02547)はキバノホムラの被害地域に向かう。
     当初の予定通り、そこに戦える灼滅者は残っていなかった。
     闇堕ちした灼滅者達は殆どが上手く逃げ切り、灼滅の危機を免れたようだが、直撃を受けた灼滅者達は、その全てが継戦能力を失っていた。
    「追撃を、止めなければ……!」
     ヴィント・ヴィルヴェル(旋風の申し子・d02252)は、巴衛・円や他の灼滅者達に呼びかけ、避難誘導チームを結成する。
     イフリート達は、キバノホムラの中でも問題なく活動した上で、今まさに、力尽き倒れた灼滅者達の息の根を止めようと殺到している。
     箒飛行で素早く被害地域に駆けつけた穂都伽・菫(煌蒼の灰被り・d12259)は、ディフェンダーとしてイフリート達の前に立ちはだかり、攻撃を引き受けつつ、戦闘不能者達に撤退の指示を出す。
     迅速な行動と決断が、多くの戦闘不能者を救いつつあった。
     クリミネル・イェーガー(肉体言語で語るオンナ・d14977)は、襲い来る敵を一体づつ確実に迎撃する。こちら側にキバノホムラを受けた不利があるとはいえ、イフリート側にもここまでの戦いの負傷が蓄積している。クリミネルは状況を素早く把握し、弱った個体から順番に、着実に灼滅してゆく。
    「この戦での死傷者数は最小限にしたい…
     誰もがそう思っているだろう。俺もだ」
     照宮・与壱(農耕騎士マロニエパッション・d08239)はあえてここまで戦闘を避けていた。それは、必ず必要となる避難活動に全力を注ぐためだった。その瞬間とは、まさに今である。
     同じ戦場にいた矢神・桐子(元気がボルケーノ・d33934)と一緒に、怪力無双を駆使して多くの戦闘不能者を抱え上げ、迅速に安全圏へと運び出す。桐子は同時にディフェンダーとして敵の追撃を止めることも忘れない。
     志那都・達人(風祈騎士・d10457)はその実力によって彼等に助力し、同時に「次の局面」に思いを馳せる。
     ここに二撃目のキバノホムラを放たせてはならない。言い方は悪いが、必ず放たれる二撃目を受けるべき「囮」を、決めなければならない。
     その認識は、ハンドフォンで周辺の避難指示を行っていた黒木・白哉(モノクロームデスサイズ・d34450)にも共有された。
    「最善の注意を払ってくださいねッ!!」
     白哉は救助版や後詰めの灼滅者達と連絡を取りつつ、負傷者の撤退を急ぐ。
    「あの時決着がつけられなかったのは俺達の責任でもある。
     だからこそ……この戦いを避けるわけにはいかないんだ」
     秋篠・誠士郎(夜蒼鬼・d00236)はソーサルガーダーを自らに掛け、二撃目から戦闘不能者達を遠ざけるため、敵の蹂躙を食い止める壁として立ちはだかる。決着を皆に託し、責務を果たす。それは、武蔵坂学園に来て長い間、守り手として役割を務めてきた己への矜持でもあった。
     東屋・紫王(風見の獣・d12878)は、一撃目のキバノホムラを冷静に観測し、調査している有志達に情報を提供する。報告を終えた後は、敵の攻撃をなるべく避け、戦闘不能者の救助に専念する。
     先行突撃部隊の戦いはなおも続く、二撃目に備え体力を温存する人員も、必ず必要となる状況であった。
     死ぬ覚悟で負傷者を守るつもりでいた大广邪・透火(大魔夜答唄・d36304)は、一撃目のキバノホムラの誘導が思惑通りに成功した事を感謝した。お陰で、これだけの戦闘不能者が死屍累々と横たわる状況にも関わらず、イフリートの追い打ちで絶命した灼滅者はまだ存在しない。
    「できる限り、遠くまで……!」
     キバノホムラの終了を見計らい、リコリス・ユースティティア(正義の魔法使いアストライア・d31802)は戦闘方針を素早く転換する。
     大きな「網」をくくりつけた箒にまたがる彼女を見て、皆その意図を把握したようだ。先程偵察を行っていた魔法使い達が協力し、大量の戦闘不能者達を、複数の箒で吊るした網に収容し、そのまま戦場外へと輸送する。積載人数の都合であまり速度は出なかったものの、それでも救護活動の効率はかなり改善した。
     神楽・三成(新世紀焼却者・d01741)のセイクリッドウインドが戦列にばら撒かれる。救助活動中でも、イフリートの攻撃は止まらない。それどころか、想定通りとは言え戦線の一端が崩壊した今、イフリート達はますます攻勢を強めてくる。
    「絶対に、誰も死なせない……!」
     夏目・サキ(繋がれた桜の夢・d31712)は、イフリートの群れから戦闘不能者達をかばいつつ、二撃目のキバノホムラの兆候に目を凝らす。それは、先の化身戦に対する、彼女の責任感の現れであった。 
     虹真・美夜(紅蝕・d10062)と迫水・優志(秋霜烈日・d01249)も同様に、二撃目を警戒していた。キバノホムラの発射情報や、各グループの優勢・劣勢等を可能な限り把握し、割り込みヴォイスで情報を共有してゆく。

    「今だ、行くぜっ!」
     緋室・赤音(レッドゾーンガール・d29043)やユーヴェンス・アインワルツ(優しき風の騎士・d30278)ら【フィニクスA】が、戦場の中心に躍り出る。彼等は一撃目の戦闘不能者を蹂躙から救うため、ここまで待機していたのだ。
     ラビリンスアーマーを幾重にも張り巡らせた赤音が戦端を開き、ユーヴェンスが途上の戦闘不能者を怪力無双で救い集め、同じく怪力無双を扱う後詰めの居木・久良(ロケットハート・d18214)へと、手際よく手渡してゆく。

     だがそれだけの万全な準備であっても、激しい咆哮を挙げながら蹂躙するイフリートの群れを押しとどめる事は、極めて困難であった。
    「加具土、クロ助……!」
     同じく【フィニクスA】に所属していた神鳳・勇弥(闇夜の熾火・d02311)が、周辺のサーヴァント2体諸共イフリートの放つ炎の渦に巻き込まれて倒れた時、背後に濃密な闇の気配が膨れ上がる。

    「灼滅者を、仲間を踏みにじる世界を……俺は呪いながら殺す」
     桃野・実(水蓮鬼・d03786)は、勇弥達を倒した炎の渦をその身に吸収し、ひとりのご当地怪人へと変身を遂げる。
     日本最小の県、そして美しく豊かな内海をゆかりとする彼のガイアパワーが、大地全てを象徴するガイオウガのそれを、今、遥かに凌駕したのだ。
     膨れ上がるご当地パワーがガイオウガの力をも飲み込むのを目撃しながら、チーム【星火水】の3人は、後に控える救護班の本隊を守るべく、イフリート達との戦線に現れた。彼等は特に「強大な竜種」を対象とし、集中攻撃を仕掛けてゆく。
    「冷却空間、展開!」
     泉・星流(箒好き魔法使い・d03734)の号令と共に、泉・火華流(自意識過剰高機動装甲美少女・d03827)、枸橘・水織(あくまでも優等生な魔法使い・d18615)も含めた3人は、フリージングデスの三重結界を構築する。そして、大きく体温を奪われた竜種達を、火華流の二連クロスグレイブ等で撃破してゆくのであった。

     やや時が過ぎて、戦いは更に混迷を極めていた。
     イフリートの群れがいよいよ救護班の本隊に殺到しようとしたのをしたのを見て、ライドキャリバー「ぶんぶん丸」に騎乗しての救護活動を行っていた住矢・慧樹(クロスファイア・d04132)と雪片・羽衣(朱音の巫・d03814)は、周辺の仲間達と共に防衛戦に乗り出す。
    「俺の炎が数段上だっ!」
     慧樹はレーヴァティンを放てば、呼応するように羽衣がサイキックを重ねてゆく。

     東海林・風蘭(機装庄女キガネ・d16178)と野老・ヒナ(ブラックハニー・d36597)は、ご当地ビームによってガイオウガの注意を引きつける作戦を立案したが、大量のイフリートの前に防戦を止む無くされる。風蘭のバスタービームとヒナの幻狼銀爪撃が周囲の敵に深手を負わせていくが、敵群の途切れる気配は無い。

     そして、戦場の別局面にて
    「……まだまだっ!」
     稲垣・晴香(伝説の後継者・d00450)と鹿島・悠(常笑の紅白・d21071)は、ふたりだけで敵の猛攻を食い止めていた。誰も気づいていなかった、灼滅者達の構築した戦線の穴を晴香が見つけ、駆けつけたのだ。
     悠は覚悟していた。そんなものを見つけてしまえば、たとえ無謀でも、晴香は向かうに決まっている。皆を守る、ひとりのプロレスラーとして。
     そして晴香は、僕の決断を否定はしないだろう。
     鹿島・悠の全身が燃え上がり、一体のイフリートと化して、敵群を押し返す。こうして、救護班の危機はひとまず救われた。

     仲間達の助力によって十全の力を発揮できる体制の整った【救護班】が、行動を開始する。
     ハイパーライダーを駆使する蔵座・国臣(病院育ち・d31009)が戦闘不能者を次々と拾い上げれば、煌燥・燈(ハローアンドグッバイ・d33378)が最前線で今もイフリートと戦う者達を治療する。

     深草・水鳥(眠り鳥・d20122)とミュオン・ミューオニウム(夜天貫く北極星・d26405)が負傷者を抱えて走れば、高野・妃那(兎の小夜曲・d09435)はその避難経路を確保する。

     目立たない出で立ちの藤川・公(リコリスの花を貴方へ・d20024)が引くリヤカーに、グレゴリー・ライネス(どこから見たって立派なゴリラ・d26911)、椎木・恋(たそがれターミナル・d19458)、蒼珈・瑠璃(光と闇のカウンセラー・d28631)が次々と戦闘不能者達を放り込んでゆく。本来ならば、治療できる者は治療して前線に戻したい所だが、キバノホムラを受けた灼滅者の中に、継戦能力を残す者は皆無であった。

     隼人・来須(カミナリ娘・d32336)や静守・マロン(シズナ様の永遠従者・d31456)もまた、リヤカーで戦闘不能者の救出に邁進する。真夜中・幎(白光のヴェルトラム・d29410)と斥谷・巧太(マリモのあんちゃん・d25390)、厳島・灯子(ウィニングランナー・d25323)がそれを支援し、五目・並(沿線の怪談使い・d35744)は負傷者さらしに巻いて背負いながら、後詰めに通信を飛ばす。

    「よし、キバノホムラを受けた灼滅者の収容完了! 戦場より撤退する!」
     平・和守(国防系メタルヒーロー・d31867)の号令により、救護班は戦場より退いた。
     しかし、彼等救護班の戦いは、これからがはじまりなのだ。
     これから先も大量の要救助者が運び込まれてくる。かれらは戦況を適宜判断しながら、十分な受け入れ体制を急ぎ構築しなければならないのだ。

     再び、ガイオウガの口が大きく開かれ、キバノホムラの充填が始まる。
     同時に、残るガイオウガの破片……竜種イフリート達も、地響きを上げて、キバノホムラに灼かれた大地の上を進撃してくる。

    「あれを全て凌ぎきれば、俺達先行突撃部隊の目的は達成だ。
     ……軍艦島で拾われた命、学園のために使うのは惜しくない!
     貴様らを、ここから先に通すものか!!」
     七不死・戯束(護身警固・d33385)の軍靴が炎を噴き上げる。
     その勇ましくも雄々しい突撃に、灼滅者達も士気を得て、次々と後に続くのであった。
     大群同士のぶつかり合い。
     サイキック飛び交う超常的な光景の中に、美しい「水晶の蝶」が舞い降りる。深手を負い闇堕ちした成瀬・樹媛(水晶の蝶・d10595)の放つセイクリッド・クロスを目の当たりにして、灼滅者達は敵軍の強さ、これが『決死戦』である事を、改めて思い知るのであった。
     こちらでも、同様の事態が発生していた。
     大規模な激突は、最初が最も危険となる。伏木・華流(桜花研鑽・d28213)はどこかのグループに加わり着実に歩を進めようと考えていたが、奇しくもイフリートの初撃に遭遇する格好となってしまった。
    「努力同好会の部室を、空にする訳にはいかないからな」
     華流の肉体がみるみる影業と一体化し、その背後にふたつの巨大な殺戮輪が現れる。純粋なるスペードのシャドウへと変貌した華流の闇は、イフリート達の炎を凌駕し、戦線を押し返してゆく。
     伏木・華流がイフリート達の突撃の勢いを殺した事により、チーム【esh】のヴィンツェンツ・アルファー(機能不全・d21004)は、自らの心臓を狙って繰り出されたイフリートの角を、すんでの所でかわすことができた。敵の攻撃を急所をずらして受け止めつつ、ズタズタスラッシュで着実に傷を刻んでゆく。
     伴・創(子不語怪力乱神・d33253)も、続く軽田・命(ノーカルタノーライフ・d33085)、アガーテ・ゼット(光合成・d26080)と行動を合わせ、一体づつ確実に敵戦力を削ろうとする。
     創の斬影刃、アガーテのDCPキャノンが堅実に戦線を押し上げてゆくが、

    「間に合わない、かもしれないですね」
     軽田・命は、戦場の全てを見渡していた。大地の力が彼女に注ぎ込まれ、力がみなぎると同時に、この激突で「灼滅者の誰かが死ぬ可能性」のある事を感じ取る。
     ならば……。
     彼女は、かつて変貌しようとしていた姿を思い出す。
    「鶴舞う形の……群馬県!」
     彼女の周囲、空中に、魔力を秘めた殲術上州かるた全44枚が展開される。
     かつて灼滅者に救われた、この命。
     同行者達の眼前で、遂に上州かるた怪人の姿を得た軽田・命は、他の闇堕ち者と共に、戦線の中核を担ってゆくのだった。

    「【MM破片対処班】左翼、斬り拓かせて頂きましょうか!」
    「さぁ、断罪の時間ですの!」
    「進むは激戦、退けば地獄……ならば前に進むのみ!」
     刃渡・刀(伽藍洞の刀・d25866)、黒嬢・白雛(天翔黒凰シロビナ・d26809)、片倉・光影(風刃義侠・d11798)の号令と共に、【MM破片対処班】左翼が一斉攻撃を仕掛ける。総勢15名を2つの戦闘集団に配分し、連携によって敵軍を切り崩す作戦なのだ。
     3人は皆、ディフェンダーである自分達が崩れて戦線が崩壊しないよう、お互いにシャウトや位置取りで有利な戦況を勝ち取る。

    「色々な者達がくれた最後のチャンスだ。全力で行くぞ!」
    「ふふふ……オトモしまスよ」
    「何があっても、終わらせたりなんかしないよ」
     十文字・瑞樹(ブローディアの花言葉のように・d25221)、可罰・恣欠(リシャッフル・d25421)、エルカ・エーネ(うっかり迷子・d17366)を前衛とする第2集団も、素早く戦場に展開する。
     瑞樹の愛刀十文字が眼前のイフリートを斬り付け、恣欠はダメージの多い敵を執拗に付け狙う。エルカはウイングキャットの「プリムラ」と共に、無線等の連絡手段も利用した、戦線バランスの維持に務める。

    「オレは仲間を……オレのヒーローに、花道を作ってやる!」
     新妻・譲(灰・d07817)の決意に、沢村・静人(高校生ファイアブラッド・d36954)が乗っかる。
     二人は無線で情報を収集しながら、臨機応変に戦線を移動し、敵戦力を削っていく。そして。

    「その、なんだ。道を開けてもらおうか」
     彼等の側を通りがかった九条・九十九(クジョンツックモーン・d30536)が、あと一撃で仕留められそうなイフリートに対し、バベルインパクトの重撃を叩き込む。
     先程の一撃目でキバノホムラ発射の兆候を知った羽場・武之介(滲んだ青・d03582)は、飛行状態で無くても観測は可能と判断し、飛行状態を解除して降り立ち、スナイパーとして戦列に加わる。
     同じくスナイパーの位置につく茨木・一正(鬼成る人の形・d33875)が、五星結界符やグランドシェイカーを使い、確実に敵群の動きを鈍らせてゆく。

    「この状況でも、まだ押されるの……!?」
     霊犬リルを前衛に据えて回復要員に徹していた椛・深夜(月星虹・d19624)だが、あまりの敵の数と勢いに戦慄する。やはり、ガイオウガの破片ひとつひとつがイフリートの上位種「竜種」であるだけの事はある。これだけの陣容を誇っても、まだ撃ち負けているのだ。しかもこれは、まだ初戦である。
     庭月野・綾音(辺獄の徒・d22982)は、敵群と距離を置きつつも、隙を見て踏み込み、神霊剣で敵の魔法防護を叩き斬っていた。
     だが、敵の猛攻により回復役に回ろうとした矢先、敵イフリートの首領格、「赤熱竜バラーガ」の一撃を受けてしまう。 

     溢れ出す鮮血に染まり転がり落ちた綾音を見て、牧野・春(万里を震わす者・d22965)は覚悟を決める。
    「こんな所で私が、『俺が止まるわけにはいかねぇんだよ!』」
     春の髪が赤く染まり、闇の人格が顔を出す。
     その体を騎士鎧が多い、『弱者の支配者』へと変貌した春が酷薄な笑みを浮かべる。
    「良い顔をしている。我が相手に不足はないな」
    「黙れ! お前を『支配』するのは、この俺だ!」
     たちまちのうちに始まった、春とバラーガの激しい戦い。
     それに横槍を入れようとするイフリート軍の前に、4人が立ちはだかる。
    「焔迅、ベルガンド、盾になって奴等を食い止めるぞ!」
     仁王頭・角夜(千刺万咬・d22515)は、六車・焔迅(彷徨う狩人・d09292)と自分のライドキャリバーに声を掛け、殺到するイフリートの眼前を塞ぐ。

     その背後から肆矢・獅門(災骸回路・d20014)と八嶋・源一郎(颶風扇・d03269)らスナイパーコンビが、ヒールを施しつつも、着実に打撃を刻み続ける。

    「……そろそろ来る! 破片の一体でも多い撃破を!」
    北条・吉篠(緋の風車・d00276)、華槻・奏一郎(抱翼・d12820)、華槻・灯倭(月灯りの雪華・d06983)からなるチーム【縁】は、戦いの中でも観察を続け、もっとも早く、二撃目のキバノホムラの兆候を発見した。
     炎の中に浮かぶ牙は、幸いにも、撤退した灼滅者たちとは違う方向を指していた。
     やはりガイオウガは、自らの戦いが有利となるよう、現時点で最も強い集団を駆逐するように狙いを定めるようだ。
     有利を捨てても敵の死にこだわるような狂気が無い事には安堵したが、それは同時にガイオウガが、力だけでなく、冷徹な自然の本能に応じて的確にこちらの弱点を突いてくる事をも、表しているのだった。

    「アカトラミサキ、彼女が繋いだ一戦を無駄にはしません。そうでしょう?」
     久織・想司(錆い蛇・d03466)と桜谷・玲(桜華・d33824)は、チーム【誄】の一員として、他のメンバー達と共に、戦端を切り開いてゆく。何よりも死者を出さず、生きて帰る事を目指す彼等だったが、その最低限の条件でさえ一瞬の隙で永遠に奪われる、ここは、そういった戦場であった。

    「おいこらもやし(桜谷・玲のこと)、ヘンに無茶するんじゃねーですよ……って、あれは!?」
     【誄】のメディックとして後衛に控えていた四戸・志途(しとしと・d33823)らの頭上に、無数の『炎のつらら』と呼ぶべきサイキックが降り注ぐ。
     同じくメディックである会沢・夢叶(永遠の翼・d29349)が頭上を振り仰ぐと、そこには、天空高くを舞う飛竜……飛行する竜種イフリートの群れがいた。

     ひときわ大きな飛竜が名乗りを上げる。
    「儂の名は『霧島山のゼントロン』! ヌシら相手に隊列など不要! このまま上空から押し潰してくれるわ!」
     他のメディック……天宮・優太(暁月・d03258)と蓬野・榛名(陽映り小町・d33560)も、完全に裏を突かれる形となった。サイキックの選択肢が絞られた状態で格上を相手にするには、残念ながら限界があった。

    【誄】の前衛達の中で唯一、常に撤退を視野に入れていた十六夜・ミツル(影月・d12554)だけが、後衛の危機にいち早く駆けつけることができたが、すでに陣容は崩壊状態であり、炎のつららに刺し貫かれた仲間達を抱えて逃げるだけでも精一杯。
     しかも、前衛は善戦しているものの、いまだ戦場はイフリートの優勢。半ば包囲されている現状で、彼等を連れて撤退する事は不可能であった。

    「……凄い偶然もあるもんだね。キミ、霧島のイフリートなんだ」
     天空を飛翔するゼントロンにそう話しかけた石動・茜歌(花枯守人・d06682)を見て、ゼントロンは驚きの声を上げる。
    「その隠しきれぬ汚らわしき無辜の毒……貴様、もしや『ハナカラスモリビト』の血族か!」
    「兄の事も、知っているんだね……みんな、迎えになんて来なくていいよ。帰れないかもしれないからね」
     そう言うと、茜歌の姿は闇に染まり、美しい、決して枯れることのないミヤマキリシマに覆われてゆく。

    「闇堕ちしたのか、茜歌! ……だが活路を開くには、これを利用するしかない。
     死んでたまるか。オレは臆病で、生きたがりなんだよ!」
     城・漣香(焔心リプルス・d03598)が天空目掛けて吠える。
     普段の楽しく明るいふるまいは、繊細な心を隠す現実逃避。城・漣香は、心の外側に築いた積み木を壊し、己の弱い心を解き放つ事で、真の強さを手に入れるのだ。

     闇落ちしたふたりが、大地を蹴って天空に舞う。
    「ぬうっ、バカな! それ程の力を、人の子供が持ち得るのか……!」
     驚きに牙を向きながらも、ゼントロンは膨大な配下の飛竜を従え、彼等と激しい空中戦を開始する。
    「闇堕ちが2人居て、まだ戦況はこちらの不利……『それやったら』!」
     戦闘で重傷を負い絶体絶命の窮地に立たされていた近衛・一樹(創世のクリュエル・d10268)。その口調が急に変貌を遂げる。
    「……『覚悟は出来とるか』?」
     近衛・一樹は背中からヴァンパイアの翼を生やし、異形のやりを手に飛翔。飛竜達を次々と血祭りに上げてゆく。
     天空の戦いと、その余波にさらされ孤立する地上の仲間達を見て、陣内・統司(冬に囚われし・d25261)は覚悟を決める。

    「一度死んだ身だ。無駄に死ぬ事さえなければそれで良い」
     人造灼滅者たる彼は、その姿だけでなく、全ての力を解放する。
     北欧神話に語られるそれにも似た、身の丈3mを超える「霧の巨人」。
     それが、一般人だった彼が「病院」で得た力の全てだった。
     統司が天空高く掲げた両掌から、凄まじい吹雪が巻き起こる。
     それは天空を駆ける飛竜達を直撃し、遂に天空の戦いの天秤は、闇堕ち灼滅者達に傾き始めた。
    「おのれ、おのれおのれおのれ!!!!」
     配下の飛竜を失い、己の死をも覚悟したゼントロンの絶叫が響く。せめてひとりでも道連れにせんと、汚れし血族である石動・茜歌を狙う。
     そんなゼントロンの耳に、陣内・統司の静かな声が聞こえる。
    「もしあいつがこの場に居たら、あいつも同じ事をしただろう」
     陣内・統司は仲間をかばってゼントロンの眼前へと跳躍し、致命的なその一撃を全身に受け止め、そのままゼントロンを羽交い締めにする。
     そのまま、
    「凍れ」
     統司の一声と共に、統司とゼントロンは諸共に凍結し、落下によって粉々に砕け散った。

     超越者達の戦闘を見届けた時田・六徳(ナライ・d04713)は、周囲の灼滅者達に告げる。
    「彼等のくれた好機を見逃してはいけない。撤退だ!」

     他のグループとは大きく距離を取った場所に、彼等【システマ教団】は位置していた。彼等はインカムで独自に連絡を取り合い、仲間の状況を綿密に確認しながら、この乱戦状態を生き延びていた。
     可能な限り安全に行動し、戦闘不能になっても歩けるのならば自ら撤退する。キバノホムラの射程範囲に入ることも避けながら、一体でも多くのイフリートを灼滅し、決死戦に貢献する……それが、彼等が自らに架したルールであった。
    「右舷方向、竜種イフリート確認しました!」
     空飛ぶ箒で戦況を確認していたヴィントミューレ・シュトウルム(ジーザスシュラウド・d09689)が、眼下の本隊に報告する。
    「左舷方向からも、敵の接近を確認しましたよぉ☆」
     同じく飛行中の船勝宮・亜綾(天然おとぼけミサイル娘・d19718)が、自らを予言者の瞳で増強しつつ、偵察行動を補佐する。
     戦況を把握したシステマ教団は、ヴィントミューレによる戦況指揮の元、進軍を開始する。
    「なつくんは前へ! 私は、ここから!」
     メディックに位置した天城・理緒(黄金補正・d13652)は、前衛の面々にシールドリングを掛けていく。指揮のふたりもそれに合わせ、戦況に応じて着陸し、味方をエンチャントで保護してゆく。
    「ヒィェー!! ヴィネグレットー(ライキャリ)、敵が来たぞー!」
    「闇堕ちはしないよ! いつでも逃げられる位置で、長く戦おう!」
    「皆悟られるなよ。よく観察し、包囲される事無く、一匹でも多く仕留めるんだ」
     須野元・参三(絶対完全気品力・d13687)、赤星・緋色(朱に交わる赤・d05996)、白石・明日香(教団広報室長補佐・d31470)達が、僅かに後退しつつ、右舷方向の敵を担当する。ライドキャリバーのヴィネグレットはこまめに機銃掃射を行い、イフリート達の足並みを乱す。
     参三のバスタービーム、緋色のフォースブレイク、明日香の妖冷弾を主軸に、じわじわと一体づつ削っていく。

    「それでよい。倒すペースは遅くとも、十分な数を引きつけつつ戦闘を継続すれば、全体への多大な貢献となるのだ!」

    「了解しました教祖様。一人も死ぬこと無く、堅実に行くのじゃ!」
    「姫月さんかわいい(了解の意)」
     左舷方向の敵を担当するワルゼー・マシュヴァンテ(松芝悪子は夢を見ている・d11167)、、倉丈・姫月(白兎の騎士・d24431)、ジュラル・ニート(メトロシティ市長・d02576)も、同様の方法でじりじりと敵を引きつけ、少しづつ撃破してゆく。この作戦は、かれらの実力の高さもあり、堅実に多くの敵を引きつけ、高い成果を収めたのであった。

    ●キバノホムラ第二撃
    「さあ、撃ってこい……!」
     大きく開かれたガイオウガの口を前にして、ホテルス・アムレティア(斬神騎士・d20988)が呟く。間違いない、二度目のキバノホムラが放たれようとしている。ここを凌げば、必殺の焔は弾切れだ。覚悟と共に【梁山泊】 の灼滅者達が構えを取るのとほぼ同時、彼らの視界を白き光が塗り潰した。
     足元の大地が一瞬で煮えたぎり、頭上からは圧倒的な熱と光が降り注ぐ。前後左右も分からないほどの炎獄の中、近くの仲間の盾となり、倒れそうになりながら八重垣・倭(蒼炎纏フ撲天鵰・d11721)は叫ぶ。
    「頭領をはじめ、多くの奴らが紡いでくれた勝機の糸……灰にしてなるものかよ!」
    「勿論!」
     叫び返した崇田・悠里(旧日本海軍系ご当地ヒーロー・d18094)が天魔光臨陣を展開し、仲間達をひたすら回復する。全ては、ご当地ヒーローとして笑顔を守り未来を掴み取る為に。
     その傍らを守るのは、ヴァーリ・マニャーキン(本人は崇田愛莉と自称・d27995)だ。キバノホムラの奔流の中、灼滅者達を葬り去ろうと向かってくる竜種イフリートを迎え撃つべく、ヴァーリはその腕を鬼腕へと変える。
     その間に崇田・來鯉(ニシキゴイキッド・d16213)が倭に肩を貸し、傷付いた者達を先導して撤退を開始する。ヴァーリ達が必死で切り開いてくれる道を、無駄になどできない。
    「五体満足で帰るぞ、皆の衆」
     森沢・甲斐(元東国無双の美人・d29651)も仲間達に付き添いながら、少しでもその傷を癒そうと清めの風を吹き渡らせる。キバノホムラは、未だ収まる気配がない。視界も満足に確保できない中、それでも灼滅者達は支え合って撤退していく。
      彼らに手は出させまいと、南谷・春陽(インシグニスブルー・d17714)は果敢に竜種に向かっていき、退路を切り開くべく奮戦する。
    「頭領が守った場所に、皆と生きて帰るわよ!」
     声に、【梁山泊】 の仲間達が息絶え絶えながらも応と答える。まだ、ここで倒れるわけにはいかない。

    「敵集団、接近!!」
     キバノホムラの影響を受けることなく、イフリート達は攻め寄せ続けていた。翌檜・夜姫(羅漢柏のミコ・d29432)が発した警告に、朝山・千巻(青水晶の風花・d00396)は静かに頷いた。
    「千巻ちゃん……」
     こちらを守ろうとしてくれている紗守・殊亜(幻影の真紅・d01358)の不安げな声に、千巻は小さく頷く。
     千巻の率いる【MM破片対処班】中央部隊は、キバノホムラの初撃を浴びた左翼を庇うように位置を移していた。
     先程、灼滅者達を襲ったキバノホムラの威力は、覚悟を決めて来た千巻達にとっても戦慄を隠せないものだ。さらなるイフリートの襲来は、班の仲間達に致命的な事態へと発展する可能性を充分に有していた。だが、千巻
    「ここを通させるわけにはいかないわ。反撃を!」
     ここで自分達が傷つく……それもまた、勝利への道筋なのだから。
     真馳・空(スクリプトキディ・d02117)は、急激に擦り減っていく生命力に苦痛の声が漏れるのを堪えながら、イフリート達へと拳を叩きつける。生命を守るために貼り付けていた防護符が、キバノホムラの前にたちまち焼き尽くされていく。
    「あれは……まずいぞ」
     中神・通(柔の道を歩む者・d09148)は、移動するイフリートの群れの中に指揮官らしき一際目立つ巨体を見つけていた。
     その視線の先にいるのは、『百竜包囲陣』の指揮を執っていた個体、「百轟竜バッハジッテ」。
    「敵は、こちらを包囲しようとしてる!」
    「冗談じゃない……」
     神園・和真(カゲホウシ・d11174)は、あまりの事態と熱に目眩すら覚えた。
     キバノホムラの猛威の中、さらに百竜包囲陣に飲み込まれれば、灼滅者達を待ち受ける末路は炎の中での死以外にありえない。
    「オレ達が見つけられたのが不幸中の幸いだな。……今のうちに頭を潰しちまおうぜ」
     五十嵐・烈火(白縹・d31666)の果断ともいえる提案に、皆が同意する。
     バッハジッテが連れているイフリートの数は少ない。
     倒すなら今だ。自分達だけで撤退すれば、まだ逃げることも可能かもしれないが、そのような道を選ぶ者は、彼らの中に誰一人としていなかった。

    「潰し、穿ち、打ち壊す! 我が拳に砕けぬものなど何もない!」
     狩家・利戈(無領無民の王・d15666)が王気を激しく燃え上がらせながら吶喊。バッハジッテへの道を遮るイフリートを、その拳で殴り飛ばす。
     すかさず巽・真紀(竜巻ダンサー・d15592)の歌声が響くと、イフリートを催眠状態に陥れる。
    『……!?』
     こちらの狙いに気付いたか。
     バッハジッテは唸り声をあげる。
    「イフリート達を呼び寄せようとしてるのか!」
    「大丈夫、まだ間に合う。冷静に、冷静に……」
     自分に言い聞かせるように呟いて、笹島・輝希(不得意・d28199)は妖の槍を握りしめた。
     キバノホムラの熱に比べれば、遥かに儚い妖冷弾は、しかしバッハジッテを護衛するイフリートを貫いた。
    「お前も竜か。なら、俺の敵だッ!!」
     六堂・竜樹(騙リベルタス・d33215)の指に嵌めた契約の指環から、魔法弾が撃ち出されバッハジッテへと飛ぶ。だが、強力な竜種は、そのダメージを受けつつも後退していく。

    「まずい、足りねぇ!!」
     苦渋に満ちた竜樹の声が、班の仲間達の耳朶を打つ。
     ここでバッハジッテを逃し、包囲陣が完成すれば、班の仲間達はもちろん、灼滅者達に生じる死人の数は計り知れない。
     その明白な死を否定せんと決意した時、ロイド・テスタメント(無へ帰す元暗殺者・d09213)の体からは、死をもたらさんとする者への強烈な殺意が溢れ出していた。
    「どの様なモノでも無に帰す。さぁ、覚悟は出来ているか?」
     白熱する光の中で響いた言葉と共に、バッハジッテを守らんとしたイフリートが一瞬にして肉片と化すのを灼滅者達は見た。

    「諦めて、たまるか……!」
     言葉が漏れると共に、彩瑠・さくらえ(弦月桜・d02131)の胸にスペードのスートが浮かび上がる。
     影の如くイフリート達の間をすり抜けながらバッハジッテへと追い付き、斬りかかるさくらえ。
     その後方には、切り裂かれたイフリート達の悲鳴が残る。
     その悲鳴を上げるイフリート達を肥大化した腕で引き裂き、火の粉へと変えながら、蒼き羅刹と化したラピスティリア・ジュエルディライト(ナイトメア・d15728)は地を滑るようにバッハジッテの前へと辿り着いていた。
    「血を流すこともなしに、何も為すことはできぬ……」
     美しく蒼き鬼の爪が、竜を屠らんと翻る。

     3人の闇堕ちしたダークネスが、そして班員達がバッハジッテと死闘を繰り広げる。だが、圧倒的に有利なのは敵の側だった。
    「他のイフリート達が来るまで、あるいはキバノホムラが灼滅者達の戦闘力を奪うまで耐えきることができれば、向こうが勝つ……」
     バッハジッテの炎を浴び、焦げ落ちそうになる夕凪・千歳(あの日の燠火・d02512)の胸の奥底。心の中で炎が燃える。

    「僕の目が届く範囲で絶対に誰も死なせはしない。例えこの身が焼け焦げてしまっても未来へ希望を繋げてみせる……」
     全身からキバノホムラを上回るほどの勢いで炎を噴出させながら、千歳の変化した獣はバッハジッテを抑え込む。
     動きを止められたバッハジッテの背で、鋭い棘が一斉に発射された。千歳の全身に風穴が開き、溢れ出した血は瞬く間に蒸発した。
    「ああああ!!」
     一・威司(鉛時雨・d08891)の背から、 影刃の鴉翼が伸び、傷ついた百轟竜の喉笛を勢いよく貫く。
     そして、荒谷・耀(一耀・d31795)の手にした鋭い槍は、冷たい輝きを放ちながら、バッハジッテの瞳を貫いた。
     百竜包囲陣を司る巨竜の姿が音もなく消滅していく。それを見届けるように、千歳の亡骸もまた消えていった。
    「嗚呼……」
    「しっかりしろ!! まだやることがあるだろう!」
     死者が出た責任に押しつぶされそうになる耀を、威司が叱咤する。敵の百竜包囲陣は、完成することなく終わったのだ。

     肩で息をしながら、今にも膝をつきそうになりながら、それでも生神・カナキ(クロスクロウス・d15063)はキバノホムラに精神力を振り絞って耐える。
    「オレはかっこよく受けて次に繋げる役目っす」

     だが、あと一手分の時間を焼き続けられれば命すら危うい。それでも留まろうとする彼を、ロスト・エンド(青碧のディスペア・d32868)が押しのけた。
    「もう、これ以上誰かに犠牲の運命を押し付けるわけにはいかないね……」
     皮肉げに笑ったのも束の間、彼は蒼き魔物とその身を変えつつ仲間達を促す。今のうちに、退けと。
     頷いた火之迦具・真澄(火群之血・d04303)がカナキに素早く肩を貸し、切り開かれた退路へと身を翻す。
    「ホムラは撃ち切らせた。アタシもお前も、充分後に続く連中の礎となれたさ」
     そう言う彼女とチームを同じくするマリーアンヌ・フィロッゾ(月光・d17163)もひとつ頷き、一度だけ振り返る。
     後は、きっと後続の仲間達が彼らの役目を果たしてくれる。そう強く信じて、彼女達は残る命を繋ぐべく駆け出した。

     これで、一撃必殺の切り札はもう放たれない。役目を果たし、撤退に向かう先行突撃部隊――だが、その身をキバノホムラは容赦なく襲い続け、焼き尽くそうとする。
    「ああ、それでも怖いな」
     呟いて、石上・騰蛇(穢れ無き鋼のプライド・d01845)は闇に己を明け渡す。本当に怖いのは、戦うことよりも大切な人達を失うこと。キバノホムラによって傷付いた彼らを殺させるくらいならと、騰蛇は六六六人衆と化して襲い来る破片を斬り払う。
    「生きたい……!」
     ただひとつ自分の中にある野性的な欲望のまま、千凪・志命(灰に帰す紅焔・d09306)が炎獣と化す。灼滅者の身では切り抜けられない最後の窮地を、彼はイフリートと化すことで力ずくで押し通ることを選んだのだ。食らいついてくる竜種を逆に食いちぎるように屠って、彼は戦場を離脱していく。

    「ドイテクダサイ」
     無機質な口調で欠片に告げる壱風・アリア(光差す場所へ・d25976)の身もまた、既にシャドウと化していた。彼女の傍らに、ライドキャリバーの姿は既にない。撤退の邪魔だとばかりに叩きつけたトラウナックルが、ガイオウガから剥がれ落ちた欠片たちを打ち砕き、退路を開く。重傷者を背負った灼滅者達は、すかさず切り開かれたその道へ飛び込んだ。
     だが、敵も黙って見逃してはくれない。たちまち追ってきた竜種の前に、八葉・文(夜の闇に潜む一撃・d12377)が立ちはだかる。
    「時間なら、私が稼ぐ」
     そう言うなり闇堕ちし、殺戮人形とでも言うべき姿になった文は、竜種の追撃をその体で押さえつけ、宣言通りに仲間達が逃げ切る時間を作り出すのだった。
    「こんなところで死なせはしません」
     ここまでの戦闘で疲れた仲間達を、無事に帰さなければ。その想いが、国永・喜久乃(とっても長い・d35814)に闇堕ちを決意させた。自らをサイキックでしぶとく回復しながら、できるだけ長くと、喜久乃は退く仲間達の背を守りながら炎に耐える。
     そして、塔朴・雀路(ギロチンフィーバー・d27818)もまた、せめて皆が無事に帰れるようにと襲い来る敵に向かって立ち続けていた。
    「やー、こえぇなおっかねーな!」
     口ではそう言うが、もとより引く気はなかった。大鎌を振り回し、何人もの灼滅者達が後方へと駆けていくのを見送りながら、六六六人衆と化した雀路は笑う。――そう。命尽きる最後の最後まで、彼は退くことなく戦って果てた。
    「殿はまかせろ」
     ティート・ヴェルディ(九番目の剣は盾を貫く・d12718)が【ZMTH】 の仲間達の背を守るように、その最後方について走る。キバノホムラの圧倒的な熱量に加え、執拗に灼滅者を殺そうと迫って来る欠片の攻撃を傷負った身で受け止め続けた彼に限界が訪れるまで、そう長くはなかった。
     遂に倒れたティートを箒で拾ったジンザ・オールドマン(ガンオウル・d06183)が、少しでも被弾の可能性を落とすために撤退する隊列の中ほどへと急ぐ。
    「めーこさん、下はお願いします」
    「ええ、命大事に」
     頷いた喚島・銘子(空繰車と鋏の狭間・d00652)が警戒に当たり、もしもの時は彼らを全力で庇おうと注意深く構える。彼らが退き切り、続く主力戦闘部隊にバトンを渡すまで、あと少し。
     その『少し』の間すら与えまいと、ガイオウガの破片達が後退する灼滅者目掛けて押し寄せてくる。ここが最後の正念場と、渡口・陽羽(籠の弱鳥・d20616)がそちらへ武器を向けた。
    「これで、みんなが助かるなら……!」
     躊躇なく、陽羽は魂の奥底に眠る羅刹を解き放つ。

     その傍らを守るように、どこか竜を思わせる淫魔へと堕ちたオルゴール・オペラ(空繰る指・d27053)が並び立つ。このまま囲ませてなるものか。必ず逃がして、そして次の部隊を進ませる。決意と共にダークネスと化した少女達の猛攻が、最後の竜種を叩き潰すと同時に、二度目のキバノホムラの輝きが消えた。

    ●続く灯火
     炎に耐え切り、竜種の群れを倒し切った灼滅者達の働きにより、後続部隊が無傷のままに動き出す。ある者は先行突撃部隊を短く労い、ある者は拳を突き出してその勇気と功績を讃えながら飛び出していく。彼らこそ、この決死戦における主力――即ち垓王牙焔炉までの突破口を作る役目を任された灼滅者達だ。
    「……行って」
    「あとは、お前達が!」
    「武運を」
    「頼んだよっ」
     彼らが遺憾なく実力を発揮できるだろうことは、想像に難くない。その状況を作ったのは、他でもないこの先行突撃部隊なのだ。後は任せたと同じ学園の仲間達に意志を託して、先行部隊を担った灼滅者達は誇りと共に撤退していく。


