巨大スサノオ体内戦~信州名物のアレを追え!

    ●スサノオホレホレ
     そこは、白い炎で満たされ、哀しげな慟哭の響く空間だった。
    『そうれ佃煮ビームっ』
    『おいらは唐揚げキックだ!』
    『甘露煮ダイナミックゥゥゥ!』
     その白い炎を、5体の人間大の虫っぽいご当地怪人たちが、サイキック攻撃でせっせと掘り進んでいる。
     5体の内訳は、ボスらしい一段と大きな信州ハチノコ怪人1体と、信州ザザムシ怪人2体、信州イナゴ怪人2体の仲良し食虫怪人たちである。
     彼らの見た目は、虫をモティーフにした特撮ヒーローを、かなりダサく且つグロくしたカンジとでも言おうか。
    『さあ、せっせと掘れよ! スサノオ大神の力を奪取するのは俺たちだ!』
    『おう、他の勢力に力を獲られてたまるかい』
    『この力を手に入れれば、おいらたちのビジュアルによる食わず嫌いも、きっと克服させることができるようになって』
    『そして世界征服がぐっと近づくというわけだな!』
     そこで5体は作業の手を止めると、ぐっと拳を握って天を突き。
    『『全てはグローバルジャスティス様のために!』』
     見事に声を揃えたのであった。

    ●武蔵坂学園
    「群馬密林の戦いでナミダ姫を灼滅した事で、スサノオ大神の力が暴走してしまっているようです」
     集った灼滅者たちに、春祭・典(大学生エクスブレイン・dn0058)は語り始めた。
    「その暴走した力から、群馬密林に15体の巨大スサノオが出現してしまいました」
     巨大スサノオは全長100m近い巨体だが、悲しそうに慟哭するだけで、その場から移動する事も攻撃する事もない。
     このまま放置しても数か月後には消滅すると思われるが、問題は、このスサノオの力を奪うために、諸々のダークネス達が動き出していることだ。
    「ダークネス達は巨大スサノオの体内に侵入し、その中枢を破壊して力を奪おうとしています。皆さんには、ヤツらが掘り進んだ経路から巨大スサノオ内部に侵入、侵入した敵を撃破した後、その中枢を破壊して、巨大スサノオの力を他のダークネスが使用できないようにして欲しいのです」
     ダークネスが何故わざわざ体内を掘り進んで力の元を目指しているのかというと、外から完全破壊してしまうと、手に入れるべき『スサノオ大神の力』も失われてしまうからなのである。最小限のダメージで中枢を破壊して、力を手に入れる必要があるのだ。
     また、灼滅者も何故体内に入って戦わなければならないかというと、外から撃破するには巨大すぎて時間が掛かり過ぎ、その間に、スサノオの力を潜入中のダークネスに奪われてしまうからである。
    「このチームに追ってもらうのは……」
     と、典がちらりと視線を投げかけると、うっそりとひとりの少女が立ち上がって一礼し。
    「……追っていただくのは、私が先頃から注目していたご当地怪人なんですが」
     代わって淡々と、しかし幾分申し訳なさそうに語りだしたのは、黒乃・璃羽(ただそこに在る影・d03447)。
     なぜ申し訳なさそうかというと。
    「信州ハチノコ、ザザムシ、イナゴ怪人の食虫5人組なのです」
     灼滅者たちは怪人のビジュアルを想像し、思わず、ううゎ~~と唸った。
    「虫怪人達は、道を切り開きつつ体内を進んでいるので、後を追う事は難しくないです。反面、当然敵にも気づかれ易く、奇襲などは行えないので、正面から戦う事になるとは思われますが」
     そこでまた典にバトンが返され、
    「今回は、スサノオの体内という特殊なフィールドの影響があって、戦闘中3回まで、敵ボスにスサノオの力が流れ込むことがあるようなんですね。力を得ると、ボスは一時的に回復力や攻撃力が強化されると見られます」
     この点も注意して戦った方がいいだろう。
    「先の全体作戦でナミダ灼滅に至ったことは、予想外の大戦果でした……しかし」
     と典は腕組みして。
    「スサノオの力を他勢力に奪われてしまえば、この勝利に水を差してしまうことになってしまいます。何とかダークネスを排除し、スサノオの力を安らかに地に返してやれるよう……どうか、よろしくお願いします」


