クレオパトラの真珠

    ●真珠の耳飾り
    「これが問題の、クレオパトラのものじゃないかって噂になってる真珠のイヤリングだよう」
     波織・志歩乃(夢と微睡み小夜啼鳥・d05812)が集まってくれた仲間たちに示したのは、直径3㎝もあろうかという超大粒真珠に、アラブ風の精緻な金細工が施された、ラグジュアリーな耳飾りであった。
    「この宝石博物館の、目玉所蔵品のひとつなんだってさ」
     彼女らがいるのは、山梨県にある宝石の博物館である。件のイヤリングは、真珠の展示室の中でも、最も目立つ位置のガラスケースに収められている。
     仲間のひとりが首を傾げて尋ねる。
    「これって、本当にクレオパトラのなの?」
    「んーん」
     志歩乃はぶんぶんと首を振った。
    「国産真珠だし、作ったデザイナーさんも職人さんも現代の日本人だよう。あんまり見事な真珠と細工だから、クレオパトラのものみたいだね、ってみんなが感心しちゃったっていうだけでー」
     女王クレオパトラがエメラルドと共に、真珠をこよなく愛していた(酢に溶かして美容薬として飲んでいたというほどに)という伝説からイメージされたのだろう……が、志歩乃は困った顔になって。
    「それだけのはずだったんだけどぉ……」

    ●クレオパトラ出現!?
    「なんかその『クレオパトラの真珠の耳飾り』って噂が妙に広まっちゃって、変な方向に発展して、都市伝説化しちゃって」
     都市伝説の広まりと共に、博物館の入場者も微妙に増えたので、それだけなら喜ばしかったのだが。
    「夜な夜なこの展示室にクレオパトラの幽霊が出るようになっちゃったんだって」
     クレオパトラ風のエジプト美女の幽霊が出て、わらわの耳飾りを返せ~、と恨みがましく言いつのるのだという。
    「それだけじゃなく、巡回の警備員さんに迫ったりするようになっちゃって」
     色っぽく迫ってきて、激しく生気を吸い取ってしまうのだという。
    「だからさ、これ以上都市伝説が広まって、幽霊がパワーアップする前に、退治しちゃった方がいいと思うんだよう」
     クレオパトラの幽霊の出現時間は深夜0時。博物館の夜間見学は既に申し込んである。ガイドに学芸員1名がつくが、件の展示室まで来たら、何らかのESPを使って退避してもらえばいいだろう。あとは展示室に潜んで、美女の幽霊が現れるのを待とう。
    「あとね、この話の広まり方とか発展の仕方を追っかけてて、思ったんだけどぉ……」
     志歩乃が不安そうに眉を顰め。
    「もしかしたらこの都市伝説、タタリガミが仕掛けたものかもしれないなあって」
     確かに広まり方と発展の方向に、何者かの作為を感じる。
    「だとすると、戦闘中にタタリガミ本体が現れるかもしれないんだよねぇ……」
     とはいえ、都市伝説+ダークネスと同時に戦うのは厳しいし、タタリガミは武蔵坂が関わっていると知れば、幽霊に後を任せて逃げ出す可能性が高いので、灼滅は難しいだろう。
    「……ま、何にしろ美女の幽霊に会えるのはちょっと楽しみだし、頑張ろうねっ!」


    参加者
    水瀬・瑞樹(マリクの娘・d02532)
    皇・銀静(陰月・d03673)
    波織・志歩乃(繊月に揺蕩う声・d05812)
    灰色・ウサギ(グレイバック・d20519)
    押出・ハリマ(気は優しくて力持ち・d31336)
    卯月・愛奈(流すべき血はまるで・d35316)
    禰宜・汐音(小学生エクソシスト・d37029)
    神華憑・無音誓(厄夜の千両役者・d37160)