    ●主力戦闘部隊、突撃
     巨大なるガイオウガの脚から駆け上り、胴を越え、そして頭部から垓王牙焔炉への道を切り開く。その使命を果たすべく、主力戦闘部隊の灼滅者達はキバノホムラを撃ち尽くしたガイオウガの脚へと一気に取りついた。そのまま手足の力で身体を引き上げ、ただひたすらに彼らは駆ける。上へと!
    「俺みたいな想いを誰にもさせるもんか!」
     決意と共に部隊の先陣を切るのは、椎葉・武流(ファイアフォージャー・d08137)。バーンブリンガーを履いた足でスターゲイザーを放ち、巨大なトゲの動きを鈍らせようとする彼に続いて、白木・衛(ふしぎなホイル焼き・d10440)が同じトゲに殴りかかる。
    「しゃー! 道あけんかいっ!」
     この後に続く仲間達の為、全力でこの道を切り開く。それが自分達の使命と心得て、主力戦闘部隊の先鋒たる灼滅者達は勢いよく突き進む。
    「ほらほら、君達は先急ぐんでしょ? ここはボク達に任せて!」
    「後ろは任せてほしいの」
     小岩井・かがみ(四門封殺の落とし子・d12150)と鏃・琥珀(ブラックホール胃袋・d13709)はそう仲間達を促し、後方の警戒に当たる。先行突撃部隊の奮戦により、ガイオウガの破片はその全てが灼滅されている。だが、それだけで安心するわけにはいかない。広範囲を狙う言わば砲台である火山コブも、ガイオウガの体表を自在に動き回るトゲも、常に灼滅者達を狙っているのだ。僅か一瞬視線を交わして、彼女たちは油断なく身構えた。
    「……さて、道を切り開くとするか。後に続く皆の為にも……明日の為にも、な」
     榎本・彗樹(自然派・d32627)の言葉に篠崎・伊織(鬼太鼓・d36261)が頷き、赤鬼の面を装着する。ほぼ同時に殲術道具を構えた2人の狙い澄ました攻撃が、火山コブのひとつに突き刺さった。
     後ろが通りやすいように、壊しやすそうな小さなトゲやコブを狙って攻撃を集中し、確実に数を減らしていく灼滅者達。まるでその動きを鬱陶しがるかのように、火山コブが大きく脈動した。
    「来るっ!」
     狼川・貢(ボーンズデッド・d23454)を初めとするディフェンダー達が声を掛け合い、降り注ぐ範囲攻撃から仲間を庇う。
    「一撃でこの威力かよ!」
    「こっちの人数も多いけ、減衰はしとるはずやけどねぇ」
     中島九十三式・銀都(シーヴァナタラージャ・d03248)と伝皇・雪華(冰雷獣・d01036)が思わず顔を見合わせる。殲術再生弾のない現状では、ディフェンダーの耐久力をもってしても、敵のあらゆる攻撃がひどく重い。それでも各々が声を掛け合い、密に守り合ったことで、灼滅者の戦線に大きな乱れはない。
    「デケえな、とんでもねえ奴だぜBABY。だが、それは愛でもなければクールでもないぜ」
     彼らの後ろでそう呟いたメディック・メイ(ソウルフルアーティスト・d36771)が、エンジェリックボイスで仲間達をまとめて癒す。
    「根性比べなら負けませんよ!」
     古寺・車(本で積み木をする人・d34605)もそう叫んで、特に傷の深そうな者へと回復を行った。先行した仲間達の作ってくれた勢いを、ここで鈍らせる訳にはいかない。
    『死して大地の精髄より去れ、灼滅者』
    「お前がなんだろうが、関係無い。ここで滅する!」
    「もう誰もいないけど、ここにもたくさんの想いが、夢が、笑顔があったはず。元通りにはできないけど……もう、何も焼かれたくない」
     叫んだ霧ヶ峰・出流(死神を纏う者・d37203)に続き、流阿武・知信(炎纏いし鉄の盾・d20203)と矢崎・愛梨(中学生人狼・d34160)がサイキックを放ち、傷の深い火山コブを壊し切ろうとする。だが、ほぼ同時に放たれた3つの攻撃のうち、2つは焼けた空気のみを切った。
    「この大きさの的でも当てられないなんて、さすがはイフリート王とでも言っておこうか」
     次は当てる。言葉に意気を滲ませながら、愛梨はサイキックソードを握り締めた。
    「結構細かいね……もう少し簡潔に書いて欲しかったよ」
     これは、そう悠長にしている場合でもない。読み上げていた『戦闘の基本』メモをしまったイリス・エンドル(大学生魔法使い・d17620)が叩きつけたサイキックを、盾のような鱗が阻む。だがその瞬間、クロノ・ランフォード(白兎・d01888)の刀が隙ありとばかりに突き刺さる!
    「一番槍はA部隊が持っていったから、次は俺の番……なんてね」
    「大人気アニメみてーに、主人公メカの援護って燃えるよな!」
     二カッと笑った百武・大(あの日のオレ達・d35306)もまた、スナイパーの位置から制約の弾丸を撃ち込み、トゲの動きを鈍らせる。
    「目の前で誰も死なせません!」
     星野・えりな(スターライトエンジェル・d02158)の声が戦場に響く。それを号令として、【星空】のメンバーが近くの灼滅者達に強化と守護を施していく。
    「僕にできることなんて限られてるけど……みんなの幸せを護れるんやったら、ただ戦うだけや」
     菊月・笙(神さまの愛し子・d23391)らがメディックの位置に着き、戦場を油断なく見渡して効率よく治療を行っていく。
     そして支援部隊たる彼らを倒れさせまいと、護衛にあたる榊・くるみ(がんばる女の子・d02009)が前衛に躍り出た。自分の身長の倍ほどもある棘の突撃を身体で受け止めた彼女に、すかさず科戸・日方(大学生自転車乗り・d00353)が回復を施して。
    「俺らは、俺らの意思は絶対ェ折れないからな。だから安心して倒されろ」
     ガイオウガに向けたその呟きに、師走崎・徒(流星ランナー・d25006)が大きく頷いた。
    「今は敬意を以って全力で討つ!」
     その為にも、仲間を倒れさせはしない。掲げたWOKシールドが光り輝き、仲間に加護と癒しを与えた。
    「迎撃……に……あたります……」
     降りかかる火の粉は払うのみと、西院・玉緒(鬼哭ノ淵・d04753)が弱ったトゲに抗雷撃を叩き込む。更に夢前・柚澄(淡歌する儚さ消える恋心・d06835)の援護を受けたファルケ・リフライヤ(爆走する音痴な歌声銀河特急便・d03954)が破壊的な歌声を上げれば、耐え切れないとばかりにトゲの一本が砕け落ちた。
     だが、敵も大人しく殴られ続けている訳がない。岩のような鱗が隆起し、巨大なトゲと化して、次々と灼滅者達に突進する!
    『そうまでして我に抗うか。灼滅者』
     声に、マサムネ・ディケンズ(乙女座ラプソディ・d21200)は口元に散った血液を拭って吼え返す。
    「オレは憎しみだけでお前と立ち向かってるわけじゃないんだ。学園を! 仲間を! 世界を守るためだ!」
    「笑顔、友情、未来。そういうきらめきが私は好き」
     だから私は戦う。彼に庇われた位置から、晶石・音色(水晶細工の姫君・d30770)もそう言葉を紡いだ。
    「大丈夫。ゆきが支えるよっ」
     神崎・結月(天使と悪魔の無邪気なアイドル・d00535)と彼女のナノナノが、懸命に仲間達の傷を癒す。
    「俺はいい、前衛を」
     そう言ってメディックの回復を断り、ドラゴンパワーを纏う武蔵野・恋也(アンチェインライダー・d16064)の死角を補うように、吉沢・昴(覚悟の剣客・d09361)が斜めに一歩進み出る。
    「5、6発も殴れば小物は止まる。次はあっちだ」
     そう言って視線を向けた先には、比較的小さな火山コブ。同じコブを見据えて、神宮寺・桃香(神塵・d29108)がバベルブレイカーを構える手に力を込めた。
    「少しでも……私も、力を……ッ!」
     しっかりと狙って放ったドグマスパイクが、目標を捉える。ダメージは大きくはない。だが、確かにパラライズは通っている! 彼女の後を引き取るように、雨井・戦争(詩人デストピア・d04799)がサイキックを高めた。
    「胴や頭に向かう連中が無事に上がってけるよう、がんばろうぜ」
     そして放たれたレーヴァテインの炎が、小さなコブを包み込む。その炎を振り払うように、コブが激しく溶岩を吐き出した。主人を庇ったサーヴァント達が、その一撃で空気に溶けるように消えていく。
    「俺の分も思いっきり蹴っ飛ばしてやれ!」
     被害の大きい前衛に癒しの矢を放ちながら、山瀬・流畏(暴風・d28748)が叫ぶ。おう、と頷いた雨宮・夜彦(ヴコドラク・d28380)が、渾身のスターゲイザーを繰り出した。
    「ま、弱肉強食ってやつだ。恨みっこなしで戦おうぜ」
     あとひと押しもすれば砕けるだろう。行けとばかりに仲間達から向けられた視線に、厳流・要(溶岩の心・d35040)が応えた。
     一人の力なら、ガイオウガの破片にすら及ばないとしても、それが黙って何もしないでいい理由にはならない。
    「熱く焼けた石ころの意地、見せてやるよ」
     そうして放った流星の蹴りが、火山コブをひとつ、確かに砕いた。
    「傷が治ってないけど、そんなこと言ってられない」
     せめて回復と強化で役に立とうと、西羽・沙季(風舞う陽光・d00008)も重傷を押して戦場に立っていた。傷を負った仲間たちにひたすら回復を施す彼女の動きは、けれど平素と比べれば明らかに鈍い。良い的を見つけたとばかりに、トゲのひとつがそちらを向いた。
     突進の軌道に割り込もうと、風見・春香(クライミースマイリー・d33760)が手を伸ばす。だが、僅か――ほんの僅か、遠すぎた。
     瞬間、時が凍った。7メートルはあろうかと言う巨大なトゲが、少女の身体を跳ね飛ばす。木の葉のように宙を舞いながら、沙季は不思議と静かな心持で眼下の景色を見つめていた。鮫のヒレを思わせるトゲの突進が、猛々しく火を噴く無数のコブが、今も灼滅者達を迎え撃ち続けている。白き霊犬が、主人を庇って消えるのが見えた。
     傷を負った身でガイオウガの脚へと上ったときから、覚悟はできていた。戦うことより、戦わずに何かを失うことが怖いとも確信していた。――ああ、けれど。
    (「無理、しすぎたなあ」)
     力の入らない唇が、誰かへの謝罪を告げる。そして、彼女はそれきり目を閉じた。
     真っ逆さまに落ちてきた軽い身体を抱きとめた春香が、小さく首を横に振る。
    「……そんな」
     近くで戦う灼滅者達の顔から血の気が引く。こみ上げるものを飲み込むように一度だけ天を仰いだ銀都が、盾を構えてトゲへとぶつかっていきながら叫んだ。
    「退路は俺達が確保するっ!」
    「ばんそうこう程度の回復っすけど、辻ちゃんも援護するっす。安全に、帰してあげてくださいっす!」
     春香が頷くのを確かめて、辻・蓮菜(ニャアデスハピネス・d18703)は今切り開くべき道を見据える。
     生きていれば絶対に1回は死ぬ。予期できるにせよ、できないにせよ。そんなことを考えながら、彼女は足元を踏みしめた。
    「私が守ってやろうではないか、感謝するが良い!」
     ヨダカ・ティコブラーエ(星屑の鳥・d13211)が防護符を放ち、ディフェンダーの守りを更に強固なものにしていく。短く息をついた真風・佳奈美(愛に踊る風・d26601)が、菫色の炎を燃え上がらせた。
    『焼けろ、そして滅せよ。灼滅者』
     固定砲台を思わせる巨大なコブが盛り上がり、周囲に溶岩の雨を降らせる。これを受ければ、もう危ないだろう。身構えた七夜・紗貴(黄昏の迷い子・d12290)を、カマセーヌ・ヤムチャルドン(溢れ出る噛ませ臭がする女・d37365)が突き飛ばし、盾となった。
    「わたくしはわがままですの。だからガイオウガの意思よりも、周りの味方の方を気にしますわ!」
     倒れ込みながらも気丈に笑う彼女を支えながら、紗貴は周囲を見回す。同じく今の一撃で追い込まれた様子の灼滅者達に、森之宮・瑠流(殄滅アルコル・d25718)が短く声を掛けた。
    「るるとデッドマンが、みんなを守る。下がって」
    「了解、後は頼んだ」
     マキエ・ハーベンハイト(危険領域・d16307)が頷き、倒れた羽衣・ひかり(彗彩・d18811)に肩を貸して撤退していく。
    「あと……どの程度保ちますか?」
     肩で息をしながら、室崎・のぞみ(世間知らずな神薙使い・d03790)は仲間に問いかける。溶岩の雨から味方を庇ったくるみが、倒れ込みながらも苦しげな笑みを浮かべた。
    「まだ、がんばれるもん……って、言いたいけど」
     これ以上は立ち続けられそうにない。負傷者を庇い続けた徒、体力の低かった笙と結月も既に動けない。そして、日方とヴォルフ・ヴァルト(花守の狼・d01952)は元々無理を押してここにいる。
    「きついか?」
    「まだ……っ」
     月翅・朔耶(天狼の黒魔女・d00470)の問いに答え終わるより早く、身体が動いていた。無慈悲なトゲの一撃から後衛を庇ったのぞみの意識が、そこで途切れる。
     マテリアルロッドを握るファルケの手に汗が滲んだ。チームの盾役のうち、残っているのはあと2人。後衛に範囲攻撃を撃たれれば、いよいよもって命が危ない者もいる。そして目の前には、不気味に輝きを増している火口がある――。
    「私が抑えます」
     退いてください。そう言って、えりなが一歩進み出た。
    「えりな、それは――」
     ヴォルフが言い終える前に、彼女は地を蹴っていた。その背中に、悪魔の羽が――淫魔の証が、生える。
    「えりなさん!」
    「今は、逃げて……皆で、生きてくださいね」
     一度だけ振り返った彼女は、ここが戦場とは思えぬほどに美しく微笑んでいた。
     ぐっと拳を握り締めたマサムネが、仲間達に呼び掛ける。
    「……退こう。殿は、オレが」
    「わかりました。重傷者はボクが運びます」
     託されたものを踏みにじるわけにはいかない。強く頷いた柚澄が、怪力無双で重傷者を抱え上げた。前線の支援に注力し続けた部隊が、そうして撤退していく。
    「さあ、愛のミュージックを聞かせてやるぜ! YEAH!」
     未だ立ち続けることのできている灼滅者に、メディックたち癒し手が懸命にサイキックをかけていく。
    「命を無駄に散らしてはだめだよ」
     タージ・マハル(武蔵坂の魔法使い・d00848)が傷の深い戦争を箒に乗せ、撤退させようと飛び上がる。だが、敵とて動きの鈍い的を見逃すほど甘くはない。
    「危ない、次のトゲが……!」
     繭山・月子(絹織の調・d08603)の鋭い警告に、タージは反射的に箒を逸らす。が、突き上げるように襲ってきたトゲの一撃に、箒は勢いよく打ち落とされた。2人の灼滅者が地に転がり、激しく咳き込む。その口元が赤く濡れていることに小さく歯噛みして、月子はそのトゲへと轟雷を放つ。
    「撤退、援護します!」
     後衛の灼滅者たちが、彼らを何とか回収して下がっていく。横目でそれを見送りながら、クロシェット・サクラ(自分自身を隠し続けて・d26672)が顔をしかめた。
    「最初から敵だし、友達傷つける憎い奴。尻尾だけじゃなく脚をいただくよ」
     故にガイオウガにかける言葉を彼女は持たない。ただひたすらに放つ攻撃に、古城・茨姫(東京ミッドナイト・d09417)が続いた。
    「近づけさせない。元気で此処を超えてもらわなきゃ困るんだ」
     カッコいいこと言えただろうかと微かに笑って、茨姫は神薙刃を敵へと放つ。
     そして、、友繁・リア(微睡の中で友と過ごす・d17394)が拳を握り締めて。
    「たとえ自己満足でも、私は生きて進む」
     初恋の彼の言葉を思い出して、リアはガイオウガの脚を駆け上る。させじとばかりに突っ込んできたトゲを、佳奈美が体当たりするようにして受け止めた。その場に膝をつきながら、それでも彼女は叫ぶ。
    「垓王牙さん、何でこんなに怒ってるんですか?! 王様なら、少しは落ち着いて話を聞いてください!」
    『灼滅者と話すことなどない』
    「ッ……」
     悔しげに顔を歪めた佳奈美の身体が崩れ落ちる。
    「ピーク、護衛を頼んだよ」
     すかさず童子・祢々(影法師・d01673)がライドキャリバーに命じて、彼女を後方へと護送する。その背を守るように、安綱・切丸(天下五剣・d14173)が得物を構えた。
     周囲の熱が増していくような感覚に、一色・朝恵(オレンジアネモネ・d10752)がめっちゃくちゃこわいと声を上げる。
    「わかってるの、アナタたちも、ワタシたちも、とっても自分勝手な言い分なのね!」
     けれど、ここに至ってその言い分を引っ込める理由もない。このまま押し通させてもらうとばかりに、朝恵は前衛に癒しの矢を放った。
    「今日で決着つけちゃおうね」
    「焔炉に向かう人の支援はまっかせなさ~い、なの♪」
     一瀬・シオン(双子の退魔青年・d04257)と一瀬・シェリー(双子の格闘娘・d04271)と彼らのサーヴァントの連携攻撃がトゲへと向かう。霊障波とシオンの呪いは空を切った。だが、そこに生まれる隙こそ狙いとばかりに、シェリーが雷を纏った拳を叩き込み、トゲに浅いながらもひびを入れる。
    「垓王牙、テメエはここで折れちまえ」
    『灼滅者如きに折られるものか』
     意志とほぼ同時に降り注いだ炎が、切丸の髪を焦がす。後ろに立つ祢々が、彼を鼓舞するように声を上げた。
    「人間のしぶとさを思い知れ、垓王牙」
     魔道書から放った魔力の光線が、巨大な火山コブの強化を打ち砕く。その元を振り返り、彼女より先に倒れるわけにはいかないと、切丸は武器に宿る龍因子を解放して己の傷を塞いだ。まだまだ、ここは始まりにすぎない。各々気合を入れ直すように、灼滅者達は武器を握り直した。

    ●立ち止まらぬ者達
    「オレ達、今どの程度上ってきてるんだろうな」
    「まだ半分いくか、いかないか……覚悟はしていましたが、なかなかの山登りですね、これは」
     栗原・嘉哉(陽炎に幻獣は還る・d08263)と由良・羽桐(標本蒐集家・d04061)の交わした言葉に、灼滅者達は遠く上方を仰ぐ。ガイオウガの胴は、未だ遠い。
     だが、立ち止まっている暇はない。駆け上がろうとする灼滅者達目掛けて、1本の巨大なトゲが突き進んできた。
    「さぁ、さっさと行って終わらせてやがれ。言っておくが俺は弱いぞ」
     そう言って半ば捨て身でその一撃を受けに行った双葉・翔也(表情豊かな無表情・d29062)が、吹き飛ばされながらも仲間達に進めと目で促す。焼けつく空気を吸い込んで、ケレイ・ザプトー(スタウロス・d03152)が前線に躍り出た。
    「歩く野郎なら、脚をやっちまえばこれ以上前に進めないハズだろ」
    「しかし、一番動きの激しい部位でもあるはず。気を付けていきましょう」
     アルベルティーヌ・ジュエキュベヴェル(デイライトサンバースト・d08003)がそう続き、同じトゲへと狙いを定める。輝ける十字と紅き逆十字が戦場に重なるのを見ながら、瀬川・蓮(悠々自適に暗中模索中・d21742)も覚悟を口にする。
    「圧倒されますが、足を止めるのはダメですね。いくぞーです」
     吹き渡らせたセイクリッドウインドが、前線の灼滅者達を包む炎を払っていく。ありがたいと目だけで礼を述べて、橘・千里(虚狼星・d02046)が断斬鋏を閃かせた。
    「噴火攻撃、来るよ!」
     綿貫・砌(強く優しいあの人たちのように・d13758)がいち早く声を上げ、仲間達に警戒を促す。直後、巨大な火山コブから大量の溶岩が噴出した。ある者は武器を盾とし、ある者は咄嗟に身体を丸めて、灼滅者達は何とかそれを耐えしのぐ。
    「こういう時こそ、灼滅者は助け合いってね!」
    「ありがとう、回復は任せて!」
     壁となって攻撃を防いでくれた蓮田・比呂(全ご当地ヒーローの助っ人戦士・d04297)に、アリス・ロビンソン(百囀り・d26070)がすかさずシールドリングをかける。
    『小賢しい。一網打尽にしてくれよう』
    「黙ってろ……! 今度は灼滅者が勝つ、それだけだ!」
     声に、城代・悠(月華氷影・d01379)が吼え返す。敵の攻撃は重いが、そんなことはとうに覚悟済みだ。
    「死なない程度に、立ち回るとしようか」
     周囲を見回した物部・暦生(迷宮ビルの主・d26160)が、彼女達前衛にイエローサインを向けて異常への耐性を与えた。即座に身を翻し、身軽に戦場を駆けながら、冷静に彼は状況を掴む。
    「三島の分家の人間として、武蔵坂の灼滅者として……お役目、果たさせていただきましょう」
     そう言って、ジェイル・ミシマ(夜鷹・d12128)がトゲのひとつを足止めする。僅かに移動の速度が鈍った隙を逃さず、二神・雪紗(ノークエスチョンズビフォー・d01780)が狙い澄ましてレイザースラストを放った。
     更に、【新堂魔法堂】 のメンバー――新堂・アンジェラ(業火の魔法つかい・d35803)、新堂・辰人(影刃の魔法つかい・d07100)と新堂・桃子(鋼鉄の魔法つかい・d31218)が同じ敵へと攻撃を重ね、彼らの後方から新堂・柚葉(深緑の魔法つかい・d33727)が支援する。同じトゲを見据えて、ギルアート・アークス(極彩の毒猫・d12102)もまた断罪輪の斬撃を繰り出しつつ、近くのチームに声をかけた。
    「こいつは俺達がやる、そっちは任せた!」
    「うん、任された、よー!」
     答えた皆川・綾(闇に抗い始めた者・d07933)たち【tq】の面々が、範囲攻撃の目立つ火山コブを壊しにかかる。
    「みんな、ボクに合わせて!」
     ミルドレッド・ウェルズ(吸血殲姫・d01019)の合図で、一斉に攻撃サイキックが放たれた。日野森・翠(緩瀬の守り巫女・d03366)の攻性防壁がコブの動きを鈍らせた瞬間に、笙野・響(青闇薄刃・d05985)が目にもとまらぬ速さで踏み込み、斬り裂きを浴びせる!
    「今度は尾だけでなく、全身を切り刻んであげるから、ね?」
     そして、そんな彼女らの戦線を支えるべく、深夜白・樹(心は未だ薄氷の上・d32058)がラビリンスアーマーを施していく。さらに錠之内・琴弓(色無き芽吹き・d01730)が天上の歌声を響かせ、仲間達の回復を図った。
    「火口、光りました。そろそろです」
     皇・封華(久遠の封印・d08978)の注意喚起に、羽丘・結衣菜(歌い詠う蝶々の夜想曲・d06908)と沖田・直司(雪兎の福音・d03436)が身構えた。
    「この子たちを倒したいならまずはボクを血の海に沈めてからだね」
     味方を庇い、半身を酷く焼かれてなお不敵に笑う直司に、すかさず結衣菜が集気法を施す。まだまだ、血の海に沈むには早いのだ。
     とは言え、敵の攻撃はひとつひとつが苛烈かつ致命的だ。辛うじて魂の力で踏み止まったリリアナ・エイジスタ(オーロラカーテン・d07305)が、口元を汚す血を拭う。
    「どんな時もボクの強さ魅せてあげるんだ」
     誓うように呟いて、一撃。頷いた龍宮・巫女(鬼狩の龍姫・d01423)が武器を握り直したその時、別の火山コブが赤く輝いた。
    「っ……!」
     降り注ぐ炎と溶岩、そして土石の雨が、灼滅者達を容赦なく打ち据える。倒れ込む巫女の視界に、同じく地に伏すリリアナ、そして央・灰音(超弩級聖人・d14075)の姿がちらりと映った。
    「これ以上は危ないよ」
    「さあ、こちらへ!」
     レーヴ・ミラー(小学生サウンドソルジャー・d36833)達後衛の灼滅者が、負傷者を担ぎ、或いは彼らに肩を貸す。彼らの撤退を助けるべく、雲・丹(きらきらこめっとそらをゆく・d27195)がトゲの進路を遮るように飛び出した。
    「今日のウチはまきびしー!」
     裂帛の叫びが、傷と不調を吹き飛ばす。まだ立てる、動ける。冷静に戦況を判断しながら、関島・峻(ヴリヒスモス・d08229)もまた仲間達の盾となるべく動く。
    『なおも喰らいついてくるか、灼滅者』
    「難しいことはいい! お互い力試し合って勝った方に従え!」
     単純明快に、七瀬・悠里(トゥマーンクルィーサ・d23155)が叫び返す。
    『成程』
     ならば死ね。一際威圧的な声と共に、戦場を火山コブの吐いた炎が包む。圧倒的な密度をもって迫るそれに呑まれるかと感じた刹那、椎木・なつみ(ディフェンスに定評のある・d00285)の腕が悠里を突き飛ばした。
     だが、ここまでの戦いで味方の盾として動き続けてきた彼女には、それが限界だった。炎の中に崩れ落ちながら、なつみは未だ立てている灼滅者達を見やる。後は任せろと言うように、咲宮・律花(花焔の旋律・d07319)が頷いた。
    「あのコブも弱ってきてる。一気に行くよ」
     涼峰・隆也(スリーピングウルフ・d27850)の指先が示したコブの表面は、度重なる攻撃で確かに深く傷付いている。了解と答えたエアン・エルフォード(ウィンダミア・d14788)がダイダロスベルトを射出し、朝間・春翔(プルガトリオ・d02994)の影縛りがそれに続く。
    「私達の目的はイフリートの殲滅ではありません。でも、仲間を守る為なら、強敵相手でも恐れも怯みもするつもりはありません!」
     ガイオウガへ届けと、朧夜・穂風(炎玄の繰り手・d18834)が自分の意志を口にする。『仲間』のうちに協調派イフリート達の姿も思い浮かべて、彼女はまっすぐに前を見据えた。そこへ咲宮・響(薄暮の残響・d12621)が集気法を施し、少しでも長く立てるようにと癒しを与える。
    「私は仲間達の為に、皆を前に進ませる為に、決して屈したりはしない!」
     叫んで、律花も自らの傷を塞ぐ。それぞれが補い合いながら立ち続けてきてはいるが、灼滅者達の疲労は決して軽くない。祭霊光を放ってエアンを回復していた葉新・百花(お昼ね羽根まくら・d14789)の目が、新たなトゲの接近を捉えた。
    「来ます!」
    「っ」
     全身で突撃を受けに行った隆也の身体が宙を舞う。盾の1枚がこれで崩れた。
    『灰燼と化せ』
     炎が広がり、前衛を呑む。歯を食い縛って耐えながら、響はちらりと傍らを見た。回復を重ね合ってこそいるが、自分も律花も限界は遠くない。この一撃を耐えたとて、次はないだろう。
     こちらが突破するのが先か、敵に削り切られるのが先か。現状が続くなら、天秤の傾く先は――一瞬考えて、春翔は痛む身体に喝を入れた。
    「引けぬ理由、守りたいものがあるのはお互い様だからな」
     怯んでなどいられない。怯めば、次の1手で誰かが死んでもおかしくない。遮るように手を伸ばす響を視線で制して、己の中の闇に身を委ねる。ヴァンパイアへと変貌した彼の姿に、律花が短く息を呑んだ。
     守りたいもの、とその言葉を繰り返して、百花が仲間達に回復を重ねる。横顔にひとつ頷いたエアンが、寄り添うように武器を構え直した。
    「苛烈ですね……ボクはここらが潮時、でしょうか」
     額を流れ落ちる血を拭い、月影・木乃葉(人狼生まれ人育ち・d34599)が両足に力を込める。
    「残念ですが、わたしも……ですね」
     ひたすら後方からの攻撃に徹していた東雲・羽衣(花姫カンツォーネ・d20543)がそう返して、傾きそうな身体を縛霊手で支える。
    「ですが、皆さんなら。きっとこの道を切り開いてくださいます」
     近くの灼滅者チームに回復をかけ続けていた瑞月・浩志(思い出・d32546)も、肩で息をしながらそれに頷いた。
    「こっちも、そろそろ引くみたいだ。動けない人を守って運ぼうか」
     近くの戦闘不能者を背負って撤退を始める彼らに、柏原・鷹次郎(肉太郎・d03646)と神代・弓弦(無気力神主・d01682)の2人が合流した。
    「共に生きて帰ろうぞ!」
    「ええ、動けるうちに、ですね」
     ディフェンダーの鷹次郎が後ろを守り、弓弦はメディックとして少しでも戦闘可能な者の傷を塞ぐ。
     互いに守り合い、癒し合いながら、傷付いた灼滅者達が後退していく。彼らを少しでも助けようと、悠木・隼(スペースファルコン・d11865)は傷を負ってなお突き進んでくるトゲにガトリングガンを向けた。
    「通さないよ!」
     爆炎の魔力を込めた弾丸の連射が、トゲの先端を吹き飛ばす。炎に巻かれながらも動きを止めないトゲに、河本・由香里(中学生魔法使い・d36413)が同じく炎を纏う武器を叩きつけた。
    「これで……仕留めます!」
     言葉通りに、その一撃でトゲが真ん中からへし折れる。そのまま仲間の撤退を支援しようと、2人の灼滅者はすかさず駆け出した。
    「これで最後の戦いにするつもりはねえぞ!」
     気炎を吐く戒道・蒼騎(ナノナノ毛狩り隊長・d31356)に、ガイオウガの意志が伝わってくる。明らかな怒りの気配とともに向かってきたトゲを、蒼騎はWOKシールドから展開したエネルギー盾で辛うじて受ける。
     そこへ癒しの矢を放った野々上・アキラ(レッサーイエロー・d05895)が、ひとつ頷いて天星弓を構え直した。
    「闇堕ちしたセンパイがいるんだ。帰ってくる場所がなくなったら、迎えに行けねぇしな」
     獣が唸るような空気の震えもまた、ガイオウガの怒りの表れなのだろう。だが、臆するまいと灼滅者たちはひたすらに壊すべきものを睨む。
    「後ろは?」
    「後続が攻め上がってきてる筈。もう少し頑張りたいね!」
     【駅番】の番長である梅澤・大文字(枷鎖の番長・d02284)のごく短い問いに、朝比奈・夏蓮(アサヒニャーレ・d02410)が答え、同時に黙示録砲を放つ。
    「ガイオウガは大地そのものって事は、垓王牙焔炉があればどの地でもこうなるんでしょ? これ以上大きくさせると日本国土がガイオウガになっちゃうかもね」
     珍しく真剣な表情を浮かべながら、そんな国はゴメンだと水城・恭太朗(最低限の抵抗・d13442)が呟いた。既に凌駕を経た肉体が軋みを上げるが、それで黙ってやる道理もない。
    「しかし、そろそろキツいか……と、攻撃予備動作! 来るよ!」
     英・蓮次(凡カラー・d06922)の声に、全員が身構えた。降り注ぐ無数の炎弾から仲間を必死に庇うディフェンダー達が、思わず呻く。回復不能なダメージの蓄積も大きい。大文字が膝をつきかけた刹那、7メートルはあろうかというトゲが突き進んでくるのが見えた。狙いは――廣羽・杏理(ヴィアクルキス・d16834)か。
     ディフェンダーの腕が届くより、トゲが突っ込んでくる方が早いだろう。本人とてそう体力を残しているわけではない。それでもと蓮次が手を伸ばしかけたその時、杏理が動いた。
    (「直撃すれば、死にかねない……か」)
     それならば、と彼は別の一縷に手を述べた。その足元が水晶に覆われ、纏う空気が闇のそれに変わっていく。命を手放すその代わり、杏理は己を手放そうとしてのけたのだ。ノーライフキングの肉体でトゲの一撃を受け切って、死ぬ気はないと少年は笑う。
    「――ここで力尽きても最終決死隊が勝ちゃ私らの勝ちです!」
     そして、もう1人。この場を切り開く為に、己を闇に明け渡した者がいた。高倉・奏(二律背反・d10164)が勢いよく声を上げて、水晶の翼をはばたかせる。
     闇堕ちした灼滅者2人の攻撃が戦線を押し戻し、逆に開こうとばかりに攻め立てる。ここを抜ければ、胴への道が見えてくる。悔しげに顔を歪めていたのも束の間、大文字が彼らに続いて攻撃を放った。後ろから駆け上ってくる新たな足音は、間違いなく仲間達のものだ。
     ならば彼らにバトンを渡すまで、もうあと一撃だけ。強く足元を踏みしめて、灼滅者たちは鬨の声を上げた。

    ●登り切れ、その先に
    「押し通ります!」
     声と共に、新城・七波(藍弦の討ち手・d01815)が巨大なガイオウガの脚を駆け上がる。有形無形の『畏れ』を纏い、駆けざまにコブのひとつに斬りかかれば、欠けた火口から火花が散った。
     彼の傍らを走りながら、夕凪・真琴(優しい光風・d11900)は怒りに満ちたガイオウガの声にきっぱりと言葉を返した。
    「灼滅者は負けないです」
     思いはそれぞれだろう。単純に割り切れない者もいるだろう。それでも、『守りたい』という思いは同じだと、その思いこそが強さなのだと、彼女は思う。
    「ガイオウガ。貴方は本当に凄い。私一人の力なんてちっぽけなものなのね。痛感したわ」
     霧崎・影薙(ライラライ・d13199)もまた、思ったままをガイオウガへと投げかける。でも、と続けかけて、彼女は首を横に振った。
    「いえ、言葉ではなく、私たちの行動で受け止めて」
     そして、影薙の拳に雷が宿る。稲妻の尾を引く一撃を追いかけるように、夜久・葵(蒼闇アンダンテ・d19473)が妖の槍を水平に構えた。
    「私たちは『命』を護りたい。あなたは何を守るために戦うのかしら?」
     イフリートの王に問いつつ放った妖冷弾が、火山コブの根元に突き刺さる。冷気のつららに冷やし固められて輝きを失っていくそこに、冬城・雪歩(高校生ストリートファイター・d27623)がすかさず迫った。目障りな灼滅者を焼き滅ぼさんと、火山コブが力を振り絞るように溶岩を噴く。だが、その攻撃が雪歩を襲うことはなかった。
    「個人的には、貴方達に恨みはありません。それでも、無辜の人間にもその力を理不尽に振るうのであれば、その矛を止めさせてもらいます!」
     防具ごと背中を焼かれながら、それでも鴨川・拓也(修練拳士・d30391)がまっすぐに言い放つ。ありがとうと叫んだ雪歩の拳が、火山コブのひとつを確かに沈黙させた。
    「ねえ、ガイオウガ。サイキックハーツとは何なのかしら?」
     エルファシア・ラヴィンス(奇襲攻撃と肉が好き・d03746)の問いには、殆ど咆哮に近い声が返る。即ち、小うるさいと。その答えに怒るでもなく、エルファシアは軽く跳躍した。同時に膨れ上がった鬼腕が、岩のようなトゲへと叩きつけられる。
    「一人で勝てない敵だとしても、みんなで挑めば勝てるかもしれない。勝利に賭けるわ」
     彼女を振り払うように、新たなトゲが一直線に飛んでくる。そこへ淡白・紗雪(六華の護り手・d04167)が割り込み、盾となった。
    「させないっ!」
     ひびが入りそうなほどに足元を踏みしめて、紗雪は叫ぶ。溢れた気がたちまち力と変わり、その傷を塞いでいく。
    「姉さま、僕頑張るよ」
     ペペタン・メユパール(悠遠帰郷・d23797)とグラジュ・メユパール(暗闇照らす花・d23798)の姉弟が、同じトゲを狙って見事な連携攻撃を繰り出す。その意志に真っ向からぶつけるように、次々とガイオウガの体表をトゲが走る。

    「此処で灼滅者相手に全力を出し尽くすとまた困る事になるんじゃないの?」
     かつてのクロキバとアフリカンパンサーの一件を思い浮かべてそう問う真神・蝶子(花鳥風月・d14558)と背中合わせに、四月一日・いろは(剣豪将軍・d03805)が構える。ラビリンスアーマーを妹分に施しつつ、彼女は油断なく周囲を見回した。
    「来ます、気をつけて!」
     同じように注意深くトゲの動きを見張っていた李白・御理(小夜鳴鳥の歌が聞こえる・d02346)が、近くのチームの死角を補うように飛び出していく。
    「では、迎え撃ちましょう」
    「はい……みんなの、往路を。開きます……」
     続く御門・心(白の少女・d13160)の後ろに控えたエリス・メルセデス(泡沫人魚・d22996)が、御理へと闇の契約で力を注ぐ。軽くウロボロスブレイドを握り直した少年が、敵群を巻き込むように刃を大きくしならせた。
    「あんまり使いたくはないけど……これで!」
     棗・螢(黎明の翼・d17067)がデモノイド寄生体に自らの殲術道具を呑ませ、巨大な刃と変えた利き腕でコブのひとつを一文字に薙ぎ斬る。
    「本陣に攻め込む大役は荷が重いですが……せめてこれくらいの仕事はしてみせましょう」
     敵群が乱れたところを狙い澄まして、尾崎・匠(新俸給戦士さらりマン・d17571)が武器封じを付与し、灼滅者達が更に突き進む助けを作る。敵の攻撃が僅かに緩んだその瞬間に、日向・一夜(蒼界ラプソディ・d23354)がガイオウガに呼びかける。
    「君がイフリート達とくっついているように、僕らも力を合わせて戦ってるんだよ」
    「お前も尾も両方がガイオウガの側面だろ。相手の嫌な事を拒んで都合の良い所だけ選ぶなんて、そんな自分勝手は言わない。俺達を拒む意志も含めて受け止めに来た」
     『全なる一』であるガイオウガだからこそ、他人である俺達が寄り添いたい。そう告げる草那岐・勇介(舞台風・d02601)の声を打ち消すように、純粋な殺意のみを含んだ意志が空気を打った。ぐっと腹に力を込めて意識を留めながら、椿森・郁(カメリア・d00466)も自分の言葉を重ねる。
    「ガイオウガにとっての至上命題は何だ? 本来の目的が別にあるなら、私達を殺すんじゃなく上手く使えばいい」
     拒絶の意志を示すように、傷ついたトゲの1つが郁へ迫ろうと向きを変える。その傷の最も深い部分を、大條・修太郎(一切合切は・d06271)が撃ち抜いた。それが決め手となって、トゲは砕け、消滅していく。
    「弱肉強食は世の習い! 貴方達を越えて、私達は先へ進みます!」
     叫んで、睦沢・文音(インターネットノドジマン・d30348)が更に前へと進む。生意気なと言わんばかりに、ガイオウガが怒りの意志を見せた。
     だが、灼滅者達は怯まない。おっかない気分は昨日で通り越したと笑って、夏村・守(逆さま厳禁・d28075)がリングスラッシャーを掲げた。光輪の盾が溶岩に打たれてなお
    立ち続けるディフェンダーの守りを固め、灼滅者達の生命線を永らえる。
    「じゃあ、後ろの回復は自分が」
     同じポジションの者と声を掛け合いながら、三上・チモシー(津軽錦・d03809)も攻撃を担うスナイパーへと闇の契約で回復を施し、同時に術力を向上させる。
    「こっちは僕に任せて、皆は先を急いで!」
    「退路の確保は私が」
     倒れた者を支えて離脱を開始するイサカ・ワンブリウェスト(夜明けの鷹・d37185)の前に奥村・都璃(焉曄・d02290)が立ち、襲い来るトゲを迎撃できるよう備えながら駆け出した。
    「垓王牙……大自然の脅威相手でも決して生きる事を諦めないのが人の……命の力と知りなさい!」
     中島・陽(ハートフルメカニック・d03774)の声が、戦場に響く。命がけの戦いだということは、とうに全員が覚悟している。だが同時に、灼滅者達はこうも心に誓っている。この戦い、生きて勝ち抜こうと。
     まるでその想いを焼き捨てるように、コブが火を噴いた。滝のような勢いで降り注ぐ焦熱が、前線の灼滅者たちを纏めて飲み込み、焼いていく。
    「ヴァグノ、よくやりましたの」
     仲間を庇って消滅したライドキャリバーへの労りを呟きながら、シエナ・デヴィアトレ(治療魔で露出狂な大食い娘・d33905)が癒し手たちに向けてリバイブメロディを奏でて異常を払う。
    「これは、よう躱されへんかもね……せやけど!」
     抵抗せずに諦めるつもりはないと、足利・命刻(ツギハギグラトニー・d24101)が火山コブの麓にライフブリンガーを突き立てる。
    「何もしないで悔やみたくないの」
     頷いた室本・香乃果(ネモフィラの憧憬・d03135)が、螺旋の如き捻りを加えた一突きで同じ的を穿ち、ヒビを広げた。怖くないといえば嘘になる。だが、大切な人を喪うことはそれ以上に怖い。だからこそ彼女は、力強く武器を振るう。
     しかし、灼滅者達に迫るのは火山コブからの攻撃だけではない。最初に敵の動きに気付いたのは、【空白】の千本桜・飛鳥(奥千本のヒーロー・d23232)だった。
    「トゲ、複数来るで!」
    「囲んで蹴散らそうって気か! 所在、行くぞ!」
    「背中はお願いと……うん! 勝とう。まさにー!」
     巨大なトゲの群れが四方から押し寄せ、灼滅者を蹴散らさんと唸りを上げる! 桂・真志(闇底から光望む者・d02361)が、凶月・所在(優しい殺人鬼・d01633)が、そして他にも多くのディフェンダー達が、一斉に身を呈してトゲの攻撃にぶつかっていく。
    「軽い軽い軽い! そんな攻撃で、倒れるわけにはいかないな!」
     ぺっと血を吐き捨てて、陸井・睦月(自由な蒼い風・d18022)が豪語してみせる。たとえ次の一撃は耐え切れそうにないとしても、動ける限りは戦ってやると猛る彼女に、葛城・秋人(光望闇想・d18021)がすかさず回復を施した。
     攻撃を合わせ、最も弱った様子のトゲを的確に破壊しながらも、灼滅者達はふと顔をしかめる。――何か、嫌な感覚だ。直感的に構える。瞬間、新たな群れが立ち上がるのが見えた。
    「ッ……」
     回復を重ねているとはいえ、未だほんの少しだけ追い付かない。先と同じ連続突撃を受ければ、確実に耐え切れない。そう感じた灼滅者達の顔色が、確かに変わった。
     そして、矢のような速度でトゲが動き出す。けれどその最初のひとつが、不意に砕けた。せめて受け身をと構えた腕越しに、睦月は何が起きたかを確かに目にした。
    「オレはもう……誰も失いたくねぇんだよ!」
    「わたし、諦め、とても悪いのです!」
     狂舞・刑(その背に背負うは六六零・d18053)と笹谷・美月(魅月・d06595)が並び立ち、左右から同時に叩きつけた刃と拳でガイオウガのトゲを割り砕いたのだ。無論それは、灼滅者の膂力のみでは到底実行不可能な荒技。仲間を害する敵を砕くべく闇に堕ちることを選んだ彼らに、立影・龍牙(黒衣の死神・d18363)が並び立つ。これ以上仲間が倒れれば、退路も、次への道も閉ざされてしまうかも知れない。それだけは嫌だった。
    「あとは任せてよ、この命に代えても皆を守るから」
     言って、彼もまた闇へとその身を委ねる。瞬間溢れ出した殺意の全てを叩きつけるように、彼は動き回るトゲに斬りかかった。
    「悪いね。イケメン部長は倒れない……そう決まっているんだ」
     不敵に言い放つ九条・茨(白銀の棘・d00435)の肉体は、いつ限界を迎えてもおかしくない。既に2度の凌駕を経ている彼を倒れさせはしまいと、桃山・華織(白桃小町・d01137)が果敢にトゲの前へと立ちはだかる。
    「生きて帰りましょう。勝利を手にして」
     媛神・まほろ(夢見鳥の唄・d01074)もそう言って、確実に道を開き切ろうと攻撃を重ねる。ここまでの戦いで、味方も随分倒れてきた。だが、数が減っているのはガイオウガのトゲとて同じ。
     あと一息で、胴体へと上りきる道が開けるのだ。ならば、ここで機を作る。幾度となくトゲや火山コブに向けて射出され、学習を重ねた茨のダイダロスベルトが、トゲの最も脆い部分を貫いた。周囲の空気が熱を増し、火山コブが鳴動する。また1本、トゲを折られたことに怒っているのか。華織ひとりでは庇い切れない。だが、誰の傷も既に浅くない。
     栄・弥々子(砂漠のメリーゴーランド・d04767)が咄嗟に飛び出す。――本当は、皆で勝って学園に帰るつもりだったけれども。
    「ぜったい負けない、もん……!」
     そして、少女は羅刹と化した。血の色に染まった瞳で見据えた敵に、弥々子は真っ直ぐに飛びかかっていく。
    「これで……頂上であります!」
     ヘイズ・レイヴァース(緋緋色金の小さき竜・d33384)の大声に、灼滅者達の叫びが答える。長い長い山登りならぬ脚登りの果てに開けた景色。それは、巨大な火山が生え並ぶ炎獄の光景だった。
    「行くぞ!」
     誰からともなく頷き合って、動ける灼滅者達は最後の上り坂を踏み越える。

    ●ガイオウガの胴
     急峻な火山が連なる胴体の上に、無数のトゲが湧くように生える。灼滅者達を一歩も進ませまいと言わんばかりのその様子に、七篠・零(旅人・d23315)が頷いた。
    「譲れないものの為に戦うのは、お互い様だよねー」
     まずは確実に、この林立するトゲを減らしていこう。周囲の灼滅者と声を掛け合って、小さなトゲから集中的に狙いを定める零に、茅原・楓(追う者・d33763)が癒しの矢を放った。
    「変な人だけど、良い人だもの」
     だから、彼を死なせる訳にはいかない。死角を庇うように立ちながら、楓はそっとそう誓う。
    「勇壮美麗フルメタルヴィーナス、参りますわ!」
     まだここは中盤戦にすぎない。後に続くチームへ確実に襷を渡すため、中だるみは許されないと、鋼・世界(勇壮美麗フルメタルヴィーナス・d02590)が叫ぶ。懐柔のしようもない相手なら、せめて挑発でも何でも使って攻撃を引き付けようと声を上げる彼女に並んで、立風・翔(風吹き烏・d03511)もまた乱戦の中に身を投じていく。
    「ったく、やっぱこういうのは苦手だなぁ」
     命懸けなんて柄でもないが、弾除けくらいにはなってみせる。覚悟を決めた顔で、彼は向かってくるトゲを見据えた。
    「状況が状況だが……まぁ、なるようになるさ」
     努めて明るくけらけらと笑ってみせた空飛・空牙(影蝕の咎空・d05202)が、冷静に敵群の最も薄い箇所を狙ってガンナイフの引き金を引く。同じ方向へ狙いを定めて、色違いの装甲服に身を包んだ【D.D.D.】 の4人が一斉に動いた。
    「猛くん、無理は絶対にしないで! 攻撃を食い止めることに集中しよう。智寛くんは攻撃、巧くんはバックアップ任せたよ!」
     辰峯・飛鳥(紅の剣士・d04715)の簡潔な指示に、仲間達も同じくごく短く答えを返して武器を構える。
    「都合の良い共存論に組するつもりは無い。ただ一つ言えることは、俺達はお前達の劫火を必ず止めるということだ」
     ガイオウガに向けて言い切った巳葦・智寛(蒼の射手・d20556)の多目的機関銃が、弾丸の雨でトゲの群れを打ち据える。続き突っ込んだ午傍・猛(黄の闘士・d25499)が、裂帛の気合を込めて叫びを上げた。
    「こちとら背水の陣なんだ! 加減なんざ利かねぇぞ!! うぉるあああ!!」
    「オレも絶対諦めないぜ!」
     未崎・巧(緑の疾走者・d29742)も力強くそう言って、白き炎で味方を包み、その能力を高めていく。
    「再生弾無し……正直怖いです」
     呟いてから、ウェリー・スォミオ(シスルの翅音・d07335)は首を横に振る。例えそうだとしても、そして1人の力は僅かだとしても、彼らはガイオウガに打ち勝つためにここにいるのだ。強く引き絞って放った癒しの矢が、仲間のうちに眠る超感覚を呼び覚まし、攻撃の精度を高めていく。
    「まずはあいつから倒していくっすよ」
     山田・菜々(家出娘・d12340)が比較的細いトゲのひとつを指さし、同時に大きく踏み出していく。彼女にまず続いたのは、哘・廓(阿修羅姫・d04160)。
    「私の力でも、足しになるのなら!」
     自らの力は決して強くないと、廓は認識している。それでも1体でも多くの敵を倒そうと、彼女は影業を鋭く伸ばした。
    「一戦力として少しでも役に立てれば本望だ」
     先の戦争に参戦できなかった分もここで働きたいと、月草・真守(銀狼・d22476)がDESアシッドでトゲの表面を溶かしにかかる。装甲が薄くなったその部分を狙い澄まして、カルステン・フランベルク(緋の十字を背負う者・d19534)が後続の道を塞ぐトゲを折らんと斬撃を放った。
    「アニソンライブ オン ガイオウガ、オンステージだZ!」
     高らかに叫んで、神鳴・洋(アニソンラバー・d30069)は得意の音楽を奏で始める。催眠状態を誘う歌声に飲まれたトゲに、粉塵・爆弾(誇り高き爆発屋・d04964)がすかさず無数の手裏剣を投げつけた。
    「お母さん、わたしは今日も全力で爆破します!」
     積極的に攻める彼女らを少しでも生きながらえさせるべく、ソーサルガーダーで守りを固めた大空・焔戯(蒼焔狼牙・d23444)が黒狼の姿で進み出た。軽やかに敵群を翻弄しつつ、あくまで囲まれないよう彼は注意を払う。
    「アそ……コ……あブな……い」
     ぽつりと言ったクリミア・エリクシール(過去無き魔人・d23640)が、前線でも灼滅者達の陣が僅かに薄い箇所を埋めるように動く。同じ列に入った月島・アリッサ(妄想爆発破天荒ガール・d28241)が、天星弓を引き絞りながら気を吐いた。
    「見てなさいよガイオウガ! このでっかいトカゲ! あたしたち人間の可能性ってやつ、思い知らせてやるんだから!」
     放つサイキックが見事に突き刺さり、巨大なトゲのひとつが彼女の方を向く。その瞬間に、三枝・瑠美(アンチェイン・d18370)がトゲの背面に霊槍を突き立てた。トゲはなおも止まらない。だが、確実に削れている!
    「1つずつ確実に、な」
     タイミングを図って踏み出した諫早・伊織(灯包む狐影・d13509)の叩き込んだ殲術道具が、遂にトゲを根元からへし折った。軽く飛び退って体勢を整える彼に、錵刄・氷霧(氷檻の焔・d02308)が背中で寄り添う。
    「……背中は、預けますよ」
    「背中任すんはお互いさま、やろ」
     返った言葉に微笑んで、氷霧は真正面を睨み直す。折った端から新たなトゲが立ち上がり、突き進んでくるのだ。とは言え灼滅者たちの猛攻により、その数は徐々に減りつつある。
    「あんたが暴れまわると困るんだよ。だから、ここであんたを仕留めるよ」
     言って、深山・戒(翠眼の鷹・d15576)が新たなトゲの根元を深々と抉る。ぴしりと音を立てて、甲殻に浅く、しかし広く、ひびが走った。すかさず央・哉生(ビッチ・d13986)がクラッシャーの火力を打ち込み、そのひびを更に広げる。
    「俺はビビッてねぇぞ! 舐めんな!」
     閃光百裂拳と同時に放たれた遠藤・穣(反抗期デモノイドヒューマン・d17888)の叫びがこだまする。彼と共に立つライル・メイスフィールド(大学生エクソシスト・d07117)も瞳にバベルの鎖を集中させ、自らの強化を図って機に備えた。