    参加者
    ギィ・ラフィット(カラブラン・d01039)
    華宮・紅緋(クリムゾンハートビート・d01389)
    灯屋・フォルケ(Hound unnötige・d02085)
    黒乃・璃羽(ただそこに在る影・d03447)
    淳・周(赤き暴風・d05550)
    レオン・ヴァーミリオン(鉛の亡霊・d24267)
    師走崎・徒(流星ランナー・d25006)
    坂崎・ミサ(食事大好きエクソシスト・d37217)

    ■リプレイ


    「ふうん、スサノオ大神も、随分と大人しくなったものっす。ナミダ姫を失ったからっすかね」
     ギィ・ラフィット(カラブラン・d01039)は悲しげに咆哮する巨大な白狼……スサノオ大神の力の一部を見上げた。
    「スサノオの置き土産だね」
     師走崎・徒(流星ランナー・d25006)もしみじみと。
    「どの勢力にも持ち帰らせるわけにはいかないよな。学園で待ってる尻尾のためにも、こいつは大地に帰す!」
    「ええ、朽ちたるものは大地に還るのが世界の普遍的な有り様。ダークネスに邪魔はさせないっす」
     ギィは無敵斬艦刀を現し、
    「さあ、急いで連中の後を追いやしょう」
     ご当地怪人が掘ったとおぼしき痛々しげな穴を指し示したが。
    「先に謝っておきます……っ」
     そこにいきなり、ズザザザーと黒乃・璃羽(ただそこに在る影・d03447)が土下座で突っ込んできた。
    「ビジュアル的に受け入れ難い怪人を見つけてしまって済みません。キモくても耐えて下さい」
     あはっ、と笑い飛ばしたのはレオン・ヴァーミリオン(鉛の亡霊・d24267)。
    「平気平気、オレ、もっとキモいヤツらと戦ったことあると思うしー」
    「そうですよー」
     坂崎・ミサ(食事大好きエクソシスト・d37217)も笑顔で、無表情のまま恐縮する仲間の腕を引っ張って立ち上がらせた。
    「ご当地怪人の忠誠心は、相変わらず見上げたものですが、お土産を持って帰られるわけにはいきませんからね」
     灯屋・フォルケ(Hound unnötige・d02085)も苦笑し、華宮・紅緋(クリムゾンハートビート・d01389)は生真面目に、
    「怪人の活動で地域が元気になるのはいいんですけど、相変わらずやり方が問題ですね」
    「ヤツら、ここんとこ大地の力掠め取ってばかりだし、許しちゃおけねえな!」
     淳・周(赤き暴風・d05550)はテンション高く。
    「スサノオに終焉ぶち込むついでに、甘い作戦もぶち壊してやろう!」
     仲間たちは力強く頷き……今度こそ白い炎を抉った穴へと駆け込んでいく。
     いかにも突貫工事で掘られた様子のトンネルは、延々と白い炎が続くのみ。確かに、このパワーをダークネスに奪われるのは拙いと先を急ぐ……と。
    「……Contact」
     先頭のフォルケが仲間に沈黙を促した。小脇にはキルフラッシュフィルタ付きのスコープ銃を抱えている。
     言われて耳を澄ますと、炎に煙る穴の先の方から激しい破壊音が聞こえてきた。