    ■リプレイ

    ●真珠の部屋
    「こちらが真珠の展示室です」
     おお……。
     8名の灼滅者たちは感嘆の溜息をもらした。
     柔らかな間接照明に浮かぶ、無数の真珠。ここまでに煌びやかに輝く様々な宝石を見てきた彼らの目には、その柔らかで控えめな光沢はむしろ新鮮である。
    「まるで映画みたいですねー、夜の真珠って、なんだか神秘的ー。昼とはまた違う顔ですー。あ、ここにクレオパトラのだっていう噂の耳飾りがあるんですよね?」
     波織・志歩乃(繊月に揺蕩う声・d05812)が訊くと、学芸員はフッと鼻で笑い、
    「噂は噂ですよ……ああ、何か怪談めいた話になってるようですね。まあ警備員さんとはいえ、変な噂に臆病風に吹かれることもあるんじゃないですか?」
     学芸員は都市伝説を鼻にもひっかけてないようだが……その彼が、急にそわそわしだした。先ほどからこっそりと、皇・銀静(陰月・d03673)がESP殺界形成を、灰色・ウサギ(グレイバック・d20519)がパニックテレパスを発動していたのだ。
    「あ、あの、見学途中ですみませんが、急に用事を思い出しまして」
     この場を離れたくて仕方ない様子である。
     志歩乃がいかにも、安心してください、という笑みを浮かべて。
    「展示物に注意して見ますから、だいじょーぶ、ですよっ」
     その言葉を聞いて、学芸員はそそくさ展示室を出ていった。これで彼はしばらく戻ってこないだろうし、警備員も近づいてこないだろう。
     8名は部屋中央の独立した展示ケースに近づいていった。
    「これがそのイヤリングかー」
     これだけ大きい真円の真珠がそもそも珍しい上に、それが2粒揃っているというのが更に貴重である。
    「確かにすごい真珠だし、細工もすばらしいね! なるほどクレオパトラっぽいよ」
     水瀬・瑞樹(マリクの娘・d02532)はガラスに額をくっつけて、若干鼻息荒く怪しく光る真珠に見入った。鉱石部員で歴女なのでこういうのは大好物だ。
    「クレオパトラ……最後のファラオとして、美女として有名ですね。なにより……すばらしい逸話のあるお方です」
     おっとりと禰宜・汐音(小学生エクソシスト・d37029)が応えた。彼女はクレオパトラについて銀静と共に調査してきた。その銀静も、
    「怨み……クレオパトラの伝説を考えると……何か違いますよね。まして此処は博物館…それならクレオパトラの正式な伝承を知っている者も大勢いたことでしょうに」
    「世界三代美女っぽい幽霊が出てくる都市伝説ってなんかもう、なんというか……何でもありというかー」
     押出・ハリマ(気は優しくて力持ち・d31336)は半ば呆れているようだが、ハッと瞬きして、
    「本物のクレオパトラって、実はダークネスだったり!?」
     歴史の転換点に関わった偉人が、実はダークネスだったという例は多々あるようなので、あり得なくはない。
    「うわあ、歴史への風評被害を広めないためにも頑張らないと!」
     うん、と卯月・愛奈(流すべき血はまるで・d35316)は眉を顰めて頷いた。
    「クレオパトラ風幽霊も、作ったタタリガミも、揃ってめんどくさい性質だと思うのよ。サクっと片づけてしまいましょう」
     皆も頷き返し、耳飾りを遠巻きにするように下がり、身を潜めた。
     あとは都市伝説の出現を待つばかり……だが。
    「うーー」
     ウサギが展示棚の間に潜り込みながら呻く。
    「ウサギちゃん幽霊苦手なんだよねえ……いやまあ都市伝説なんだけどさあ……とりま頑張るしかないけどぉ……」
     神華憑・無音誓(厄夜の千両役者・d37160)も、隅の暗がりに震えながら縮こまり、
    「真夜中は慣れっこ……真夜中は慣れっこ……」
     自分に言い聞かせている。 
     あとは誰かが小声で呟く声と、身じろぎする音だけが時折微かに聞こえるだけで、しばしの時が経ち……それは、声から現れた。
     ――わらわの……わらわの、耳飾りを返せ……。
     