    「ガイオウガちゃん、ウチたちとお話したいことあるのかな?」
     なおも濃厚な殺意を向けてくるガイオウガの意志に、小西・清(ヤムヤムヤミー・d33293)は首を傾げる。痛いほどに強いその意志に、しかと耳を傾けた上で言葉を返そうと、彼女はじっと火山のひとつを見つめた。
    「この先も大地と生きていたいから、私達は今あなたと喧嘩をするの」
     大地の力そのものであるガイオウガにそう呼びかけるのは、トレニア・リーフィル(緑界の住人・d04108)。
    「あなたが私達を嫌いでも、私はあなたにこう言うわ。たくさんたくさんありがとう、大好きよ」
    「トカゲの尾って切れてもまた生えてくるじゃん。だからさ、私らの声が届いたなら仲良くできちゃったりしないかなーなんて」
     我ながら夢みたいな考えだと樹宮・鈴(奏哭・d06617)は思う。それでも夢を見ることは自由だとばかり、彼女は力強くガイオウガに呼びかけた。人間と火は、ずっと共にあったと。
     夢みたいなこと言って、それを叶えるのがヒーローってもんでしょと頷いて、鬼形・千慶(空即是色・d04850)もまた言葉を添える。
    「それに、全部焼いちまったら、あんたにだってなんも残んねぇだろ」
     ガイオウガは言葉を返さない。ただ、圧倒的な殺意と拒絶の意志をもって、無数の炎弾が降り注いだ。致命的なその雨に耐え切れず、一色・詩(スキャット・d31899)、緒方・宗一郎(月影の魔術師・d00117)ら前線の灼滅者たちが膝をつく。まだ立てる様子の仲間を1人でも多く癒そうと成吉・こりん(星射ちの金羊・d24008)が戦場を駆け回り、集気法を施しながら励ましの言葉をかける。
    「皆さんで、生き残りましょう!」
    「トゲ、そっちには通さないよ……!」
     友枝・羽衣音(小学生ファイアブラッド・d37369)も懸命に近くの灼滅者達とタイミングを合わせてサイキックを放ち、負傷者を狙うトゲの破壊に貢献する。その間に、自らに殉教者ワクチンを打ったパメラ・ウィーラー(シルキーフラウ・d06196)が特に傷の深い者を抱えてガイオウガの上から飛び降りた。
     同じく重傷者を背負った佐藤・しのぶ(スポーツ少女・d30281)も、すらりとした脚で躊躇なく断崖のような胴の縁から宙へと飛び出していく。
     3キロメートルはあろうかという高所からのフリーフォールだが、エアライドも併用すればかすり傷すら増えることはない。恐らくは無事、かつ華麗に着地しているのであろう彼女達の消えた方向をそれ以上見やることはせずに、雪下・藍凛(悪魔の証明・d28619)は未だ動ける者達の回復に集中する。
    「……『いってきます』って言ったなら『ただいま』しなきゃいけないんだよ」
    「うん。できれば、みんなで無事で帰りたいよね」
     頷き、庵原・真珠(魚の夢・d19620)も前衛の仲間達に回復を施す。1人でも多く、1分でも長く立ち続けられるように。そして出来れば、誰も堕ちずに済むように。
     壁役として前線に立ち、自らと仲間を癒しながら、久寝・唯世(くすんだ赤・d26619)は戦場のどこかにいるのであろう友を想う。直接庇うことはできなくとも、こうして戦線を維持することは、きっと彼の助けになる。
    「俺の幼馴染みはファイアブラッド、でさ。その子にいっつも、本音をぶつけろぶつけてこいー…って、怒られちゃうんだよ」
     瀬戸・与四郎(溺星の貘・d05718)がそう語る幼馴染は、大きさも外見も何一つガイオウガとは似ていない。けれど火傷しそうなところだけは一緒で、理由はそれだけで充分で。
    「だから俺は、君に全力でぶつかるよ」
     全力の刃が、火山コブに深々と突き立つ。それを皮切りに、コブを囲む灼滅者達が続けざまにサイキックを放ち、ダメージを重ねた。
    「気をつけろ! 噴火するぜ!」
     火口の動きを注視していた白峰・歌音(嶺鳳のカノン・d34072)が声を上げ、注意を促す。灼滅者、中でも黒瀬・夏樹(錆塗れの手で掴むもの・d00334)達ディフェンダーが身構えたその瞬間、轟音と共に火山コブが噴火した。
    「こんな暗い炎消してやるんだからー!」
     波織・志歩乃(夢と微睡み小夜啼鳥・d05812)がセイクリッドウインドを吹かせ、味方に纏わりつく炎を払う。
    「ボクらは仲間の一般人を殺されるのが嫌でイフリートを殺した。仲間を殺された垓王牙はボクらを敵視する。正直、こんな戦いは勘弁してほしいとこだけど、互いに譲れないなら仕方ないよ」
     そう肩をすくめた八絡・リコ(火眼幼虎の葬刃爪牙・d02738)が、オーラを放って火山コブの表面を逆十字に切り裂く。俯瞰するように戦況を見渡していた睦月・恵理(北の魔女・d00531)がそこに妖冷弾を打ち込めば、急速に冷やされた火山コブの一部がもうもうと蒸気を噴いた。
    「遂に来る所まで来ちゃったって感じにゃー……」
     ごくりと唾を飲み込みながらも、沢渡・花恋(舞猫跋扈・d24182)の動きに迷いはない。エアシューズを履いた足でコブへと突っ込み、その勢いのままに流星の蹴りを見舞った彼女を守るべく駆け上がりながら、富士川・見桜(響き渡る声・d31550)が声を上げる。
    「私たちはここにいる、あなたもここにいる、それじゃダメ? 一緒にいればいい!」
    『戯言を』
     最早協調の意志などない。殊更にそう言うかのように、傷だらけの火山コブが強い光を宿す。脈動するそれが再び爆炎を放とうとしているのだと察した灼滅者に、緊張が走った。
     その時、見桜の後方で魔力が膨れ上がる気配がした。ロジオン・ジュラフスキー(ヘタレライオン・d24010)が一言、すみませんと困ったように呟く。その服装が、見る間に豪奢なものへと変化した。そして、ソロモンの悪魔と化した彼は尊大な目を火山コブへ向ける。瞬間、彼の魔法がコブの持つ熱量を奪い尽くした。見る間に凍りついたコブが、そのまま耐え切れないように砕けて崩れる。
     一際大きなコブが消え、半ば平地のようになったその上を、さらに先へと朝川・穂純(瑞穂詠・d17898)が駆ける。
    「このままじゃ大変な事になっちゃう。そんなの嫌だよ」
     既に相棒たるかのこはいない。だが、かのこの分までも頑張ろうと己を奮い立たせて、穂純は突破を目指す仲間達の盾となるべく進む。
    「ガイオウガ、奇遇だな。僕もお前を滅ぼしたい。そのために僕は来た」
     熱と痛み、何より圧倒的な拒絶の意志。ガイオウガから向けられるそれら全てに、羅睺・なゆた(闇を引き裂く禍つ星・d18283)は憎悪をもって応える。どちらが勝つか、そして生き残るか。全ては今日この日に決まるのだろう。鬼神変の巨腕をここぞとばかりに振るいながら、なゆたは遠くガイオウガの頭部の方向を見据えた。

    ●その背を踏み越えて
    「そいじゃ、行こっかファムファム!」
     折れたトゲ、砕けたコブの残骸を踏み越えて、ユメ・リントヴルム(竜胆の夢・d23700)とファム・フィーノ(太陽の爪・d26999)が並び走る。左手側からの攻撃を全身で受け止めたファムが、痛みにも負けずにユメへと叫ぶ。
    「ユメさんイマだよ!」
     僅か一瞬視線を返して、ユメは動き回るトゲに蹴りを見舞った。その動きが微妙に鈍るのを見逃さず、八重葎・あき(とちぎのぎょうざヒーロー・d01863)が黙示録砲を叩き込む。
    「宇都宮餃子を日本、そして世界に広めるためにも、ここで死ぬわけには行かないんだからっ!」
     砲撃によってトゲのあちこちが凍結すれば、それは続く灼滅者たちの攻撃の際に同時に敵を苛む刃となる。これを好機とみた八重樫・貫(疑惑の後頭部・d01100)が、すかさず同じトゲへと拳を向けた。
    「ユズ!」
    「勿論!」
     狸森・柚羽(疾風鮮華・d02349)がその一言でタイミングを合わせ、同時攻撃をトゲへと見舞う。氷が煌き、トゲの先端が大きく欠けた。あとひと押しと確信して、狗川・結理(せいぎのみかた・d00949)が射抜くように魔法を放つ。
    「死ぬ気はない。死ぬ覚悟があるだけだ」
     声に、硬いものの砕ける音が重なった。迫り来る次のトゲをかわし、或いは迎え撃つように、灼滅者達は突き進んでいく。
    「来るぞ、気を付けろ」
    「ええ、あなたこそ」
     背中合わせに立ちながら、橘・清十郎(不鳴蛍・d04169)と伊勢・雪緒(待雪想・d06823)が言葉を交わす。愛する人にも、学園の仲間達にも、不意打ちなどさせない。互いに己が守ると誓いを胸に、2人はトゲの群れに武器を向けた。
    「左手、行ったぞ!」
     蓮条・優希(星の入東風・d17218)の声が、新たな敵の動きを仲間達に鋭く教える。取りこぼしはしないと駆け出した彼の槍が、半ば東堂・八千華(チアフルバニー・d17397)とトゲの間に割り込むような形で繰り出される。すんでのところで不意の一撃から救われた八千華も、気を引き締めるようにバベルブレイカーを掲げた。
    「やることはきまってる、あの口をこじ開けて先へ行くべき部隊を通す!」
     その為にも、この道を全力で切り開く。ここに来たくても来れなかった友人の分までと、博麗・夢羽(博麗の巫女・d16507)が神薙刃をトゲに見舞った。協調の意志はとっくに切り離した。ならば今灼滅者が目指すべきは、このガイオウガを討つことだ。
    「エンジュくん達の為にも、否定のみの貴方達には負けないんよ」
     切り落としてきた尾のことを思い出して、久瀬・雛菊(蒼穹のシーアクオン・d21285)もクルセイドソードを握る手に一層力を込める。
     彼女たちと足並みを揃え、更に進路を切り開こうとタシュラフェル・メーベルナッハ(白茉莉昇華セリ・d00216)がダイダロスベルトを疾らせる。
    「今のあなたには協調の意志が無いし、わたしたちにとって危険でしかない」
     故に灼滅を狙うし、それは可能だと彼女は確信していた。小癪なとでも言うようにガイオウガの鱗が隆起し、灼滅者達の進路を阻むトゲとなる。ここで足止めされてはやれないと、楯縫・梗花(なもなきもの・d02901)が真正面から切り込んだ。その一撃を皮切りに、灼滅者達の攻撃が巨大なトゲへと集中する。
     深束・葵(ミスメイデン・d11424)のガトリングガンとライドキャリバーの掃射、二重のサイキックの雨が敵前衛に風穴を開けんと降り注いだ。その雨も晴れ切らないうちに、【Aile】 の水無瀬・旭(瞳に宿した決意・d12324)が最もすぐに折れそうなトゲへと肉迫して。
    「一つ一つが致命的だけれども……倒せない相手ではない事も知っている!」
     突き刺さるような一撃を受けることも厭わず、螺旋の如き捻りを帯びた槍を叩き込む。喉からこみ上げた血を吐き捨てる彼の全身を、ミネット・シャノワ(白き森の旅猫・d02757)がダイダロスベルトで覆い、耐久力の向上を図った。戦力を束ね、確実に対処していけば、敵を過剰に恐れる必要はない。単騎で行動する近くの灼滅者達に声をかけ、連携をとりながら、海保・眞白(真白色の猟犬・d03845)もしぶとくガイオウガの上に立ち続ける。
    「命は溶岩の焼け跡に根を下ろし、しぶとく命を繋いできた。だからな垓王牙。命の力は決してお前に負けねぇぜ」
    「大丈夫、私達は負けないんだから!」
     頷き叫んだ栗橋・綾奈(退魔拳士・d05751)の力強い声もまた、確かに仲間達を勇気付ける響きをしていた。彼らの力を少しでも繋ぎ止め続けようと、綾奈は何度でも癒しの矢を放つ。
    「どんだけ地を這いずろうとも、帰って来てみせる……俺も、みんなも……全員で生きて帰るんや……ッ!」
     絞り出すように言い切って、神宮寺・柚貴(不撓の黒影・d28225)が1度は崩れかけた身体を槍と気力で支え直す。まだ動けると己の身体を叱咤して、柚貴はトゲへと拳の連撃を見舞った。
    「ま、役に立ってやろうじゃない?」
     更に三条通・ミナ(放浪する幕間役者・d28709)の放った妖冷弾が突き刺さり、弱り始めたトゲを氷で覆う。今じゃ、とカンナ・プティブラン(小学生サウンドソルジャー・d24729)が声を上げた。
    「聞いてるかガイオウガ! 俺達はお前達を倒して其の上で共存する未来を掴んで見せるから覚悟しておけよ!」
     カンナのラビリンスアーマーを纏った水貝・雁之助(おにぎり大将・d24507)が、敵の弱点を瞬時に見切って武器を突き立てる。正確無比な殲術執刀法の一撃が、立ちはだかるトゲの檻をこじ開ける!
     纏いつく炎によるダメージを防具で抑えた九重・優太(本の虫・d30450)と千歳・桜(大口ノ真神・d30451)が、その一瞬を突いて走り抜ける。彼ら盾役に続いて、蓮華・影華(霞影冥刃・d02948)、桐郷・尤史(元美少女研究部特別顧問・d18402)といった攻撃手達もまた頭部への道を切り開かんと駆け上がっていく。彼らを待ち受けていた複数の火山コブが、灼滅者たちを振り落とそうとするかのように大きく震えた。
    「く……!」
     辛うじて手近な仲間を庇った狼久保・惟元(月詠鬼・d27459)が、呻く。自らに回復を掛けながら、惟元は周囲を見回す。連続して噴火を受ければ、さしもの灼滅者も無事ではすまない。先を駆けていた影華や尤史が倒れ伏した先に高坂・明(白緑の薔薇・d26214)が駆け寄り、応急処置を施して撤退を手伝う。
    「無茶はダメってお兄ちゃんも言ってました」
     そう言う明本人の傷も浅くない。彼女と入れ替わるように、天宮・百合香(陽光の巫女・d14387)が動ける者の回復に当たった。
    「八塩折でもあれば楽でしたか……」
     冗談めかして呟く彼女の表情は、硬い。未曽有の戦いへの緊張と恐怖感を和らげるためのその言葉に、ふ、とクローズ・ゾショネル(バリアルグザファン・d02080)が笑うような気配を見せた。
    「では、今ある限りで頑張るとしましょうか」
    「ええ、クローズさん」
     意地でも生きる。共通する思いを胸に、鬼城・蒼香(青にして蒼雷・d00932)が頷いて一歩進み出た。叫びひとつで炎を振り払い、蒼香は巨大なコブを見据える。
    「全なる一、って事は俺の敵も同然って事だよねぇ。あは、人造になって良かった」
     けらりと笑ったレンツォ・バルトローネ(いつでも愛を・d23725)も、自らを癒しながら火山コブとの距離を測る。まだあと1度は確実に火を噴かれるだろう。だが、ただで仲間をやらせはしない。しかと構えた彼の横を駆け抜けて、【跡地】 の灼滅者たちが1つでもコブを倒そうと果敢に攻め立てる。
    「延長戦、だね」
     先の戦いを思い出すように、宮瀬・冬人(イノセントキラー・d01830)が呟く。あの時一緒だった皆のおかげで今ここに立っている以上、負けられはしない。思いを込めた制約の弾丸が、火山コブを貫いて動きを縛る。
    「さあ邪魔なモノはぜーんぶ片付けていきましょう?」
     常の通りふわりと笑った橘・彩希(殲鈴・d01890)が、彼に合わせてレイザースラストを放った。
    「終わったら帰りにドーナツ食って帰ろうぜー」
     この戦場において、逢坂・兎紀(嬉々戦戯・d02461)の言葉はどこまでも軽く響く。けれどその台詞とは裏腹に、彼の動きは真剣そのものだ。神威・天狼(十六夜の道化師・d02510)と呼吸を合わせて突き立てた槍が、コブの脇腹とでも言うべき箇所を削り落とす。「もうひと踏ん張りしに行こうか!」
    「やれっとこまで踏ん張ってやろーじゃねーの……!」
     天狼の声に、白・彰二(夜啼キ鴉・d00942)が燃えるような笑みで答える。コブはまだ動かない。今のうちにと、灼滅者たちはひとつのコブへと狙いを集中する。
    「ハッ、百発百中、ってな。俺の分までぶちかましてこいよ!」
    「皆様の背は、私が支えます。絶対に、ぜったいです」
     逢坂・豹(臥豹・d03167)と杉下・彰(祈星・d00361)がそれぞれ前衛へと矢を放ち、癒しと強化を共に与える。抑える者、癒す者、そして攻撃を加える者。それぞれの役割をしかと心得て、灼滅者たちは更に勢いよくサイキックを重ねていく。
    「右のコブが動くよ!」
     ルイセ・オヴェリス(高校生サウンドソルジャー・d35246)の声が、火山コブの攻撃動作を灼滅者達に知らせた。その火が降り注ぐのは――より後方の灼滅者。
     シャーリィ・グレイス(五行の金・d30710)が感じたのは、全身の熱が抜けるような恐怖だった。今にも上から迫ってくる溶岩が、確実に自分を焼きに来ている。
     その時、彼女の耳に桜庭・理彩(闇の奥に・d03959)の叫びが飛び込んだ。
    「この身を獣と化してでもお前を止める!」
     それはガイオウガへの宣告であり、同時に理彩自身への宣告でもあった。彼女が何をしようとしているのかを理解した瞬間、シャーリィの中に生まれた思いがあった。
     這ってでも生きたい。何より友達にこんなものを味わわせたくない。そう思った瞬間、シャーリィの心は決まっていた。小さな背中に水晶の翼が生え、そして少女の肉体は屍王と変わる。並び立つ2人のダークネスが、溢れ出す感情のままに火山コブへとサイキックを叩き込み、突き崩す。生まれた勢いを殺がせまいと彼女らに続く仲間の背にシールドリングを贈りながら、鳳・紗夜(大学生シャドウハンター・d08068)が必死にガイオウガへと叫ぶ。
    「守るべきものがあるの。貴方達の好きにはさせない!」
     声に、ガイオウガの意志はやはり怒りを返した。生きとし生きるもの全てを破壊する、という意味だろうかと考え、しかしそれ以上は読み取れないと、無銘・夜ト(社畜系軍用犬・d14675)は首を横に振る。
    「起承転結きっちり並べてから語り掛けろ」
     言いながらも軽く飛び退り、襲い来るトゲを受ける。この一撃を、後衛へと向かわせはしない。崩れ落ちながらも敵を睨む彼と入れ替わりに、水之江・寅綺(薄刃影螂・d02622)が最前線へと躍り出た。自分の力がどこまで役に立つかは分からない。それでも皆の助けにと、寅綺はサイキックを振り絞る。
    「灼滅者がキミのために戦いにきたよ。だからお口を開けておくれ」
     歌うように、絡々・解(僕と彼女・d18761)が進む先にあるはずのものへと語りかける。ウロボロスブレイドで身を守り、降り注ぐ火山弾を弾き砕いて、解はさらに一歩を踏み出した。あと少し。あと少しで、いよいよ頭への道を開けるのだ。前だけを見据え、互いを鼓舞する声を上げて、灼滅者たちは足を進める。

    ●頭部へ
     遠く、炎の色に輝く角が見える。あれは間違いなく、ガイオウガの頭部に生える巨大な角だ。ここを突破すれば、いよいよあの頭を――垓王牙焔炉への道を射程に収められる。
    「此処が命の賭け所ってなヤツですかね……」
     呟き、西原・榮太郎(霧海の魚・d11375)が片目を細める。敵とて、これまで以上の戦力で灼滅者を撃退しにかかって来るだろう。これは、互いが生き延びるための決死戦だ。
     いざ、護国の鬼と成らん。油断なく慈悲もなく、榮太郎は並び立つ火山コブへと向かっていく。
    「いざ、押し通る!」
     あの敗戦からここまで来たのだ。絶対に負けられないと気炎を吐いて、仙道・司(オウルバロン・d00813)が道を作る。ほんの少しこじ開けられたその隙間に、ニアラ・ラヴクラフト(宇宙的恐怖崇拝者・d35780)が楔を打ち込んだ。
    「絶対的未知――死の道――を駆けるべき。宇宙的恐怖を崇拝する愚物の華を観よ。未知に満ちて往く」
     狙い定めて打ち込んだ呪いが、敵の身を蝕む。そこを足がかりに、灼滅者達は一斉に攻撃を打ち込んだ。無常・拓馬(カンパニュラ・d10401)の導眠符が更に敵の狙いを惑わせるのに合わせて、各務・樹(カンパニュラ・d02313)がマテリアルロッドを手に深く踏み込む。打撃と同時に注ぎ込まれた魔力に耐え切れず、コブは内側から爆ぜ壊れる。
     まだまだ砲台は残っているとばかり輝く残りの火口を見据えて、武藤・雪緒(道化の舞・d24557)が予言者の瞳で短期行動予測力を跳ね上げた。先行部隊がここまでの道を開いてくれた。そして自分達の後には、垓王牙焔炉を狙う仲間達が控えている。このチャンス、何が何でもものにしなければ!
    「大切な人がつなげてくれたのです」
     だから、それを伝えたいと。そう言って、来海・柚季(月欠け鳥・d14826)が鋼糸を操り敵の動きを封じる。その機を逃さず、鴻上・巧(氷焔相剋のフェネクス・d02823)が腕へと力を込めた。
    「障害を切り開きます」
     叩きつけた鬼の拳が、煙を上げる。崩れかけた火山コブが、好きにばかりさせぬと言わんばかりに光を湛え――たちまちそれは燃え上がり、火山弾と溶岩を周囲一帯に降り注がせた。咄嗟に仲間を突き飛ばし、或いは仲間に覆い被さって盾となった灼滅者達に追いつきざま、椋來々・らら(灰被りと論拠・d11316)が交通標識を彼らに向けた。その黄色が複数の灼滅者に力を与え、活力を取り戻させていく。
    「大怪我なら紅葉が」
     今井・紅葉(蜜色金糸雀・d01605)が他のメディックに声を掛け、1手では回復が足りない者へとジャッジメントレイの癒しを施す。心からの礼を彼女に述べて、風間・海砂斗(おさかなうぃざーど・d00581)が前方を武器で示した。
    「次、あっちから来るぜ!」
    「カゲロウ!」
     陣の薄い箇所へとライドキャリバーを向かわせ、九葉・紫廉(稲妻の切っ先・d16186)自身はフェリス・ジンネマン(リベルタカントゥス・d20066)のカバーに入る。炎を逃れたフェリスが、心を込めた歌で兄の負傷を即座に和らげた。その声を聞きながら、そして草花や樹木の姿を思い浮かべながら、十六夜・朋萌(巫女修行中・d36806)はガイオウガに呼びかける。
    「ガイオウガ、あなたは大地そのものなのでしょう? 大地とは命を育むもののはずです。殲滅ばかりの今のあなたは、自分自身を否定しているんですよ!」
    「どうしてそんなにも破壊したいんだい? 理由を聞かせてはもらえないかな」
     長姫・麗羽(シャドウハンター・d02536)もそう言葉を添え、何か見えてくるものはないかと探りを入れる。
     理由など灼滅者が敵であるからに尽きるとばかりに、ガイオウガの殺意が灼滅者達の精神に叩きつけられた。これまで以上に激烈なその意志に、けれど今になって心折れる者が居ようはずもない。
    「これで……切り開くでグース!」
     遂に小ぶりな火山コブの密集地帯を食い破り、奏川・狛(獅子狛楽士シサリウム・d23567)がその先へと飛び出した。炎を纏った蹴りが、縦横無尽に動くトゲの脇を捉えて燃え上がらせる。
    「そっちだね」
    「うん。行く、よ。お兄ちゃん」
     同じ方向へと向かう攻撃手を、吉武・治衛(陽光は秋霖に降り注ぐ・d27741)が巨大なオーラの法陣で包み込む。その陣によって天魔を宿した一人、吉武・智秋(秋霖の先に陽光を望む・d32156)が、手負いのトゲに身体を向けて飛び上がった。重力を宿した煌く飛び蹴りが、一撃で敵の機動力を削り取る。そこへ狙い違えずライラ・ドットハック(蒼き天狼・d04068)が踏み込み、一閃。影を宿したその攻撃に、トゲが真ん中から折れ飛んだ。
     そんな彼女を守り抜くべく、遠間・雪(ルールブレイカー・d02078)は機甲斧槍【スワンチカ】を掲げて力を高め、自らの傷を塞いでいく。守り手として、友より先に倒れるわけには行かない。呼吸を合わせ、灼滅者達はさらに前方へと進む。
     彼女らの脇を守るのが、【鷹狼星】 の面々によって構成された遊撃隊だ。進軍を阻もうとあらゆる方向から攻めてくるトゲの動きを見定めて、柳瀬・高明(スパロウホーク・d04232)は仲間たちの司令塔となる。
    「前方左翼、でかいのが来るぞ! 崩させるな!」
    「オーケー高兄!」
     槌屋・康也(荒野の獣は内に在り・d02877)が叫び返し、敵の突撃にいち早く備える。同時に繰り出したオーラキャノンが、向かい来るトゲを真正面から打ち据え削った。
    「負傷者は後ろに!」
    「マジ狩る☆臨音、今回も情け容赦ない癒しをお届け☆ ですわよぅ♪」
     押出・ハリマ(気は優しくて力持ち・d31336)の巨体が、堅牢な壁となってトゲの前に立ちはだかる。がっぷりと敵に組み付いて離さぬ気概の彼らディフェンダーに、間・臨音(マジ狩るリンネ・d21208)の癒しが加われば、トゲもそれ以上は本陣の灼滅者達に届かない。
    「そう簡単にはやらせねぇよ」
     風水・黒虎(跳梁焔獣・d01977)の一射を起点に、巨大なトゲへの集中攻撃が始まった。
    「絶対、一緒に帰ろうねっ」
     司城・銀河(タイニーミルキーウェイ・d02950)が黒虎の傍らから勢いよく飛び出し、より重い一撃を確実に叩き込もうとダイダロスベルトをしならせた。その間を縫うように駆け抜けた阿剛・桜花(年中無休でブッ飛ばす系お嬢様・d07132)が、一際深く敵の懐へと飛び込む。『通行止め』の赤色にスタイルチェンジした交通標識が、岩盤のようなトゲの表面に鈍い音を立てて食い込んだ。直後、後方から放たれた複数のサイキックがその傷を更に深め、遂にはトゲを折り砕く。
    「切り離されてる分もいるんだし、キミが灼滅されても別に種族的には大丈夫じゃない?」
     古すぎるモノは後進に譲れ。饗庭・樹斉(沈黙の黄雪晃・d28385)がそう不敵に笑って最前線の方角に目をやる。聞こえる距離でもあるまいが、その先にいた雲無・夜々(ハートフルハートフル・d29589)もよく似た思いを口にしていた。
    「この戦い、垓王牙は滅びようと忌々しい事に尾は残るから、どちらに転ぼうとイフリートとしての負けはない訳だ。お前が戦う理由に興味はないけれど、倒れる時は未練なく逝きなよ!」
     今ここにいる殲滅の意志も、尾として切り落とされた協調の意志も、等しくガイオウガの意志だ。そう叫ぶ夜々の声を打ち消すように、殆ど咆哮に近い声が純粋な殲滅の意志を灼滅者達に向ける。
     そして、ガイオウガの首筋とも呼べる場所にまで至った灼滅者たちは、『それ』を前にして息をついた。あちらこちらから噴煙を吐く巨大、かつ急峻な火山コブが、傲然と灼滅者達を見下ろし――そして、無数の火山弾を吐き出した。
    「っ……と。まるで怪獣映画かゲームのラスボス戦ね」
     いち早く反応して【戦戦研】 の仲間を庇った葵璃・夢乃(黒の女王・d06943)が、折れそうな膝を叱咤して立ち上がる。そんな彼女に、明石・瑞穂(ブラッドバス・d02578)もあくまで飄々と軽口を返した。
    「さーてと、気合入れて給料分のお仕事しましょーかね。……いやま、別に給料は貰ってないけど」
     だが、口調とは裏腹にその動きに油断の色はない。戦線の維持を担う彼女らに負けじと、新城・七葉(蒼弦の巫舞・d01835)が両手の武器を持ち上げた。
    「ん、制圧射撃、撃ち方始め」
     間断なく放たれるサイキックの銃弾を追い風とするように、ターニャ・アラタ(破滅の黄金・d24320)が駆け上がって刃を閃かせる。更に鏡・瑠璃(桜花巫覡・d02951)と風間・紅詩(氷銀鎖・d26231)が続けざまに放った影業が、何重にも絡んで動きを縛り、或いは敵の装甲を斬りつけて守りをこじ開ける。
     瑠璃達の作ってくれた好機、今こそ攻め時だ。灯屋・フォルケ(Hound unnötige・d02085)が小銃を同じ敵へ向け、突き放すような射撃を見舞う。
    「お前を凶方へ誘う……!」
     叢雲・宗嗣(黒い狼・d01779)がそこへ踏み込み、両手の二刀を振るって、更に敵の傷を広げていく。
     怒りに震えるように火山が鳴動する。まずい、と誰からともなく声が上がった。
    「……おおおおッ!」
     叫んだのは、片倉・純也(ソウク・d16862)1人ではあるまい。全力で飛び出したディフェンダー達が、まるで意志を持っているかのように降り注ぐ大量の溶岩から仲間を庇う。
    「純也君!」
     花凪・颯音(花葬ラメント・d02106)たちの悲痛な声に、ディフェンダー達は必死に唇を動かし、或いは目だけで告げる。行け、と。
    「正念場ですね。行けますか?」
     問いながら、行野・セイ(オブスキュラント・d02746)は既に動いていた。より深くへと攻撃を届かせるべく、チェーンソー剣で火山のおもてを削り斬る彼に、【戦戦研】 で未だ動ける後衛達が続く。
    「風穴を開けさせてもらいますよ!」
     叫んだ【TG研B班】の安藤・ジェフ(夜なべ発明家・d30263)が、遠心力を乗せたロケットハンマーで岩盤を叩き割る。
    「回復は最早間に合わぬか。なれば、せめて一手でも打ち込んでやるかの」
     在原・八重香(おばあちゃん・d24767)の呟きは、この場にいる灼滅者達の決意を代弁するものだった。次の一撃を受ければ、恐らく保つものはそういない。それを庇ってくれるディフェンダーも、既に多くがねじ伏せられている。ならば――そうされる前に、砕き切る!
    「敵は一、対してこちらにはまだ数がいます。えんみちゃん達ならやれます」
     不安を断つように言い切って、園観・遥香(天響のラピスラズリ・d14061)が契約の指輪を輝かせる。彼女らと共に狙いを定め直した秋山・梨乃(理系女子・d33017)も、持ちうる限りの力で殲術道具を打ち込み、この火山コブを崩そうと力を振り絞る。穿たれた傷から、血液のように溶岩が溢れた。
     だが、溶岩と噴煙、そして炎をあちこちの傷から漏らしながらも、火山コブの麓が揺れ始める。傷の深い者がよろめくのを支え、或いは下がらせながら、灼滅者達は目を見開いて天を見上げた。火山コブの頂上、即ち火口が、輝きを増しながら轟音を上げている!
     あと一歩。あと一歩で届かせられるのに。膝をついたまま、純也は歯噛みする。それより早く、あの火口が爆発を起こすだろう。そうなれば、戦線は崩壊の危機すらある。
     鈴木・昭子(金平糖花・d17176)
    「先へゆくための、道を付けましょう」
     その為ならば、何を厭おうか。そこまで言い切った昭子の無表情が、笑みへと塗り替えられていく。寄生体にその身を開け渡し、デモノイドと化した彼女に何か言いかけて、颯音は無言のまま火山にサイキックをぶつける。その真横を、渋谷・百合(傾慕のシャットブロンシュ・d17603)がふわりと抜けた。闇の貴族へと変貌した彼女もまた、この1手で火山を崩さんと影絵の剣を常ならぬ膂力で振り上げる。
     伸ばされかけた手を断って、廻谷・遠野(架空英雄・d18700)が笑う。これは自己犠牲などではない。ただの、ヒーローとしての役割だ。
    「じゃ、後はお願いね!」
     この先のことは、仲間達を信じよう。そう願いながら、彼女は目も眩むほどの光線を放つ。ご当地ヒーローではなく、ご当地怪人として。
     同時に漆黒の髪を揺らして、アトシュ・スカーレット(黒兎の死神・d20193)が踊るように跳んだ。その姿もまた、既に灼滅者のそれではない。六六六人衆としての目が、冷徹に壊すべきものの最も弱い箇所だけを睨む。その視線を、動ける灼滅者達が追い、そして同じ一点へと武器を向けて。
    「……そこだね」
     呟きが、すぐにひとつの爆発音に紛れた。無数のサイキックの残滓である煙が、蒸気が、光が、灼滅者達の視界を瞬間覆う。
    「熱っ……」
     息をするだけでも喉が焼けてしまいそうだ。ある者は大型武器を盾にし、ある者は友人と互いを庇い合って、灼滅者達は爆風と高熱、そして飛来する岩つぶてを耐えしのぐ。
     やがて視界が晴れたとき、そこには広大な道が開けていた。あの火山コブが崩壊し、頭部への障害が消滅したのだ。
    「生き延びた……」
    「いや、やり切ったんだ!」
     誰からともなく歓喜の声が上がる。この先にこそ、目指すべきものがあるのだ。だが、そこへ至るべきは手負いの自分達ではない。垓王牙焔炉への唯一の道を後に続く仲間達にしかと託して、胴体突破部隊はその役目を終えるべく撤収を始めた。

    ●ガイオウガの頚
     ガイオウガの『脚』から駆け上り、『胴』を越えた灼滅者達は、遂に、ガイオウガの『頭部』……堅い殻に守られた垓王牙焔炉へと通じる唯一の突破口を射程に収める事となった。
     この頭部を破壊しなければ、垓王牙焔炉に到達する事はできず、ガイオウガを撃破する機会は失われる。
     もし、そうなれば、ガイオウガの活性化による直接・間接の被害は、数百万人を越えることだろう。
     否、それだけでは無い。
     ガイオウガが武蔵坂勢力の殲滅を行えば、世界は再び、ダークネスが支配する暗黒時代へと回帰してしまうのだ。
     この戦いは、まさに天王山。
     わらわらと沸き始めたガイオウガを守るトゲ達を前に、杉凪・宥氣(天劍白華絶刀・d13015)は、耳にかけていたヘッドホンの電源を入れた。
     耳朶を打ち迸る音の塊が、彼の戦意を高揚させ、瞳が血の色に染まっていく……。
    「先手は頂くよ。六型終式・火鞠逆神楽!」
     宥氣のレーヴァテインの一撃に続くように、周防・雛(少女グランギニョル・d00356)が、ポンポンと共に動き出す。
    「イフリート達は、この地を荒らさずにいたわ。それはこの地が大切なものだと思っていたからではなくって?」
     その大切なものは踏みにじるのならば、ガイオウガがイフリートの王であるなどと、認めるわけにはいかない。
     その言葉と共に放たれた、雛の糸がトゲの動きを牽制する。
    「私たちは、イフリートと共に歩んで行きたいと思っている。だけど、ガイオウガ、あなたは本当にイフリートなのかな?」
     葛葉・有栖(紅き焔を秘めし者・d00843)が、ガイオウガの意思に語りかける。
    『我は、ガイオウガ。灼滅者を殲滅する意思』
     その問いかけに応えるかのようにガイオウガの殺意の意思が戦場に響く。
     それは、一かけらの協調の意思さえない、純粋な殺意であった。
    「上等だぜ、今度こそぶっ潰す! あたしたちの底力を見せてやるぜ!」
     本山・葵(緑色の香辛料・d02310)は、そのガイオウガの意思に傲然と言い放ち、交通標識を赤色標識に変えて手近なトゲを殴り倒す。殴り倒されたトゲは、態勢を立て直すまでもなく、有栖の必中の攻撃で灼滅された。
    「ガイオウガ、お前が、俺達を殲滅したい事はわかっている。
     だが、私たちがそれを受け入れることは無い。
     私たちは不屈の意志をもっている。たとえ最後の一人となろうとも、諦める事などありえぬのだ!」
     葵に続くように、フィクト・ブラッドレイ(猟犬殺し・d02411)は、そう宣言すると、殺人注射器を突き立て、止めを刺されたトゲは、塵も残さず消滅した。
    「みなさん連携して戦いましょう。今のガイオウガは、ただ暴れるだけの竜種と同じ。誇りある幻獣ではありません。ならば、情けをかける必要もありません」
     火炫・散耶(柔き綵花・d05291)の言葉に、エリノア・テルメッツ(串刺し嬢・d26318)も、
    「ふんっ……。その通りよ」
     と同意して、タイミングを合わせて攻撃する。更に、エリノアの動きに呼応するように、前衛の灼滅者達が迫り来るトゲ達に一斉射撃を浴びせかけた。
     その連携の前に、灼滅者に突進してきたトゲの勢いが削がれ、次々と灼滅されていった。
     更に、散耶達の連携攻撃に晒されたトゲ達に、別方向から鋭い攻撃が射出される。
    「油断大敵かしら。前は逃がしちゃったけど、今度こそきっちりやっつけちゃうぞ☆」
     殺雨・音音(Love Beat!・d02611)は、射出したダイダロスベルトを手繰り寄せながら、にこりと笑った。
    「さぁ、道は開けたんだよ! どんどんいこう☆」
     音音の言葉に灼滅者達は、勇気凛々と前に進む。
     その前には、活火山のように噴煙をあげる火山コブ地帯が広がっていた。

    ●炎の地獄、山脈要塞
    「幸斗くん合わせてねっ!」
     火山地帯にまず駆け出したのは、夜伽・夜音(トギカセ・d22134)。
     狙いは、山脈から少し離れた地域で噴煙をあげる小さめの火山コブ、そこを制すれば、火山地帯制圧の橋頭堡となるだろう。
     駆け出した夜音を追いかけ、守るように傍らに立ったのは、竜胆・幸斗(凍牙・d27866)。
    「僕が守るから、無茶はしてもいいけど、無謀はだめだからね」
     夜音から延びる花の影と、幸斗が振るう妖の槍は、まるで、それが一つの武器であるように重なり合い、螺旋を描きつつ火山コブへと突き刺さり、その命を啜る。
     更に、かけつけてきた、白金・ジュン(魔法少女少年・d11361)達が追撃を行い、最終的にジュンの渾身の螺穿槍で、火山コブは沈黙した。
    「これで橋頭堡は確保だぜ! 荒ぶる神ガイオウガ、必ず鎮めて見せるぞ!」
     華やかな衣装をひるがえし、あでやか太股を惜しげもなく晒して、ジュンがそう言って皆を鼓舞する。
     しかし、橋頭堡となる山の上から見た光景は、灼滅者にとって優しいものではなかった。
    「まさに、鉄壁の要塞群だね」
     仲間と共に戦場を見渡した、柴・観月(星惑い・d12748)が、感嘆にも似た溜息をつく。
     遠くから見た時は、火山コブが集まった山脈であるように見えた地域は、その全ての火山コブが有機的に連結しており、互いの死角をなくし連携して侵入者を撃破する為の要塞線であのだ。
     もし、灼滅者達が何も考えずに正面から突撃したならば、この火山コブの要塞線を突破する事無く、全滅の憂き目を見たことだろう。
    「といっても、古今東西、陥落しなかった要塞は無いんだよね。だから、俺達なら攻略できるさ」
     軽くそう言うと、観月は頼りになる仲間たちを見すえると、なんの気負いも無く攻撃を宣言した。
    「家主の命令は絶対。君達も無理はしないで。帰ったら〆切が近いんだ」
     その観月の言葉に、まず動いたのは、眞仲・千紘(がらくた箱・d27351)。
    「私は肉壁。未来のための。おいしいご飯を守るための」
     ディフェンダーとして、仲間の前に立ちふさがった彼女は、火山コブからの攻撃を一身に受けても、進むのをやめなかった。
     守りたいものがある者は強い、その強さを遺憾なく発揮する。
     その火山炎の攻撃に焼け爛れた白い肌は、見ただけで耐え難い痛みを覚えてしまう程だったが、その表情に迷いは無い。
    「この痛みも、きっと直ぐに忘れちゃうから大丈夫」
     玖条・羊(マギカ・d02606)と、森村・侑二郎(一人静・d08981)の両名は、そんな千紘の献身を回復サイキックで補助しながら前進する。
    「こいつはきっついなぁ」
     羊は弱音を吐きそうになるが、壁となった千紘の姿を見ては弱音など吐けるわけがなかった。
     ただただ、回復と前進を繰り返す。
    「わさびっ、千紘さんの援護を! 全員、生きて返して見せますよ!」
     自分のサーヴァントに指示を出して、侑二郎は自分自身を鼓舞するように叫んだ。
     ここは地獄の一丁目。
     火山コブによる要塞線の火線が集中するポイントだ。
     しかし、だからこそ、この地点こそガ要塞の弱点となる。
    「今だ、蓮二さん! 絶対倒すんだよ!!」
     好機を捉えた観月の指示が飛び、まってましたとばかりに、羊と侑二郎の支援が、丹生・蓮二(エングロウスドエッジ・d03879)へと集中する。
    「雇用主命令は絶対だ。倒せというならば、否やは無い。俺の世界を救うため、俺の世界を壊させない為、この一振りに散れ!」
     友の献身と支援と期待に応えるように、蓮二はウロボロスブレイドに全ての力を込めて振りぬいた。
     その攻撃は、要塞線の要となる火山コブを貫き、そしてその活動を停止させたのだった。