     灼滅者達は極力物音を立てずに侵入したつもりだが、怪人の姿が視認できる頃には、敵にも彼らの存在は気づかれていて。
    『何者だ!?』
     虫怪人達もこちらを注視している。
     だが、気づかれることは想定内。まずは掘削作業を止めようと、誰何の叫びを遮るように、
    「そこのキモい容姿の集団、止まりなさい」
    「虫けらが一人前に力を手に入れようなんて、根本から間違ってるっすよ」
     璃羽とギィが挑発で気を引き、
    『何だと?』
    『さては灼滅者だな!? また邪魔をする気か?』
     そこに、さらに紅緋がと周が、
    「その通り、私たちは武蔵坂の灼滅者です」
    「正義のヒーロー参上だ!」
    「スサノオの力に手を出すのはやめていただけませんか? ここで引き返すなら、見逃しても構わないと思っています。あくまで拒絶するなら、どちらの力が上かで決めないといけません。覚悟はいいですか?」
     派手な宣戦布告に、虫達は。
    『ハッ、どちらが上かなんて、決まってる!』
    『このスサノオはおいら達が頂くと決めたんだ、渡すもんか!』
     虫顔を紅潮させ、武器を構える灼滅者たちと対峙し。
    『野郎共、一気にやっつけちまえ!』
     ボスのハチノコ怪人の掛け声一下、戦端を切った。
     まずは後方にいる2体のイナゴ怪人から、
    『佃煮ビーム!』
     ビームが前衛へと浴びせかけられたが、
    「やらせねぇよ!」
     思い切って飛び出した周が2発とも受けてくれ、灼滅者達は打ち合わせ通りに、ディフェンダーであるザザムシ怪人へ狙いを定めた。
     すでに脇から忍び寄っていたレオンが、
    「こっちからにするね!」
     最前列右側に陣取るザザムシの脚に、いきなり刃を突き立てた。
    『ぎゃっ』
     不意打ちに飛び上がったザザムシに、すかさずギィが斬艦刀に乗せた炎を叩き込む。続けてフォルケが、ヒーロースーツっぽくはしているが、それでも十分キモい表皮を大ぶりのナイフで切り裂いた。3種の中ではザザムシが最も堅い表皮を持っているようだが、それでもザックリと傷が開く。
     ミサの素早いラビリンスアーマーで癒された周が、拳に乗せた炎で畳みかけると、
    『こいつっ』
     もう1匹のザザムシ怪人が周につかみかかろうとしたが、そこにミサのビハインド、坂崎・リョウが割り込み、顔を晒しながら盾となる。グッジョブであるが、残念ながらミサには彼が認識できない。
     子分達の攻撃が、灼滅者のコンビネーションに阻まれ機能しないのを見て、ボスのハチノコ怪人も動き出す。
    『しっかりせい!』
     次の手を打つべく、タイミングを計ってザザムシに接近していたギィを狙い、
    『スズメバチキーック!』
     キックを見舞おうとしたが、
     ガキッ。
     それを体を張って止めたのは徒であった。
    「あんたの相手は僕らがするよ……別に食虫が嫌いなわけじゃないんだよね。子供の頃は昆虫好きだったし。だから、遠慮なく食らわせてもらうよ!」
     堂々と宣言する間にも、
    「華宮・紅緋、これより灼滅を開始します」
     紅緋が指輪から闇の力を注ぎこんで回復を行う。
     璃羽がじとっと半目でハチノコを眺め回し、
    「言っておきますがスサノオの力で貴方達のキモさは無くなりませんよ。もし無くなったなら、それは克服ではなく異能による只の洗脳です。見た目を何とかしようとか無駄な努力は諦めて下さい。食品なら見た目より味で勝負しなさい」
    『うううううるさい! 力こそ正義だ、強くなればビジュアルなど何とでもなるわ!』
     ムキになって言い返したハチノコの隙を逃さず。
     ジャキン!
     徒と璃羽の断斬鋏が、ハチノコのぶよんとした白い体に深い切り込みを入れた。