    ●美女、だけど幽霊
    「うおお……褐色の肌で、いかにもエジブト美人……! でもいかにも幽霊ってカンジっすねえ」
     怨みがましい声の後、耳飾りから沸き出るように姿を現した都市伝説の姿に、つい率直な感想を漏らしてしまったのはハリマである。
     幽霊は、褐色の肌に黒髪オカッパ、オリエンタルなメイクに、宝石やビーズのキラキラアクセサリーをごってり着け、頭には黄金の蛇の冠を載せている。
     なるほどいかにもクレオパトラっぽい……が、そこは幽霊、宙に浮かんでいるのはもちろん、明らかに透けているし目はうつろ、足もなんだかぼんやりと……。
    「わー、いかにも話通じなさそー」
     瑞樹は、都市伝説の幽霊っぷりにがっかりだ。歴史好きの彼女としては、クレオパトラご本人なら聞きたいことは山ほどあるのだが、所詮は外つ国での都市伝説、
    「まあね、私のクレオパトラ像は気高き女王様だしね。恨みとか言うような気がしないっていうか、うん」
     本物のクレオパトラの魂に会える期待はしていなかった……それほど。
     いざ都市伝説を目の当たりにしてみると話が通じる気が全然しないのは、仲間達も同様だった。だが、せっかく説得すべくネタを仕込んできているのだからと、
    「さっすがクレオパトラ7世! 教科書の印象より全然綺麗だな~。ウチはカワイイ男の娘だけど、なんかもう全然敵わないって感じ?」
     まずはウサギがビビリを堪え煽ててみる。
    「うん、すっごく綺麗だと思うの」
    「この展示室で最も目を引く綺麗な真珠を身に纏ってたんっすもんね……正にファラオ!」
     愛奈もハリマもすかさずヨイショし、クレオパトラは猫好きだったらしいので、猫変身した無音誓も一生懸命みゃーみゃー鳴いてみるが。
    『わらわの……わらわの耳飾り……』
     聞いちゃいねえ。
    「こ、これはどうっ!?」
     志歩乃がどさっと沢山の本を取り出した。クレオパトラが教養深い女性だったという逸話に合わせたのだ。
    「この国にしかない本さ用意したから、どうか手を引いてくれませんかー! 学問やまじないの本で揃えました、いかがですかっ?」
     しかし幽霊は相変わらず、
    『みみ……耳飾り……』
     ああん重かったのにぃ、とガックリの志歩乃。
     所詮エネルギー体である都市伝説と意志を通じ合わせようとするのは無理なのか……と諦めかけたが、やるだけやろう、と銀静と汐音が進み出た。
    「貴方は一夜の食事で1千万セステルティウスを費やす事はできますか?」
     問いかける銀静が手を伸ばすと、汐音が素早く洋杯を手渡した。
    「貴女はエジプトとローマの繁栄を願った誇り高き女王。真珠もまたそれらの駆け引きの道具に過ぎないのでしょう?」 
     銀静が杯を恭しく美女に差し出す……と。
     ビシッ!
     金属の杯が邪険に叩き落とされた。こぼれた液体が床に広がり、酸っぱい匂いがたちこめる。クレオパトラがシーザーとの宴での駆け引きで、高価な真珠を酢に溶かして飲んでみせたという逸話にちなんで用意していたのだ(実は食用酢の酸性度では真珠はなかなか溶けないらしいが)。
     心づくしの杯を叩き落としたのは、美女の手にある蛇剣であった。額の蛇冠が武器へと化したようだ。
    『邪魔するでない……わらわは耳飾りを取り返す……』
     相変わらずの都市伝説の姿に、灼滅者達は戦闘を決意する。都市伝説、しかも幽霊ときたら、話が通じないのは致し方ない。
     敵の武器を観察しながら、汐音はまたひとつの逸話を思い出していた。
    「クレオパトラは蛇で命を絶ったといいますね。故に彼女にとってはそれは死の象徴、でしょうか……」
     