    「【柴くんち】 さん達がやってくれたようです! 僕達も行きますよ!」
     観月達の奮戦が功を奏し要塞線の連携が明らかに乱れたのを確認した、虚中・真名(緑蒼・d08325)は、今がチャンスと号令を下す。
     その号令に、要塞線攻略の最大戦力である、【糸括】 と【文月探偵倶楽部】の部隊が動き出した。
     【糸括】 と【文月探偵倶楽部】は、敵が連携を取り戻す隙すら与えず、次々と火山コブの要塞線を制圧していく。
     特に【文月探偵倶楽部】の防御力は圧巻であり、山門・新(ドレッドノート・d02429)と、文月・直哉(着ぐるみ探偵・d06712)、凪・辰巳(蒼の唱剣士・d00489)、垰田・毬衣(人畜無害系イフリート・d02897)のディフェンダー4人が、前線を守り、仲間達を強力に支援する。
     中でも、自分の実力が不足していると実感している新は、慎重かつ粘り強く戦い、実力以上の力を発揮する。
    「新、その調子だ。そのまま、俺に付いてこい!」
     直哉は、ウロボロスブレイドを横薙ぎにすると、新を連れて戦場を駆け、綻びそうな戦線を補強していく。
     その、【文月探偵倶楽部】達に、怒りを帯びたガイオウガの意思が叩きつけられた。
    『我が尾を切り落とし、我が化身を滅した灼滅者よ。今また、我を蹂躙せんとするは許しがたし!』
     この怒りの意思を受けた毬衣は、その怒りは正しくないのだと口を開く。
    「アタシたちはたくさんのイフリートを灼滅してきた。だからアタシたちが憎いんだ? でも、それは……」
     だが、そこまで口にして、押し黙る。
     ガイオウガから見れば、灼滅者は、何の害もなしていないイフリートを次々と灼滅した無法者に見えるのだろう。
     サイキックアブソーバーの予知による事件を未然に防ぐということは、見方を帰れば、何もしていないダークネスを一方的に灼滅するのと同じ事なのだから。
     これが、被害が出た後の復讐であれば、相手を納得させることができたかもしれないが……。
     押し黙ってしまった毬衣のかわりに、今度は辰巳が口を開いた。
    「お前には理解できないんだな。だが、本当に俺達が一方的なものならば、お前の尾は俺達と共には来なかったろう。
     ガイオウガ、お前達の一部が、俺達と共に光に寄り添おうとした事は、認めてほしいんだ!」
     と。
     辰巳は、ガイオウガの説得が不可能な事を感じつつも、そう叫ばざるを得なかった。
     ダークネスという闇が、光に寄り添う姿。その光景を否定してほしくないという、その気持ちが溢れて紡がれた言葉。
     だが、その言葉が純粋な殲滅の意思となったガイオウガに届くことは無い。
     故に、
    「ガイオウガ、お前の言い分もわかる。だが、俺達も引く訳にはいかないのだ。お互い退けないこの戦い、もし俺達が制したら垓王牙の未来を協調派の意志に託し俺達と共に歩む可能性を認めてくれないだろうか」
     文月・咲哉(ある雨の日の殺人鬼・d05076)の交渉も、ガイオウガには伝わらない。
     勿論、咲哉も返答を期待していたわけではない。その証拠に、愛刀【十六夜】を揮って攻撃を行いつつも、周囲全てに目を配り戦場の動きを見極める動きに乱れは無かった。
    「この場の制圧は充分だ、【糸括】の戦場も問題は無い。俺達は他のフォローにまわる。皆、いいなっ!」
     防御主体の【文月探偵倶楽部】の唯一の遊撃手として、彼には果たすべき役割があるのだから。

    【糸括】 の田之倉・明比(猫好き・d36290)は、戦闘不能となった灼滅者を抱えて、一事戦線を離脱していた。
     戦闘不能となったものを敢えて狙ってくる程、敵には余裕は無いだろうが、範囲攻撃に巻き込まれては、命に関わるかもしれないのだ。
     が、その明比の不在は、戦況に大きな影響を及ぼさざるをえない。
     明比の分まで敵の攻撃を支えていた、萩沢・和奏(夢の地図・d03706)が、その激しい攻撃の前に膝を付くこととなったのだ。
    「あたしが、みんなを護るんだよ!」
     和奏はペッと血を吐きながら、縛霊手で体を支えて立ち上がる。
     だが、その体力は今まさにつきかけようとしていた。
     更なる攻撃が、和奏を襲うとしたとき、戻ってきた明比が、その眼前に立ちふさがった。
    「間一髪だぜ、でも、もう大丈夫だ!」
     明比は、和奏を護るようにして、再び戦線に復帰する。
     そこに、アルマニア・シングリッド(世界を跨ぐ爆走天然ロリっ子・d25833)のセイクリッドウインドの祝福の言葉と、ファルンのふわふわハートによって、和奏も危機を脱することができたのだった。
    「さぁ、反撃ですよ!」
     和奏を癒したアルマニアは、そのままダイダロスベルトを鋭く延ばし攻撃に転じた。
     その攻撃に反応したのか、周囲に怒りの意思が噴出した。
    『我が尾を切り落とし、我が化身を滅した灼滅者よ。今また、我を蹂躙せんとするは許しがたし!』
     その怒りに満ちた意思に、ミカエラ・アプリコット(弾ける柘榴・d03125)は、そうでは無いのだと言葉を紡ぐ。
    「尾を切り落としたのは、尾がそれを望んだからなんだよ。尾のみんなも、キミを守りたいって言ってたんだよ。
     キミも含めたイフリートの未来を守るために、武蔵坂と共に進む道を選んだんだから……。どうか、それをわかってほしいんだよ!」
     だが、その声もガイオウガには届かない。
     協調の意思が切り落とされたガイオウガからは、ミカエラの言葉に共感する為の心が失われていたのだから。
     ならばと、今度は咬山・千尋(夜を征く者・d07814)が口を開く。
     協調の意思が切り離されているのならば、今もまだガイオウガの中に居る者に呼びかければよい。
     そう、彼女と仲間達が取り逃がしたガイオウガの化身、アラハオウだ。
    「アラハオウ、あたしの言葉が聞こえるか? あたしは別にイフリートが憎くて戦ってきたわけじゃない。生き延びるのにいつも必死だっただけさ。あのとき、あんたは何に怒ってたんだ?」
     千尋は自分の思った事を素直に相手に伝えようとした。
     表面を取り繕った虚飾の言葉が通じるとは思えなかったから。
     その結果、この場にそぐわない質問となってしまったのか、ガイオウガの中に居るはずのアラハオウに届く事は無かった。
    「アラハオウ、どうして答えてくれないんだ……」
     千尋は表情を曇らせ、そして、憂さを晴らすように八拾式殲術サーベルを振るった。 

     一方、久成・杏子(いっぱいがんばるっ・d17363)は、ウィングキャットのねこさんと一緒に精一杯戦いながらも、ガイオウガの意思に必死に訴えかける。
    「ガイオウガちゃんも、あたし達も、仲間がとても大事なの。
     仲間が傷つけば怒る、奪われたら悔しい……。あたし達が感じる事って一緒なんだよ! だから、憎しみ合う事が出来るなら、許し合う事だってきっと出来る!!」
     歌うように紡がれた杏子の言葉には、確かな真実が含まれていた。
    「ガイオウガ、聞いてあげて。ボクの友達の、杏子の声を!」
     琶咲・輝乃(紡ぎし絆を想い守護を誓う者・d24803)も、その杏子の言葉を後押しするように、ガイオウガに訴えかける。
     勿論、訴えかけながらも、リズム良く攻撃を行って、周辺の征圧を推し進めるのも忘れない。
     ガイオウガの意思に訴えかける気持ちはあるが、自分達の役割も決して忘れてはならない。
     自分達の役割は、垓王牙焔炉への道を切り開くことなのだから。
     だが、杏子の言葉も輝乃の後押しも、今、この場におちて、ガイオウガの怒りの意思を鎮めるには力が足りなかった。
     互いに同じだけ傷ついたのならば、その罪を許しあって未来を共に進む選択はありえたかもしれない。
     だが実際には、灼滅者に比べてイフリート達の被害が圧倒的に大きいのだ。
     今まさに、灼滅者と協調する意思を持ったイフリートを根絶する為の攻撃を仕掛けている以上、それを否定する事はできないだろう。
     日本の人口の半数、或いは、灼滅者の半数でも、イフリートが殺していたのならば、杏子の言葉にも説得力があっただろうが、現時点では、勝者の戯言と言われても否定できなかっただろう。

    「……僕も垓王牙も仲間を守りたい、似たもの同士なのです。ならば、どちらかが倒れるまで意地の張り合いをしなければならないのです」
     真名が、言葉が受け入れられず意気消沈しようとする、杏子達を励まし、戦いに集中するように促した。
     こういった、仲間達のケアも、後方から戦場全体の状況把握を行っていた、真名の役割なのだ。
     そして、真名の言葉に呼応するように、ガイオウガの意思が戦場から消え去った。
     真名の隣で回復を行っていた、鈍・脇差(ある雨の日の暗殺者・d17382)も、最後の力を振り絞るように、攻撃に加わる。
    「制圧までもう少しだ。ここを制圧すれば、本丸に手が届くぞ!」
     そう言って仲間を鼓舞した脇差は、消え去っていったガイオウガと、そして仲間達に向けて、こう言葉を発した。
    「絆は確かに結ばれたのだ。イヌガミヤシキは、尾に居た奴らは
    ダークネスだろうが俺達の仲間だ。信じてくれたアイツらの覚悟に報いる為に、その意思を守る為に、俺達はこの戦場に立っている。戦おう、奴らの為に。戦おう、俺達の為に」
     その、脇差の言葉は灼滅者の決意となり、戦場を勝利へと導くのだった。
     この数分後、
    「ここが最後だぜっ!」
     要塞と化していた火山地帯の最後の火山コブに、レイシー・アーベントロート(宵闇鴉・d05861)達が取り付いていた。
     戦場を自らの鏖殺領域で覆ったレイシーが、黒死斬で火山コブを抉ると、霧月・詩音(凍月・d13352)も、影を喰らい影を斬る事で、敵を追い詰めていく。
    「……こちらは対話という形で手を差し伸べましたが、それを拒み、振り払ったのはあなた達自身」
     ならば、情をかける必要は無いと、詩音の攻撃に躊躇いは一切無かった。
    「ガイオウガが、取り込む事だけがひとつになる手段ではないと気づいてくれれば良かったのに」
     リヒト・シュテルンヒンメル(星空のミンストレル・d07590)も、残念そうにそう言った。
     星空のファンタジアが奏でる希望ですら届かない場所に居るガイオウガを悲しく思いながら、リヒトは、傷ついた仲間を癒す。
     そして遂に、桐屋・綾鷹(真淵探紅月・d10144)の斬影刃が、最後の火山コブの命脈を断ち切り、炎の地獄と化していた山脈地帯は、完全に沈黙するのだった。
    「私達は、どんな危機に陥っても絶対に諦めたりはしない! そうであるならば、必ず、目的を果たす事ができるでしょう! さぁ、いきましょう、ガイオウガの頭へ!」
     綾鷹の言葉に、まだ戦闘可能な灼滅者達が前に歩み出す。
     ガイオウガの頭部は、もう、すぐそこなのだから。

    ●逆鱗のガイオウガ
     火山コブの要塞線を突破した灼滅者達は、ガイオウガの頭部をはっきりと捕えていた。
     巨大な火山コブが聳え、硬い殻に護られたガイオウガの頭部。
     その威容を見た灼滅者は、戦意を奮い立たさせずにいられなかった。
     あの頭部を破壊し、決戦部隊を送り出す。
     それが、自分達の役割だと決意し、自分を奮い立たせて歩を進める灼滅者達。
     だが、その彼らの目の前で、平坦と思われたガイオウガの鱗が、一斉に屹立したのだ。
     あたり一面、全ての鱗が逆立ち、その姿をトゲへと変えていく。
     まるで、針葉樹の森のように立ち並んだトゲが、ギギギと動き出し、灼滅者に向けて解き放たれたのだ。
     総数数百に届こうかという、ガイオウガのトゲ。
     これこそが、頭部を護る為にガイオウガが身を削って生み出した、最終防衛ラインなのだろう。

    「密集するのよ! はやくっ!」
     いち早く状況に対応したユエファ・レィ(雷鳴翠雨・d02758)の指示が飛ぶ。
     この状況で孤立してしまえば、一気に敵に囲まれて命を失ってしまうだろう。
     ユエファは、最初の攻撃を一身に受けつつ仲間たちが集結して防衛線を築くのを待つ。
     ユエファに少し遅れて、星野・優輝(戦場を駆ける喫茶店マスター・d04321)、四刻・悠花(高校生ダンピール・d24781)、志水・小鳥(静炎紀行・d29532)、フェイ・ユン(侠華・d29900)の4人も、ユエファと共に、飛来する無数のトゲから仲間を護る盾となった。
    「俺は、今、大切な人の盾になろう。この盾、簡単に越えられると思うな!」
     優輝はそう吼えると、無数のトゲを前にしてひるむ事無くバトルオーラを全開にする。
     彼のバトルオーラは無敵の盾であるかのように、彼の身を包んだ。
    「私は、今、すべきことをするだけです」
     悠花もディフェンダーとして、敵を果敢に受け止めた。
     この敵の数では長期戦は免れない。
     そう考えて、悠花は特にメディックを護るように、トゲの前に立ち塞がった。
    「あなた達の数がいくら多くても、絶対にあきらめません!」
     言葉の通り、悠花は、幾本かのトゲに貫かれ血を流しても、決して諦める事はしなかった。
    「黒耀、ここが頑張りどころだ。行こう!』
     霊犬の黒耀と共に前に出た小鳥だが、激しい攻撃の前に、黒耀が力尽きてしまう。
     だが、そこで崩れる小鳥では無い。
     黒耀の分も務めを果たそうと、決死の覚悟で無数のトゲに立ち向かった。
    「セイクリッドウインド! みんな、まだ行けるよな」
     そして、その決意の通り、肩を並べるディフェンダーの回復を行いつつ、戦線を維持する小鳥は、まさに2人分の働きを見せたのだった。
    「大変だけど頑張って乗り越えよう! 皆で帰るために!」
     そう皆を鼓舞して戦うフェイは、ビハインドの无名と背中合わせにトゲの攻撃を防いだが、无名は衆寡敵せずに撃破される。
     その後は、同じくサーヴァントを失った小鳥と連携して、敵の攻撃を防ぎ続ける。
     その連携は、急場しのぎのものとは思えない程に優れており、大いに戦線を維持したのだった。

     ユエファ達ディフェンダーの決死の防戦によって、灼滅者達は、分断を免れ戦力を集中し、反撃の態勢を整える事に成功した。
    「し、しらゆきは、気が弱くて、こわがりで、泣き虫、なのです。でも、みんなが、いるから、負けません! なのです!」
     冬咲・白雪(怯えるミルクティー・d27649)は、圧倒的な敵の戦力に、震えながらも意を決して攻撃を加えた。
     自分の体から、白き炎が立ち上がらせ、敵から護る盾とすると、イカロスウィングで相手の動きを阻害する。
     ジャマーである白雪に捕縛されたトゲ達の動きは目に見えて悪くなり、灼滅者達の攻撃の的となった。
     この戦場で唯一のキャスター水月・鏡花(鏡写しの双月・d00750)は、孤立する所を救われた恩を返すためにと、雷のような鋭さで、マジックミサイルを打ち続けた。
     ダメージの蓄積した敵を狙い、数を減らしていくという鏡花の戦い方は、その場に応じて適切な戦闘を行うのが身上のキャスターの面目躍如であったろう。
     更に、満身創痍のディフェンダーを押しのけるように前に出た、エリザベート・ベルンシュタイン(勇気の魔女ヘクセヘルド・d30945)らクラッシャー達の活躍は目を見張った。
     当たるを幸いぶちかましたブリドサイクロンは、周囲の敵を巻き込んで華々しい戦果を上げた。
     その華麗な戦う姿は、勇気の魔女という名に相応しかったろう。
     そのエリザベートの活躍に負けるものかと、木通・心葉(パープルトリガー・d05961)も断罪輪を縦横に振るう。
    「戦い尽くすにはもってこいの戦場だろう」
     そう言うと、実戦から遠ざかっていたブランクを思わせない、流麗な動きで、敵にダメージを積み上げていく。
     アリス・バークリー(ホワイトウィッシュ・d00814)は、そんな2人の少し後方から、オーラキャノンを射撃する。
    「私は、ここで死ぬ気は無いわ。でも、それは負けても良いということではないの。勝って、あの子の傍へ戻るのだから」
     安全マージンを取りつつも、トゲの中でも特に大型な敵を狙い打つアリスの攻撃は、ボディブローのように、敵全体を蝕んでいった。
     リサ・ヴァニタス(アンバランスライブラ・d33782)も、その激しい戦いの中、攻撃に回復にと八面六臂の活躍をしてみせた。
     敵の数の暴力を前にして、彼女はゾクゾクとした快感を感じていたのだ。
    「さぁ、楽しく愉しくイキましょぉ?」
     舌なめずりをして、戦場を見渡したリサは、瀕死の敵に止めを刺し、瀕死の味方を回復する。
     その姿は、生と死の境界線でダンスを披露する踊り手のようであった。
     勿論、メディックのリサにばかり活躍させる事はできない。
    「今度こそ垓王牙の年貢の納め時です。スナイパーの皆さん一斉射撃……。一気に畳み掛けます!」
     御火徒・龍(憤怒の炎龍・d22653)の掛け声と共に、数多のサイキックが戦場を貫いた。
     それは、攻撃の一方の主力となるスナイパー達の一斉射撃である。
     ある時は敵の密集地点を狙い、ある時は、孤立した敵を殲滅する。
     龍の的確な指示もあり、次第に敵の数の圧迫が和らいでくる。
     鳥辺野・祝(架空線・d23681)は、状況の好転に息をつきながらも、油断せずに攻撃を続ける。
    「誰かが死ぬのも、自分が死ぬも駄目だ。だから、足掻くって約束している」
     黒髪を靡かせて、ブレイドサイクロンを放ち、近づいてくる敵をオーラをまとった連打を放つ彼女の姿は、確実に勝利を引き寄せつつあった。
     仲間を死なせない。その思いは、空月・陽太(魔弾の悪魔の弟子・d25198)も同じであった。
     陽太は敵に攻撃を浴びせながらも、戦闘不能となった仲間の保護にも力を尽くす。
     といっても、
    「こんな所に寝転んでたら、攻撃の邪魔だね。そっちいってな」
     と、倒れた味方を蹴りだしながら攻撃を続ける姿は、人命優先という雰囲気とは少し違っていたかもしれない。
     一方、
    「最も高い命中率のサイキックを選択、殲術執刀法……攻撃開始……命中」
    「最も高い命中率のサイキックを選択、螺穿槍……攻撃開始……命中」
     淡々と最高効率の攻撃を続けたのは、ベルベット・キス(偽竜の騎士・d30210)。
    「これが、ボクの持ち味だからね」
     確実に命中させる事に特化したベルベットの攻撃は、その高い確実性で、敵戦力を分断するのに大きな貢献を果たしていく。
     そして、数百近いトゲにより包囲され分断の危機に晒されていた灼滅者達は、逆に、敵を分断し殲滅する機会を得たのだ。

     この好機に戦場に躍り出たのは、特に連携に自信のある灼滅者達。
     分断された敵を再集結させず、更に、敵中を突破して混乱させ、自分達が敵中に孤立しない。
     そういった優れた連携が必要とされる局面で必要なのは、彼らのような灼滅者達なのだ。
     まず動いたのは、鹿野・小太郎(雪冤・d00795)、羽守・藤乃(黄昏草・d03430)、篠村・希沙(暁降・d03465)の3名。
    「ガイオウガの意思なんて、もう関係ないんだよね。オレ達は、お前を越えて行くのだから!」
     小太郎は、弱った敵に止めを刺しながら更なる敵の分断に動く。
     稀に小太郎が倒しきれなかった敵は、藤乃が的確にフォローしてすきはみせない。
    「鹿野さん、こちらです」
     更に、倒すべきだと藤乃が判断した敵に対しては、小太郎との連携攻撃を使って確実に潰していく。
     2人は、この連携により、効率よく敵を撃破して言った。
     勿論、こんな傍若無人を敵が見逃すはずもなく、彼ら2人を狙って複数のトゲが飛来してくる。
    「わたしは、2人の盾や。こたろとふじを狙うなら、わたしがあいて、受けて立つよ!」
     が、こんなこともあろうかと、希沙がしっかりとガードを固めていた為、2人に大きな被害が出る事は一度たりと無かった。
     一方、別の方向から敵の群れに切り込んだのは、ヴェルグ・エクダル(埋み火・d02760)と赤秀・空(虚・d09729)の2人。
    「レイザースラストっ!」
     その掛け声と共に放たれたヴェルグのレイザースラストが敵を貫き、ダメージを負った敵の命を、空が制約の弾丸で消し飛ばす。
    「前に出すぎだ、ヴェル。もっと周囲を見るんだ」
     そんな2人を空の連れが守るという三位一体の攻撃は、未熟ながらもうまく機能しているようだ。
     更に、
    「殲滅って事は、俺達の仲間も、一般人も、協調の尾も殺す気なんだろう。それは絶対に許さねえ。だから死ね」
     ヴェルグのクルセイドクラッシュが敵をなぎ払い、確実に敵の数を減らしていく……。
    「空さん達も頑張っていますね」
     その空達の活躍を目の端で捕えながら、狩野・翡翠(翠の一撃・d03021)は、パートナーのリアナ・ディミニ(不変のオラトリオ・d18549)に目配せする。
     狙いは、ヴェルグと空が討ち漏らした敵。
     更に、そこから進軍して敵の群れに更なる出血を強いるのが彼女達の目論見だった。
     目論み通り、翡翠の戦艦斬りが見事に決まって、7mサイズのトゲが撃沈する。
    「翡翠、絶好調ですね。なら、私も……」
     更にリアナの螺旋槍に貫かれた5mサイズのトゲが消滅し、戦場が一気に広くなった。
     広くなった戦場に小型のトゲがわらわらと寄ってくるが、
    「煩い、黙って潰されて」」
     と、2人の殲滅力の前に抵抗できずに各個撃破されていった。
     あまりに攻撃に偏りすぎた為に、途中でリアナが痛打を浴びて、翡翠に付き添われて撤退する事となったが、それまでに充分以上の敵を撃破し、戦場の征圧に大きく貢献する事ができたようだ。
     翡翠たちが抜けた穴を塞いだのは、神虎・華夜(天覇絶葬・d06026)と聖刀・忍魔(雨が滴る黒き正義・d11863)の2人。
     トリッキーな動きをする華夜が、敵を翻弄し、
    「俺達が戦うのは、ガイオウガの為、そして友達のチャシマの為だ!!」
     忍魔の一撃が、敵を屠る。
     更に、
    「荒火神命、守って!」
     華夜のサーヴァントが2人を守る。
     敵の戦力が減っている事もあり、荒火神命の守りが破られることも無く、彼らの連携攻撃で算を乱した敵群を、灼滅者の本隊が押しつぶし磨り潰し、戦場を完全制圧したのだった。

    「この戦場は制圧しました、あとは、頭部の破壊のみ。全力で向かいます!」
     スナイパーとして制圧戦を指揮した龍の言葉に従い、灼滅者達は前進する。
     決戦の場、ガイオウガの頭部を目指して。

    ●火を噴く大火山
     意気軒昂とガイオウガの頭部に迫る灼滅者達。
     堅牢な外殻を破壊し、ガイオウガの頭部を破壊、最終決死部隊を戦場に送り出す。
     それで役目は全て果たす事ができる。
     彼らはそう思っていた。
     そう、思っていたのだ。
    「こちら、ニョホホランドからやって来た、ンーバルバパヤ・モチモチムールデス。現在、ンー達灼滅者は危機に陥っていマスデショウ。良く良く考えてみればわかった事デスガ、ガイオウガの頭部には、巨大な火山コブがあったのデスマス。巨大すぎて地形の一部だと思ってしまっていたのデス」
     ンーバルバパヤ・モチモチムール(ニョホホランダー・d09511)の言葉の通り、頭部へと到達し攻撃を開始しようとした灼滅者達は、巨大すぎる火山コブからの一斉砲撃によって、陣形を崩され撤退を余儀なくされてしまったのだ。
     なんとか態勢を立て直した灼滅者の中で、最も早く情勢を分析したのは【アルニカ】の蜂・敬厳(エンジェルフレア・d03965)だった。
    「僕の分析結果では、頭部の巨大火山コブ1つでも撃破・沈黙させる事ができれば、砲撃に死角ができる事がわかりました。巨大すぎることの欠点ですね」
     敬厳の分析では、撃破する巨大火山コブによって死角の位置は変わるが、大きな違いは無いとの事だったので、【アルニカ】を中心とした攻撃隊を編成して、最も防御力が低いと思われる巨大火山コブの撃破に向かう事となった。
     巨大火山コブの砲撃を至近距離で受けた場合、キバノホムラに近い破壊力が発揮される可能性があり、全軍で攻撃すると、頭部破壊の戦力が不足する危険があるという理由である。

    「大丈夫、【アルカニ】の仲間は、僕が守るっすからね」
     緊張の面持ちの敬厳達を、瀬宮・律(気まぐれな黒蝶・d00737)は、軽い口調で激励する。
     口調は軽いが、自分の命をかけて仲間を守ろうという気概は本物である。
     そして、その危害を感じる事で、最前線を任された【アルカニ】のメンバーは落ち着いて状況に対応する事が出来た。
     巨大火山コブの麓は、砲撃の死角となっている為、暫く攻撃は無かったが、ある程度登りだすと、散発ながらも砲撃が浴びせられはじめる。
     受けたダメージは、メディックの瀬宮・めいこ(ふわひつじ・d01110)が、すぐさま回復してまわるが、長期戦になればジリ貧となるのは目に見えていた。
     重傷者や戦闘不能者が出始めれば、彼らを安全圏に運ぶ為の戦力も必要となり、まともに戦う力は残らないのだから。
     だが、それでも……。
     めいこには、ここで引く考えは無かった。
    「帰りを待っていてくださる方もいらっしゃいますから。ここで引くことはできません!」
     めいこは、力の限り回復を行い、戦いの場へと皆をたどり着かせる為に全力を尽くすのだった。
     そして遂に、攻撃隊は巨大火山コブの頂へと到達する。
     ここまで来れば、巨大火山コブに直接攻撃が可能となる。
     早速、凪・美咲(蒼の奏剣士・d00366)が、雲耀剣で山肌を攻撃する。
     手ごたえはあったが、敵に打撃を与えたという実感は無い。
     まるで大自然と徒手空拳で闘っているかのようだ。
     だが、その程度で、美咲の攻撃の手は止まらない。
    「ガイオウガ、あなたと語り合う事は、もう不可能なのですね。
     ならば後は、互いの力と想いのどちらが上まわるか、ただそれだけです!」
     その思いと共に、美咲は攻撃を続け、その勢いに続くようにと、頂に到達した灼滅者達が最大の攻撃を繰り出し続けた。

    「これは、まずいですねぇ」
     火山コブのその動きに最初に気づいたのは、【エデンの木陰】 の九重・木葉(蔓生・d10342)であった。
     【エデンの木陰】は全員がディフェンダーであり、攻撃に集中する仲魔達を、至近距離からの砲撃から守る役割を果たしていた。
     そして、それにより、最初にその動きに気づくことが出来たのだ。
    「大きいのが来ますよ!」
     木葉の警告に、攻撃に集中していた灼滅者達が、防御態勢を取る。
     しかし、その動きをあざ笑う様に、特大の砲撃が、火口付近を呑み込んだのだ。
    「誰も死なせないのです!」
     【エデンの木陰】 のナターリヤ・アリーニン(夢魅入るクークラ・d24954)が、燃え尽きそうになる命を守る盾となる。
     しかし、そのイブもまた命の危機に瀕した時、彼女の前に彼女のビハインド『ヴァローナ』が立ちふさがり、その消滅と引き換えに主人を守った。
    「ヴァローナ……」
     ナターリヤは、サーヴァントの献身に感謝しつつ、態勢を整える。
     この一撃はマズイ。早く、皆を助けなければ壊滅するかもしれない。
    「ヴァレリウス……」
     ナターリヤと同様に、自らのビハインドと引き換えに、なんとか攻撃に耐え抜いていたイブ・コンスタンティーヌ(愛執エデン・d08460)も、素早く動き出す。
    「わたくし、死ぬのは怖くありません。ですが、ここで死ぬつもりは、毛頭ございません。灼滅者の底力を括目してくださいまし」
     次の砲撃までのわずかな時間。
     イブは防御を捨てて、攻撃に全ての力を注いだ。
     鬼気迫るその攻撃は、イブを戦場に咲いた血の薔薇のように際立たせたのだった。
     多くの灼滅者が、傷だらけながらも、イブに続いて全力で攻撃を仕掛ける。
     この攻撃がもう一度くれば、部隊は壊滅する。
     ならば、その前に勝負を決めるしかないではないか。

     が、ここで、一人の灼滅者が立ち上がった。
     いや、灼滅者では無い。
     今の砲撃の直撃を受けて闇堕ちした、ンーバルバパヤだ。
    「まだイける! ンーはやればできる子ヨ!」
     ンーバルバパヤは、そう言うと、大きく体を伸ばすようにのけぞらせる。
     すると、彼女の下半身が蛸の足のように変化していく。
     そして、状況を理解すると、
    「あらあらうふふ、あらうふふ」
     と、意味ありげに微笑を浮かべると、火口へとダイブしていった。
    「あの砲撃は、私がなんとかしてあげます。だから、愛しの皆さんは、必ず勝って下さいますでしょうか?」
     闇堕ちした状態で、あの攻撃を受ければ、確実に消滅してしまう。
     それを見た灼滅者達は、ンーバルバパヤを呼び戻そうとしたが、彼女の変化は蛸の足となった下半身であり、翼では無い。
     帰ってくる事などできるはずは無かった。

    「好機は今しかねぇぜ。てめぇら、撃って撃って撃ちまくれ!」
     灼滅者の中で最初に動き出しの派、丹下・小次郎(神算鬼謀のうっかり軍師・d15614)。
     どんな汚い方法だろうと勝つために全力を尽くそうとする彼だからこそ、ンーバルバパヤの命を無駄にしない最善の行動を皆に指示する事が出来たのだ。
     そう、今は、彼女を助ける時では無い。
     彼女の犠牲を踏み越えて前に進むときなのだ。
    「よく見てろ、灼滅者の……人間の覚悟を!」
     日下部・優奈(フロストレヴェナント・d36320)も、ンーバルバパヤの献身に答えるべく、小次郎に続き力を振り絞って攻撃を仕掛けた。
     小次郎と優奈の行動を見た他の灼滅者達も、必死に攻撃を浴びせかける。
     数多のサイキックが入り乱れる火口付近は、ンーバルバパヤの命というロウソクが尽きるまでの、一瞬の煌きのようであった。
     もし、これで勝利できないのならば、神も仏も無いではないか。
     だが……。
     世界は無常であった。

    「そんな馬鹿な……」
    「間に合わなかっただと……」
     必死の攻撃の甲斐なく、巨大火山コブの火口が大きく盛り上がり、再び特大の砲撃を放つ動きを見せたのだ。

    「自分の力が足りなかったせいっすね」
     レギン・アンゼル(ソロ充サウンドソルジャー・d20919)は、そう自嘲気味に言うと、目を瞑る。
     それは、死を前にした諦観であろうか。
     否。
     彼女は決意したのだ、自分の力不足を嘆くのではなく、自分でも周りの皆を救うことが可能な唯一の方法を取ることを。
     再び彼女が目を開いたとき、その瞳は既に人間のものでは無かった。
    「わたくしが、わたくしの力で、あなたたちを守りってあげましょう」
     闇墜ちしたレギンが、皆の前に立ちはだかり、灼滅者を大きく越えた力をその身から溢れさせる。

    「あなただけに良い格好はさせませんよ。それに、このまま攻撃を受ければ、僕も生き残れるとは限りませんから」
     橘・大紫(非時香菓・d23389)が、闇の微笑みを浮かべながら、レギンの横に立つ。
    「僕は、僕の命を助けるために、全力を尽くしましょう」

    「こんなデッカイのと決死戦なんて、ホントは勘弁だったんスけどねえ」
     そういって、前に出たのは神崎・勇人(日々之ナンパ・d00279)。
    「だけど、オレが怖じ気付く訳にはいかないよな。やれる事があるなら、オレだって」
     勇人もまた、目の前に迫る命の危機を前に闇墜ちを選択し、大紫の隣に立った。

    「闇堕ちは出来れば避けたかったんだよね」
     そう、言って肩を竦めたのは無堂・理央(鉄砕拳姫・d01858)。
     だが、その一瞬後には、結っていた髪がほどけ、服装がドレスへと変化していく。
    「こういう時は、ボクに頼るんだね。良いよ、やってあげるよ」
     そこに立っていたのは、闇墜ちした理央の姿。
     彼女はドレスの裾をもって、軽く一礼すると、勇人の隣に立つ。

    「ナノナノも使い捨ててしまいましたからね、次は盾が無いのです。それに、スーパーアイドルとして、ここで地味に隠れてる事などできないでしょう」
     不敵な笑みで立ち上がった、立花・銀二(ナノテイマー・d08733)は、ナノナノが不在であるのを気にするように、バトルオーラをもぞもぞさせると、片手を頭にあてて、スーパーアイドルに相応しい格好良いポーズをとった。
     すると、背中から骨の翼が突き出はじめ、漆黒の貴人というべき本性が姿を現していく。
    「ガイオウガなどに殺されてやるわけにはいかないからな」

     その銀二に続いて立ち上がったのは、霧島・夕霧(雲合霧集のデストロイヤー・d19270)である。
     彼女は、仕方無さそうに、でも、覚悟を決めた瞳で前を見た。
     もはや、火口の砲撃は臨界点に達しようとしている。
     このままでは、この場の全ての命が失われてしまうかもしれないのだ。
    「これも、途を拓く役目、ね。なら、任せてもらうかしら」
     そう言って夕霧は、自分の魂を闇に委ねた。

    「そこまで灼滅者を滅ぼしたいか。こんな馬鹿げた攻撃で……」
     水霧・青羽(青い鳥は哀しい青さの空を舞う・d25156)は、ガイオウガの殲滅の意思の悪意を再確認する。
     しかし、それに屈する事などあろうはずが無い。
    「不見の霧、その先照らし、過去より遥か舞え、青い鳥」
     その言葉と共に、彼の姿は青い衣をまとった鳥の姿へと変化していく。
     鎖に巻きつかれたその姿は、青羽の心を表しているのか。
     それに答えるものもなく、その異形は、カーと一声鳴いて見せた。

    「戦争の借りを返して、必ず勝って生きて帰るんだ!」
     次々と闇堕ちしていく仲間達。
     その異様な雰囲気の中で、そう大声で叫んだのは、炎道・極志(可燃性・d25257)であった。
    「まぁ、それも、ここで勝つ事が前提だろうな。なら、やることは一つだろ」
     その言葉と共に極志の姿は黒い霧に覆われ、再び霧が晴れたときには、深紅の三眼を持つ狼の姿へと変じていた。
    「ぐるぅぅぅぅ」
     そして、火口へ向けて地獄から響くような唸り声をあげる。

    「ふぅん、大変そうだね。私も手伝ってあげる」
     陽瀬・すずめ(雀躍・d01665)もまた、闇堕ちした灼滅者達の戦列に加わることを選ぶ。
    「私が手を伸ばせば救える命があるのに、手をのばさないのはありえないからね」
     すずめが大きく手を広げると、その両腕が翼と変じた。
    「じゃ、軽くやっちゃおうか」
     獲物を定めた猛禽のように、闇のすずめは、火口に視線を向ける。

    「まだちょっと力が足りないようね。回復するしない以前に、即死級の攻撃だもの」
     そう呟いた、九条・茜(夢幻泡影・d01834)の額には黒曜石のような5本の角が生えている。
    「回復役はつまらなかったから、ここからは全力で攻撃をさせてもらうわよ」
     茜は……、いや、茜だったものは、そう言うと残酷な笑みを見せる。

     そして、最後の闇堕ちの時が訪れる。
    「応心念口言、如是畜生発菩提心」
     そう、明鶴・一羽(朱に染めし鶴一羽・d25116)が唱えたとき、地面から3本の十字架が現れた。
     その中央の十字架に囚われた一羽は、両手両足を封じられた状態で、闇の力をその身に宿す。
    「目の前の敵は倒してやろう。それが、こいつの望みだったからな」
     一羽の口が開き、一羽のものではない言葉が発せられ、そして、強大なサイキックエナジーが動き出す。
     11名の、灼滅者を越えた力を持つ存在と、そして、多くの灼滅者達、その心を一つにした、一斉攻撃が、いままさに砲撃を繰り出そうとする火口へと放たれる。
     それは、灼滅者達がいまだ見たことがないような、強大な力の炸裂であったろう。
     雷鳴のような激しい破裂音。
     それに続く、大地震のような鳴動。
     崩壊する巨大火山コブ。
     行き場を失って暴発する火山の力。
     まるで、世界創生の有様をみるような、情景が広がり、そして、その全てが失われる。
     残されたのは、活動を止めた、巨大火山コブと多数の灼滅者。
     彼らは、自分達を守る為に闇に墜ちた仲間達に手を伸ばそうとするが、彼らはその手を払い一人、また一人と姿を消していく。

    「終わった……」
     誰からともなくそう言葉が紡がれる。
     しかし、まだ戦いは終わらない。
     頭部を破壊するという重要任務が待っているのだから。

     巨大火山コブ攻撃隊、戦闘不能重傷者多数。
     闇堕ち11名。
     そして、死者1名。
     満身創痍の灼滅者達は、ンーバルバパヤに黙祷を捧げつつ、その場に倒れ伏した。

    ●頭頂部の戦い
     数多の犠牲を払いながら、灼滅者達は遂に、ガイオウガ頭部への攻撃を開始した。
     ガイオウガの破片を払い、キバノホムラの攻撃を耐え、ガイオウガの巨体を駆け上がる。
     思えば遠くに来たものだと、クレイ・バルドレッサ(大学生魔法使い・d16183)感慨深く眼下を見渡す。
     だが、それも一瞬の事。
    「そこそこ火力には自信ありますし、口を開かせに行きましょうか。両顎を穿てば開きますかね? 右顎ぶち抜きにいきますよぉ!」
     その言葉の通り、クレイのバトルオーラの気が膨れ上がり、ドグォーンという轟音と共に叩きつけられた。
    「さすが、クレイさん。わたしも続きますよ。いっけーなの!」
     古室・智以子(花笑う・d01029)は、漆黒に揃えられた武装から、自分専用にカスタマイズされたバベルブレイカー『貪欲の黒』を振り上げ……。
    「蹂躙のバベルインパクトっ!」
     クレイが右顎ならば、自分は左顎と、轟音と共にバベルブレイカーを撃ちつけた。
    「攻撃中隊前へ、クレイさんと智以子に続きますよ」
     天枷・雪(あの懐かしき日々は・d28053)は、クラッシャーの一団の先頭に立って、2人に続けて攻撃を叩き込む。
     この戦場に遠慮など無用。全力全壊、どちらかが壊れるまで攻撃を叩き込み続けるのだ。
     クラッシャー達の渾身の攻撃。
     爆撃機の爆撃を思わせる轟音が幾重にも響くが、しかし、ガイオウガの口を開かせるには至らない。
     ガイオウガは、あまりにも巨大すぎるのだ。
    「まだ…だ、例え…この一撃が涓滴であっても…やがては火山をも…穿つッ!!」
     自らの攻撃を、水のしたたりに例えた、月詠・千尋(ソウルダイバー・d04249)は、螺旋槍でガイオウガの体表を削り取る。
    「橘花、お願い!」
     そして、後続に控える戦友、戦城・橘花(なにもかも・d24111)に合図をした。
    「君に頼りにされるのはわるくないな。ここは、お願いされておこう。攻撃だ!」
     橘花の合図に、後方に控えていたスナイパー隊の苛烈な攻撃が千尋の穿った傷へと集中する。
    「わたしのソニックスライサーは最速よ、遅れないでね」
    「最速とか、全力全壊とか、僕のキャラでは無いんだけどねぇ。まぁ、それなりにいかせてもらうよ」
     即席でコンビを組んだ、神坂・鈴音(魔弾の射手は追い風を受ける・d01042)と白・理一(空想虚言者・d00213)は、高速で千尋の下へと駆け寄ると、正確無比な攻撃で、その傷口を広げる。
     鈴音は流星の煌きと共に宙に舞い、飄々と繰り出された理一の一撃は、インパクトの瞬間に膨大な魔力をガイオウガに叩き付けた。
    「はい、ここが、目標だよ。一斉射撃よろしくだねぇ」
     そう言って、鈴音と理一がその場から退去すると同時に、後方からの凄まじい砲撃が開始されたのだ。
    「バースタービーム!」
     まずは、バスターライフルを元気良く構え、勢い良くビームを発射する樹・咲桜(蒼風を舞う子猫・d02110)。
     可愛らしい見掛けから放たれる砲撃は、まさに、魔砲少女そのもののようだ。
    「僕も、できるかぎり戦うよ。レイさんと一緒にいるために」
     桃宮・白馬(雄猫・d01391)も、遠距離攻撃のDCPキャノンで、咲桜の攻撃に続く。
     それは、実力不足ながらも、この戦いに参加した彼の渾身の一撃だった。
    「やるではないか、少年」
     白馬の攻撃を見て、ニヤリと笑ったのは、スキップジャックに騎乗して砲撃姿勢を取ったアレクサンダー・ガーシュウィン(カツヲライダータタキ・d07392)。
    「あれに見えるが、口蓋粘膜だろう。ならば、撃つべし撃つべし撃つべしだ!」
     白馬の攻撃で露出した体組織に素早く気づいたアレクサンダーの黙示録砲が光の砲弾となり、着弾し粘液を飛び散らす。
    「そこが弱点ですか? では精一杯狙い打ちます。ふぁいと、おーなのです♪」
     熊の影業を背負った少女、かに座のサウンドソルジャー宇迦之・憐歌(いつも元気ににこにこぱっぱ・d28452)が、ふんわりふわふわした黙示録砲で追撃する。
    「がいおうがさん、覚悟なのですよ!」
     そして、その一撃が止めとなったのか、ガイオウガの顎に亀裂が入り、そして遂に砕かれたのだ。
     砕け散る間接、撓む骨格、飛び散る肉片……。そして開かれるガイオウガの口……。
     誰もが、自分達の勝利を確信した時、不知火・レイ(星に誓いを・d01554)が動いた。
    「油断するな! この肉片は生きてるんだ!」
     レイの言うとおり、砕け散った肉片は、飛び散った体液は、意思をもつように蠢き、自分達を砕いた灼滅者へと襲い掛かってくる。
    「白馬、後ろに下がってるんだ」
     レイは、友である白馬を背後に庇うと、蠢く肉片の動きを高速演算モードで割り出し、次々と撃破する。
     生きているとはいっても、所詮は破壊された肉片や体液、数は多いが強敵では無い。
    「うーうー、あばれまわるのもいいかげんにするのー!」
     エステル・アスピヴァーラ(おふとんつむり・d00821)などが、暴れまわる肉片を次々と撃破していくと、その数は目に見えて減っていく。
     灼滅者に正面から挑んでもとても対抗できないと感じたか、残る肉片は、戦闘不能者が集められていた場所へと向かおうとする。
     が、その目論みも、
    「おっと、こっちは通行止めだね」
     と立ちふさがった、焔月・勇真(フレイムエッジ・d04172)に阻止される。
    「お前も肉片とは言え、ガイオウガの一部なんだな。ならば、せめて俺の手で葬ってやるよ」
     そして、勇真が放った破邪の白光を最後に敵の掃討は終わり、ガイオウガの口への道が開かれた。
     勝利に気を高ぶらせガイオウガの口へ向かう灼滅者達。
     その彼らの前には、垓王牙焔炉に続く最後の関門が待ち構えていた。

    ●ガイオウガトゥースウォーリアー
     ガイオウガの顎を破壊し、その口内に侵入した灼滅者達。
     巨大すぎる洞窟のような口内、この先に、垓王牙焔炉があるのだろうか?
     少しだけ浮き足立った灼滅者達に、
    「落ち着いて。慌てない、冷静に……いつもとやる事は変わらないわ」
     【神木霊碑】の海堂・月子(ディープブラッド・d06929)が冷静に声をかけ注意深く探索を続ける。
     しかし、灼滅者達の探索はすぐに行き詰る事となった。
     何故なら、ガイオウガの喉にあたるだろう部分が、硬い外殻によって完全に閉ざされていたのだ。
     【沈黙】の京・円理(第三命題・d05319)は、その外殻に手を触れ、思案を重ねる。
    「ダイアモンドに似た単結晶のようだな。それに、ガイオウガの膨大なサイキックパワーが内蔵されている、この結晶で作られた外殻の硬度は、おそらく地上最硬だろう」
     円理の言葉通り、垓王牙焔炉への道を塞ぐ外殻は、試しに攻撃してみた灼滅者のサイキックを全く通さなかった。
     皆の目が、ダイアモンドのような外殻に注がれたその時。
     ガイオウガの口に変化が現れた。
     破壊された顎、開かれた口。
     だが、その口には、まだ残されているものがあった。
     円理が慌てたように叫び、【沈黙】の仲間達が防御陣を組む。
    「ヒヒ、どうやら、ガイオウガの牙が動いたようですねぇ。牙もトゲと言えばトゲ、それも最強のトゲでしょう。ヒヒヒ」
     九井・円蔵(黒白うさぎ・d02629)は、垓王『牙』という名にも冠せられる牙の蠢動に、強敵との戦いを予感して、不気味に笑う。
     強敵と戦える事が、嬉しいのだろう。
     動き出したガイオウガの牙は6本。
     これまでのトゲとは比べ物にならない巨大な牙。
     さらに、そのトゲは形を変化させ、全身から炎を吹き出す巨人兵のような姿へと姿を変えていく。
     どことなく肉食獣を思わせるフォルムは、猛々しい野生の力を感じさせる。
    「ヒヒ、名づけるなら、ガイオウガトゥースウォーリアーですねぇ」
     円蔵がそう名づけるのとほぼ同時に、ガイオウガトゥースウォーリアーが、灼滅者へと襲い掛かってきた。
     こうして、垓王牙焔炉の入り口を守る最後の番人と灼滅者の戦いが始まった。
    「アレは、バラバラに戦ってどうにかなる相手ではないわね。みんさん、連携の取れるチームを中心に戦うのよ!」
     月子の指示に従うように、灼滅者達はそれぞれグループにわかれて、戦いだす。
     月子の【神木霊碑】は、人数が多かった事もあり、二手に分かれて迎撃に当たった。
    「灼滅者は弱い存在だ。協力し合わないとダークネスには勝てないだろう。しかし、協力し合う灼滅者はダークネスを打倒するんだ。今回はちょっと規模が大きいけれど……やればできるさ!」
     月子と共にその場に残りガイオウガトゥースウォーリアーを迎撃した望崎・今日子(ファイアフラット・d00051)は、そう嘯く。
    「さぁ、掛かってきな!」
     その今日子の言葉に応えるように敵も豪腕を振り回して肉薄してくる。
     まるで竜巻のような攻撃であったが、しかし、
    「相手がなんだろうと、退きませんよ?」
     その攻撃は、ディフェンダーの加奈氏・せりあ(ヴェイジェルズ・d00105)が見事に浮け切ってみせた。
     更に、セリアがトラウマナックルで逆撃すると、それに続くように、灯灯姫・ひみか(星降りシャララ・d23765)のクロスグレイブが業を凍結する光を放った。
    「あなたが破壊をもたらすなら、わたくしは、あなたを止めましょう。美しいものも醜いものも、壊れたら簡単には直らないのです。だから、わたくしが、止めてみせましょう」
     ひみかは、そう言うと、ウィングキャットの右舷と共に、十字架戦闘術でガイオウガトゥースウォーリアーへと斬りかかるのだった。

     一方ガイオウガの最大の牙から生まれたガイオウガトゥースウォーリアーの前に立ちふさがったのは、【Chaser】 の面々。
     七瀬・遊(烈火戦刃・d00822)、若宮・想希(希望を想う・d01722)、九十九坂・枢(飴色逆光ノスタルジィ・d12597)の3人の鉄壁の防御。
     そして、東当・悟(の身長はプラス七センチ・d00662)の攻撃と、花園・桃香(はなびらひとひらり・d03239)の回復の連携は、ガイオウガトゥースウォーリアーと戦う灼滅者達の模範となるものだった。
    「勝てへんかったら、美味しいもんなくなってまうなあ……」
     枢は、激しい攻撃を受け流しながら、戦場とは思えないのんびりとした口調で嘆息する。
     といっても、美味しいものの為にも負けるつもりは無い。
     それに、まわりの恋人達を観察する楽しみも、まだまだ続けて生きたいのだから。
     その、枢の隣からは、くすりと笑う声が聞こえる。
    「そういうの、枢さんらしくて、いいと思いますよ。俺は、焼き栗食べたいですね」
     そう言ったのは、想希。
     想希は、動作を小さく、槍を短く持ち、素早い動きで敵を牽制していく。
    「とりあえず、悟の攻撃の邪魔はさせません」
     想希の牽制で、悟への攻撃を諦めたガイオウガトゥースウォーリアーは、次は回復の要である、桃香へと狙いを定める。
     戦線を支えるために、その力を振り絞っていた桃香は、突如自分へと向かってきた暴威なる攻撃に身をすくませ、思わず胸元の懐中時計を握り締める。
    「遊さん……助けて……」
     もはや、祈るしかない桃香。彼女は思わず目を瞑り、そして衝撃に備える。
     だが、衝撃はいつまでたっても彼女を襲わなかった。
     彼女が瞑っていた目を開いたとき、目の前には愛しく、そして頼りになる背中が映っていた。
    「桃香はオレの女だ、指一本触らせねーよ!」
     そう言い放った遊が、ガイオウガトゥースウォーリアーの攻撃から桃香を庇い、そして、返礼とばかりに派手な雷光と共に抗雷撃を撃ち込んだ。
    「今だ悟! 必殺のアレをぶちかませ!」
     枢の生暖かい視線に気づかずに、遊は、悟に向かって叫ぶ。
     悟は、枢の生暖かい視線に気づいていたが、あえて触れずに、遊に親指をたてて応え、
    「ガイオウガ、お前は確かに大地を支えていたのやろう。だけどな、これからは、俺達灼滅者が大地を支える力となるんや。それを、今からお前に認めさせてやるで!」
     と宣言すると、ガイオウガトゥースウォーリアーの体を軽快に駆け上がる。
     エアシューズ『sky high』は、まるで跳ぶように駆け、そして、そのまま、流星の煌きと共に、ガイオウガトゥースウォーリアーの頭蓋を叩き割ったのだ。
     ドゥーンと重低音をならし沈み行くガイオウガトゥースウォーリアー。
     崩れる敵を背景に、悟は共に戦った仲間達に笑顔を向けた。
    「帰ったら焼き芋パーリーや!」
     と。

     【Chaser】 が最初の一体を撃破した頃、【万華鏡】チームの戦いも佳境を迎えていた。
    「皆さん、もう少しです。私が癒しますから、もう少しだけ頑張りましょう。あと一歩、あと一歩で、敵は崩れます!」
     満身創痍の灼滅者に、井瀬・奈那(微睡に溺れる・d21889)が癒しを与えながら士気を鼓舞する。
     あと一歩、そのあと一歩を踏み出せず、戦況は次第に悪化し始めていた。
    「まだ倒れるわけにはいかない…こんなところで」
     傷つき倒れた、桜庭・翔琉(徒桜・d07758)が不屈の闘志で立ち上がり、槍を振るう。
     その攻撃と共に、桜の花びらが揺れ、翔琉に戦う力と勇気を与えてくれる。
    「いつもはま守られてばかりだけど、今は、アタシが翔琉を守るんだから!」
     そして、ディフェンダーの希・璃依(シルバーバレット・d05890)が、翔琉の盾となり、敵の攻撃を挫く。
     攻撃を挫かれたガイオウガトゥースウォーリアーがたたらを踏む。
     神無月・佐祐理(硝子の森・d23696)は、その隙を見逃さず、手にした高枝切鋏を高く振り上げて号令をかけた。
    「みなさん、今です! 頭部に攻撃を集中してください。そうすれば、敵は必ず撃破できるでしょう! 私に合わせてっ!」
     佐祐理の殺刃鋏が閃き、それに続くように灼滅者の集中攻撃が、ガイオウガトゥースウォーリアーへと降り注ぐ。
     ガイオウガトゥースウォーリアーは、その攻撃に耐え抜こうと両腕を体の前にクロスしてガードするが、攻撃の勢いに耐えられず、その両腕ごと頭部を破壊されて崩れ落ちた……。
     なお、この勝利に抱き合って喜んだ、翔琉と璃依は、周りの灼滅者達の注目を浴びていたようだった。

     ほぼ同じ頃、最も最初に戦端が開かれた【沈黙】の戦場も大きく動いていた。
     社・千花(瓦楽トピアリー・d05102)と、ウィングキャットのおもちの連携によって、維持されていた戦線に、【Chaser】からの援護が加わり、灼滅者の一気に優位が確立されたのだ。
     一方的な防戦に追い込まれていた、鮫嶋・成海(マノ・d25970)も、その鬱憤を晴らすかのように暴れまわる。
    「春海の仇も取らせてもらおうかしら」
     その攻撃には、戦場で倒れたサーヴァントの仇討ちも含まれていたらしい。
     そして、円理と円蔵の連続攻撃で隙のできた、ガイオウガトゥースウォーリアーに、向かって、佐見島・允(フライター・d22179)が飛び込んだ。
    「俺はビビリだけどな、ビビリにはビビリの戦い方があるんだぜ。お前の弱点は既に見切ったぜ、俺の攻撃に今度はお前がビビルんだ!」
     允は、ガイオウガトゥースウォーリアーの弱点だと看破した一点に向けて、ドリルの如く高速回転したバベルブレイカー『エンフォーサー』を捻じ込み、そのままねじ切ってみせた。
     なお、ガイオウガトゥースウォーリアー撃破の大殊勲の允だったが、その攻撃の勢いが強すぎて、キリモミ回転で壁に激突してしまう。
     なんとも、允らしいオチがついた勝利であった。

    「今日子ちゃん達のほうは決着がついたみたいだね」
     【神木霊碑】の赤石・なつき(そして心をひとつまみ・d29406)は、二手に分かれていたもう一方の部隊が、ガイオウガトゥースウォーリアーを撃破したのを目の端で捕えて、ほっと一息をつく。
     戦力的には、あちらが主攻。
     こちら側は、残った戦力で敵を抑えて、今日子達が勝利して援護に来るまで持ちこたえるのが作戦であった。
     つまり、作戦は成功したのだ。
    「もうすぐ援軍が来るんだよ。こちらに来る援軍と共に、敵を挟みうちだよ!」
     なつきの一声に勇気付けられ、灼滅者達はガイオウガトゥースウォリアーへと攻撃を積み重ねていった。
     一方、ハチミツ・ディケンズ(無双の劔・d21331)は、多少の余裕ができた隙をついて、戦闘不能者の救護をはじめる。
     余裕が無ければ放置するしかないが、余裕が出来たのならば危険な場所から退避させてあげたいというのが、彼女の優しさなのだ。
     自分達は憎しみで戦っているのでは無い。
     助け合い、救いあう戦いもあるのだと……それを証明するように、彼女は献身的に働いた。
     そして遂に、今日子達の援軍が到達する。
     それに最も勇み立ったのは、月島・立夏(ヴァーミリオンキル・d05735)。
    「キョーコ! 俺の為に来てくれたんだね。よーし、わかった、ここはオレに任せるじゃん!」
     そして、今日子の攻撃に合わせるように、立夏のクルセイドスラッシュが炸裂。
     前後からの攻撃により、ガイオウガトゥースウォーリアーを粉砕したのだった。
    「愛の勝利、いぇい!」
     最後のお約束は勝利のポーズ。立夏は、当然今日子も一緒にやってくれると思ったが、そんな事は無かった。
     現実は非情である。

     残るガイオウガトゥースウォーリアーは、一体のみ。
     その一体と戦うのは【熾天の星天邸】を中心とした灼滅者達。
     戦力的には劣勢なれど、【熾天の星天邸】の士気は高まっている。
    「零桜奈が重傷になってでもガイオウガのキバノホムラの回数を減らしてくれたんだ……。この作戦は絶対成功させるよ!」
    「零桜奈や、他の人が、頑張って、開けてくれた道。その頑張りを、無駄には、絶対にしない。全力、全霊で、ぶっ壊す」
    「たくさんの人が命を駆けて切り開いてくれた道です。零桜奈さんの恩に報いる為にも、全力で潰しましょう!」
     零桜奈への恋心を秘めた皇樹・桜(桜光の剣聖・d06215)が、零桜奈を心の拠り所とする十六夜・深月紅(哀しみの復讐者・d14170)が、師匠の零桜奈を恩人と慕う皇樹・桜夜(夜光の死神・d06155)が……、3人の強い気持ちが力となり、ガイオウガトゥースウォーリアーを圧倒しようとしていた。
    「行くよ、桜夜!」
    「わかっます、桜!」
     双子が息をあわせて止めの攻撃の為に気を高める。
     ならばと、深月紅が、制約の弾丸を放ち、双子の攻撃から敵の気をそらしてみせた。
    「深月紅さん感謝だよ!」
    「深月紅さん感謝です!」
     声を合わせた双子は、そのまま、ガイオウガトゥースウォーリアーに駆け寄り、スターゲイザーからの黒死斬の連続技で、見事に止めを刺したのだった。
    「零桜奈も褒めてくれるかな?」
     そういいながら、にこりと笑う3人であった。

    ●開け、垓王牙焔炉への道
     垓王牙焔炉への道を護る最後の守護者は全て撃破された。
     もはや、灼滅者達を攻撃してくるものは、この場にはいない。
     だが、垓王牙焔炉への道を護る障害は、まだ一つ残っていた。
     垓王牙焔炉への道を塞ぐダイアモンドのような壁である。
    「膨大なサイキックパワーを満たした単結晶……。綺麗だけれど、なにか恐ろしいですね」
     土岐野・有人(ブルームライダー・d05821)は、そういいつつ、マジックミサイルを撃ち込むが、全く何の手ごたえも無い。
     ならばと、レイザースラストで切り裂こうとするが、やはり、全くダメージを与えられないようだ。
    「どうやら、恐ろしい堅牢さのようです。では、これでどうでしょう」
     この結果を見た、チェーロ・リベルタ(忘れた唄は星になり・d18812)が、フリージングデスを発動する。
     フリージングデスは、広い範囲の結晶を曇らせるが、その曇りもすぐに消えていく。
    「消させませんよ!」
     チェーロは、消えそうになるフリージングデスに意識を集中させ、なんとか持ちこたえる。
     結晶の曇りが晴れる速度が遅くなり、逆に新たに曇りはじめようとする。
    「ウゥゥ」
     奥歯を噛締めて、チェーロが魔力を込め続ける。突如、チェーロの膝が崩れた。
    「お姉ちゃん、大丈夫なのかい?」
     メディックの六花・紫苑(アスターニックス・d05454)が、倒れようとするチェーロを抱きとめて、抱えきれずに尻餅をつく。
     チェーロは息も絶え絶えというようで、紫苑を下敷きにしたまま荒い息を繰り返した。
     そのチェーロを軽く診察した紫苑は、チェーロの体力が大きく低下している事を確認した。
    「お姉ちゃんは、もう体力の限界だよ。まるで、その壁に体力を吸い込まれたみたいだよね?」
     その紫苑の言葉に、チェーロが倒れた後の壁の様子を確認していた水無月・詩乃(汎用決戦型大和撫子・d25132)が、声をあげた。
    「みなさん、見てください。ほんの僅かですが、壁にダメージが刻まれています。これは、おそらくチェーロさんが……」
     詩乃が指差す点を皆が確認する。
     確かに、わずかながらダメージが入っているようだ。
    「つまり、サイキックと一緒に俺達の命を叩き込めば、この壁は壊せるって事か?」
     九凰院・紅(揉め事処理屋・d02718)は、そう言うと、ガトリングガンを腰撓めにして、壁に向かってガトリング連射する。
     最初、全くダメージを寄せ付けなかった壁だったが、次第にほんの少しだけダメージを受け付けるようになる。
     それに比例して、紅の顔色が悪くなり、そしてガクリと膝をついた。
     どうやら、チェーロと同様の症状のようだ。
     メディックのジュリアン・レダ(鮮血の詩人・d28156)が慌てて紅の元に駆けつけるが、紅はそれを手で制し、絶え絶えの状況だが、ニヤリと笑みを浮かべた。
    「こいつを倒すのに必要なのは、俺達の命で間違いなさそうだ。ならば……、俺達灼滅者の敵では無い」
     そう言い切った後意識を失った紅を、ジュリアンが介抱する。
    「命に別状は無いようだね。だけど、もう戦う力は残ってないだろう」
     この壁を破壊する為に力を使えば戦う力は残らない。
     ならば、この壁の破壊は、自分達の仕事だと、ジュリアンは断言した。
     紅とジュリアンの説明を聞いた、遠野森・信彦(蒼炎・d18583)は、ゆっくりと立ち上がり、その手にサイキックを込める。
    「俺は、クロキバを説得したりイフリートと共同戦線張ったりと色々縁があるらしい。だから、この縁の行く末を見届けるため、俺の命が必要ならくれてやるぜ」
     そして、放たれるバニシングフレア。
     それは、信彦の命を吸って輝き、壁を穿つ。
     この信彦の行動に続くように、多くの灼滅者達が、その命をサイキックと共に壁へと撃ちつけた。
     ガイオウガのサイキックに満たされた単結晶が、灼滅者の命の輝きに照らされ、煌びやかに砕けていく。
     それは、まさに、幻想的な情景であった。

    「無謀はわかっているんだ。逸れでも遣る事はやり通す」
     一之瀬・暦(電攻刹華・d02063)は、決して無理をするつもりは無かった。
     が、無理をするつもりが無いからといって、出来る事から逃げるつもりも勿論無い。
     だから、今、命をかける事に異論などあろうはずがない。
    「私も、負けるわけにはいかないのです」
     暦の言葉に応えるように、梓奥武・風花(雪舞う日の惨劇・d02697)が口を開く。
     そして、鞭剣をしならせて剣の嵐を作り出した。
     その全ての攻撃に、その命と魂を乗せながら。
    「常闇よりの使者、ナイトソウル見参ッ! ヒーローとして、挑ませてもらうぜガイオウガ。お前がどんなに強大だとしても、大切な者を背にするこの心は決して挫けぬと知れ!」
     常闇よりの使者、ナイトソウル。本名、望月・一夜(漆黒戦記ナイトソウル・d25084)参上。
     一夜のソウルがオーラとなって集束し拳と共に打ち出される。
    「……今度こそ、決着を、付ける、時、ですね」
     神宮時・蒼(大地に咲く旋律・d03337)が、イフリートさん達への思いと共に、神薙刃を振るい、立川・春夜(花に清香月に陰・d14564)が、この世界を護るためならと、命を炎と燃やしグラインドファイアを叩き付けた。
     蒼の風の刃と、春夜の炎があいまって、戦場に大炎の渦が巻く。
     その炎に負けじと、【武蔵野HC】の武野・織姫(桃色織女星・d02912)は、絶対に負けないという強い意志を、その命と共にぶつけていく。
    「わたしたちは絶対に負けません! それがわたしたちの意思!」
     絶対に負けないという意思。
     生きて変えるという意思。
     大事な人を守る意思。
     この強い意志こそが、織姫の命の源なのだ。
     その織姫の傍に立つ男は、織姫の輝きをまぶしげに見ると、自らもサイキックを高める。
     【武蔵野HC】の笹銀・鐐(赫月ノ銀嶺・d04707)だ。
    「ガイオウガよ、お前は何を以て灼滅者を敵とみなしている? この織姫の姿を見て、何も感じ無いのならば、ただの獣にすぎない。もし、そうでは無いというのならば、応えてみろ!」
     鐐のその言葉に応じたのか、ガイオウガの意思が伝わってくる。
     その意思は怒り。
     自らの体を蹂躙して破壊する灼滅者に対する、純粋な怒りであった。
     だが、長月・紗綾(紫菫月光・d14517)は、その怒りに真っ向から立ち向かった。
    「イフリートの皆さんにも、勿論、ガイオウガさんにも、私の作ったものを食べてもらいたいから……!」
     彼女がかつて、先代のクロキバからの依頼で源泉を防衛したときに一緒に戦ったクマさん。
     レモンのハチミツ付けを、ぱくと食べてくれたクマさん。
     それは、とても小さな出来事かもしれない。
     でも、だからこそ、その小さい積み重ねが大切だと、紗綾は訴える。
     しかし、ガイオウガの意思がそれに応えることは無く、怒りと共に侵入した灼滅者達に意識を向けていく。
     攻撃すべき対象を選別しているのだろうか?
    「なに余裕ぶってるんだよ! キミの虎の子の殻は、華の攻撃で壊してあげるんだかよ!」
     仲村渠・華(琉鳴戦姫クールドメール・d25510)は、そのガイオウガの意識を察知して、挑発しつつ攻撃を仕掛ける。
     ガイオウガが新たな作戦を行えば、戦況はまたひっくり返るかもしれない。
     仲魔達が命を賭して続けている攻撃に横槍を入れる事を、許すことなどできるものか。
     華は、ガイオウガの気をひくべく、全身全霊の……命と魂のご当地ダイナミックを炸裂させた。
     その甲斐あって、ガイオウガの意思は、再び単結晶の壁を破壊し続ける灼滅者達のほうへと向かう。
     その意思に反応したのは、【猫帝国】の4人であった。
    「切り離した尾をぎゅーっとくっつけてヒールとかでどうにかなるなら、話し合いができるのかな? それとも出来ないのかな。でも、もうここまでだね。まりもは家族を護りたいから戦うよ」
     北海道から来た亜寒・まりも(メリメロソレイユ・d16853)は、遠く離れた九州の地で、ガイオウガに決別の言葉をかける。
     あとは、もう戦うだけ。
     せめて、まりもの除霊結界が、ガイオウガの悪心を払ってくれることを祈りだけだ。
    「尾の意思はもう届かないんだろうね。そうさせたのは私達なんだけれど……。君が奪うであろう人の命は放置できないんだ、人の世界を護る為に」
     袖岡・芭子(幽鬼匣・d13443)は、怒りに染まるガイオウガの意思に謝罪に似た言葉を告げる。
     だが、それでも、攻撃の手を緩めることは無い。
     戦って相手を倒さなければ護れないものが、この世界にはあるのだから。
    「ガイオウガ、君が、協調しようという意思も切り取ったのは、仁恵達です。
     だから、ガイオウガ、君の怒りはとても純粋なのでしょう。
     でも、君が、自分の一部が信じた者を少しでも信じる気持ちがあれば、結果は変わっていたはずです。
     だから、仁恵は謝りません。殺されて下さい」
     猪坂・仁恵(贖罪の羊・d10512)は、灼滅者を信じることができなくても、切り取られて自分自身を、もっと信じて欲しかったとガイオウガに伝え、そして、その気持ちをブレイドサイクロンに乗せて解き放った。
     仁恵の攻撃に、遂に、垓王牙焔炉への道を護る単結晶の壁が崩れ始めた。
     ここぞとばかりに攻勢を強める灼滅者達。
     力を使い尽くして倒れそうな者も、最後の力を振り絞る。
     村山・一途(硝子細工のような・d04649)も皆と同じく最後の力を振り絞る。
     しかし、それは、イフリートの為でも仲間の為でも、護るべき人の為でもなかった。
    「私は殺人鬼だから、人を助けない。 人を救わないし、人を愛さない。愛さないから、人を幸せにできない」
     振るうちからは殺す為の力、ガイオウガを殺す為の道を切り開くのに必要だから、力を振るう。
     それが、一途の真実であり、命をかける事ができる唯一の理由であった。
    「殺すのは私ではないけれど、私の刃が、その道を拓くのだよ。聖歌よ人殺しを称え、そして業を穿て!」
     キン。
     一途の攻撃が、硬質の音を立てる。
     それは、灼滅者の攻撃が、壁の向こう側に届いた印の音。

     重傷の身で作戦に参加し、鍛冶・禄太(ロクロック・d10198)に護られながら、この場へと参じた、堀瀬・朱那(空色の欠片・d03561)は、最後の瞬間に立ち会おうと、ゆっくりと壁に近づく。
     壁が破壊されようとしている事で、この場に現れたガイオウガの意思は薄れ消えようとする。
     怒りの意思は、恐怖にかき消されようとしているのか?
     そのガイオウガの意思に、朱那は静かに、しかし決然と言い放った。
    「逃げ去る君に、良い事を教えてあげるんだよ。
     君が、協調の意志を消そうとした時、この結果は、もう決まってたんだ。利害、善悪、光と闇、ぜぇんぶ同じもの。片方だけを選んだ時点で、君の、負けなんだよ!」
     そして、朱那の黙示録砲の一撃が、最後の一押しとなり、単結晶の壁に大きな亀裂が入り、その亀裂が次々と拡大し、そして遂には、粉々になるまでに粉砕され消え去ったのだ。
     禄太は重傷を負った上に、命の力さえ使い切った、朱那を彼にしては限りなく優しく抱え込むと抱き上げた。
     そして、目の前に広がる通路。
     ぽっかりと拓いたガイオウガの口を、最終決戦部隊の灼滅者達に指し示した。
    「俺達は、ここまでだ。ここからは、あんたらの仕事やろ? きばっていけや!」
     その禄太の激励が、ガイオウガの口を巡る戦いの最後を締めくくった。

    ●血戦開幕
    「なんとか、力を温存してここまで来れたな」
     最終決死部隊の灼滅者達は、ガイオウガの頭部の奥に潜む垓王牙焔炉を目指し、主力戦闘部隊の切り拓いた通路を進んでいた。
     ここに至るまで、彼らはガイオウガの破片やキバノホムラによる被害を蒙ることもなく進行できている。それが他の部隊の奮戦によるものであることを、最終決死部隊の灼滅者達は無論理解していた。

     必勝の決意を胸に進む最終決死部隊の目に、やがて、赤い光が飛び込んでくる。
     ドームのような空洞状となった、ガイオウガの口腔。
     灼滅者達が通った通路は、その上部へ通じていた。
     輝く溶岩の上には、無数のイフリート達が群れを為していた。
     垓王牙大戦で灼滅者達が撤退した時、最後に垓王牙焔炉に残った敵戦力は、開戦時から大きく減った335体。
     幸いというべきか、再び焔炉に辿り着いた灼滅者達の目に映る数は、その数と大差ないようだった。サーヴァントも含めた頭数だけならば、おおよそ同数か。
     灼滅者達が『化身』達を撃破したことで、全盛期の力を取り戻すことは阻止できた。
     その影響で、焔炉周辺の戦力回復も後回しにされていたようだ。

    「……ただ街が踏み潰されているのを見ているだけというわけにはいきませんからね」
     樹・由乃(森色自若・d12219)は、一度後ろを振り向いた。ガイオウガによって吹き飛ばされた鶴見岳と、焼き尽くされた別府市の光景を思い出す。
    「私もこの土地の出身。それなり以上に愛着を持っているんですよ」
     もしもガイオウガを倒すことができなければ、同様の光景が日本中に広がることになりかねない。それだけは避けねばならないと、灼滅者達の誰もが強く感じていた。

    「皆――絶対に生きて帰るよ、一人として死なないで。さあいこう!」
     一恋・知恵(七草美穂麦を慰めて・d25080)のかざしたマテリアルロッドが呼んだ稲妻が、眼下のドームに集うイフリートを貫く。
     それが、決死戦最後の戦いの始まりだった。
    「さあ、ヒーロータイムだ!!」
     焔炉への道行を阻むイフリートの背中へと、天方・矜人(疾走する魂・d01499)はためらいなく飛び降りた。着地と同時に繰り出された雷を帯びた拳が、敵の前線を構築する炎獣の頭部へとめり込み、溶岩の如き熱く燃えたぎる血が迸る。
     矜人に続いて次々と口腔内へと飛び込み、垓王牙焔炉を打倒せんとする灼滅者達。
     その機先を制する形で、下方から一斉に炎が噴き付けられた。
     燃え盛る焔は瞬く間に戦場を満たし、不埒な侵入者たる灼滅者達を焼き滅ぼさんとする。
     ディフェンダーのサーヴァント達が主を、その仲間を守らんと炎を阻むが、この一瞬だけで弱いサーヴァント達は消滅する。
    「これは、めろも攻撃に回ってる余裕ないかなー」
     すぐさま歌枕・めろ(迦陵頻伽・d03254)が手傷を負った仲間をダイダロスベルトで包み込み、葛木・一(適応概念・d01791)は即座に防護符を手にする。
     一は手傷を負った仲間達の様子に一瞬表情を険しくすると、符を続けざまに投げつけていく。
    「子分達も頑張って繋いだこの1戦、気合い入れて行きますかね!」
    「まずは敵の守りを排除することね。絶対に焼き尽くしてあげるわ」
     行く手を阻むイフリートへと、神夜・明日等(火撃のアスラ・d01914)のダイダロスベルトが伸びる。布の先端に貫かれたイフリートの顎内へと、牧瀬・麻耶(月下無為・d21627)は指先を向けた。
    「叩き潰して、帰って寝る。それだけの話っしょ!」
     言葉と共に、口腔内に赤き逆十字を生やされたイフリートが脳を突き破られて横転、そのまま消滅する。
    「敵がどんだけ強かろうが、やることは同じっすよ!」
     イフリートの消滅によって開いた空間を確保するように、秋津・千穂(カリン・d02870)は霊犬と共に前線へと向かう。
    「皆が切り開いた道を拓くために、往きます」
     イフリート達は巨大なものばかりではなく、その隙間を縫うようにして3m程の獣型が、灼滅者達へと襲いかかる。
    「彼女が堕ちてでも勝ち取ったチャンス……必ず、届かせます」
     闇堕ちした同胞を想い、取り戻すとの誓いを宿して、莫原・想々(幽遠おにごっこ・d23600)のダイダロスベルトは敵の硬い鱗を突き破った。
     苦痛の声が上がるよりも早く、そのイフリートへと後続の者達の攻撃が集中する。
    「……今度こそ、必ず倒す」
     果乃・奈落(果て無き殺意・d26423)は、決意の言葉と共に溶岩を踏みつけた。朱く輝く溶岩の上に影が伸び、殺意の刃と化してイフリートを立て続けに切りつける。
     イフリートの体から流れる血もまた、溶岩のようだ。
    「今はただ、突き進むだけだ。ハナちゃん、フルスロットル!」
     ライドキャリバーのハナちゃんに跨った鉄・獅子(一人と一台の機甲部隊・d01244)は突撃せんとした。だが、その行く手は容易くイフリート達に阻まれる。
    「くそっ、邪魔をするな!」
     往く手を阻むイフリート達へと獅子のダイダロスベルトが巻き付いた瞬間、敵陣からの炎にライドキャリバーが爆散、獅子もまた炎に包まれる。
    「殲術再生弾なしの戦争ってのも久し振りですが……私は私のやるべき事を致しますか」
     九形・皆無(黒炎夜叉・d25213)は、垓王牙焔炉を狙い、ダイダロスベルトを伸ばす。だが、催眠を付与せんとした皆無の攻撃は、巻き上がった炎に容易く吹き散らされた。
     付近にいた大型の竜種イフリート達を中心に、配下達がガイオウガを守るべく動き出す。
     妖冷弾を繰り返し放ち、小野屋・小町(二面性の死神モドキ・d15372)は敵前衛を狙っていった。
    「まずは取り巻きどもからッ!!」
    「迅速な灼滅のためにも、まずは敵の守りを打ち払う!」
     龍統・光明(千変万化の九頭龍神・d07159)は絶【形無し】を鋭く振るう。瞬時に長く伸びた連結刃は、飛び掛かって来ようとした虎型イフリートの胴を貫いた。
     神音・葎(月黄泉の姫君・d16902)が両手で担ぎあげたクロスグレイブから光線が放たれ、敵前線を構築するイフリート達を貫いていく。
    「まずは、敵ディフェンダーを!」
    「最優先はそれで間違いなさそうですねッ!!」
     突進して来るイフリートの頭に蹴りを叩き込み、天城・翡桜(碧色奇術・d15645)はその突進を僅かに逸らす。
     反動をつけ、飛来する炎弾を捌きながら敵を引き付ける位置へと跳んだ翡桜を援護するかたちで、大夏・彩(皆の笑顔を護れるならば・d25988)の十字火砲"彩光"から、閃光と共に黙示録砲が放たれる。
    「どのみち、あの様子なら敵の方からこっちに向かって来てくれそうだけど……!!」
     垓王牙焔炉自らもまた、数十メートルほどにガイオウガを縮小したような姿へ変形すると、その炎を灼滅者達へ向けんとする。
    「あの焔炉が、何か聞いたからってハイそうですかと情報を教えてくれるわけないよね。情報調査部隊の人達、どうする気なんだろう?」

     彩がそう心配していた頃、情報調査部隊の灼滅者達は、焔炉が1体のイフリートとして動き出した後に出来た陥没に目を留めていた。
     陥没には、とめどなく溶岩が流れ込んでいく。
     それは流れ込む溶岩の下に、巨大な空洞があることを示していた。
    「まさか、あの中、ですか……?」
    「何も無ければ、酷いことになるな。だが行くしかない」
     意を決すると、情報調査部隊は己の命も省みずに戦場を駆け抜け、先に何があるともしれぬ溶岩の底へと潜り込んでいく。

    「無茶するなー。まー、お互いここが頑張りどころだよねー」
     芥川・真琴(焔と共に眠るもの・d03339)はクロスグレイブを振り回し、敵の足止めにかかる。スナイパー達は敵の雑兵ならば余裕を持って命中させることが出来ているが、敵の中には明らかに強力な個体がおり、灼滅者達に大きな被害を与えていた。
    「確か……朱剛竜ガゼイドラと紅炎竜ズライグ、でしたか」
     狙いを定め、前線に食らいつこうとしていた小ガイオウガを風の刃で引き裂いて、山城・榛名(白兵隠殺の姫巫女・d32407)は、敵の名を呟く。
     焔炉に次ぐ力を持つ2体は悠々と戦場を暴れ回り、ディフェンダー達に痛打を浴びせている。
    「多少手強い程度で……ッ!!」
     ガゼイドラの牙を受け、深手を負ったセラフ・ジェヴィーチ(ヴァローナ・d10048)が己を鼓舞するように叫び声を上げる。イフリート達が深手を負った敵を見逃さずに襲い掛かって来るのを、ディフェンダー達が退けんと一進一退の攻防を繰り広げる。
     ガイオウガが大戦時と同様の配下を引き連れていることは分かっていたが、この2体に関して注意を払う灼滅者は誰一人いなかった。
     それだけ垓王牙焔炉に集中しているということだろうが、それが吉と出るか凶と出るかは、この時点ではまだ、灼滅者達には分かっていなかった。
    「この後に闇堕ちした友達を助ける為にも……わたしは死ぬ訳にも負ける訳にも行かないんだっ!」
     竜種の群れへと、高嶺・円(蒼鉛皇の意志継ぐ餃子白狼・d27710)の魂を削って「冷たい炎」を解き放つ。己と異なる焔を食い破るようにして突き進んで来る竜種の顎を、真下からの杭が貫く。
    「突破はさせんぞ!!」
     腕に装着したバベルブレイカーの杭を引き戻し、海弥・有愛(朱色の瞳・d28214)は怒号を上げる。
     太治・陽己(薄暮を行く・d09343)のバベルブレイカーが回転しながらイフリートの脚部を貫く。態勢を崩し、横転する巨体へと、好機と見てとった難駄波・ナナコ(クイーンオブバナナ・d23823)が鬼の腕を叩き込む。
    「リベンジマッチ! 今度こそブッ倒すぜぇ!」
     消滅するイフリートを蹴って、ナナコはそのまま敵陣へと突入していく。
    「行くぜ行くぜぇ!! あたいについて来な!!」
     轟雷で敵を撃ちながら、儀冶府・蘭(正統なるマレフェキア・d25120)の顔には僅かに懸念が浮かぶ。
    「手強いですね……」
     敵の勢いは、垓王牙大戦の時に感じたそれを大きく上回っているように、灼滅者達には感じられていた。
     戦力比もさることながら、殲術再生弾(キリング・リヴァイヴァー)による強化がないのが大きい。
     殲術再生弾は灼滅者達を死に辛くする効果の他に、ポジションによる効果を最大で2倍まで引き上げる力も有している。
     その有無は、当然のように戦闘の困難さを左右していた。
     ただ一つ有利なのは、敵の情報が既に把握できていることだろう。
     巨躯ゆえに敏捷な攻撃への対応が鈍い者が多いイフリートと戦うため、灼滅者達は適したサイキックを準備して来ていた。
    「ああもう、当たらない!!」
     もっとも、垓王牙焔炉を最初から狙い続けている水心子・真夜(剣の舞姫・d03711)は、あまりの実力差からの攻撃命中率の低さに、そう声を上げていたが。
    「まだ、敵の数も多いです。粘り強くいきましょう」
     そう真夜に言うと、結島・静菜(清濁のそよぎ・d02781)は螺穿槍やレイザースラストを繰り返して放ち、力を蓄えていく。
     竜種イフリートが振り回す尾に吹き飛ばされた柳・真夜(自覚なき逸般刃・d00798)が、立ち上がりざまにその尾の先端を切り飛ばす。
    「全く……アフリカンパンサーでも狙っていれば良いものを!」
     ガイオウガの元にアフリカンパンサーが来るのを阻止したのは武蔵坂学園であると分かっていても、思わず愚痴がこぼれる。

    「さァ……『撫で斬りにしてやりまさァ!』」
     化身達との戦いで闇堕ちした先輩の物言いを真似つつ、識守・理央(オズ・d04029)はnigh*vingeを敵へと繰り出していく。竜種イフリートの牙をすんでのところで回避した時、理央は比嘉・アレクセイ(貴馬大公の九つの呪文・d00365)の声を聞いた。
    「焔炉が動きます、気をつけて!!」
     フリージングデスを放ちながら警戒を飛ばすアレクセイ。
     その言葉にディフェンダー達が反応した直後、巨大な爆炎が灼滅者達を包み込んだ。
    「いけない……!! クラーク博士、お願い!!」
     計屋・時空(時と大地の守護者・d06513)は、前線にいた仲間をかばってサーヴァントと共に飛び出した。サーヴァントが消滅し、炎を浴びた時空が吹き飛ばされ、そこへ他のイフリート達から追撃の炎が飛ぶ。
    「今のは……」
     巻き込まれるのを逃れた三条院・榛(猿猴捉月・d14583)は、夜霧で周囲の仲間達を包みながら動き出した垓王牙焔炉を見上げた。ガイオウガ本体の縮小版だ。とはいえ、その巨大さは他のイフリートを圧倒している。

    「これ以上の被害を広げないためにも……垓王牙焔炉を排除し、人々を守るんだ!!」
     イサ・フィンブルヴェト(アイスドールナイト・d27082)は叫びと共に、身を包んでいた炎を振り払う。
     イサ達ディフェンダーが戦線をどれだけ維持できるかは、そのまま戦闘可能時間に直結しているのだ。
    「切り開け、烏巌……!」
     冷気を宿した愛槍『朝曾禰烏巌・水爪二哮』でイフリートの鱗の隙間に突き込み、日輪・ユァトム(汝は人狼なりや・d27498)はそのままに妖冷弾を解き放つ。
     至近距離から放たれた氷の弾丸が、イフリートを抉るように襲った。
    「やらせはしないっすよ!」
     魔法少女めいた仕草で杖を振るうのはアプリコーゼ・トルテ(三下わんこ純情派・d00684)。
     その手にした杖がくるくると回るたび、放たれるマジックミサイルが、守りを固めるイフリート達に確実にとどめを刺していく。
    「生きて帰る。その為に、この災害を終わらせなきゃならないんだ」
     久条・統弥(影狐抜刀斎・d20758)が日本刀を渾身の力を篭めて振るう。回り込もうとしていた小ガイオウガ達の群れが、帯びる熱を削がれて勢いを落とした。
     続けざまに旅行鳩・砂蔵(桜・d01166)の縛霊手から広がる結界が、それらの敵をまとめて絡め取る。
    「垓王牙焔炉にはそうそう当たりそうもないが、奴らなら通じるな」
    「よーし、ちゃーんす! 一体一体確実に狙ってこうねー」
     影業を伸ばしながらの仲村渠・弥勒(マイトレイヤー・d00917)の声を受け、勢いの落ちた小ガイオウガの群れへと、灼滅者達の攻撃が集中する。
    「炎の暖かさは、凍った体を、心を溶かしてくれる。壊すだけが、全部じゃない! 話聞けよこの石頭ァ! 一緒に生きれる世界を作ってよ!」
     千明・千明(ボンボンショコラ・d01367)は声をあげながら、イフリート達へと切り込んでいく。溢れる涙は熱の前にすぐに消えるが、井達・千尋(怒涛・d02048)にはそれと知ることが出来た。
    「おーおー、あのちあきがデケェ声出してら。しかも泣いてるし」
    「私たちの声も聞こえないみたい……あの子にとって、イフリートは自分の半分、姉妹みたいなものなんだもの。仲良くできるなら、それに越したことは、ないよね」
    「りょーかいっと」
     桑子・千鶴(春蚕・d02524)の言葉に軽く応じて、千尋は千明に飛び掛からんとする豹型イフリートへクロスグレイブを叩きつけた。
    (「生憎と、俺はイフリートとの協調なんてどうでもいいんでね」)
     ただ、この戦いに勝利するだけだ。
     遠慮することもない攻撃が、イフリートを粉砕した。

    ●護りを崩せ
    「まだまだ、これだけ敵がいるとな……」
     龍砕斧を手にした成田・樹彦(禍詠唄い・d21241)は、イフリート達の間を飛ぶようにして切り裂いて回りながら、そう感じていた。
    「さっさと本丸をぶっ潰せりゃ手っ取り早いってのによ!!」
     眼鏡を外し、殺人鬼の本性を露わにした久遠・翔(悲しい運命に抗う者・d00621)は、前傾姿勢で敵の只中へと突入すると当たるを幸いドス黒い殺気で包み込んでいった。
     灼滅者達の奮戦によって、敵ディフェンダーの数は減少しつつあるが、それでもなお垓王牙焔炉本体に有効打は入っていない。
     樹彦は隙を見て歌声を向けるが、その歌声は焔炉自体の耳に届かず、あるいは守るイフリート達によって確実に阻まれていた。
     当初はガイオウガを狙っていた音鳴・昴(ダウンビート・d03592)とセーメ・ヴェルデ(煌めきのペリドット・d09369)も、敵の頭数を減らすように攻撃に回っている。
    「動けるうちに、焔炉に攻撃を通したいけど……!!」
    「敵の数が多いね。その分、とどめを刺せそうなやつも多い」

     一方で、群れを為すイフリート達、そして何よりも垓王牙焔炉自体の攻撃は、灼滅者達の守りを強烈に揺さぶっていた。実力差があまりにも大きすぎて、攻撃を回避するどころではない。受けたダメージをいかに早く治すか、そして炎を延焼させないかが、メディック達の戦いだ。
    「地獄……か」
     乱戦の中、敵の死角へと回り込んでは斬り付けるのを繰り返しながら、魅咲・彩織(蒼鴉の傭兵・d23165)は思わず戦いの光景をそう評する。
    「周囲すべてが暴虐の嵐。当たれば必死。逃げられるなら逃げたいが……下がる選択肢は無いか」
    「ペケ太……よく頑張ったっす!!」
     サーヴァントの消失を見届けた天草・水面(神魔調伏・d19614)は、自らの体で後衛を襲わんとした巨大な焔の弾丸を受け止め、弾き飛ばす。
     すぐさま天草・日和(深淵明媚を望む・d33461)のラビリンスアーマーが、その弟を包み込む。だが消し切れないダメージが、ディフェンダー達には蓄積されつつあった。
    「流石に敵も手強いな!」
    「ディフェンダーが崩れたら負けです! 援護を!」
     槍を手にオリシア・シエラ(アシュケナジムの花嫁・d20189)は攻めかかってきたイフリートを足場に、ディフェンダーへと突撃しようとしていた巨大な竜種イフリートを横合いから強襲した。
     すぐさま首を向け、炎を浴びせようとする竜種に、赤城・碧(強さを求むその根源は・d23118)の右腕から放たれたDCPキャノンが着弾、爆発する。
    「死ぬには良い日というやつか……。月代、『最期まで』宜しく頼むぞ」
     主の言葉を受けたビハインドが頷き、その顔を晒してイフリート達の攻撃から灼滅者達を守るべく、敵陣へと突っ込んでいく。
    「全く、きりがありませんね」
     十七夜・奏(吊るし人・d00869)の覗き込むバスターライフルの照準の向こうには、変わらず大量のイフリートがいる。
     デッドブラスターを繰り返し放つが、いっこうに敵が減ったように思えないほどだ。

     【撫子組】の華宮・紅緋(クリムゾンハートビート・d01389)はイフリート達を足場に跳ぶと、体を振り回すようにして回転した。
     イフリート達が迎撃の炎弾を撃ち出すが、命中する直前、回転の軌道が逸れる。
     巨大化した腕による体重変化と姿勢の変化による軌道の変化だ。
     敵がそれを悟るよりも早く、紅緋の爪はフレイムトリケロスの一体を溶岩の上へと叩き伏せる。
    「皆さんの手助けで口まで来ました。その恩返しは、焔炉の灼滅以外ありません」
    「ええ……犠牲を無駄にしないためにも此処で引くつもりは欠片もありません」
     天峰・結城(全方位戦術師・d02939)は、紅緋の言葉に頷くとチェーンソー剣をイフリートの甲羅の隙間に突き入れる。
     前哨戦としての化身戦、そして、この決死戦で彼女達が戦場に至るために、少なからぬ灼滅者達が闇堕ちし、あるいは命を落としている。
     そして、少しでも油断をすれば、この戦場でもまた悲劇は繰り返されるだろう。
     それは避けねばならぬと、笹川・瑠々(平坦系はいてない狂殲姫・d22921)は思う。
    「向こう、苦戦しとるようだ。妾達も手助けするぞ」
     瑠々の言葉に、寮の仲間達を率いる久瑠瀬・撫子(華蝶封月・d01168)は頷いた。
     静かに日本刀を構え、瑠々と共に味方を援護するべく走り出す。
    「次の戦いの為、今ここで犠牲となる者は一人でも多く減らさねばならぬ」
    「無理無茶無謀は承知の上。それでも遣らねば成らぬ事はあるのです」
     それが【撫子組】の参戦する意味だと、彼女は改めて思う。
     撫子達の後ろを走る不破・九朗(ムーンチャイルド・d31314)は、八蘇上・乃麻(木俣の宿りし者・d34109)に問うた。
    「いける、乃麻?」
    「大丈夫。めっちゃ怖いけど、めっちゃ弱いけど、何もせんまま、友達が危険なとこ行くんを見てるんは嫌や」
     ラビリンスアーマーをこちらに付与しながらの返答を確認すると、九朗はイフリートへと猛進する。
     重力を宿した蹴りが、撫子に斬り付けられて苦痛の声をあげる巨獣に炸裂した。