    ●美女の武器
     装備を整えながら包囲していく灼滅者達の様子に、敵も殺気を感じたか、最前線にいる廻し姿のハリマを濃い色で隈取られた瞳でギッと睨みつけた。
    「……え、えっ、ボクになにか?」
     ――カッ!
    「うわっ!」
     絶世の美女に見つめられ一瞬どぎまぎしてしまった青少年は、怪光線に撃ち倒された。 
    「こ……これがファラオの呪い……!」
     その様子に銀静は、
    「背中を預けます。フォローしなさい」
    「!……はい!」
     背を向けたまま汐音に一声かけると、2人息を合わせてレイザースラストを放った。
     その間に、
    「イグニッション!」
     瑞樹はタタリガミの出現も鑑み、防護符を懐にして自らの防御を高め、
    「荒れる風は、灰色さ! ランクマ、いくよ!」
     ウサギも愛犬に牽制させながら、蝋燭を掲げ黒い炎から黒煙を巻き上げて前衛を包み込み、志歩乃は後衛に蝋燭を掲げる。美女の目力にやられたハリマは、愛犬の円が目を光らせながら助け起こした。
     愛奈は電光石火の抜刀で斬りつけ、立ち直ったハリマは雷を宿した掌で美女の細い顎に喉輪を見舞う。無音誓が銀色の爪を光らせてとびかかり……。
     爪の一撃を美女はふわりと避け、
    「……くるっす!」
     ビシッ!
     前衛を鞭のように蛇剣が薙いだ。
     ハリマはなんとか銀静の前に体を入れたが、他の前衛は金色の蛇に切り裂かれてしまった。
     こちらの攻撃もしっかり都市伝説に届いているが、敵の攻撃力もあなどれない。
    「なかなかやりますね」
     守られた銀静は素早く盾となった仲間の前に出ると、汐音の神薙刃に援護されながら魔槍を捻り込んだ。ハリマには瑞樹が防護符を投じ、ウサギが再び前衛へと怪奇煙をたちこめさせる。志歩乃が予言者の瞳を発動して精度を高めている間に、
    「ありがとうっす!」
     ハリマは鋼鉄の拳を握って立ち上がり、無音誓はオーラを宿した拳の連打を見舞う。
     たゆまず続けられる攻撃に、幽霊の存在感が幾分薄らいできたように見える。
     だが幽霊は、愛奈の炎の蹴りをするりと躱すと、銀静に急速接近し。
     ぶっちゅー。
    「!!?」
     逃げる暇もなく、熱烈な接吻を見舞った。
    「に、兄様……っ!」
     汐音大ショック。
     銀静はもがくが、幽霊は馬鹿力らしく逃げられない。精気を吸い取られ、顔色がみるみる悪くなっていく……!
     ついディープキスに見入っていた仲間達がハッと武器を構え、一斉に敵に飛びかかろうとした、その時。
    『――ああっ、もしかして灼滅者が来ちゃってんの!?』