     桜井・夕月(満ちゆく月・d13800)は、月村・アヅマ(風刃・d13869)へ噛み付こうとしたの竜種イフリートの尾を、咎人の大鎌で切り裂いた。
     敵が憎悪に満ちた雄叫びを上げる間に、アヅマは自らを癒し、鼓舞するように声を上げる。
    「少しでも長く、盾の役目を果たすんだ!」
    「アヅマくん……頑張って!」
     夕月のサーヴァントであるティンも、度重なる敵の攻撃から味方をかばう奮闘の末、姿を消している。炎に包まれようとする灼滅者達を支えるのは、後衛の灼滅者達だ。
    「メディックに回っておいて、正解でしたかね……」
     ひたすら仲間へと癒しをもたらす声を送りながら、寺見・嘉月(星渡る清風・d01013)は内心でそう思う。この調子では、回復の手は空きそうにもない。
    「どうにかならないっすかねぇ……」
     舞崎・米之助(アヤカシの鬼子・d23236)もまた、休みなく回復を繰り返していた。
     炎を浴びせかけられ続けたディフェンダー達ばかりでなく、後衛にも攻撃が届くようになってきている。それは、味方前衛が確実に消耗しつつあることを示していた。
    「鶴見岳を失い、ご当地パワーも揺らいでいる……」
     雪乃城・菖蒲(虚無放浪・d11444)は、仲間達を癒しながら感じていた。
     ガイオウガが一暴れするだけで、地形など簡単に変わってしまう。
     もしもガイオウガを倒せなければ、その被害は日本全土に広がるだろう。
    「……自分の明日を守るために、自分の、大切なモノを無くさないために……!!」
     御影・ユキト(幻想語り・d15528)は叫びと共に、全身の焔を振り払い、再び立ち上がるとダイダロスベルトを敵へと向ける。
    「こんなところで、自分達は終わるわけにはいかないのです!!」
    「どっせい!!」
     神之遊・水海(宇宙海賊うなぎパイ・d25147)は妖の槍を振り回し、敵陣へと突入しては自分へと敵の注意を引き付ける。
    「気合よ、気合……!!」
     既に幾度となく焔を浴び、水海の肌にも火傷が目立つ。
     癒月・空煌(医者を志す幼き子供・d33265)はクロスグレイブを振り回すようにして照準すると、そのトリガーを引き絞った。放たれた黙示録砲がイフリート達を包み込み、その間に敵に包囲されかけていた伊舟城・征士郎(弓月鬼・d00458)が脱出する。
    「大丈夫!?」
    「ええ、誰一人死なせずに帰還しなくては……!」
     征士郎は荒い息の下から空煌に応じる。
    「なんて戦場ですか、全く……」
     自らを戦場医と任じるシェスティン・オーストレーム(小さなアスクレピオス・d28645)もまた、灼滅者達へと矢継ぎ早に防護符を飛ばし、その傷を癒す。だが、負傷の度合いは、その奮闘で賄える域を越えていた。
    「相手のディフェンダーも残り少ない。耐え切るんだ……!」
     敵を抑え込みながら東雲・凪月(赤より緋い月光蝶・d00566)の飛ばした祭霊光が、瀕死の仲間達を癒す。先ほどから、凪月は既に攻撃に移ることができずにいた。それ程までに、敵の攻撃も、こちらの損耗も激しい。
    「当然だ、ここで倒れてなるものか!」
     荒覇・竜鬼(一介の剣客・d29121)のウイングキャットの姿が、焔を浴びて掻き消える。その最後の援護を飛んだ竜鬼は、自らもまた、傷ついた仲間へと癒しの気を飛ばす。
    「これではボク達が攻撃に回る余裕はないな……」
     ディフェンダー達は、互いを癒し合うことで、どうにか実力に勝るイフリート達の攻撃を耐え凌いでいた。百舟・煉火(イミテーションパレット・d08468)もまた、祭霊光を放ち、仲間を支援する。
     彼らが体を張って前線を維持する間に、灼滅者達は確実にイフリートの数を減らしていこうとしていた。
    「必ず皆で生きて帰る。その為の追い風として私がいる!」
     フィオル・ファミオール(蒼空に響く双曲を奏でる・d27116)は、癒しの矢を放ち、崩れそうになるディフェンダー達を支え続ける。既に戦場を駆けた霊犬シーザーの姿は炎に消えた。
     その分までと、フィオルは戦場を見渡すと、癒しの矢を飛ばしていく。
    「紡ぐは御伽噺。さあ、物語を始めようか」
     黒百合・來琉(御伽の国の空想少女・d29807)の語る七不思議によって、溶岩に満ちた垓王牙の口腔に不可思議な現象が巻き起こった。
     それに囚われ、イフリート達は次々と毒に侵されていく。
    「混沌を縛る唯一の法、侵され得ぬ絶対の純粋<力>よ! フォースブレイク!」
     回り込んだ待宵・露香(野分の過ぎて・d04960)の手にしたマテリアルロッドは、常と代わらず力を発揮した。
     打撃を受けたイフリートの皮膚に、弾けるようにして傷口が生じる。
     そこに忍び寄ると、高坂・透(だいたい寝てる・d24957)は小型ナイフを振るいその傷口を広げるようにして切り裂いていった。その後ろに付き従うナノナノは、眠たげな表情で仲間達を癒して回る。
    「これで、わたしだけでも3体はとどめを刺したけど……!」
    「なかなか、疲れるねぇ」
     周囲には巨大なイフリートがひしめき合い、戦場全体の戦況を把握するのは容易なことではない。強烈な圧力は、相変わらずだ。それは、イフリート側と同様の速度で、灼滅者達の側の戦闘者数も減じているのと意味していた。」
    「ここまで来れば、後は根競べよ。何も難しいことは無か!!」
     三島・緒璃子(稚隼・d03321)はすれ違いざまに斬艦刀でイフリートを切り捨てながら、そう断じた。イフリートの爪が掠め、額に受けた傷から滲んだ血が、あっという間に水分を奪われて乾き果てる。

    「はあああああっ!!」
     螺穿槍で小ガイオウガの堅固な鱗を貫いた神桜木・理(空白に穿つ黒点・d25050)は、妖の槍を握る手に力を篭める。回転力が弾け、イフリートの姿が消え去る。
    「離脱ッ……!!」
     焼け焦げた靴で地を蹴る理。寸前までいた場所を、イフリート達の炎が包み込んだ。
     その炎が止む瞬間、入れ替わるようにして飛び出したリュカ・シャリエール(いばらの騎士・d11909)の手にした妖の槍の穂先が、突出せんとしたイフリートを捉え、突き破る。

    (「私はイフリートを憎んで戦ってきた。でも憎しみも必要なくなるの……?)」
     ならば、憎しみを終わらせるため、ここで全てを吐き出そう。
     リステア・セリファ(デルフィニウム・d11201)の指に嵌めた黒揚羽の瞳から、制約の弾丸が解き放たれる。直撃に動きを止めたイフリートなど、灼滅者達の良い的だ。
     山田・透流(自称雷神の生まれ変わり・d17836)は雷神の籠手に包まれた拳を繰り出していく。
    「殺されたくなかった私が、みんなを守るために命を賭けている。なんだか、少し不思議な気分がする」
     既に前衛の守りも完璧とはいかず、その全身は炎に包まれ、纏うオーラも弱弱しい。それでもなお、振るう拳に躊躇は無い。
    「最終ラウンドだ、今度は俺らが勝たせて貰うぜ馬鹿野郎共!」
     卦山・達郎(一匹龍は二度甦る・d19114)は龍砕斧を縦横無尽に振るい、敵意を集めながら戦場を駆け巡る。
     そうして相手に隙ができれば、クラッシャーやスナイパーの出番だ。

     チーム【Cc】の暴雨・サズヤ(逢魔時・d03349)は、シェリー・ゲーンズボロ(白銀悠彩・d02452)と狙いを合わせ、動きを妨げられているイフリートへと突撃していく。
     連携しての攻撃は、着実に敵ディフェンダーを打ち崩していた。
    「敵のディフェンダーが減って来てる。もうちょっとだね!」
    「そのようじゃな」
     共に守りについていた大鷹・メロ(メロウビート・d21564)の言葉に、八握脛・篠介(スパイダライン・d02820)は頷きを返しつつ、振り回される竜種イフリートの尾を受け止める。
    「お前さんら、頼むぞ!!」
    「ああ!!」
     その一瞬の動きの遅滞を見逃さず、駆け戻ってきたサズヤとシェリーが、仲間達を襲うイフリートに相次いで攻撃を叩き込む。

    ●崩壊
    「こんなところで死ぬ気は無いっす……絶対に生きて帰るっすよ!!」
     獅子鳳・天摩(ゴーグルガンナー・d25098)は、剣を重く感じながらも一振りした。
     祝福の言葉を乗せた風が、ギリギリのところで踏ん張っている前衛達に僅かながらも癒しをもたらす。
    「誰も、死なせません! 皆で、帰るんですから!」
     祀乃咲・緋月(夜闇を斬り咲く緋の月・d25835)は自らを奮い立たせながら、垓王牙焔炉を見据えた。
     溶岩の海のあちこちには、自力で動くことも出来なくなるほどの傷を負った灼滅者達の体が浮かんでいた。ひどく焦げている者も多いが、死んでさえいなければヒールで大体どうにかなるのが灼滅者という生物である。
    「あの人達も、どうにか……お願いします」
    「分かりました」
     自身も消耗しつつあるフェリシタス・ロカ(ティータ・d21782)が、視線を向けすらせずに言う。日輪・瑠璃(汝は人狼なりや・d27489)は頷いた。
     フェリシタスはその頷きを確認する時間も惜しいとばかり、前線の負傷者へラビリンスアーマーをかけていく。
    「いやあ、大変だねこれは」
     高原・美弥子(白き陽・d09505)は戦闘不能者を運びながら呟く。
     死者を出すまいと駆けずり回っている瑠璃だが、とても一人では手が足りない。
     同様の目的を持って動いている【白騎】の黒鐵・徹(オールライト・d19056)、ユークレース・シファ(リトルセルリアンローズ・d07164)、オリヴィエ・オーギュスト(従騎士・d20011)の小学生3人組も、戦闘の激しさと戦闘不能者の続出に、目眩のする思いだった。
    「急いで、オリヴィエ、ユークレース!!」
    「はい! 一人でも多く助けるですよっ!!」
    「徹も、無理しないでね!」
     徹が守る間に、オリヴィエとユークレースは戦闘不能になった者を抱え、戦場外へと運んでいく。いまだ死者が出ていないのは、【白騎】を含め、手数を使ってもこうした活動を行っている者達の存在故だ。
     もっとも、ここに来ている者達は決死の覚悟を決めている以上、倒れた者達が避難に手数を使うことを望むかといえば別問題だが。
     自分達の避難に時間を費やして敗北を喫しては、垓王牙大戦の二の舞だ。

     祟部・彦麻呂(快刀乱麻・d14003)の指揮の元、確実にディフェンダーを屠り続けたチーム【PPPD】の灼滅者達は、メディックへの攻撃へと移っていた。
    「大地そのもの、か。まるで神様じゃないか」
     遠くで暴れ回っている焔炉の姿に、江良手・八重華(コープスラダーメイカー・d00337)は一つ呟くと前方、背中に医療ミサイルを背負ったメディカルビースト達の群れへと飛び込んだ。
     彦麻呂の指示した一体を狙い、殺意の籠った刃が翻る。
     続けざまに漣波・煉(平穏よ汝に在れ・d00991)の制約の弾丸がそのメディカルビーストを貫くと、続く攻撃が沈黙させる。
    「あの猛る大地を鎮める方法があるならなんだってやりたいな。今は刃を向けることしかできないけど……いつか将来きっと、ニンゲンとトモダチになってくれたらいいな」
     反撃とばかりに飛来する火焔ミサイルをWOKシールドで受け止めて、明日・八雲(追憶の鳴き声・d08290)はそう思う。
    「雑魚散らしも、こうなると難しくないね」
     ダイダロスベルトでまた一体の額を貫き、彦麻呂はそう思考しつつ次の標的を仲間達に指示する。
     既にディフェンダーもなく、こちらの攻撃は思いのままに通っている。
     垓王牙焔炉を癒すべきイフリート達は、彼らの攻撃の前に次々と灼滅されつつあった。もっとも、敵の攻撃担当の数は大して減っておらず、守っている者達は決死の戦いを繰り広げている。
    「こんな所でキズモノになるのはイヤっ! 年下の彼氏だってまだいないのに~!」
    「泣き言いってる暇があったら、守りを固めといてくださいよ」
    「はぁーい……」
     リングスラッシャーを配置していく葉月・十三(あなたの街の殺人鬼・d03857)が釘をさすのに渋々と妃水・和平(ミザリーちゃん・d23678)はWOKシールドの障壁を広げる。最優先で守るべきはディフェンダーだというのが、彼らに一致する見解だった。
    「絶対に倒れません……!」
     垓王牙焔炉や有力敵2体の繰り出してくる炎は、恐るべき勢いで灼滅者達の生命力を削り取って来る。
     即座にメディック達が動き、いまだ残る炎を消し飛ばすのだが、
     幾ら回復サイキックがあるとはいえ、次第にダメージは蓄積されて来ていた。
     だが、それでも不動・祐一(幻想英雄譚・d00978)は霊犬迦楼羅に回復を任せ、WOKシールドを構えた。
     展開された光の盾で止め切れなかった熱が、ディフェンダー達の体力を奪うが、それでは足りぬとばかり、祐一は吼え猛る。
    「まだまだ倒れらんねーぞ! 俺たちは愚連隊、世界最強のチンピラだ!!」
    「私達が守りますから、皆さんはガイオウガの野郎に一発ぶちかましてくださいね!」
     与倉・佐和(狐爪・d09955)は敵の挙動を見る瞳に力を篭める。
     ハイナ・アルバストル(実害の・d09743)は敵の群れの側面へ回り込むと、無心に心無き鉄葉と名付けた妖の槍を振るっていた。
    「ハイナさん、何か楽しそうですね」
    「防御は、回復は愛すべきカス共が請け負ってくれる。こんなに楽しいことがあるか?」
     渡橋・縁(神芝居・d04576)の言葉に、ハイナはそちらを見もせずに言う。
    「じゃあせいぜい露払いに努めますから、思う存分奮ってください」
     半ば呆れたように言いながら、縁は影業を伸ばし、炎を放たんとしたイフリートを縛り上げる。
    「黒王号!!」
     焔野・秀煉(鮮血の焔・d17423)の命令に、ライドキャリバーが装甲の隙間から煙を上げながら機銃掃射を行う。さらに縛り上げられた敵が、ハイナの一撃を受けて消滅する。
     敵ディフェンダーは既に全滅し、灼滅者達は【PPPD】のようにメディックを狙う者達と、垓王牙焔炉を直接狙おうとする者達に分かれつつあった。
    「だが、焔炉の前に、奴らをどうにかする必要があるか」
     桜田・紋次郎(懶・d04712)の視線の先には、焔炉に次ぐ強敵の片割れ、朱剛竜ガゼイドラの巨体がそびえ立っている。紋次郎の言葉を受けて、アイナー・フライハイト(フェルシュング・d08384)が、静かに頷き、天星弓に癒しの矢を番える。
    「行くか、モンジロ」
    「応……!!」
     2人だけでは倒せはしないだろうが、他の灼滅者達が焔炉を沈黙させるまでの間、誰かが相手をしなければならなかった。

     19名からなる【神社連合】の灼滅者達は、エレナ・フラメル(ウィザード・d03233)の指揮の元、焔炉への集中攻撃を仕掛けていた。
     垓王牙焔炉を癒そうとするメディカルビーストを目掛け、三味線屋・弦路(あゝ川の流れのように・d12834)は惨の糸【時雨】を伸ばす。
    「同盟なのか連合なのか……まあ、どちらでもいいな」
     切り裂かれたイフリートへ、チームの仲間達の攻撃が続き、灼滅へと追い込む。

     神堂・律(悔恨のアルゴリズム・d09731)は飛来する焔の雨の前に立ちはだかった。
     氷高・みゆ(幻月の花・d18619)を襲わんとした炎が、律のクルセイドソードによって切り裂かれ、火花を上げる。熱を受ける律を、みゆは即座にソーサルガーターで補強する。
    「回復は任された。皆、存分に戦うが良いぞ!」
    「ああ。俺の義妹が堕ちてまで開いた道だ。無駄にはしない。絶対に倒してみせる!」
     律を含めた神社連合のうちの幾名かは、消耗して来たら後衛に下がる作戦を立てていた。だが、みゆ達の援護もあって、今のところはその必要は無さそうだ。
     焔炉を守るイフリート達の攻撃によって戦闘不能者を出しながらも、灼滅者達は確実に焔炉を追い込みつつあるように思えた。

     もっとも、戦は水物。一見優勢に思えたとしても、だからこそ危険が潜んでいる。
    「誰も死なせぬ! 皆、生きて帰るのじゃ!」
     媛神・白菊(にくきゅうぷにぷにのおおかみ・d34434)は、その不安を払拭せんと、白炎蜃気楼で仲間達を覆う。
    「そんじゃ、悔い残さん様、派手に暴れるとするかねぇ!」
    「ああ、任せておけ!」
     焔炉へと全霊の攻撃を叩き込みはじめる東雲・由宇(終油の秘蹟・d01218)。
     その死角を補うように立ち回っていたいた小碓・八雲(鏖殺の凶鳥・d01991)は、十皇・初子(黒燈・d14033)が発した警告の声を聞く。
    「気をつけて、大型竜種が来ます!」
     その言葉を消し飛ばすようにすぐ傍を通り過ぎたのは、大型竜種の一体、ズライグだった。すれ違いざまに繰り出された衝撃波が、由宇を襲う。
    「由宇!? くそっ!」
    「大丈夫、まだいける……! とにかく今は、あいつよりも垓王牙焔炉を殴って殴って殴りまくるの!」
     すんでのところで踏み止まった由宇は、八雲にそう告げると、言葉通りのことを実行し始める。
    「おのれ……!」
     八雲は、飛び去るズライグを見上げる。

     松苗・知子(吸血巫女さん・d04345)は高村・圭司(いつもニホンオオカミ・d06113)や苔石・京一(こけし的な紳士・d32312)ら、他のディフェンダー達と共に、襲来するイフリート達の攻撃から、チームの仲間達を守り抜いていた。
    「圭司は左方、京一は右のをお願い!」
    「松苗さんは!?」
    「正面のを、引き受けるわ!!」
     空中を泳ぐようにして飛来するマグマドレイク。
     自分の体よりも遥かに大きなその突進が、知子の巫女服を焦がす。だが、巨体の圧力に押されながらも、知子はその圧力を跳ね除ける。
     圭司と京一もまた、イフリート達の攻撃を凌ぎ切った。
    「まだまだ来るようだな」
    「だとしても、敵が倒れるまで守り抜くだけだ!」

    「生きてしまった以上生き抜く以外にない。ダークネスと戦う以外ない。ガイオウガ! あんたを灼滅してアンタ以上に生きてやる!!」
     【チーム戦力外】を名乗るルーシア・ホジスン(低俗霊祓い・d03114)が叫ぶ。
     命を投げ捨てるかのように戦っていた近衛・九重(大学生七不思議使い・d33682)と鮫島・沙智(高校生殺人鬼・d33681)の姿は既に戦場になく、チームで残っているのは彼女一人だ。戦力外の者は戦力外として倒れた。だが、ルーシアはそれに動じることもなく、妖の槍を向ける。
     既に動きの鈍ったガイオウガに、妖冷弾が突き刺さる。
    「行くぜ!!」
     冴凪・勇騎(僕等の中・d05694)と小早川・里桜(花紅龍禄・d17247)が、相次いで焔炉へとスターゲイザーを繰り出す。
     二条の流星が、相次いで焔炉へと襲い掛かった。僅かに動きを鈍らせながらも、攻撃を続ける焔炉を見上げ、着地ざまに視線を交わす。
    「当たったぜ!」
    「だったら、ここからまだ、行けるはずだ」
     イフリート達に群がられながらも、里桜は着地ざまにクロスグレイブを構え、それを勢いよく振り抜いた。

    「イフリートの親玉か。虫唾が走る……」
    「おいおい、お前顔怖ぇーよ、笑顔笑顔!」
     真柴・櫟(シャンパンレインズ・d28302)は、兄である真柴・遵(憧哭ディスコ・d24389)の言葉に一瞬黙り込んだ。
    「次に相手がブレスを吐くタイミングで同時に攻撃だ。今くらい俺の言う事聞けよ、クソ兄貴」
    「まぁいいけどよ、何でいつも一言余計なんだよクソ弟!!」
     ぶつくさ言いながらも、交通標識とクロスグレイブを手に、真柴兄弟は焔炉側面へと回り込み、攻撃を仕掛けていく。
     天津・麻羅(神・d00345)を回復してくれていたウイングキャット『メンチ』が、イフリート達の炎を浴びて、ついに消滅する。
    「こんな飼い主で済まぬのう、メンチ。じゃが付き合ってくれた甲斐は見せよう!」
     麻羅の繰り出した高天原キックが、焔炉へと直撃する。
    「続くぞ! まずは足を止める!!」
     大神・月吼(禍憑に吼える者・d01320)が、垓王牙焔炉の足元へと飛び込んだ。焔炉の足自体を足場として駆け上がり、伸びあがるような飛び蹴りが、腿裏を直撃する。

    「征け。闇兄を護衛するのが俺の仕事だからな」
     聖刀・凛凛虎(不死身の暴君・d02654)に背中を預け、神虎・闇沙耶(鬼と獣の狭間にいる虎・d01766)は垓王牙焔炉の前へと突き進んだ。
    「友との、アカハガネとの約束、果たしに来た!! ガイオウガ、お前を殺す気は無い。お前を憎む者がいたら、俺が守る! だから俺と共に生きろ!!」
     だが、既に協調の意志を尾として切り離したガイオウガが、その言葉を認めることはなかかった。
     返答は、強烈な炎弾として為された。
     かざした斬艦刀ごと、闇沙耶の体が弾き飛ばされる。
     凛凛虎は闇沙耶へなおも攻撃を仕掛けようとするイフリート達へと、暴君の名を冠した無敵斬艦刀を振りかざす。
    「来い雑魚共!暴君の宴を開こうかぁっ!!」
     凛凛虎の手にした刃が閃き、イフリートの頭部を胴と泣き別れさせる。

     チーム【羽】の灼滅者達もまた、垓王牙焔炉への攻撃に加わっていた。
     【羽】は最終決戦部隊に参加した灼滅者達の中でも、最大人数を誇ると同時に、以前の大戦でも、垓王牙焔炉を一度は戦闘不能に追い込んでいる者を何名も含んでいる。
     その一員である鬼神楽・神羅(鬼祀りて鬼討つ・d14965)と久我・なゆた(紅の流星・d14249)は2人、垓王牙焔炉へと切り込んでいた。
    「なゆた殿、背中はお任せ致した!」
    「任せてください!」
     立て続けに垓王牙焔炉へと痛打を撃ち込み続ける恋人たちに、ティノ・アークライン(一葉ディティクティブ・d00904)は警告を向ける。
    「イフリート達が来ます! 気をつけて!」
     垓王牙焔炉の巨体に取りついた灼滅者達を追うようにして、小型のイフリート達もまた、焔炉に飛び乗って来ている。
     ティノは振り返りざまにダイダロスベルトを伸ばし、飛来するラーヴァタイガーを貫く。
     怒りの咆哮を上げ、なおもティノに牙を剥くラーヴァタイガーを、タロス・ハンマー(ブログネームは早食い太郎・d24738)のバベルブレイカーが今度こそ粉砕する。
    「全く、敵には困らん戦場だな」
    「もっと少なくてもいいんですが」
     言葉を交わしつつも攻撃を繰り返していく仲間を、櫻井・聖(白狼の聖騎士・d33003)は、身を挺して守り続けていた。
    「ボクは皆を守る盾。相手がだれであろうとそれは変わらないよ」
     体を覆うダイダロスアーマーの表面で、赤い炎が燃え盛る。だが、それでも聖の視線は、敵味方の動きを確実に捉え、そして防ぐ。
    「主よ、どうかボクや……皆に加護を!」
    「徹底的に足止めしましょう。命の張り処とは、こういう所ですね」
     アンネスフィア・クロウフィル(黒い一撃・d01079)は焔炉本体への攻撃を繰り返している仲間達への攻撃を少しでも減らすべく、焔弾を撃ち出して来るイフリートへとエルプズュンデを振るっていく。
    「死して英霊となるつもりはない! 打ち破り! 凱旋するのみです!」
    「まさに死線ですが……ええ、全く負ける気がしませんわ!!」
     皇・銀静(陰月・d03673)と赤松・鶉(蒼き猛禽・d11006)は、自信に満ちた言葉と共に、垓王牙焔炉へと容赦のない攻撃を撃ち込んでいた。
     2人が一切の妨害を受けずに攻撃を行えているのは、禰宜・剣(銀雷閃・d09551)に綺堂・ライ(狂獣・d16828)、栢山・源治(兵器使い・d28095)に六道・光琉(小学生デモノイドヒューマン・d20376)に日暮・厳鉄(大学生ストリートファイター・d23739)と、実に5人がかりでの護衛がついている影響が大きい。
    「チーム戦だし、こういう時は息を合わせなければな。その分、お前さんらはきっちり役目をこなしてもらうぜ」
    「分かっていますわよ」
    「勿論だ」
     釘を刺すように言うライに、銀静と鶉はプレッシャーを掛けられつつも、攻撃を繰り返していく。
    「やれやれ……こういうのは俺のキャラじゃねぇっての」
     源治はバスターライフルの照準を覗き込むと、焔炉の肌を彼らの方へ駆け上がって来ようとするイフリートを撃ち抜いた。
     既に傷ついていたイフリートは、その一撃で飛散する。
    「他のところでは、敵の攻撃による被害はかなり出ていますね……」
     光琉が戦場を見下ろして呟く。
    「厳鉄さん、回復します」
    「おう、すまねぇな」
     八代・匡(魔法使い・d04889)のダイダロスベルトが、厳鉄の体に巻き付き、鎧を形成する。
    「誰も死なせたくないね」
     綺堂・ケイ(高校生七不思議使い・d35263)は襲来するイフリート達を相手に奮戦する兄達の姿にそう呟くと、足元、垓王牙焔炉の巨体を縛り上げんとダイダロスベルトを伸ばしていく。

    「私は此処に居る。この世界で生きてる。……だからこそ、その存在の証明を!!」
     流星の如く光を纏って飛んだ檮木・櫂(緋蝶・d10945)の一撃は、垓王牙焔炉の頭部へと突き刺さる。
     傷をつけた櫂を襲ったのはイフリート達の炎の嵐。
    「私は私として生きる為に戦っている……ガイオウガ、アナタは何のためにその力を奮っているのかしら」
     鋼糸を手繰り寄せ、垓王牙焔炉の足を締め付ける忍長・玉緒(しのぶる衝動・d02774)の問いに、返る言葉は無い。
    「あなた達の相手は、私です!!」
     敵の中でも最も強力であり、最も回避率の戦い垓王牙焔炉への集中攻撃が行われている今、他のイフリート達は灼滅者達の攻撃を意に介することなく攻撃を繰り返して来る。
     そうした敵を受け止めるようにして、東雲・菜々乃(本をください・d18427)は立ちはだかった。既に菜々乃の体も満身創痍。しかし、その瞳に宿る光は消えはしない。
     彼女へと小ガイオウガの牙が突き刺さる直前、その間に飛び込んできたのは、西明・叡(石蕗之媛・d08775)のリングスラッシャーだ。
    「取り巻きどもの相手は、こちらに任せなさいな!」
     叡の意志のままにリングスラッシャーは踊るように飛び回り、小ガイオウガの群れをかき乱す。
     垓王牙焔炉を倒すまでの時間をかければかけるだけ、灼滅者側の被害は増大していく。羽柴・陽桜(ココロアワセ・d01490)の霊犬あまおとが、主を守って炎を浴びて消滅した。
     陽桜は静かに垓王牙焔炉を見上げ、拳を固める。
    「あなたは、あなたの中の精一杯の意志で、あたし達と向き合い、戦っている……なら、わかりあう為にあたし達も全力で向き合います」
     桜の花を纏わせたクロスグレイブを構え、陽桜はそれを振るった。
    「殲滅の意志、上等です。あたし達も負けませんから!」

    「マジカル☆クルエル☆デストラクション!! さぁ、わたしの土星魔砲……!! ガトリングに炎に氷に・・・あとその他諸々、全部持ってけ、このやろー!!」
     土御門・璃理(真剣狩る☆土星♪・d01097)の魔砲が唸りを上げた。
     大量の弾丸が垓王牙焔炉へと叩きこまれる。
    「ファイアブラッドの俺にとって、この戦いは正真正銘のクライマックスだ!」
    「ああ、炎獣の長くらい倒せねぇんじゃ、自分ん中の獣にも勝てねぇだろ!」
     時渡・竜雅(ドラゴンブレス・d01753)が、炎導・淼(ー・d04945)が、次々と焔炉をも焼き尽くさんと己の炎を燃え盛らせて、攻撃を叩き込んでいく。
     ファイアブラッドにとって、宿敵であるイフリート。その首魁たるガイオウガを倒すのは、悲願に違いないだろう。

     そして、勿忘・みをき(誓言の杭・d00125)と風宮・壱(ブザービーター・d00909)の2人が垓王牙焔炉の前に立つ。
     2人の連れていたサーヴァントも既に主達を守り切り、姿を消した。
     焔炉を見上げ、彼らは自分達の居るガイオウガの巨大な存在を思う。
    「世が世なら神様なんて言われてたのかな? でも、ここは神話の時代じゃない。お前の役目も終わるんだ!!」
    「明日も『いつもどおり』学校へ通い学ぶ為に、その巨躯、此処で止めさせて戴きます」
     みおきのスターゲイザーが、壱の螺穿槍が、焔炉の頭部へと吸い込まれる。
     体内に満ちていた溶岩が鮮血にように飛び散り2人を焦がす。
     そして、巨体の倒れる轟音が戦場に響いた。
     焔炉が、溶岩の塊のようになって崩れ落ちたのだ。

    「集中攻撃が上手くいったか……」
     御伽・百々(人造百鬼夜行・d33264)は垓王牙焔炉を斬り付けていた大鎌をおろし、安堵したように息を吐いた。
     近くに浮かんでいた戦闘不能者を担ぎ上げると、江田島・龍一郎(修羅を目指し者・d02437)は皆に呼びかける。
    「よし……これでもう用は無いな。怪我人を拾って、速やかに撤退しよう」
    「そうだな、キッチリ斃したんだ……」
    「いや、待て。イフリート達の様子が……気をつけろ!」
     イフリート達から距離を取ろうと促すダグラス・マクギャレイ(獣・d19431)。三峰・玄旺(夜陰・d02999)はイフリート達の奇妙な動きを目にし、警告の声を上げた。
    「何!?」
     百々も瞠目する。
     紋次郎とアイナーを退けた朱剛竜ガゼイドラ、紅炎竜ズライグをはじめ、生き残りのイフリート達が倒れた垓王牙焔炉へと首を向け、一斉に炎を噴き付けたのだ。
    「あれは……」
     それは、この場で戦ったことのある者達の、敗戦の記憶を呼び起こす光景だった。
     およそ1か月前の垓王牙大戦において、灼滅者達は垓王牙焔炉を一度は戦闘不能に追い込んだ。
     だが、それで灼滅されるかと思われた焔炉は、イフリート達の炎を受けて再び動き出したのだ。

    「まずいな、こう来るか……周囲のイフリートを止めろ!」
     唯一この可能性を予期していたセレス・ホークウィンド(白楽天・d25000)は淳・周(赤き暴風・d05550)と2人、周囲の仲間達に呼びかけイフリート達の炎供給を止めるべく動こうとする。
     反応できた灼滅者達もまた、同じくイフリート達を止めんとするが、
    「数が多過ぎるぜ……!!」
     周は吐き捨てるように言う。
     いまだ半数以上を残す敵の全ては、灼滅者達が止め切れるものではなかった。

     そして、垓王牙焔炉は、またしても再生を果たす。

    ●戦い再び
     垓王牙焔炉さえ倒せば、他のイフリートが残っていても戦いは終わる。
     焔炉に攻め込んだ灼滅者達の大多数が、そう希望的観測を抱いていた。
     だからこそ、垓王牙焔炉を倒すまでの時間、他の敵から攻撃を受け続ける事態を甘受していたのだ。
     それが楽観に過ぎなかったという事実を突きつけられた彼らの動揺を、ガイオウガに従う者であり、己もまたガイオウガの一部である炎の幻獣の群れは見逃さない。
     再び襲い掛かって来る幻獣達の脅威に最も早く反応出来たのは、竜種への敵意を絶やさずにいた橘・芽生(焔心龍・d01871)だった。
    「蘇るのなら、何度だって倒すまでです……!! 実験体にされて、竜を倒せと弄られたわたしの身体……対竜兵器、焔心龍、橘芽生。兵器にされたのは、無駄ではなかったって、ここで示します!」
     必ず生きて帰る。その決意を胸に、芽生は蘇った焔炉を目指して吶喊した。
    「竜は、滅びろ!!」
     右腕部装着型龍砕斧を撃ち込んだ彼女の体を焔炉の瞳が見下ろした瞬間、イフリート達の炎がその小さな体を軽々と吹き飛ばした。
     続けざまに芽生へと飛ぶ炎の雨を、嶋田・絹代(どうでもいい謎・d14475)が体を張って受け止める。
     その全身からは、漆黒の殺意が竜巻のように巻き起こっていた。
     だが、それすらも喰らい尽くすように、垓王牙焔炉が、大型竜種達が動き出す。
     絹代は狂相を浮かべると、絶望的な群れの只中へと突入していく。

    「撤退などありえん……我が命、ここで燃やし尽くす!!」
     既に深手を負っていたミゼ・レーレ(メタノイア・d02314)もまた、己の精神を殺意に委ねる。
    「私の名は、ミゼ・レーレ……誰よりも、暗き場所を知る者!」
     舞い降りて来る紅炎竜ズライグの翼を、ミゼの放ったデッドブラスターが貫く。
     態勢を崩しながらも降下した竜の一撃が、ミゼの体を大きく引き裂いた。ぐらりと揺れたミゼの姿が、影のように霧散する。
    「あああ……ッ!!!」
     義兄の死を目にし、リリウム・カスティタティス(黒きディーバ・d13773)が黒いオーラを帯びる。我を忘れたように突進したリリウムの手にした刃はミゼを殺したズライグの鱗を大きく引き裂いた。
    「よくも……よくも!!」
     恨みの言葉は、再び巻き起こった爆炎の連打の前に消え去った。
     爆炎が止んだ後に残る者は無い。闇堕ちした少女が、義兄の後を追ったのだと誰もが理解し、灼滅者達から、悲嘆に満ちた声が上がる。だが、そのわずかな時間は、灼滅者達の心を戦いに引き戻すには充分なものであった。
     再びガイオウガの口腔内が、戦いの音で満たされ始める。
    「行け! 行け! 行け!! ガイオウガなんざぶっ殺しちまえ!!」
     焔炉の牙に貫かれながら、なお、絹代であった存在は手近なイフリートを殺害し、歓喜の声を上げる。その狂声を消すかのように喉奥から放射された焔が、絹代の姿を跡形もなく消滅させた。

    ●殲滅戦
    「まずは配下を! 配下を、『全て』排除するんだ!!」
     噛み付こうとして来る小ガイオウガを喉笛を妖の槍からの妖冷弾で貫いて、ロードゼンヘンド・クロイツナヘッシュ(黒紅・d36355)は叫びを上げる。
    「既にディフェンダーとメディックは全滅させた。となれば……!!」
     楠木・朱音(繋ぐ鎖・d15137)は優先順位を頭の中で検討。
    「次は敵の攻め手を断て!! クラッシャーだ!!」
     体育会系声楽家見習いの声は、灼滅者達に指針を示す。
     戦いは、互いを全て殺し尽くすまで終わらない殲滅戦へと様相を変えていた。

    「守りを固めろ!」
     レイン・ティエラ(氷雪の華・d10887)の声が飛び、すぐさま動いた【ふろこん】の8人へと、イフリートの一団が突進して来る。
     霊犬のギンは既に消え、レイン自身にも限界は迫っていた。
     だが、レインは冷静に突進を見極めると、敵の足元へ沈みこむようにして回避。
     足元の溶岩を虚しく噛んだ小ガイオウガが再び首を上げるよりも早く、飛び込んで来た高宮・琥太郎(ロジカライズ・d01463)の蹴りがその頭部を貫き、消滅させた。
    「力を出しそびれたかと思ったっすけど、温存してて幸いっす……!!」
    「ここからが正念場やな。まあ、殴るチャンスが増えたと思っとこ」
     狼幻・隼人(紅超特急・d11438)は、ハチマキを締め直すと垓王牙焔炉を見上げた。
     とにかく一発でも多く垓王牙焔炉を殴りたいところだが、どうせ倒しても再生されてしまうとなるとそうも言ってはいられない。
     幸いにして、レインのギンや隼人の超霊犬あらたか丸が消える前に施していってくれた浄霊眼の甲斐もあり、【ふろこん】メンバーの消耗は全体としてはマシな方だ。
     だが、有力な灼滅者の一団を潰そうとするかのように、巨大な影が飛来する。
     有力敵の片割れ、紅炎竜ズライグ。その翼が強く羽ばたき、衝撃の塊が八重沢・桜(百桜繚乱・d17551)を襲わんとする。
    「ガク!」
     だが、それが着弾する寸前、宮守・優子(猫を被る猫・d14114)の声に、ライドキャリバーが、機銃を放ちながら岩棚から跳躍。その車体へと衝撃が突き刺さり、爆発と共に車体が粉砕、消滅する。
    「単体狙いに変えて来ましたか!」
     桜はズライグを狙い、ダイダロスベルトを伸ばす。
     鱗を貫かれた飛竜は、そのまま離れたところで浮遊する。
    「逃がさないっすよ!」
    「待って、優子さん!」
     ガクをやられた優子を、セレスティ・クリスフィード(闇を祓う白き刃・d17444)が制止する。見れば、ズライグと入れ替わるようにしてまた別のイフリートの群れが大挙して押し寄せて来ようとしている。
    「まずは頭数を減らしましょう。あいつを狙うのは、その後よ!!」
    「うん、わかった!」
     セレスティの言葉に、優子はすぐさま反応した。
     大物に目を奪われて、足元をすくわれるのは御免蒙るところだ。
    「倒すべき敵を倒して、誰一人欠けることなく学園に帰るわよ」
     艶川・寵子(慾・d00025)が【ふろこん】の皆に呼びかける。
     既に最終決死部隊の全員でという目標は、脆くも打ち砕かれた。
     だからこそ、手の届く範囲での目標だけは実現してみせると、寵子の目は訴えていた。猫乃目・ブレイブ(灼熱ブレイブ・d19380)の手の中で、怪談蝋燭の火がイフリート達の炎に負けじと燃え盛る。
    「ここまで来たからには、もう後には引かぬでござるよ。たくさんの居場所をくれた世界を守るためにも、ここで討つでござる!」

    「垓王牙焔炉が再生したとはいえ、敵の総数が元に戻ったわけではありませんし、敵のダメージもそのままですね」
     深海・水花(鮮血の使徒・d20595)は、冷静に敵の様子をそう見て取ると、確実に傷ついた敵へととどめを刺していく。
     再生した垓王牙焔炉だけは、バッドステータスも完全に回復しているようだったが、既にディフェンダーもいない今、攻撃さえ当てれば再び付与することは難しくない。
     拳を握り占める西院鬼・織久(西院鬼一門・d08504)、彼を援護するべくサイキックソードを構える香坂・翔(青い殺戮兵器・d23830)。
     イフリートの群れを前に、2人はそれぞれの武器に力を篭めた。
    「再戦と、いきましょう」
    「おう、行こうぜ織久先輩!」
    「無理は禁物ですわよ、織久、翔さん」
     ベリザリオ・カストロー(罪を犯した断罪者・d16065)は心配そうに言うが、織久はその心配を切って捨てる。
    「ディフェンダーが一番危険だろ」
    「兄は弟達を心配するものですわよ」
     言う間にも焔が飛来、WOKシールドにぶつかり、激しい衝撃音を立てる。消せぬ熱と衝撃に、ベリザリオの体が揺れた。
    「さあ、やりなさい!」
     岩山の如き体躯を持つイフリートが、翔の撃ち出した毒液に痛みを訴えるように吠える。その喉元へと、織久は拳を叩き込んだ。
     閃光の如き輝きと共に、一瞬のうちに拳を叩き込んだ織久がイフリートの体を蹴ると同時、巨体は爆発するようにして消滅する。
    「これなら……敵も回復したわけじゃない!! いけるよ……!」
     仲間達を激励しながら白弦・詠(ラメント・d04567)は、突出してきた竜種イフリートに喰らいつかれながらも紅蓮斬を繰り出し、その首を断つ。
    「覚悟をしたもの、やるからには必ず叶えなくてはね」
     敵の血で己の傷を癒しつつも、詠は癒し切れぬダメージが嵩んで来ているのを実感していた。
    「行けますね?」
    「……わたしの怪我は気にしないで、彩歌」
     月雲・彩歌(幸運のめがみさま・d02980)の問いに、篠原・依織(ヒトリキリノ少女・d23883)は痛みを隠してそう答えた。
     そのまま依織はウロボロスブレイドを盾のように展開し、仲間達を支援にかかる。
    「年上ですからね。……守りたいものです」
     その姿を見て彩歌は呟くと、剣を手に巨大な竜へと立ち向かう。
    「全力でカバーする! これ以上、絶対に死なせないさ……。那須の時みたいなのはもう嫌なんだ!」
     味方の回復に専念していたカルナヴァル・ジンガムル(俺の指揮を見ろや・d24170)は前衛に移り、仲間達を守るべく動き始めていた。
     死者を最小限に抑えるためにも、ここで踏ん張らなければならない。

    「大丈夫ですよ。皆さんの背中はわたくしが護ります」
     姫条・セカイ(黎明の響き・d03014)は、戦う仲間達に微笑みかけつつも、癒しを与えていた。
     その微笑みの裏に、死者が出てしまったことへの悲しみが宿っているのを、共に【花園】として戦う黒岩・りんご(凛と咲く姫神・d13538)と綾瀬・一美(蒼翼の歌い手・d04463)は感じ取る。
    「必ずみなさんと笑って帰るんだ! 絶対に負けないっ!」
     一美の巻き起こした清めの風が、崩れそうになる前線の仲間達の背中を支えようとする。だが、一美自身、前線の様子の危うさには気付いていた。
     繰り返し噴き付けられて来る炎は、確実に灼滅者達を追い込みつつある。
     焔炉への攻撃を通すことを最優先していた間、味方側は被害を受け続けていた。その被害は看過できるものではない。
     特にディフェンダーの頭数は戦闘開始時の四分の一を割り込み、後衛陣も炎の直撃を浴びるようになっていた。
     特に、敵の雑兵と比べても個の力で劣る実力を補うため、スナイパーやメディックについていた者達からは、加速度的に戦闘不能者が出つつある。
     だが、彼らにはその戦力減を補うための切り札を有していた。
     あるいは、有していてしまった。
    「皆を守るためには、この手しかなさそうですわね……!!」
     りんごの額を突き破り、伸びるのは黒曜石の角だ。
    「あは……!」
     狂ったような声が喉から溢れ出るのを止めぬままに、りんごは飛び掛かって来たラーヴァタイガーを左腕一本で受け止めた。見る間に肥大化した左腕が、敵の頭部を粉砕した時、りんごの姿は一体の羅刹と化していた。
    「りんごさん……」
     セカイと一美が、苦渋の表情で、敵を屠っていくりんごだった存在の姿を見つめた。

    「我身常在戦場也。ここは戦場にして死に場所よ。武士は死ぬことと見つけたり……」
     鳳仙・刀真(一振りの刀・d19247)の全身から漆黒の闘気が溢れ出す。
     噛み付かんとしたイフリートの顎を、彼は両手で食い止めると、そのまま上下に開く。顎から引き裂かれたイフリートが声にならぬ悲鳴を上げる間に、一閃された刃が炎獣を消滅させていた。
    「良いぞ、垓王牙!!まだまだ、妾は戦いを楽しむのじゃ!!」
     狂的な声を上げる館・美咲(四神纏身・d01118)。その体は、何処かから現れた金色の龍を模した装甲に包み込まれていた。
     明かな闇堕ちの兆候。だが、それによって大きく力を増した者達の存在は、垓王牙とイフリート達を相手に耐え忍ぶディフェンダー達の要となっていく。
     彼女だけではない。自分の、あるいは他人の危機と死を間近に感じた灼滅者達の中には、闇堕ちする者が現れ始めていた。
    「今度こそ、皆を死地から帰す。私の力で足りぬのなら……闇と、私の魂を対価に、皆を守れ!!」
     己の無力を心に刻み、血を吐くように叫んだ神條・エルザ(クリミナルブラック・d01676)の叫びは、自らの姿を淫魔のそれへと変じさせる。
     大きく露出させた肌を炎に晒し、エルザだった存在は陶然とした微笑を浮かべるとイフリート達を魅了していく。

     色濃い死の予感に、東海林・朱毘(機甲庄女ランキ・d07844)の姿は弁慶飯怪人へと変化していた。
    「ここが命の懸け所……口からケツまでだって、ぶち貫いてやりましょうかね!」
     僧兵のような装束をまとった朱毘は、勧進帳でイフリートの目をふさぐと、手にした棒でたたき伏せている。
     戦場後方、邪馬台国怪人へと立花・環(グリーンティアーズ・d34526)は、その手にした鏡を掲げる。鏡から放たれた闇が、イフリート達を包み込んでいた。
    「女王卑弥呼復活のため、今ガイオウガを斃して貰わねば困る……。さっさと態勢を立て直しなさい」
     世界征服の野心を抑え込み、邪馬台国怪人は灼滅者達を援護にかかる。

    「2人とも、まだ行けるか!?」
     黒谷・才葉(ナイトグロウ・d15742)が、同じ【空部】のディフェンダーである春日・瑠音(彩音翅・d11971)と向陽・英太(春色ひだまり・d03488)の様子に深刻な表情を見せた。
    「さすがに、ちょっときついけど……」
    「まだ、なんとか……」
     瑠璃と英太は回復サイキックで自分達を治療しながらも、イフリートの放った炎弾を受け止める。
     だが、2人の限界が近いことは一目瞭然だった。
     同じくディフェンダーを務めている森田・供助(月桂杖・d03292)と比べ、力量の面で劣る2人には明らかに疲労の色が濃い。
     おまけに弱っているのを見て取ったのだろう、先ほどからイフリートの矛先がこちらを向いていた。
    「まずいな。デカいのが来るぜ……!! 散開しろ!!」
     警告する皆守・幸太郎(カゲロウ・d02095)。空部の一同は風切音を聞いた。
     溶岩の上を猛スピードで滑空して来る巨影は、紅炎竜ズライグだ。
     戦場を遊撃する巨竜は、灼滅者達が敵の頭数を減らすことを優先しているため、ここまでほぼ無傷の状態を保っている。
    「俺達の上をちょろちょろと……!!」
     待ち受けるようにして放った幸太郎の妖冷弾に貫かれながらも、ズライグの背で翼が大きく羽ばたいた。
     竜の顎が開き、眼下の灼滅者達へと容赦のない炎が浴びせ掛けられる。
     崩れ落ちるようにして倒れる瑠璃と英太、2人を巻き込むようにさらにイフリートバーンニドラーの1体が、炎を帯びた針雨を放たんとする。
    「……させねぇっての」
     だが、それが放たれる寸前、イフリートを貫いたのは、供助の投げつけた月桂樹の杖だった。何事かと思う幸太郎と才葉は、既にして供助の姿が変わっていることを知った。
    「そいつらを、さっさと下がらせろ。それが、こいつの望みだったようだからな」
     言って、供助だった者はイフリート達へ冷酷な表情を向けた。

    ●竜種滅すべし
     闇堕ちした者達をはじめ、奮戦する灼滅者達の勢いは、逆襲に転じたイフリートの勢いを押し戻すのに充分なものだった。元より、火力を集中すれば垓王牙焔炉を戦闘不能に追い込むことが出来るのは実証済みだ。
     問題は配下達を倒し切るまで、灼滅者達が耐え切れるかだけだった。

     他の者達に続き、焔炉への集中攻撃を選んでいた【地下研究所】の15人にとっても、垓王牙焔炉の復活は予期していない事であった。
    「だからといって……!」
     一色・紅染(料峭たる異風・d21025)は壊魂の杖を振り抜き、溶岩の中から跳び上がるようにして襲い掛かって来た小ガイオウガの脚部へと叩きつけた。
    「やられては、たまりませんね」
     膝を砕かれ転倒した小ガイガウガが暴れようとするが、天崎・祇音(戦場を舞う穢れなき剣・d21021)がすぐさまとどめを刺す。
    「そちらは、まだ大丈夫そうですね」
    「こちらは、あまり狙われておらんからのぅ」
     紅染の言葉に、祇音は肩をすくめる。いまだに大した手傷も追っていないのは、キャスターで回避率が上がっているという面もあるが、そもそも攻撃があまり飛んで来ていないためだ。
     大型のイフリート達は、朱剛竜ガゼイドラを統率者として、こちらを脅かしているが、イフリート達の数も灼滅者達同様に減っている。頭数の問題から、敵により多くのダメージを与えられる方を狙っているのだろう。
    「で、どうするの?」
     エメラル・フェプラス(エクスペンダブルズ・d32136)が問うのに、人首・ククル(塵壊・d32171)は、常の笑みを崩すことなく答える。
    「とにかく、先ほどまでと同じです。消耗の大きな個体を狙って下さい」
    「りょーかいっと!!」
     エメラルは言うがはやいが、敵の前衛へコールドファイアを叩きつける。虚牢・智夜(魔を秘めし輝きの獣・d28176)もまたそれに続き、冷気の魔法を編み上げた。
    「続くぞ!!」
    「では、こちらも」
     エメラルと智夜の攻撃によって凍りついたイフリートの群れに、ルーナ・カランテ(ペルディテンポ・d26061)が飛ばした制約の弾丸が突き刺さる。
     咎人の大鎌を携えた三和・透歌(自己世界・d30585)が一気に距離を詰め、動きを止めた敵の首を刈り取っていく。
     どうにか態勢を立て直した仲間達の様子に安堵しつつ、雨摘・天明(空魔法・d29865)は仲間達の回復に戻ろうとする。
    「まずはディフェンダーの皆からね……刻、いける?」
     安楽・刻(ワースレスファンタジー・d18614)はそれを制すると言った。
    「ありがとうございます。僕はいいです。回復して貰っても、これ以上は、耐え切れそうにありません」
     高い実力を持つとはいえ、サーヴァントは既に消え、戦闘開始当初から特に強力な攻撃を庇い続けた彼の体力は、もはや尽きようとしている。
    「こちらに任せてもいいんだよ?」
     肩を並べて戦っていた白樺・純人(ダートバニッシャー・d23496)が懸念を見せる。
     同様に高い実力を持つ純人と刻だが、既に充分に守りを固めきっているとはいえ、サーヴァントの主とそうでない者との間にある、明確な体力差が響き始めていた。
     だが、そうしている間も、敵は待ってはくれない。
    「大きいのが、来る!」
     六条・深々見(螺旋意識・d21623)が警告を発しながら走り出す。。
     その先に居るのは、垓王牙焔炉に次ぐ実力を持つ巨躯の朱剛竜ガゼイドラだ。
    「前線指揮官……有力な集団を、自分で抑えようってこと?」
    「多分ね!」
     深々見が蹴りを叩き込み、十・七(コールドハート・d22973)は影業を伸ばし、ガゼイドラを足止めするが、巨躯の動きは止まらない。
     伸ばした首から叩きつけるように放射されるブレスが放たれた時、もはや、回復しても耐え切ることはできないとのの確信は、刻の体に変化をもたらしていた。
     デモノイド寄生体が蠢き、右腕を巨大な刃とした刻は、ガゼイドラのブレスを断ち切るようにして阻止。
    「刻……!!」
     仲間の闇堕ちを目の当たりにし、なおも迫らんとするガゼイドラの姿に、三和・悠仁(手刈り・d17133)の意識が闇に溶ける。
     溶け崩れるようにシャドウへと姿を変えながら、悠仁は振り回される尾を軟体化した腕に持った断罪鋏で受け止めるように開く。
    「邪魔だ」
     鋏を強引に閉じると同時、肉を断つ嫌な音が響いた。
     ガゼイドラの尾の先端が切り飛ばされて溶岩に落ち、灼熱の血液が溢れ出す。
     こちらを脅威と見てか、より強い敵意を見せる朱剛竜ガゼイドラ。
     すぐさまそれを追わんとする悠仁だった存在の肩をつかみ、踏鞴・釼(覇気の一閃・d22555)はこちらに向き直らせる。
     あの強力な個体を討つべき好機だというのは分かっている。だが、それでも言わねばならぬことはあった。
    「……ワンマン行動は避けてもらうぞ。お前に死なれては困る。そっちもだ」
     言われ、ダークネス達はゆっくりと頷いた。
    「……いいだろう……」
     垓王牙焔炉との戦いは、闇堕ちしたダークネスにとっても容易なものではない。
     闇堕ちした兄を複雑な表情で見る透歌。
     一時の危機を脱した今、連鎖的に堕ちる事態は生じなかったが、【地下研究所】の面々は、自らの中のダークネスを強く意識しながら、朱剛竜ガゼイドラを迎え撃つ。
    「闇堕ち……いや、今さら必要ないか」
     正陽・清和(強制同調・d28201)はそう呟きつつ、ガゼイドラの巨体へと妖の槍を向け、走り出す。
     2体の強力なダークネスがこちらに現れた今、【地下研究所】の灼滅者達が援護すれば、ガゼイドラすら脅威とはなりえないだろうと清和は苦々しい思いと共に思考する。
     朱剛竜が灼滅され、闇堕ちした2人が姿を消すまで、そう時間はかからなかった。

     戦闘可能な灼滅者の数とイフリートの数、その両方が激減していく中、【天神の月道】のは焔炉に次ぐ強敵の片割れ、紅炎竜ズライグとの戦いを繰り広げていた。
    「次に降下して来たタイミングで仕掛けるよ。みんな、まだ行けるね!」
     紫乃崎・謡(紫鬼・d02208)は、旋回しながらこちらへ向かって来るズライグを視界に収めながら、手近にいたイフリートを紫苑十字で叩き伏せる。
     10人以上のチームの中でも、ここまで誰一人戦闘不能にも闇堕ちにも陥っていないのは唯一【天神の月道】だけだ。
     その事実が、【天神の月道】の高い実力と連携を示していた。
     実力があればこそ、敵勢の中で最も厄介と灼滅者達に目されるようになっていた紅炎竜ズライグを相手取る流れとなっていたのだが、本人達にとってそれが幸いであったかは余人の与り知らぬところである。
    「右約500m後方、あの竜が降下して来ます! 後衛を狙ってる!!」
     霞代・弥由姫(忌下憧月・d13152)が警告を発する。
    「ドーム状のガイオウガの口腔内を自在に動き回る機動性と随一の速度……」
     弥由姫が呟いたのが、ズライグがここまで灼滅されずにいた理由だ。
     闇堕ちした灼滅者達が攻撃を集中させればとうに倒れていただろうが、こちらの目をより弱った者に向けるよう、すぐに距離を取ってしまう。全てのイフリートがガイオウガの一部である以上、それは自身のより強い武器を守るような事でもあるのだろうが。
    「勝てば良いんでしょ? ……やってやるわよ」
     葛城・百花(デンドロビウム・d02633)は、フリージングデスを発動。
     ズライグを含め、周辺のイフリート達が巻き込まれる形で氷を帯びる。
     こちらの動きを警戒してか、味方後衛を狙おうとしていたズライグの速度が落ちた。
     再びズライグが逃げられる前に追いつかんと、北沢・梨鈴(星の輝きを手に・d12681)は持って来ていた箒に飛び乗った。
    「乗ってください!!」
    「あいつも倒さないと、トドメさせないんでしょ? だったら最後のお片付け、やってやろーじゃない」
     応じた苑田・歌菜(人生芸無・d02293)の手を掴み、梨鈴は一気にズライグへと飛んだ。再び高度を上げようとするズライグへと、佐藤・志織(大学生魔法使い・d03621)が真下からマジックミサイルを叩き込んだ。
    「まだまだ、こいつも行くぜ!!」
     乃木・聖太(影を継ぐ者・d10870)の手裏剣甲から多数の手裏剣が放たれる。手裏剣と魔法の弾丸はズライグに突き刺さると共に、その逃げ場を断っていく。
     謡の放った黙示録砲が、ズライグを貫いた。
    「行ってください!」
     その声に小さく頷くと、梨鈴はマジックミサイルを撃ちながら、箒から一気に飛び降りた。
     ズライグの背へと飛び移った瞬間に聞こえた鈍い音は、歌菜の手にした断罪鋏が、竜の背に深々と突き刺さる音だ。
     暴れ回るズライグの背から振り落とされまいとする歌菜。背を岩肌に叩き付け、こちらを振り落そうと暴れ回るズライグに、歌菜と梨鈴は必死で抵抗。
    「お生憎様、こっちは諦めが悪いのよ……!」
    「いいぜ、降りろ!」
     逢瀬・奏夢(あかはちるらむ・d05485)の声が聞こえた瞬間、2人はズライグから飛び降りる。入れ替わるように翼を切り裂いたのは、弥由姫が伸ばしたウロボロスブレイドだ。
     反撃とばかり繰り出された衝撃波を、奏夢がその身で受け止める。下手に受ければ、奏夢を持ってしても一撃のもとに倒されかねなかったであろう強烈な一撃。だが、
    「この守り、貫けるなら貫いてみろ……!!」
     何重にも重ねられたダイダロスアーマーは、弥由姫を守り切った。その事実に一層目に憎悪の焔をたぎらせるズライグに、弥由姫は半ば呆れたように声を漏らす。
    「翼を破られ、よくも反撃するものです。しぶといですね」
    「だが、それもここまでだ!!」
     声も勇ましく、前田・光明(高校生神薙使い・d03420)の腕が、ズライグの翼の薄い皮膜を引きちぎる。
     おそらく浮遊する力の源となっていたのだろう、地表に落下するズライグに巻き込まれないように光明が飛びのくと、煌・朔眞(秘密の眠り姫・d05509)がトラウナックルを叩き込む。
    「あなたのトラウマは……おそらくは先の戦いであなたを灼滅しかけた人、というところでしょうか」
     見えない敵と戦い始めるズライグに、朔眞は呟く。
    「ですが、それもすぐに終わります」
     【天神の月道】だけではない。これまで、ズライグに頭上から良いように仲間達を傷つけられた灼滅者達も、そこに集まり、痛打を加えはじめる。
    「動きさえ封じてしまえば、楽になるだろう。一気にとどめを刺してしまうぞ」
     援軍に駆け付けた【神社連合】、特に八雲が執拗なまでにズライグの翼を切り裂き、その動きを封じていった。
    「大好きな人達が傷つけられて、誰だって、黙っている人達じゃないわよね」
     呟いて、百花はクロスグレイブのトリガーを引く。
     放たれる光が、ズライグの頭部を粉砕する。

    ●決死戦、終焉の刻
     二竜が斃れ、残る敵は僅かな数を残すのみとなる。
     闇堕ちした者達を中心に、イフリート達のほとんどを壊滅させた灼滅者達は、再び焔炉への攻撃を再開していた。灼滅者達の側も、残る人数は多くない。
    「ここが正念場や……きばっていくでぇ!」
     羽二重・まり花(恋待ち夜雀・d33326)は残る力を振り絞り、三味線をかき鳴らす。
     それは【武蔵坂軽音部】の仲間のみならず、決死の覚悟を決めた灼滅者達を鼓舞して、戦場に響き渡った。
    「やっとの思いで力の化身を灼滅したのよ。ここで踏ん張らないで、彼らをどの面下げて迎えに行けるっていうのよ」
     城守・千波耶(裏腹ラプンツェル・d07563)の手にした杖に魔力が集まると、強烈な竜巻が巻き起こった。
     その風は、逆襲に転じたイフリート達の纏う炎を吹き散らしていく。
     本来ならば軽音部を率いるべき部長は、化身との戦いで闇堕ちし、この場にいない。
     彼を救いにいくためにも、ここで負けることは許されない。
     千波耶に続けと、【武蔵坂学園軽音部】の灼滅者達は、最後の力を振り絞り、焔炉へと攻撃を集中させていく。
    「誰も死なせんけぇの! 頼むわ!」
     自身ももはや満身創痍となりながら、百舌・ハゼリ(音云鬼・d17250)は北条・葉月(独鮫将を屠りし者・d19495)へと癒しの矢を放つ。
    「ハゼリさん!」
     サイキックを放つと同時、炎に焼かれてぐらつく彼女を咄嗟に支えた二十世・紀人(鳴・d07907)は、歌にもならぬ声で仲間達を鼓舞する。
    「受け取った……俺達の手で、奴に八塩折の酒を届けてやろうぜ!!」
     葉月に頷きを一つ、水野・真火(水あるいは炎・d19915)は先を往く形で焔炉へと飛び蹴りを入れていく。
    「葉月さん……!」
     蹴り込んだまま、焔炉のごつごつとした外皮に手をかけ、真火は続けて跳んだ葉月を持ち上げるようにして上へと放り投げる。
    「皆で、勝って、生きて帰るぞ!!」
     葉月は勝利への意志と共に、焔炉の頭部へとマテリアルロッドを叩きつけた。
     岩の破砕する音が響き、しかし焔炉はまだ動きを止めてはいない。
     垓王牙焔炉の全身の瘤から火山弾が飛び出し灼滅者達を一気に傷つけていく。
     ここまで耐え凌いだハゼリや紀人も、もはや限界だった。
    「悪あがきが過ぎるぜ、垓王牙さんよ!」
     精根尽き果てたように倒れる仲間達を目の当たりにし、迅・正流(斬影騎士・d02428)の姿がイフリートへと変わっていく。
    「ここで勝つ! 必ずだ!」
    「正流!!」
     呉羽・律希(凱歌継承者・d03629)は焔炉へと飛ぶように駆けていく正流だった存在に追随するように走り出す。

    「円さん、行きますよ!」
    「どうせ負けられないなら頑張っとくかぁ。ミカぁ、死ぬなよ?」
     ミカ・ルポネン(暖冬の雷光・d14951)と東谷・円(ルーンアルクス・d02468)。
     互いを支え合うようにして垓王牙焔炉へと狙いを定める2人の体も、既に幾度も炎を浴び、焦げ付いている。
    「こんなところで終わるつもりはないから、できる限りの力を、ぶつける!」
     ミカが足止めしたところに、円のマジックミサイルが突き刺さる。
     焔炉の視線が、2人を捉えるが、なおも闇堕ちせず戦い続ける彼らを守るように、まだ戦うことのできるディフェンダー達が立ちはだかる。
    「これまで多くのイフリートを灼滅してきたのです。敵意があって当然ですね」
     幾度も再生しようとも、灼滅者達への殲滅の意志は絶える気配も無い。
     平静に言う小鳥遊・優雨(優しい雨・d05156)は、妖の槍を垓王牙焔炉へ向けた。
     槍の先端に、冷気の弾丸が現れる。
    「氷の花は手向けの花……氷の花に包まれて眠りなさい」
     撃ち出される冷気が、焔炉をさらに侵していく。
     日野森・沙希(劫火の巫女・d03306)は渾身の力を込めて拳を振るい続けていた。
    「あなたを破壊すれば、イフリートと共存する未来がやって来る……」
     それはまだ認められなかった自身の能力を認めることの一歩となるのかもしれない。
     その思いは、果たして叶うのか否か。

    「ここが正念場です! 皆で……勝って帰りましょう!」
     宮代・庵(中学生神薙使い・d15709)が声を張り上げると、垓王牙焔炉へバベルブレイカーを叩きつける。
     炸薬の音と共に杭が撃ち出され、焔炉の脚部を貫いた。
     勇戦していた【羽】の灼滅者達だが、銀静や鶉の護衛についていた者達は、既にことごとく戦闘不能に陥っていた。
     守りにあたっていたローゼマリー・ランケ(ヴァイスティガー・d15114)も、彼らを戦闘区域外まで運ぶため、戦線を離れている。
    「私の役目は皆サンを無事に帰らせる事デスノデ」
     それで戦力が一時的に低下しようとも、仲間達ならば耐えてくれるとの確信が彼女にはあった。
    「やってやろうじゃない、ガイオウガ!!」
     赤松・あずさ(武蔵坂の暴れん坊ガール・d34365)は姉達と共に、最後の攻撃を仕掛けていく。
     何度もの足止めを重ねられてなお、焔炉への有効打が通り辛いことには変わらない。
     その巨体を覆う熱は、それだけでも灼滅者達の攻撃を遮る壁となっていた。
     僅かでも仲間達を援護せんと、九条・泰河(祭祀の炎華・d03676)は立て続けに癒しの矢を飛ばしている。
    「皆の」

     だが、それでもなお、あずさやエイジ・エルヴァリス(邪魔する者は愚か者・d10654)は垓王牙焔炉へと拳と蹴りを繰り出し続ける。
    「今こそが命を燃やす時だ! 敗北を経て尚、タカトを討ったあの時より想いは変わらぬよ。我ら武蔵坂は――最強であると!」
     その言葉を消し飛ばさんとするかのように、焔炉は咆哮を上げた。
     全身から、焔を帯びた岩が散弾のように撃ち出される。
    「……守る」
     ルチル・クォーツ(クォーツシリーズ・d28204)はクルセイドソードを振り上げる。
     既に自身も、幾度倒れそうになったか分からない。だが、祝福の言葉は風を生み、焔炉の最後の抵抗を倒れそうになる剣をはじめとする仲間達を確実に支えていた。
    「最後のひと踏ん張りじゃ、皆、気張れよ!!」
     ルチルを守り、背中で焔炉の放った岩塊を受け止めて、分福茶・猯(不思議系ぽこにゃん・d13504)は老獪な笑みを浮かべた。
     猯の紡ぐ七不思議の言霊が、最後の一滴まで力を振り絞ろうとする灼滅者達を襲う炎を鎮火していく。

     志穂崎・藍(蒼天の瞳・d22880)へと向かう炎を、葦原・統弥(黒曜の刃・d21438)の手にしたフレイムクラウンで切り捨てた。
     ディフェンダーとして最初から最後まで前線に立ち続けた統弥の体に、傷つかぬ部分などもはやありはしない。
     イフリートに家族を殺され、しかし多くの灼滅者やイフリート達との出会いを経て恨みを捨てた統弥は、垓王牙焔炉へと叫ぶ。
    「イフリートと共存する未来を掴む為、僕は戦う!」
    「夢ある未来をかけて、非才ながら全力で戦います!」
     藍の拳が、焔炉へと猛烈な勢いで繰り出された。激しい熱を感じながらの一撃は、焔炉を大きく揺るがせる。

     垓王牙の意志が、怒りを伴っていることを感じていた。
    「そうだ。自分達は、今のお前を殺しに来た。過日、切り離した尾を人間と灼滅者に都合の良いお前にするために」
     砂原・鋭二郎(高校生魔法使い・d01884)は、その怒りを受け入れるように呟くと、影業を獅炎竜の最後の一体へと伸ばす。背後から貫かれた竜種が倒れると、鋭二郎は声を張り上げた。
    「これ以上、敵は状態異常を癒せない。攻めろ!!」
    「待ってました!!」
     常に最前線で敵に痛打を浴びせ続けていたチーム【ミグラント】の3人組が、垓王牙焔炉を目掛け一斉に駆けた。荒吹・千鳥(祝福ノ風ハ此処ニ在リ・d29636)の手にした交通標識が、赤い印となって垓王牙へと叩きつけられる。
     ついに、残る敵は再び垓王牙焔炉を残すのみとなっていた。
     まだ動くことのできる灼滅者達は、一斉に焔炉へとサイキックを繰り出し続けている。
     ガイオウガの化身、シシゴウの毛を入れた焔獅子のお守りを握りしめ、月姫・舞(炊事場の主・d20689)は垓王牙焔炉へと影の刃を繰り出していった。
    「自らの力の一部と共に、燃え堕ちなさい!!」
    「歌えサイレーン。俺達の道を、開きやがれ!」
     大淫魔サイレーンの名を冠したマテリアルロッドを手に、レオン・ヴァーミリオン(鉛の亡霊・d24267)は焔炉の足を駆け上がった。
     弾き飛ばされるよりも早く、繰り返しの打撃が焔炉の背を強かに打ち据える。

    「この一戦、絶対に勝利しましょう……!!」
     海川・凛音(小さな鍵・d14050)の拳が、焔炉の表面に目にも止まらぬような速さで焔炉の表皮へと叩きこまれる。溶岩そのものとも思えるような焔炉を殴る手に痛みが走るが、その攻撃を止めることは無い。
     凛音をはじめ、いまだ立っていた【神社連合】の灼滅者達もまた、最後の力を振り絞っていた。既にディフェンダーを務めていた者の多くは倒れ、残っているのは異叢・流人(白烏・d13451)と戯・久遠(悠遠の求道者・d12214)の2人だけだ。
    「サポートは任せろ! 存分に攻撃してくれ!!」
     焔炉の側もまた、最後の抵抗とばかりに激しく動き回り、その牙と火山弾で灼滅者達を葬らんとする。
     自身も火山弾を浴びながら、日輪・かなめ(第三代 水鏡流巫式継承者・d02441)を守り切った久遠の体が、ぐらりと揺れた。
    「後は、任せてくれ」
     流人がサーヴァントと共に、その身に代えても仲間を守り続けた久遠に告げると、焔炉の動きを見定める。
     かなめは決意も固く、その脚を焔炉に叩きつけた。
    「みんな揃って、絶対に勝って生きて帰るなのです!」
    「ええ……死ぬ訳にはいかないわ……生きて戻って……ルナの部屋の花を替えないと……技を借りるわ……ルナ……」
     死した海将ルナ・リードの名を呟き、高原・清音(白蓮の花に誓う娘・d31351)はフリージングデスを焔炉へと掛けていく。
     病葉・眠兎(奏愁想月・d03104)は、灼滅へと近づいていく垓王牙焔炉の姿に、一種の感慨を抱いていた。
    「……自然には、荒ぶる面と、優しい面があります。でも、私達は、その中で生きていかないといけない……是も非もないのです。……でも、私は、貴方を憎んでいるワケでは無い」
     だが、眠兎の言葉は、戦いを否定するものではなかった。
     たとえ憎んでいないとしても、人は自然と戦い、そして共存するものだ。
     大地そのものたるガイオウガとも、また同様に。
    「だから、戦いましょう。ぶつかり合うために。破滅以外の、別の答えを探すために……」
    「眠兎は難しいこと考えてるな」
     恋人の様子に、乃董・梟(夜響愛歌・d10966)は『赤イ糸』(鋼糸)を操る手に力を篭める。
    「なら、オレもシリアスに頑張るとしようか!」
    「その台詞、もうシリアスじゃないです……」
     くすりと笑い、眠兎は垓王牙焔炉へと強い視線を向けた。

     楯守・盾衛(シールドスパイカ・d03757)が、灼滅者達にその巨大な牙を突き立てんとする焔炉へと、高々と跳んだ。
     噛み付かれる寸前、ダブルジャンプで軌道を変えた盾衛は、焔炉を切り裂きながら上昇、牙の間を鼻先に着地すると、そのまま溶岩溜まりのような目に自在刀【七曲】の刃を突き立てた。
    「さてお立合い、ガイオウガチャンの解体ショーッてなァ!」
     突き込まれた刃の傷を広げるように、盾衛は【七曲】の柄に渾身の力を篭める。
     こちらを振り払おうとする力すら利用して、振り抜かれた刃は、焔炉の頭部を真横に切り開いた。
     溶岩が涙のように流れ落ち、巨体が崩れ落ちるようにして横倒しになり、岩塊へと変わっていく。
     そして、焔炉が身にまとっていた熱が、煮え立つ焔炉の溶岩の熱が、急速に引いていくのを灼滅者達は感じとった。
     ごくり、と一つ息を呑み、そして盾衛は叫びを上げる。
    「勝ったぞぉぉぉぉ!!」
     既に自ら動くことの出来なくなった者も含め、生き残っている全ての灼滅者達が歓喜の声を上げていた。

    ●世界の秘密
     最終決死部隊が垓王牙焔炉との決死の戦いを繰り広げている頃、焔炉の動いた後に出来た陥没へと潜り込んだ決死調査部隊の面々は、その奥深くへと進んでいた。
     溶岩のある領域は僅かで終わり、後には熱を放つ岩の領域が続く。
     ガイオウガのもつ知識は、ガイオウガを灼滅すれば当然ながら、ガイオウガが保持していた記憶も失われてしまう。
     ダークネスの中でも、おそらく、最古にして最大の個体であるガイオウガがもつ知識が失われる前に、その知識を得なければならない。
     知は力なり。
     そう信じる灼滅者達は、命の危険も顧みず、垓王牙の奥底へと進む。
     ガイオウガの護りは全て、垓王牙焔炉へと向かっているのか、世界の秘密を求める灼滅者達は、然したる抵抗も無く、奥へ奥へと走り続けた。
     その移動距離は、彼らが登ってきたガイオウガの体躯よりも更に深くなっていく。
    「俺達が目にしていたガイオウガは、その体の一部だったのだな」
     東雲・悠(龍魂天志・d10024)は、そう嘆息しながら、地下への道をひた走る。
     その横では、地下への大冒険に興奮しきりのコロナ・トライバル(トイリズム・d15128)が元気一杯に走る。
    「秘密と、お宝大発見だね! 魔導書とかほしいね!」
     物欲満載で悠に話しかけるコロナに、
    「そういう調査ではないのだがな」
     悠は少し呆れ顔で、ここで得られるのは知識であるのだから。
    「そんなの、わかってるんだね。でも、宝のありかも知識なんだから」
     ブーブと文句を言っていたコロナは、前方からの調査部隊の前方にどよめきが広がったのを見て、走る速度を上げた。
    「お宝、お宝~」
     そのコロナを仕方なく追いかけた悠の目の前に広がった風景は、光の束が連なった巨大な大樹と、その大樹のまわりで煌く、色とりどりの結晶体であった。

    「これは……、まるで大樹のようだけれど違うね。巨大な神経束というべきか……」
     大樹に駆け寄った風華・彼方(中学生エクソシスト・d02968)は、スマホで大樹を録画しながら、興味津々で調べはじめる。
    「そして、この色とりどりの結晶は……。結晶の中で何か動いているようだけど……。これは映像、いや、記憶だよね?」
     彼方は結晶の画像をスマホで撮り、その内容を繰り返して再生して精査しようとする。しかし、スマホには何も映っていなかった。
    「これはきっと闇纏いと同じ効果だね、こうなると、自分達の記憶だけが頼りか」
     残念そうにそう言う彼方に、ナハトムジーク・フィルツェーン(黎明の道化師・d12478)と宮落・ライア(虚飾に塗れて何を願う・d18179)の2人が声をかけた。
    「彼方君、私が思うに、この場所こそが私たちが求めていた場所そのものではないのかい?」
     ナハトムジークの言葉に、ライアも同意するように頷く。
    「えぇ、この場所こそが『大地の精髄』に間違いありません。さて、この『大地の精髄』、どうすれば奪う事ができるのでしょう」
     いきなり『大地の精髄』に向けて、紅蓮斬を放つライア。
     この暴挙に、ナハトムジークは驚きつつも、その意図を察する。
     サイキックハーツへ至るという『大地の精髄』、それを奪い取れる事ができれば、その力は計り知れないだろう。
     が、このような方法で、奪えるとはナハトムジークには思えなかったので、紅蓮斬が無理と考えて、吸血しようと噛み付こうとするライアを制止した。
    「ライア嬢、少し落ち着くんだね。『大地の精髄』は知識、そのような物理的な方法では奪うことはできないのではないかい?」
     そのナハトムジークの指摘に、彼方は噛み付こうとしていた口を閉じた。
    「何事もやってみなければわかりません。この方法が不可能である事を誰かが証明しなければならなかったのです」
     ライアは、そう反論したが、その頬は少し赤くなっていた。

     さて、この場所が『大地の精髄』であり、世界の秘密が集まる場所だと確信した灼滅者達は、早速動き出す。
    「ツチノコ、UMA、イエティ、追っかけ婆~!」
     普段は、引きこもり気味の能取・鯱(ぼっち・d22763)も、なんだか楽しそうだ。
     結晶の映像を見比べて、それっぽいものを探しはじめる。
     といっても、映像だけでそれを判別するのは難しいし、すわ、大発見となっても、ただの都市伝説の可能性も高く、世界不思議生物を探し出すのは、不可能そうだ。
     だが、宮武・佐那(極寒のカサート・d20032)は、その鯱の失敗にひるむ事無く、自分の欲望を爆発させた。
    「並行世界です! そこは、世界がリンクする場所なのです。並行世界を移動する為には、どうすればいいのでしょう?」
     並行世界、パラレルワールドはSFの世界では良くある話であるが、『大地の精髄』の知識からそれを得る事は不可能だった。
     万が一、この情報の中に、並行世界の情報があったとしても『まるで見分けがつかない並行世界の映像』を判別は困難を極めた事だろう。
     佐那の婚約者と書いて保護者と読む的な立場の、ユーリー・マニャーキン(天籟のミーシャ・d21055)は、佐那の謎の言動にあきれながらも、結晶の映像を確認する。
     結晶の映像は、まるで『誰かが実際に見てきた光景』のように見えた。
     いや、まさに、その通りなのだろう。
     重要な情報もそうでない情報も全て均一に記録された映像。
     もし、赤ん坊の目を高性能カメラに入れ替えて、その記録をハードディスクに溜め続けたならば、その赤ん坊が老衰で死ぬ頃には、この結晶と同じような映像を得られるかもしれない。
     そう考えたユーリは、はっと閃いた。
     この結晶は、おそらく『ガイオウガと一つになったイフリート達が見ていた光景』なのではないかと。
     ガイオウガから分離したイフリートは、一つに戻る時に、その情報をガイオウガに戻す……。
    「それは、僕達の結論と同じです。おそらく、間違いないでしょう」
     知らず、その考察を呟いていたユーリーに、同じく結晶について考察していた、ヴァレニア・ライラック(主なき従者・d36580)達が、話しかけてきた。
    「つまり、ガイオウガから分離したイフリートが、分離中に見た光景がここにあるわけです」
    「残念ながら、合一するまえに灼滅されたイフリートの記憶は存在しないようだねぇ。あとは、尾と一緒に切り離されたイフリートの記憶も同じだよ」
     ヴァレニアの説明に、鷺乃宮・隣(霊性フェティシズム・d20702)が補足を加える。
    「不思議なのは、人間視点の記憶も多い事だな。おそらく、闇堕ちしたイフリートの闇堕ち前の記憶だと思うのだけれど、数が多すぎる気がするんだ」
     頬にかかった赤茶の髪を無造作にはらって、穂村・白雪(無人屋敷に眠る紅犬・d36442)も考察を述べる。
     が、情報は多いに越した事は無い。
     さっそく、現状のダークネス勢力について情報を得ようと、皆で協力して結晶を集めて記憶を探り出した。

    「こいつは、無理ゲーやろか?」
     思わず弱音を吐いたのは、朱雀門高校の情勢を探ろうとしていたラックス・ノウン(どうみてもスレイヤー・d11624)。
     関係ありそうな記憶結晶を手にすれば、その記憶を持ったものの視点で光景を見る事が可能だ。
     だが、その情報はあまりに膨大すぎる。
     1つの結晶を10分で確認した場合で、対象の記憶のイフリートの活動期間が60年ならば、1秒間に6日以上の情報が流れていってしまうのだ。
     集中すれば記憶の光景を止めたり巻き戻したりも可能だが、まずは、情報の海から目当ての光景を探し出すのが難しい。
     朱雀門の内情を良く知るイフリートに心当たりがあれば、また、話は違ったのだろうが……。
    「竜種ファフニールは灼滅したから、ここに記憶は無いんやから……」
     とても一人では探しきれそうに無い。
     刺青羅刹についての情報を探していた、朝倉・くしな(初代鬼っ娘魔法少女プアオーガ・d10889)は、ラックスよりも恵まれていただろう。
     刺青羅刹の一人、うずめ様が、イフリートの根拠地に近い九州で活動していた事もあり、それなりに多くの情報を得る事が出来たのだから。
     しかし、うずめ様は既に灼滅されていたし、得られた情報の多くが九州時代のものであった為、有益な情報とはいえなかった。
    「情報には鮮度も必要ですからね。このなかから有益な情報を見つけるのは難しいでしょうか?」
     くしなは、そう呟きつつも『過去のイフリートの視点』から得られる情報の限界を感じ取っていた。
     情報は最新ではなく、更に断片的。
     最新の敵の情勢を得るのは、ほぼ不可能だろう。
     木島・文香(中学生ご当地ヒーロー・d37373)は、サイキックリベレイター使用時にも状況が不明であった、ノーライフキングの現状を探ろうとしたが、こちらも不発に終わった。
    「そもそも、ノーライフキングの勢力にイフリートが加わってなければ情報は得られないのよね? その上で、その情報をもったイフリートがガイオウガと合体していなければならないなんて……」
     文香は、せめて同じ事を調べてくれる仲間がいればと、思いながらも目を皿のようにして結晶を調べ続けた。
     ノーライフキングの白の王が生み出した、生殖型ゾンビについて調べようとした、由井・京夜(道化の笑顔・d01650)も同様に行き詰る。
    「生殖型ゾンビは実験段階で、僕達の手で潰してしまったのだから、イフリート……ひいてはガイオウガがその情報を得る事は無かったんだろう」
     残念だが仕方が無いと、京夜は嘆息した。
     木嶋・キィン(あざみと砂獣・d04461)が探したのは、六六六人衆の動向。
     これについては、収穫は無かったとも言えるしあったとも言えた。
    「六六六人衆は、ある意味安定してる……と」
     キィンが見た限り、六六六人衆は常に一定の事件を起こし続けているようで、結晶で得られた情報には、HKT六六六の事件がかなりの比率を占めていた。
     九州地方で起こった事件であるのが、原因だろうか。
    「といっても、あれは、六六六人衆の事件というわけでは無い」
     キィンは、そう言葉にしたが、すぐに思い直した。
    「いや違うな。六六六人衆は、ミスター宍戸に接触している。ならば、関連は大きいかも……」
     そう考えて、彼は、HKT六六六が起こした事件の情報を漁り始めた。
     これから発生するだろう、六六六人衆の事件への対応に役立つかもしれないと。

     東海・一都(夏炉冬扇・d01565)と、清水・式(愛を止めないで・d13169)の2人は、最新の情報の取得が難しいならばと、別の角度から情報の収集を始めていた。
    「グローバルジャスティスの能力や目的が未知数である為、何が起こるかわからない状況ですからね。その能力の一端でも調べられれば……」
    「調べるべきは、グレート定礎が持っていた、ダ・ヴィンチコードの内容よね。あれは、きっと、重要なものだもん」
     一都と式は、関連する結晶を探し、精力的に調査を行う。
     結果、グローバルジャスティスが全盛時には、数十体のご当地幹部を従え君臨していた事がわかったが、グローバルジャスティス本人が前線に出たという記憶を見つけられなかった。
     少なくとも、強大な力を持つ、ご当地幹部の忠誠を得る事ができるカリスマ性は要注意なのだろう。
     また、ダ・ヴィンチコードについては、ご当地幹部でさえ知っているものの少ない情報である為、イフリートの記憶から読み取ることは出来なかった。
    「うーん、大地の精髄、あまり役に立たないのかな?」
     式は、疲れた目をこすりながら、そんな文句を言い出すのだった。
     八守・美星(メルティブルー・d17372)とフィナレ・ナインライヴス(九生公主・d18889)が調査した、レアメタルナンバーについても、得られる情報は少なかった。
     デモノイドという新しいダークネス種族は、新しいだけに関連する結晶の数が非常に少ない。
    「レアメタルナンバーを魂に宿した者の総数とその居場所とか知りたかったのよね」
     美星が残念そうに言うと、ロード・ナインライヴスとしてロードの力を振るった事もある、フィナレも同意し、美星を慰めた。
    「ある意味仕方無いだろう。世界の秘密を得るチャンスとまではわかっていたが、その世界の秘密との接触方法までは予測できなかったのだ。想定していた調査が空振りになる事は計算のうちなのだから」
     フィナレは、大地の精髄を利用して、かつての配下に呼びかける事もできるのではと考えていたようだが、それも不発に終わったようだ。
     勿論、全ての調査が不発に終わったわけでは無い。
     ソロモンの悪魔に関する情報を探っていた3名、アンカー・バールフリット(彼女募集中・d01153)、アルメリア・ユーパトリウム(旋風フレア・d21598)、ジリアス・レスアート(水底の薄氷・d21597)の3人は、興味深い情報を得る事となった。
    「かつてソロモンの悪魔アモンが、直近では老魔フルカスが利用したガイオウガの力……。思った通り、ソロモンの悪魔は何度もにガイオウガの力を略奪していたんだね」
     ソロモンの悪魔とイフリートの確執は深い。
     その記憶には、無理矢理ガイオウガから引き離され、力を奪われた後にガイオウガと合一した儀式の犠牲者というべきイフリートの視点が多数あったのだ。
     残念ながら、アンカーが探すような謎の元素は確認できなかったが、これは、ソロモンの悪魔に関する重要情報なとなった。
    「つまり、ソロモンの悪魔の活動に必要なパワーソースは、ガイオウガの力だったわけだね。おそらく、信者を強化一般人にかえて組織を拡大する為の力も、ガイオウガから奪ったものに違いないだろう」
     ジリアスが、調査の結果をそう結論付ける。
     ソロモンの悪魔の組織の特異性は、一般人を次々配下に治めていく組織力。
     だが、その配下に分け与える力がどこから来ていたのか。
     それが、大地の精髄の知識によって明らかになったのだ。
    「結局、どういうことなのよ?」
     ジリアスと腐れ縁のアルメリアは、ジリアスの説明が良く判らなかったので聞き返す。
     その問いかけに、ジリアスは肩をすくめると、要点だけ説明してあげた。
    「要は、ガイオウガが灼滅されれば、パワーソースを失ったソロモンの悪魔は動きが取れなくなるだろうという事だね。サイキックリベレイターで力を与えない限り、ソロモンの悪魔が自力で再興する事は、もはや無いだろう」
     そう断言するジリアスは、アルメリアの目からみても、なんか格好良かったが、アルメリアはあまり気にしなかった。
    「じゃ、そっちの調査は終わりって事よね。じゃ、あたしと一緒に価値ある鉄鉱石の情報を探しましょう!」
     このアルメリア達の調査には、途中からコロナと悠が加わったが成果はあがらなかったようだ。
     そもそも、得られるのが過去の情報なのだから、お宝の情報を得られても、それがその場にまだ残っている保証など無いのだから。
    「残念なのね」
    「うん、残念だね」
     そして、アルメリアとコロナは、互いに残念な気分を共有したのだった。
     一方、人造灼滅者の延命に繋がる情報を探していた白石・翌檜(持たざる者・d18573)も、どうやら、大地の精髄で知識を得られないだろうと見切りをつけていた。
    「元々雲を掴むような話だったからな」
     だが、それでも少しでも情報を得る為に、翌檜は、ダークネスとヒトという存在について調査している灼滅者達を手伝う事にする。
     ダークネスとヒトの関係を調べれば、人造灼滅者についても何かわかるかもしれない……。
     そうして翌檜が、場所を離れようとすると、突如、絶叫が大地の精髄に響き渡った。

    「楔を汚す白炎換界陣。大地に宿る古の畏れ。王の転生を喰らう黒牙。大地と切り離した憑竜碑。大地の力を宿すレアメタルナンバー。妖精職人の力の源。黄金鉱脈。大地に起因する全ての異能力。それに、蒼の王。サイキックハーツ。私は、その全ての知識を求めるもの……!」
     とても多くの知識を、一気に得ようとした、戒道・蔵之祐(大学生魔法使い・d06980)が、その知識を得ようと体内に多数の結晶を取り込み、大地の精髄の中心である大樹へと身を委ねたのだ。
     膨大な知識の海が、蔵之祐を包む。
     最初、それはまるで、母親の羊水のなかを漂うようようだったが、すぐに、膨大な知識の洪水に襲われ、絶叫をあげてしまったのだ。
     だが、その甲斐があったのか、蔵之祐は膨大な知識を全て得る事ができた。
     その姿は、人間から大きく離れていたのは、人間の身に過ぎた知識を受け止める為に闇墜ちしたからであろうか。
    「あぁ、そうか、そうなのか。今、私は、全ての知識の中心にある。全てが理解できる、ガイオウガの力こそがサイキックハーツ、蒼の王の目論見も……。今、私は……」
     異形となった、蔵之祐は、彼自身にも最早止められない大地の精髄の知識を際限なく受け入れ、肥大化し……。
     そして、爆発して消滅してしまった。

     その惨劇は、その場にいた灼滅者にとって悪夢のようであった。
     過ぎた知識を求めし者の末路。
     そう言葉にすれば簡単だが、それを目の当たりにしたものには、衝撃的なものだったのだ。
     残された灼滅者達は、身に過ぎた知識を望まず、手分けして情報を探す事を申し合わせるのだった。