    ●タタリガミ
     聞き覚えのない声に振り返ると、入り口から一人の女性が焦って入室してくるところだった。
     年はアラサーくらい、ほつれ気味のポニーテールに、廉価品ぽい上下のスウェットとフリースジャケット、手には分厚い原稿用紙の束と、レトロな万年筆。顔色は悪く、肌はカサカサ、メガネの奥の目は充血しており、全体的に徹夜明けのようなくたびれっぷりだ。
    「誰……この女性がタタリガミなの?」
    「博物館の関係者、ってことはないっすよねえ」
    「少なくとも、何らかの物書きでしょう」
     灼滅者たちは(やっとキスから解放された銀静含め)女性を観察しながら囁きあうが、本人は一直線に、影が薄くなった美女の幽霊に歩み寄ると、
    『何かおかしいと思って来てみたら……んもう、クレオパトラの耳飾りの真贋を巡る、ホラーでロアールなロマンスに育てるつもりだったのに!』
    「うあ、浅っ」
     瑞樹が思わずツッコむ。前に会ったタタリガミだといいなと思っていたのだが、
    「やっぱ違ったな。今回の物語は、あの人にしちゃ薄っぺらいもんなあ」
     どうやら今回の伝説を仕込んだタタリガミはロマンス系の女流作家らしい。見るからにキャリアも物語も浅そうだが。
    「ま、この人の評価はとりあえずおいとくとして……」
     なにはともあれ、せっかくタタリガミの出現まで引っ張れたのだからと、志歩乃がこっそりと蝋燭を灯し、タタリガミに向けて炎の花を飛ばしてみる。
    『あちっ、なにすんのよ!』
     炎の花に取り巻かれ、悲鳴を上げたタタリガミ……すると女流作家の前に、スッと幽霊がガードに入り、
    「あっ、しまった!」
     続いて踏み込もうとしていたハリマの拳は、幽霊に遮られてしまった。
    『お返しよ! 聞いてた通りだわ、ホント灼滅者ってムカツク!』
     幽霊の後ろで、女流作家が2つ折りにしていた原稿用紙を開いた。
     ブワッ!
    「ああっ!」
     激しい炎が迸り、前衛を舐める。
     メディックたちが即座に癒しの風を吹かせて消し止めたが、やはりタタリガミ本体の攻撃力は凄まじい。
     だが、せっかくのチャンス、怯んでいる暇はない。愛奈は奇譚を唱えて猿夢列車を出現させた。
     ――次は終点、首切り駅です。
     2両の電車の間に張られたワイヤーが通り過ぎ、更に怪談に紛れるように接近した無音誓がチェンソー剣で斬りつける。
    『いったあ……』
     連続攻撃はタタリガミまで届いたが、だが作家は大したダメージを受けた様子もなく、
    『あーあ、もういっかぁ、こんなボロボロの治すの大変だもん……でもせめて最後に、あたしを楽に逃がしなさい』
     呟くと口の中で何か呪文のようなものを唱えだした。
     くるか!? 
     と灼滅者たちは身構えたが、
     カッ!
    「!!?」
     炸裂した光は彼らにダメージを与えることはなく――しかしあまりの目映さに目を逸らしてしまったその一瞬。
    『見てらっしゃい、次はアンタたちが手出しできないくらいの、大ヒット作に育ててみせるから!』
     そんな捨て台詞が聞こえたが、視界が戻った時にはタタリガミの姿は既になかった。
    「待て、お化けを作り出す奴は許さん! 死ね!!」
     無音誓が部屋の外まで追いかけていこうとしたが、
     ビシィ!
    「うっ」
     遮ったのは金色の蛇剣。
     見れば、タタリガミを散々庇ってボロボロになっていた都市伝説が、多少ではあるが復活しているではないか。閃光はヒールサイキックだったようだ。
     逃げたものは仕方ない、と気を取り直して美女の幽霊を包囲し直す。とりあえず直接人々に危害を加える都市伝説は、確実に灼滅しなければ!
     回復を受けたとはいえ、幽霊のエナジーはもう幾ばくもない。灼滅者たちは気合いの入った連続攻撃を繰り出していく。
     蛇剣をガンナイフの刃で振り払った志歩乃が、魔法弾を撃ち込んで牽制し、その勢いのまま刃を振るう。続いて無音誓が、
    「都市伝説に恨みは無いが!」
     怒りをぶつけるかのように猛烈な鬼神変をぶちかますと、
    「ランクマ、円、頼むよ!」
     メディックの2人も霊犬たちに回復を任せ、攻撃に加わる。瑞樹が2本の影の鎖で縛り付けたところに、
    「ウサギの拳を受けてみろッ!」
     鬼の拳が炸裂する。ハリマが炎の蹴りで続き、愛奈が余裕を見せつけるように、板チョコをかじりながら愛刀で一閃した。
     苦し紛れのように振り回された蛇剣を躱して、汐音の影の刃が鋭く突き刺さり、そして。
    「終わりです」
     銀静が魔剣を渾身の力を込めて振り下ろし。
     ゆらり、とホログラムのように美女の姿が歪み……静かに伝説は消えていった。

     ふう。
     誰からともなく溜息が漏れる。
     今夜の目的は立派に果たした。だが、灼滅者たちの視線はつい、タタリガミが去った方向を追ってしまう。
     幾ばくかの悔しさは残る。けれど、タタリガミを引っ張り出して特定できたのだから、様々な工夫は無駄ではなかったと言えるだろう。
     今夜の遭遇を足がかりに、いずれ、必ず……。

    作者:小鳥遊ちどり 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2017年1月13日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
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