    ●ダークネスの真実
     レイ・ソウル(黒の切り裂き魔・d21239)は、蔵之祐の最後の姿に、自分の未来を幻視して、頭を強く振ってその幻視を追い払う。
    「確実に、一歩一歩、皆で協力して調査だな」
     レイは、そう言うと、翌檜にも手伝ってもらい、得られた情報を整理する。
    「大地の精髄は古い記憶の宝庫っすからね、どんどん、結晶の記憶を探していくっすよ」
     藤原・漣(とシエロ・d28511)も、流れ作業でそれっぽい情報のありそうな結晶をよりわけていく。
     そのよりわけられたものを、さらに仕分けているのが、雪佐里・鈴奈(高校生殺人鬼・d21057)。
     彼らの目的は、ダークネスの発生起源を探ること。
     ダークネスの発生起源を知る事は、この世界の秘密を解き明かす重要な鍵となるだろう。
    「一番古い区分の結晶は、このあたりですか? やはり、ダークネスは先史時代から存在するようです」
     集められた結晶からの情報で、鈴奈はそう判断する。
     その判断には、黒曜・伶(趣味に生きる・d00367)も同意している。
    「確かな事は言えませんが、ヒトが明確な文化を確立したあたりが、ダークネス発生の境界点なのでしょうか?」
     真剣に結晶の記憶を調査しながら、伶はそう推論する。
     人狼という例外を除けば、ダークネスはヒトにしか宿らない。
     しかし、猿、猿人、原人と進化する過程のどこで、ダークネスが発生したかが、ダークネス発祥の鍵になるだろう。
     その境界が、文明があるか否かであるというのが、大地の精髄を調査した伶の推論なのだ。
     澤村・民子(ストロークス・d03829)も、自分の調査結果を踏まえて、伶の意見を支持し、その意見を発展させてみせた。
    「ようは、一定の水準に達した動物が、魂にダークネスを宿らせてるんだぜ。つまり、魂にダークネスを宿らせた存在がヒトって存在になるんじゃねぇの?」
     この推論は、民子のたいくつな日常をひっくり返すに値するだろう。
     風真・和弥(風牙・d03497)は、この民子の言葉に衝撃を受けつつも、ある意味納得して頷いた。
    「俺は、全てのヒトの魂の奥底にダークネスが存在するのだと聞いた。ならば、ダークネスが存在しない魂はヒトでは無い。ダークネスが存在する事で、ヒトがヒトとなったというのは間違いないだろう」
     周囲の灼滅者も、民子と和弥の言葉に納得し、その前提で推論を組み立てていく。
    「次に考えるべきは、魂の中のダークネスでは無く、闇堕ちしたダークネスという存在の意味だよね」
     今の推論ならば、魂の奥底から出てくる必要なんてないのだからと、水瀬・裕也(高校生ファイアブラッド・d17184)が問題を提起する。
     皆が、結晶の記憶の調査の手を止め、一様に考え込む。
     大地の精髄にはあまりにも膨大の知識がある。
     その全てを調べる為には命を捨てて知識と合一するか、或いは、膨大な人手と時間が必要になる。
     そのどちらも用意できないのならば、ある程度の推論を得て、その推論が正しいかどうかを検証していくという手順が必要になってくる。もし、検証の結果推論が否定されれば、また新たな推論を考えて検証し、精度をあげていくのだ。
    「その前に、一つ考えるべき事があると思うでござる」
     阿久沢・木菟(八門継承者・d12081)が発言する。
    「動物の魂にダークネスが宿り、ヒトになったというのでござったら、そのダークネスは何処から来たのでござろう?」
     木菟の問いかけに、皆、目を見開く。
     それは、ダークネスという存在を紐解く上で、根幹となる疑問であったから。
    「ヒトと動物の違いですか? ダークネスを得る事で、ヒトは文明を持つ……。文明とは何でしょう? 動物に何を足せば、文明ができるかが判れば……」
     静闇・炉亞(君咲世壊・d13842)は、人間の魂には、普通の人格とダークネスの人格が内包されているのだと考えて、調査を行っていた。
     しかし、今、その考えが大きく転換されたのだ。
    「社会性を持つ動物は存在します。群れをつくらない動物が少ないくらいに……。だけど、動物達は文明を築きません。それは何故なのか?」
     炉亞は、動物とヒトの違いについて考える。
     こんな哲学的な命題など今まで興味は薄かった 
     だが、この大地の精髄で、結晶を通して多くのイフリートの生と、その目に映った世界を体験した自分にならば、何かわかるかもしれない。
     炉亞は考え、考え、考え、そして、結論へと至る。
    「夢……なのでは無いでしょうか?」
     と。
     牧原・みんと(象牙の塔の戒律眼鏡・d31313)は、その炉亞の言葉を聞き、電撃が走るように感じた。
     『夢』なのだと。
     世界を前に進ませるには、この世界に存在しないものを考え付かなければならない。
     人類の数々の発明も発見も、その元となる所は夢に相違ない。
     夢とは、今日と違う明日を目指して努力する意志になる。
     だから、人類は、ここまで発展しえたのだ。
    「ヒトだけが夢を見るのならば、夢を見る力こそがダークネスの根源……。つまり……」
    「ダークネスはソウルボードから来たのだよ!」
     ミントの言葉を引き継ぐように、銃沢・翼冷(深淵覗くアステルバイオレット・d10746)が声を張り上げた。
     ソウルボードとは、シャドウ勢力の拠点だと思われがちだ。
     しかし、シャドウが、ソウルボードに拠点を作ったのは『サイキックアブソーバーによる封印から逃れる為』であり、シャドウの拠点というのは、ソウルボードの一側面でしかない。
    「ソウルボードの入り口は人間の夢……。そして、その夢を入り口として、他の人間の夢へと移動する事が可能だね。ヒトの魂の奥底のダークネスというのが、ソウルボードへの門であるのだとすれば……」
     興奮したような翼冷の言葉に、皆が一斉に、大地の精髄の結晶をあさり出す。
     この推論が正しければ、これまでの常識が大きく覆るのだ。
     そして、その調査の結果……。
    「ダークネスの力の根源は、ソウルボードで間違いなさそうですね」
     と結論づけられた。
     ソウルボードがダークネスの力の根源であるという決定的な証拠は無い。
     だが、動物にソウルボードが存在しないといった傍証が多数得られた結果、おそらく高い確率で確からしいという結論に達したのだ。
     そして、この理論は『闇堕ち』についても説明してしまうのだ。
     普通の人間が、突如、人間から大きく逸脱する程の力を得る。
     闇堕ちとはそういうものだと思考を停止していたが、良く考えれば、これはおかしな事だ。
     人間からダークネスへと存在を変化させた時、その差分のエネルギーがどこからやってきたか。
     そう、それこそが、ソウルボード。
     ヒトが闇堕ちする時、おそらく、ソウルボードのエネルギーを体内に取り込んでいるのだ。
     そう考えれば、全てに辻褄が合うだろう。
    「後知恵になるんだけど、人間の魂を分離する実験はベヘリタスなどシャドウの専売特許だったよねぇ。それもまた、ソウルボードを拠点として得られた能力なんじゃ……」
     夕暮・六(誰そ彼・d35749)の言葉には説得力があった。
     もし、シャドウに最初から『ダークネスと人間の魂を分離するような方法』があったのならば、サイキックアブソーバーが使用される前の段階で、ダークネスの勢力均衡を壊す程の影響を与えていたはずなのだ。
     だから、この知識は『多くの力を封印されソウルボードに封じ込められた』後に発見された知識と考えるのが妥当……。
     以上の事から、外法院・ウツロギ(百機夜行・d01207)は、重々しく断言した。
    「つまり、ソウルボードを完全に制御下に置く事ができれば、闇堕ちのコントロールも可能だということだよね?」
     と。
    「闇堕ちのコントロールだけではありませんわ。私の望みであるダークネスとの共存の鍵も、ソウルボードには、きっとあるのですわ」
     鎹・りね(ひかりをのぞむ・d28733)は感動の面持ちで、呟く。
     そのりねに、マーテルーニェ・ミリアンジェ(散矢・d00577)は優しく微笑んで頷いて見せた。
    「ベヘリタスとタカトが見せてくれた可能性以上のものが、ソウルボードにはきっと隠されていると思いますわ」
     マーテルーニェは、自らに言い聞かせるようにそう言葉を吐く。
     勿論、問題も多く残っている。いや、山積と言ってよいだろう。
     今回得られた情報は、ソウルボードに『ダークネスの根源に関わる鍵がありそうだ』というだけで、その確証も得られていないのだ。
     より詳しい調査と理解、そして、それを制御する技術を得られるかどうか……。
    「あぁ、そうよ。そう考えると辻褄があうのね」
     イルフィーネ・ブイオルーチェ(悪性変異・d07248)は、パチンと手を打って、
    「バベルの鎖も、ソウルボードの力で作られているのよ」
     と言った。
     バベルの鎖の効果は主に2つ。
     通常ダメージを無効とする力と、情報を過剰に伝播させなくする力。
     イルフィーネは、この2つの関連性の無い能力が、何故、同じ『バベルの鎖』の効果であるのかが疑問だったのだ。
     特に、情報が伝播しないという効果は、それを見た一般人の行動を操作するが、バベルの鎖の効果を発揮させた側は、いつどこで、その効果が発揮されて一般人の行動が制御されたかを認知する事さえできていない。
    「でも、バベルの鎖の力のパワーソースがソウルボードであるならば、説明は簡単なの。全てのヒトに繋がっているソウルボードを間に挟んだのならば、綺麗に説明がつくのだから」
     イルフィーネが、また一つ世界の謎への手掛かりを掴んだとき、 霧渡・ラルフ(愛染奇劇・d09884)が、ビックリしたような声をあげた。
    「イルフィーネ嬢もみんなも、この結晶を見てください」
     大発見をしたように皆に結晶を見せるラルフ。
     それは、闇堕ちのメカニズムを解析するためにと分類された、ダークネス発生初期の記憶と思われる結晶の一つだ。
     その記憶では、竜種であろうイフリートが、原始人のような人間を喰らっている様子が映っている。
    「この襲われているヒトの目を良く見てください。おかしいのわかりますよね? そう、暗がりで目が光ってるんです。まるでネコ科の獣のように! この原始人、わたくし達の先祖じゃありません!」
     このラルフの発見は、灼滅者達は、大きくどよめいたのだった。

    ●ガイオウガへ至る道
     ラルフの発見は、ガイオウガの過去を紐解いていた灼滅者にも驚きをもって伝えられた。
     すぐに、集められていた結晶が、映っている原始人の瞳の違いで分類されていく。
     結果、猫の目をした原始人を襲っているイフリートも、猫の目をした原始人から闇堕ちしたイフリートも全てが竜種である事が確認された。
     そして、それ以外の結晶では、竜種と通常のイフリートが混在していたのだ。

     氷月・燎(大学生デモノイドヒューマン・d20233)は、その作業を急ぎ行いながら、ガイオウガの過去を思う。
    「つまり、ガイオウガは、少なくとも一度、文明の滅亡を見ているという事やな」
     それはなんという長い時間であるのだろうか。
     ガイオウガが大地そのものと称される所以は、ここにもあるのだろう。
    「なら、ガイオウガが最初のダークネスでいいんじゃねぇの?」
     影道・惡人(シャドウアクト・d00898)が、そう言う。
     最初のダークネス、最初の素体。
     大地の化身たるガイオウガにまさに相応しい称号だろう。
     だが、その惡人の意見に、志賀野・友衛(大学生人狼・d03990)は疑問を呈した。
    「ガイオウガは最初のダークネスにはならないな。竜種イフリートが集まってガイオウガとなっているのだ。ガイオウガが先か竜種イフリートが先かなら、竜種イフリートが先で間違いないだろう」
     だが、友衛も『ガイオウガの一部である竜種イフリートの一体』が最初のダークネスであるという可能性までは否定しなかった。
    「私は、ガイオウガが自分自身を分割したメリットについて考えていたのですわ。でも、一度文明が滅びたというのならば、分割せざるを得なかったという方向で考えるべきですわね」
     那賀川・秀瑠(夢の詠み手・d22642)は、そう言いつつ、分類した結晶を精査していく。
     すると、また、新しい発見があった。
    「外見だけでは判り難いと思いますが、滅びた文明側の結晶に出てくる竜種イフリート以外のダークネスも、私達が知っているダークネスではないようです」
     と。
     ダークネスの外見は千差万別。
     だが、それに都市伝説なども加われば外見からダークネスの種族を100%当てる事は不可能に近い。
     だが、多くの数を見て、その特徴を分類すれば……。
    「そう言われてみれば確かにそう見えるな。だとすると……」
     海弥・障風(阻む風・d29656)は、じっと、結晶が見せる光景に集中する。
     障風は、竜種イフリートに恐竜の絶滅のイメージを持っていた。そのイメージ故だろうか、結晶の光景から当時の状況を想像する事ができていた。
    「ヒトが絶滅すればダークネスも滅びるだろう。つまり、前の時代のダークネスの多くは既に滅びているのだ。この滅びを回避するため、竜種イフリート達はガイオウガという一つの個体に合一したのでは無いだろうか」
     それは、他のダークネスと圧倒的に違う、ガイオウガという存在をうまく説明しているように思えた。
     その意見に対しては、明鏡・止水(高校生シャドウハンター・d07017)が疑問を出す。
    「確かに、そう考えると辻褄があってるようにみえるな。だが、ガイオウガの強大さの説明はつかないだろう」
     原始時代水準でヒトの数も少なかったであろう文明が滅び、それと共に滅びそうだった竜種イフリートが生き延びるために合体したとするならば、ガイオウガは『強大な力を持つ理由が無く』相対的に『弱小勢力』でなければならない。
     止水は、そう言うと、別の可能性を示唆した。
    「障風の考えは概ね正しいと思う。だが、文明は滅びたのでは無く、ガイオウガが滅ぼしたと考えればどうだろうか?」
     もし、そうであるならば、ガイオウガの強大な力の説明がつくのではないか?
     その止水の言葉に、ペーニャ・パールヴァティー(羽猫男爵と従者のぺーにゃん・d22587)が勢い良く立ち上がって、叫んだ。
    「障風さん、止水さんありがとうございます。私の中で今、全てがつながりました」
     と。
     ペーニャは、漠然とガイオウガは『アトランティスやムーなどの大陸の全ての人間が一斉に闇堕ちして合体した姿』であるのではと考えていた。
     この考えと、そして、皆の意見により、彼女は正解と思われる解答を得たのだ。
    「猫の目の原始人たちは、一斉に闇堕ちする事で絶滅した。そして、その力が集まってガイオウガとなったのです!」
     と。
    「だとすると説明がつくか? いや、そう考えなければ説明はつかないのかよ!」
     遊部・勇吾(イチかバチか・d30935)は、そのペーニャの推論に興奮を隠せなかった。
     ガイオウガは大地そのもの、ならば、その大地とはなんなのか?
     そう考えていた彼にとり、世界の全てのヒトを闇堕ちさせて合体したものがガイオウガであるという説明は、大きな説得力があったのだ。
     泡沫・海莉(リトルクライ・d00005)もまた、疑問に思っていた『ガイオウガの力の理由』に説明がつき、大きく頷く。
     三影・紅葉(中学生殺人鬼・d37366)もまた、自分の予測が『順番を入れ替える』事で解決する事に気づき、目を見張った。
    「俺は、ガイオウガの力が何故、世界各地に分散したかと考えていたんだ。だが、違ったんだな。この世界の全てを満たしていたガイオウガの力を、多くの勢力が略奪した結果、飛び地でガイオウガの力が残った。そう考えれば説明がつくぜ」
     と。
     紅葉の言葉に、米田・空子(ご当地メイド・d02362)と森本・煉夜(斜光の運び手・d02292)、鈴鹿・美琴(蒼月を映す刀・d20948)といった、竜脈について調べていた者達も納得顔で頷いた。
    「つまり、ガイオウガが竜脈を作ったのでは無く、他のダークネス組織の略奪から守り通した重要なラインが、竜脈になったということですね」
     納得ですと、にっこり微笑む空子。
     煉夜も、現存するダークネスのサイキックでは説明しきれなかった竜脈の力の異端さに説明がつき、納得顔だ。
    「まぁ今の自分達には、扱えないだろうがな」
     美琴は、知ったからといってどうしようもない現実を指摘しつつも、一つの可能性を考えていた。
     竜脈……ガイオウガの力がイレギュラーな力を発揮するというのならば、イレギュラーの中のイレギュラー『サイキックアブソーバー』は、竜脈の力で動いているのではないかと。
     もし、そうならば、武蔵坂側にも、竜脈を利用する方法は、存在する事になるが……。

    「まさか、大地の精髄にここまでの知識があったとはね、まさに驚愕や」
     目・茸(翠と黄金の斑・d19289)は、灼滅者達の調査結果に脱帽の思いであった。
     自分も『大地とは地球そのものでは』と考えていたが、それが、こういう意味だとは思いもしなかったのだ。
    「茸、それは違う。大地の精髄の知識では無く、灼滅者の智慧だ。驚くならば、灼滅者の智慧に驚くべきだ」
     木嶋・央(此之命為君・d11342)は、大地の精髄を奪いに来る敵を警戒していたため、調査活動には加わらなかったが、それでも、この結論を導き出した仲間達を、賞賛の気持ちが抑えられなかった。
    「えぇ、そうやな。智慧や智慧」
     茸も、央の言葉に相槌をうち、灼滅者の智慧を称える。
     だが、その灼滅者の智慧はまだ尽きることが無いようだった。

    「まだ謎は残っているね。例えば、ガイオウガくんが封じてるスサノオ大神くん……。スサノオは、日本狼から闇堕ちするとか不思議な事が多いから、きっとガイオウガと関係してるんだよ」
     梢・藍花(白花繚藍・d28367)の言う通り、スサノオはガイオウガと縁が深く、そして、ダークネスの中でも異色の存在だ。
     イフリートとの類似性もあり、何か繋がりがあるのか確実だろう。
    「確かイフリートは、猫の目の原始人の時代から別の争っていたのですね。そして、そのダークネスは、種族が今と違う……」
     リーファ・エア(夢追い人・d07755)は、脳細胞をフル回転させながら、そう言葉を紡ぐ。
    「リーファの言うとおりだぜ。だが、その違う種族のダークネスも、全くの別物では無いんだよな。イフリートと竜種イフリート、或いは、鳥と蝙蝠くらいの類似点がある」
     リーファの思考を引き継ぐように、長沼・兼弘(キャプテンジンギス・d04811)が言う。
     確かに、それぞれの時代のダークネスは、すぐに判別できない程度の違いだった。
     それが意味する所は……。
    「ソウルボードです!」
     その答えに最初に行き着いたのは、リーファであった。
     もし、2つの時代で、ソウルボードが共通であるのならば、ダークネスの性質が似ているのは自然の流れとなる。
     適応拡散なのか収束進化なのかは判らないが、どの時代にも似たような性質のダークネスが現れる可能性が高い。
     ならば、
    「スサノオとイフリートは、その存在が重なり合っているのだ!」
     スサノオとイフリートの類似性に目をつけていた手繰・真言(天球儀は性善説の夢を見る・d23501)が結論を出した。
     兼弘が図らずも言っていたように、イフリートとスサノオは蝙蝠と鳥の関係だと考えれば説明がつくだろう。
    「なるほど、そう考えればイフリートとスサノオが対立関係であり、ガイオウガによりスサノオ大神が封じられたという意味が変わってくるな」
     ルフィア・エリアル(廻り廻る・d23671)が、ふむと頷いた後、少し深刻な顔を見せた。
    「つまり、ガイオウガが灼滅された場合、そのリソースを得たスサノオが力を増す事になるわけだな」
     と。
     すぐさま、ガイオウガ並の力を持つには至らないだろうが、警戒は必要だろう。
     そう言うルフィアに、たしかにそうだとアセス・レニーグラド(高校生神薙使い・d36982)が頷いた。
    「私は、ガイオウガの強大な力を灼滅者が利用できないかと考えていたのだが……。スサノオが、ガイオウガの力の後継者と言うのならば、早急に対処したほうが良いのだろう」
     アセスの言葉に、幾人かの灼滅者が頷いた。
     こうして、ガイオウガに関する調査に終わりが見えた時、リーファとルフィアについて、調査を手伝っていた、陽乃下・鳳花(流れ者・d33801) が、はたと気づいたように、こう呟いた。
    「全てのヒトが闇堕ちして文明が滅びた時って、ソウルボードはどうなっていたのかな?」
     そして、もし、ソウルボード全てがガイオウガの元に一つになっていたのならば……。
    「ガイオウガ、キミが至った世界はもしかして……」
     鳳花は、そう続けると、大きく息を吐き、そして、その答えを導き出した。

    「サイキックハーツ」

     と。

    ●サイキックハーツ
     鳳花がサイキックハーツとは何かの答えを導こうとしていた頃、【涅槃の箱庭】を中心とした灼滅者達も、別の方向からサイキックハーツの真実へと辿りついていた。
     出発点は、ダークネスの力の根源がソウルボードであるらしいという推論であった。
     その上で、彼らは『もし、ソウルボードがダークネスの力の根源であるならば、何故、邪悪で無ければならないのか』と考えたのだ。
     サイキックハーツに関する調査については、他の調査と大きく違い、外道・黒武(お調子者なんちゃって魔法使い・d13527)が全体の指揮をとる形で組織的に行われていた。
     まずは、【涅槃の箱庭】の葦原・憐華(死天使・d14030)が、疑問点を提起した。
    「夢が、邪悪なんて嘘だよう。だって、綺麗な夢は一杯あるし、夢を持つ事は素晴らしい事なんだもん」
     憐華のその意見に、【涅槃の箱庭】の過半を占める女性人の共感を得たようだ。
     黒武は、少し思案した後、首を振って答えた。
    「綺麗な夢があるのは確かだぜ。でもな、世界を変えようって意志は、綺麗なだけじゃないだ」
     そう言い聞かせた黒武の言葉に、冥護・龍鬼(怠惰の獣・d13632)が面倒そうに補足を加えた。
    「世界は怒りで出来ているというやつだな。今の世界に満足している奴は、世界を変えようとしない。世界を変えようとする奴は、必ず、今の世界に対する怒りをもっているんだ。世界から病気を無くそうという夢だって、その夢に突き進む力は、病気で失われる命に対する怒りなんだ」
     この龍鬼の説明にエニグマ・プロビデンス(小学生サウンドソルジャー・d24879)が、
    「龍鬼君の言うとおりだよ。憐華ちゃんも、ぽやーしあわせーって気分でのほほ~んてしているときより、なにくそがんばるぞーおー! って時の方が力がでるよね」
     と付け加えると、女性陣も納得して頷いた。
     たしかに、のほほ~んと世界を変えようとするのは少数派だろう。
     世界を変えるという事は、現在を否定する事でもある。そして、現在を否定するのは、現在に怒りをもつものといって過言では無い。
     だが、ここで、
    「でも、私はソウルボードが邪悪であるとは思えないよ」
     と、シャドウハンターの霹靂神・天(雷刃・d24878)が再び反論する。
     少なくとも、天はソウルアクセスした時に邪悪さなど感じた事は無かったのだから。
     黒武もその天の意見には同意する。
     ソウルボードが邪悪な存在であるならば、灼滅者が今までそれに気づかない筈は無い。
     だから、ソウルボード自体が邪悪な意志を持っているわけではないと、黒武は考えたのだ。
    「なら、今度はダークネスの本能から考えてみるわよ。ソウルボードが邪悪ではないなら、もしかしたらダークネスも邪悪ではないのかもしれないから」
     村上・神無(大学生ダンピール・d24744)がそう言うと、思案顔で沢渡・朱鷺音(星焔の裁き・d28643)が答えた。
    「ダークネスは一般人を苦しめて闇堕ちさせようとするね。んー。これは、どっちが先なのかな? 一般人を苦しめたいという本能があって、その結果闇堕ちしてるのかな? それとも、闇堕ちさせようとする本能があるから、一般人を苦しめてるのかな?」
     黒武は、そう思案する朱鷺音を、それは良い着眼点だと労うと、
    「俺は、一般人を闇堕ちさせようとするのが本能だと考えるぜ。淫魔のように堕落させて闇堕ちさせるダークネスもいるのだから、苦しめる事が目的ではないと思うんだ」
     その黒武の言葉に、朱鷺音もうなずく。
     そうならば、ソウルボードに何かの意志、あるいは本能があるとすれば……。
    「じゃぁ、ソウルボードは、ヒトの魂の一部になりたいと思っているのかな? そして、ソウルボードを魂に取り込んだ存在……ダークネスに、より多くのソウルボードがヒトに取り込まれるように行動させている……とか」
     十皇・紅子(永焔の翼・d19798)が自信無げにそう発言する。
     ここまでに邪悪な部分は存在しないが、それだけに、ダークネスという邪悪な存在との整合性がつかないように感じたのだ。
    「いや、それで良いと思うぜ」
     自信無さげな紅子に、黒武が安心させるように声をかける。父親代わりの黒武に認められて、紅子はほっと息をついた。
    「これって、食物連鎖っぽいのかな? 肉食動物が草食動物を食べて草食動物が草を食べて、死んだ肉小動物は草の養分になるんだよね。似てないかな?」
     東瀬・梓馬(は今日も元気に走り回る・d13462)の見解に、黒武は感心したように頷いた。
     紅子の姉である十皇・天子(蒼天・d19797)も、
    「梓馬ちゃんの言う通りだと思うよ。草にとって自分達を食べる草食動物は虐殺者に間違いなから! そして草食動物にとっては肉食動物が虐殺者で……、肉食動物だって、自分の死後その体を養分にして繁殖する草は、邪悪に見えるんじゃないかな?」
     と、同意する。
     天子は、自分が草になって、平和に光合成していたら、いきなり現れた草食動物に喰われてしまう所を想像して、ぶるりと体を震わせた。
    「つまり、ソウルボードは邪悪な存在では無いが、その本能が『人間にとって邪悪に見える』という事になるって事でいいんだよな?」
     樋村・河陰(創醒を告げる黒き焔・d18918)が、黒武にそう確認し、黒武が頷く。
     これで、ソウルボードは邪悪では無い筈なのに、ダークネスは何故邪悪なのかという疑問は解決したわけだ。
     榊原・結慰(四劫の翼・d28565)が最後に、
    「もし、ヒトが、苦しめられると嬉しくなって何もしたくなくなって、逆に親切にしてもらうと、なにくそってやる気を出すようになったら、ダークネス達は、ヒトに本能的に親切にするようになるのよな?」
     と、ダークネスとの幸せな関係について発言した。
     ダークネスが、お婆ちゃんの荷物をもってあげて、それに感謝したお婆ちゃんが闇堕ちしてダークネスになる。
     それは、ちょっと面白い世界かもしれない。
     勿論、よく考えれば、そんなマゾばかりいる異常な世界は嫌だし、お婆ちゃんにとっては、荷物を持たれる事が許せないという社会となるのだから、その世界にとってダークネスが邪悪な事は変わらないのかもしれないのだが……。
     その世界を想像して、微妙な表情になった、神原・燐(冥天・d18065)は、黒武に次の議題を提起した。
    「ソウルボードとダークネスの関係は、なんとなくわかったよ。じゃあ、ソウルボードが全てヒトに取り込まれたらどうなるのかな? ソウルボードが無くなるから、ダークネスもヒトを闇堕ちさせる必要も無くなるの?」
     燐の問いかけに、再び、皆が思考を開始する。
     これ以上、闇堕ちが発生する事が無い世界。闇堕ちするだけのエネルギーの無い世界。
     その時、地上はどうなってるのだろうか?
     その問いに答えを出したのは、天元・彩狼(中学生人狼・d28567)だった。
    「その時、地上にヒトは存在しないわ」
     と。
     もし、動物とヒトとの境界に、ソウルボードが関係しているのならば、ソウルボードが無くなれば、ヒトはヒトでいられないのだ。

    「それって、哲学的ゾンビって奴かい?」
     無気・琉湖(投げる子・d33008)がそう言う。
     見た目は人間だが、意識を全く持っていない存在。精神的世界を持っていない人間の形をした何か……。
     そんな哲学の定義が、まさかここで出てくるとは思わなかったようで意外そうな顔をしている。
     そして、その意外そうな顔のまま、こう続けた。
    「もし、その世界にまで至ったのならば、その世界の極点に違いないね」
     と。
     この、琉湖の何気ない一言に、シルヴァーナ・バルタン(宇宙忍者・d30248)と、興守・理利(竟の暁薙・d23317)が顔を見合わせ、同時に一つの単語を口に出した。

    「「サイキックハーツ」」

     ソウルボードの全て現実世界に取り込まれる、極点。
     その極点に至る事こそが、サイキックハーツに違いない。
     シルヴァーナと、理利はそう確信した。
     いや、そう確信せざるを得なかった。
     ダークネスの本能が完全に満たされ、この世界から全てのヒトが消え去る。
     それこそが、究極の状態の一つで間違いは無いのだ。

     『サイキックハーツに至る』

     それは、全てのヒトが闇堕ちした世界に至るという意味なのだ!
     シルヴァーナと理利の言葉に、大地の精髄に集った灼滅者達は大きくどよめいた。

    ●王
     その智慧をもって、異なる論点から『サイキックハーツ』の秘密にいきついた灼滅者達。
     彼らは、垓王牙焔炉が破壊されるまでの残された時間、自分達の得た知識を交換し、新たな知識を結晶から得る事に費やした。
     中でも、【スーパー銭湯部】の面々は、2つの論点から引き出された『サイキックハーツ』について、より深く知ろうと必死に智慧を出し合っていた。

    「ソウルボードが全て無くなった世界のダークネスってどうなるんだろう」
     まずは、加藤・蝶胡蘭(ラヴファイター・d00151)が口火を切る。
     ダークネス同士が仲良く暮らす世界か?
     いや違う。
     たとえ均衡状態があったとしても、ダークネス同士は必ず殺しあう筈だ。
     ならば、最後まで殺しあうのか? そうなれば、ソウルボードを取り込んで現実世界に固定する存在がいなくなってしまう。
     そうなれば『サイキックハーツ』という極点状態は終了し、再び、知性を得るに相応しい動物が現れるまで待つことになる。
     これでは『サイキックハーツ』に至った状況はすぐに解消されてしまうだろう。
     この疑問には、
    「わたくしめが思うに、その考えでよろしいんでございましょう」
     靴司田・蕪郎(靴下大好き・d14752)が集中力を高めるために靴下の香りを嗅ぎながら答えた。
     サイキックハーツに至ったと思われるガイオウガも、結局は、灼滅者に灼滅されるという末路に至ろうとしているのだ。
     盛者必衰会者定離、サイキックハーツが極点であり全ての果てであったとしても、その果ての先には、新たな始まりが用意されているのかもしれない。
     その蕪郎の意見を聞いた、那嘉川・真(痛みも辛さも乗り越える漢・d14239)は、大きく頷くと口を開いた。
    「さすが蕪郎。なかなか良い事を言うぜ。だが、ガイオウガの調査結果では、サイキックハーツに至ったと思われる時期と、新たなイフリートが生まれたじきには、かなりの時間があるようだぜ」
     地球の歴史から見れば瞬きの間だろうが、おそらくは百万年単位の時間があいているはずだ。
     ならば、サイキックハーツが一瞬で終わるという事は無いだろう。
    「そもそも、ガイオウガとはどういう存在なのか? もし、サイキックハーツによって、世界がダークネスだけのものになるとしても、多数のイフリートがガイオウガになる理由にはならないだろう」
     長崎・莉央(ヘーゼルレイン・d16750)も、そう疑問を口に出して、考え込む。
     喉まで出掛かった答えが出ない……、その停滞を打ち払ったのは、花衆・七音(デモンズソード・d23621)の一言とであった。

    「王」

     七音が発したのは、たった一文字の言葉だった。
     だが、その言葉の与えた結果は劇的であった。
     最初に反応したのは、星陵院・綾(パーフェクトディテクティブ・d13622)。
    「王です、王なんです!」
     綾は、難事件の真犯人を見つけ出したように、断言する。
     かつて、ノーライフキングの『王』、蒼の王・コルベインは『サイキックハーツに到達したもの』と称されていた。
     それと同様に、ガイオウガも『王』となり、その権能により、世界を支配したのだ。
     綾の探偵の勘は、それが真実であると確信していた。
    「蒼の王コルベインも、『王』となった後、ガイオウガのようにサイキックハーツに至り世界を統合しようとした筈です。しかし、その直前に、他のダークネス達に討たれてしまった。そして、王の権能は、複数の王に分割して受け継がれ……」
     綾の灰色の脳細胞は、最大限に活性化していた。
    「王が複数いる状態はイレギュラーな事態。ダークネスによる地球の分割支配は、王の権能が分割された影響なのですか?」
     綾の推論を聞き、大地の精髄にいる全ての灼滅者が、結晶の記憶の確認を始める。
     この推論が正しいか否か、それを確かめる事が重要なのだ。

     そして、長いようで短い時間が過ぎた後。
    「確実とはいえませんが、否定する材料はありませんでしょうか?」
     九条・御調(宝石のように煌く奇跡・d20996)が、結晶の見すぎで充血した目をこすりながら口を開いた。
     その顔には、やりきった満足感も浮かんでいる。
     ロベリア・エカルラート(御伽噺の囚人・d34124)も、
    「問題は、分割された『王』でも、サイキックハーツに至る事ができるかどうかですが、もしそれが出来たとしても、全ての『王』が灼滅されれば、サイキックハーツに至る可能性は無くなる。なら、校長がサイキック・リベレイターを使用する時に言っていた事とも符牒するのかな?」
     と続けた。
     ロベリアを護るため来ていた、アルディマ・アルシャーヴィン(リェーズヴィエ・d22426)も、当然ロベリアの説に賛同する。
    「校長は、敵の首魁さえ倒せばダークネスを全滅させなくても灼滅者の勝利であると示唆していた。
     もし、それが『全ての『王』を倒せばサイキックハーツに至れない』という意味であれば、筋は通るだろう」
     と。
     王は転生するというが、転生したての王など見つけ出して殺し続ければ良いのだ。
     勿論、それを知っていたならば、何故話さなかったのかという不信は残る。
     もっとも、ただの偶然である可能性も否定できないが……。
     更に、
    「だとすると、王を狩る黒牙という存在は……」
     根室・楸(ローリングストーン・d36132)は、黒牙という存在にも言及する。
     その楸の言葉は、パチパチとそろばんを弾いて確率計算を終えた播磨・珠(そろばんマスター・d31328)に引き継がれた。
    「黒牙は、白の王を完全に殺すために作られた存在。もしかしたら、複数に分かれた王を再び一つに戻す為の存在だったのかもしれないわね」
     と。
    「黒牙の特殊な力は、世界の修整力だったのかしら?」
     珠の言葉に、エリザベス・バーロウ(ラヴクラフティアン・d07944)も得心したように頷いた。

     こうして、ダークネス、ガイオウガ、サイキックハーツ、王、黒牙、これらの要素が、灼滅者の智慧により一本の線で結ばれていく……。
     様々な世界の秘密に迫り、ダークネスの根源に迫り、ガイオウガとそしてサイキックハーツの真実に迫った灼滅者達。
     智慧を絞り皆で協力しあい、迫った真実は、たとえ証明する事ができなかったとしても、灼滅者のこれから進む道を照らす光明となるだろう。

    「呵呵呵! 命を対価にしても抑えられぬ欲深な馬鹿ばかり! それのなんと頼もしいことか!」
     最後に、外道院・悲鳴(千紅万紫・d00007)は、決死調査部隊をそう褒め称えた時、垓王牙焔炉が破壊された衝撃が、大地の精髄であるこの場所まで響き渡った。

    「あとは、無事に撤退するのみじゃな。お主たち、準備は良いじゃろうか?」
     悲鳴の問いかけに、是と答えた灼滅者達は、ガイオウガの体内から脱出するために駆け出した。

     もう二度と来る事が叶わない、大地の精髄の結晶を後に残して。

    ●終戦
     大地の精髄へと赴いていた灼滅者達が脱出するのと時を同じくして、垓王牙焔炉を失ったガイオウガの巨体は崩壊していった。
     知識の詰まっていた大地の精髄もガイオウガの体の一部であり、もはや存在しない。
     切り離された『尾』、そしてそれを構成するイフリート達は、いずれ武蔵坂学園に協調するようなガイオウガへと変化するのかもしれないが、それも先の話だろう。

     刻野・渡里(大学生殺人鬼・d02814)と刻野・晶(大学生サウンドソルジャー・d02884)は垓王牙焔炉へ、『尾』であった者達に力を譲渡するよう呼びかけを行っていたが、殲滅の意志に染まった焔炉が、それを認める返答を返すことは無論なかった。
     大地の精髄で得られた情報が確かならば、ガイオウガのエネルギーは、そのままスサノオへと渡ることになるのだろうか。

     闇堕ちした者達は、垓王牙の崩壊に紛れ、いつの間にか姿を消していた。
     そして、死んだ者は還ることはない。
     重傷者161名、死亡者10名、そして闇堕ちした者60名という数字が、その激戦を端的に表している。
     だが、それでも灼滅者達はイフリート王ガイオウガに勝利を収めた。

     サイキック・リベレイターによって復活し、倒した種族の強敵はこれで2体目。
     垓王牙焔炉から得られた情報も合わせ、彼らは何を目指すべきなのか……?
     ひとつの戦いを終えた灼滅者達の前に、新たな選択が広がろうとしていた。


    【ガイオウガ決死戦:重傷者161名、死亡者10名、闇堕ち60名】

    作者:うえむら 重傷:緒方・宗一郎(月影の魔術師・d00117) 椎木・なつみ(ディフェンスに定評のある・d00285) 凪・美咲(蒼の奏剣士・d00366) 伊舟城・征士郎(弓月鬼・d00458) 東雲・凪月(赤より緋い月光蝶・d00566) 久遠・翔(宿命終わりし者・d00621) 瀬宮・律(気まぐれな黒蝶・d00737) 柳・真夜(自覚なき逸般刃・d00798) タージ・マハル(武蔵坂の魔法使い・d00848) 瀬宮・めいこ(微笑む白蝶・d01110) 紅月・チアキ(朱雀は煉獄の空へ・d01147) 白雪・姫乃(影繰の巫女・d01193) 鉄・獅子(一人と一台の機甲部隊・d01244) 龍宮・巫女(鬼狩の龍姫・d01423) 天方・矜人(疾走する魂・d01499) 凶月・所在(優しい殺人鬼・d01633) 橘・芽生(焔心龍・d01871) 一之瀬・暦(電攻刹華・d02063) 枷々・戦(異世界冒険奇譚・d02124) 奥村・都璃(焉曄・d02290) 錵刄・氷霧(氷檻の焔・d02308) 桂・真志(闇底から光望む者・d02361) 近江谷・由衛(貝砂の器・d02564) 梓奥武・風花(雪舞う日の惨劇・d02697) 九凰院・紅(九凰院探偵事務所所長・d02718) ユエファ・レィ(雷鳴翠雨・d02758) 武野・織姫(桃色織女星・d02912) 蓮華・影華(霞影冥刃・d02948) 普・通(正義を探求する凡人・d02987) 杜羽子・殊(嘘つき造花・d03083) ルーシア・ホジスン(低俗霊祓い・d03114) 逢坂・豹(臥豹・d03167) 三島・緒璃子(稚隼・d03321) 神宮時・蒼(大地に咲く旋律・d03337) 沖田・直司(雪兎の福音・d03436) 向陽・英太(春色ひだまり・d03488) 立風・翔(風吹き烏・d03511) 堀瀬・朱那(空色の欠片・d03561) 萩沢・和奏(夢の地図・d03706) 蜂・敬厳(エンジェルフレア・d03965) 敷島・雷歌(炎熱の護剣・d04073) 蓮田・比呂(全ご当地ヒーローの助っ人戦士・d04297) 星野・優輝(戦場を駆ける喫茶店マスター・d04321) 村山・一途(普通の殺人鬼・d04649) 桜田・紋次郎(懶・d04712) 雨井・戦争(詩人デストピア・d04799) 鬼形・千慶(空即是色・d04850) 八代・匡(魔法使い・d04889) 粉塵・爆弾(誇り高き爆発屋・d04964) 計屋・時空(時と大地の守護者・d06513) 葵璃・夢乃(黒の女王・d06943) 龍統・光明(千変万化の九頭龍神・d07159) リリアナ・エイジスタ(オーロラカーテン・d07305) 皆川・綾(闇に抗い始めた者・d07933) アイナー・フライハイト(フェルシュング・d08384) イブ・コンスタンティーヌ(愛執エデン・d08460) 繭山・月子(月桂の魔女・d08603) 柏葉・宗佑(灰葬・d08995) 経津主・屍姫(無常ノ刹鬼・d10025) 九重・木葉(蔓生・d10342) 猪坂・仁恵(贖罪の羊・d10512) 檮木・櫂(緋蝶・d10945) 提橋・千珠(ダルマーニャ・d11268) 八重垣・倭(蒼炎纏フ撲天鵰・d11721) 春日・瑠音(君色・d11971) ギルアート・アークス(極彩の毒猫・d12102) ティート・ヴェルディ(九番目の剣は盾を貫く・d12718) 袖岡・芭子(幽鬼匣・d13443) 綿貫・砌(強く優しいあの人たちのように・d13758) 央・哉生(ビッチ・d13986) 央・灰音(大学生人狼・d14075) 初食・杭(メローオレンジ・d14518) 真神・蝶子(花鳥風月・d14558) 立川・春夜(花に清香月に陰・d14564) 無銘・夜ト(社畜系軍用犬・d14675) 黒井戸・結城(黒の淵から観る者・d14711) 生神・カナキ(クロスクロウス・d15063) 御影・ユキト(幻想語り・d15528) 丹下・小次郎(神算鬼謀のうっかり軍師・d15614) 武蔵野・恋也(アンチェインライダー・d16064) 崇田・來鯉(ニシキゴイキッド・d16213) 熊谷・翔也(星に寄り添う炎片翼・d16435) 綺堂・ライ(狂獣・d16828) 亜寒・まりも(メリメロソレイユ・d16853) 片倉・純也(ソウク・d16862) 棗・螢(黎明の翼・d17067) 狩生・光臣(天樂ヴァリゼ・d17309) 東堂・八千華(チアフルバニー・d17397) 渋谷・百合(きまぐれストレイキャット・d17603) 南谷・春陽(インシグニスブルー・d17714) 葛城・秋人(光望闇想・d18021) 陸井・睦月(自由な蒼い風・d18022) 崇田・悠里(旧日本海軍系ご当地ヒーロー・d18094) 油川・昌(ミスターエレクトロニクス・d18181) 三枝・瑠美(大学生ストリートファイター・d18370) 桐郷・尤史(大学生シャドウハンター・d18402) 東雲・菜々乃(本をください・d18427) リアナ・ディミニ(戦場の炎・d18549) 遠野森・信彦(蒼炎・d18583) チェーロ・リベルタ(星を探し彷徨う唄・d18812) 朧夜・穂風(炎玄の繰り手・d18834) 白・美沙希(右手に破壊を左手に安楽を穿て・d19438) 天草・水面(神魔調伏・d19614) 六道・光琉(中学生デモノイドヒューマン・d20376) ホテルス・アムレティア(斬神騎士・d20988) 成田・樹彦(サウンドソルジャー・d21241) レイラ・サジタリウス(花影の紡ぎ手・d21282) 白石・作楽(櫻帰葬・d21566) 佐見島・允(フライター・d22179) 月草・真守(銀狼・d22476) 庭月野・綾音(辺獄の徒・d22982) 千本桜・飛鳥(奥千本のヒーロー・d23232) 菊月・笙(神さまの愛し子・d23391) 大空・焔戯(蒼焔狼牙・d23444) クリミア・エリクシール(過去無き魔人・d23640) レンツォ・バルトローネ(いつでも愛を・d23725) 日暮・厳鉄(大学生ストリートファイター・d23739) ユリアーネ・ツァールマン(ゴーストロード・d23999) 四刻・悠花(棒術師・d24781) ナターリヤ・アリーニン(夢魅入るクークラ・d24954) 望月・一夜(漆黒戦記ナイトソウル・d25084) 獅子鳳・天摩(幻夜の銃声・d25098) 神之遊・水海(ロミオ・d25147) 仲村渠・華(琉鳴戦姫クールドメール・d25510) 森之宮・瑠流(殄滅アルコル・d25718) 天乃・柯白(仮面もナイフもない・d25821) 祀乃咲・緋月(夜闇を斬り咲く緋の月・d25835) 真風・佳奈美(愛に踊る風・d26601) 久寝・唯世(くすんだ赤・d26619) イサ・フィンブルヴェト(アイスドールナイト・d27082) 雲・丹(まさかのとぅえんてぃふぉー・d27195) 眞仲・千紘(がらくた箱・d27351) 吉武・治衛(陽光は秋霖に降り注ぐ・d27741) 涼峰・隆也(スリーピングウルフ・d27850) ヴァーリ・マニャーキン(本人は崇田愛莉と自称・d27995) 栢山・源治(兵器使い・d28095) 月島・アリッサ(妄想爆発破天荒ガール・d28241) 型破・命(金剛不壊の華・d28675) 山瀬・流畏(暴風・d28748) 双葉・翔也(表情豊かな無表情・d29062) 志水・小鳥(静炎紀行・d29532) 森沢・甲斐(元東国無双の美人・d29651) 影守・討魔(フリーランス転職忍者・d29787) フェイ・ユン(侠華・d29900) 犬童・蘭珠(バカって言うなー・d29977) 鴨川・拓也(修練拳士・d30391) 九重・優太(本の虫・d30450) 千歳・桜(大口ノ真神・d30451) 晶石・音色(水晶細工の姫君・d30770) 戒道・蒼騎(ナノナノ毛狩り隊長・d31356) 四方祇・暁(ファントムテイカー・d31739) 一色・詩(スキャット・d31899) クレンド・シュヴァリエ(サクリファイスシールド・d32295) 四方塚・梔子(特異点の雨・d33353) 天草・日和(深淵明媚を望む・d33461) 鮫島・沙智(高校生殺人鬼・d33681) 近衛・九重(大学生七不思議使い・d33682) 氷室・ゆき(君に幸あれ・d34588) 篠崎・伊織(鬼太鼓・d36261) 日下部・優奈(フロストレヴェナント・d36320) 賽目・茶羅(言葉盛々マン・d36537) 
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    種類:
    公開:2016年10月21日
    難度:難しい
    参加:991人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 153/感動した 13/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 15
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