     戦闘開始から7、8分ほど経った頃。
     どっかあああん。
    「……・Tango down!」
     フォルケの影が2匹目のザザムシを縛り潰し、爆散させた。
    『くそっ!』
     次のターゲットは、護ってくれる者のなくなったイナゴ怪人2匹である。
    『田んぼひとっとびキーック!』
    「くっ……!」
     ギィが、バッタの強力なキックを、咄嗟に振り回した斬艦刀で何とか相殺している間に、
    「お前ら、上手く中枢を砕いて力だけ手に入れるとか、そんな器用なこと出来んのか? ミスって大惨事とか、ご当地怪人的なうっかりを、いかにもやらかしそうだよなぁ?」
     周が挑発を続けつつ、影の刃を放つ。
     挑発を続けているのには訳があり……周はちらりと、ボス・ハチノコを引きつけ続けている3人の仲間たちの方を見た。
     作戦通りの順番で敵を減らすことはできている。だが、少し時間がかかりすぎているような……。計画では、こちらの4体をさっさと倒し、なるべく早くボスに総攻撃をかけられるようにするはずだったのだが。
     3人でかかっているために、ボスもそこそこ弱ってきているようではある。だが、ボスは体力もあり、攻撃も強力で、ディフェンダー2人の消耗も相当なものになっているはず。
    「少なくとも、イナゴの攻撃をあちらに向けさせちゃあ……うわっ、いわんこっちゃねぇ!」
     周が声を上げる暇もなく、
    『ハチノコ親分、加勢に行きますぜ!』
     ターゲットにされていない方のイナゴがぴょーんと大ジャンプして、紅緋にキックを見舞おうと……!
     ガシッ。
     それを防いだのは、またしてもリョウであった。すかさずレオンが槍から氷弾を撃ち込んで、イナゴを凍り付かせる。
    「とにかくこいつをやっちまわないとっすよ!」
     ギィも現状に焦りを感じつつ、めらめらと黒いオーラを宿した斬艦刀で、自己回復しようとしていた現ターゲットのイナゴに斬りつけ、
    「あちらは抑えておきます」
     フォルケは非ターゲットイナゴを、バスタービームで制圧する。
     ターゲットの方にはリョウが霊撃を発射し、レオンがチェンソー剣を勢いよく突き出して、傷口を広げた。
    『ぎゃあ!』
    『おい、オレが引きつけている間に回復しろ!』
     瀕死の仲間を護ろうと、もう1匹がビームを放ってくるが、
    「怒りとか、自分にゃ関係ないっすよ!」
     ギィは光線を浴びつつも、斬艦刀を怒りと力の限りに振り下ろした。
     どっかああああん。
     イナゴの片割れをも爆散させたその瞬間。
     ドガッ!
    「!?」
     剣呑な落下音に思わず振り向くと。
    「璃羽!?」
     璃羽が床に首をめり込ませるような珍妙な姿勢で倒れていた。ハチノコ怪人に投げ落とされたのだ。
     そして、
    『おおう、これがスサノオのパワーか!』
     ハチノコが大喜びしている。
     予知されていたスサノオ大神のパワー照射1回目が、ここで発動されてしまったらしい。その力をくらってしまった璃羽は目を回してしまっている。ディフェンダーがこれほどのダメージを受けるとは、ぞっとするほどの威力である。
     紅緋が指輪をかざして回復しようとしたが、
    「待ってください、私が」
     ミサが駆け寄る。
    「手当は私がしますので、紅緋さんは残るイナゴに攻撃を」
     紅緋が頷いて、2人は素早く入れ替わった……が、そこを狙ったイナゴのビームがミサを狙う。
    「させないよ!」
     庇ったのは徒。彼もここまで何度もボスの攻撃を受けており、決してダメージは少なくないのだが、大事なメディックを傷つけさせるわけにはいかない。
     回復を施され、璃羽が目を覚ましたのを確認すると、
    「さぁ、一気にいっちゃおうよ!」
     レオンが次のターゲット、イナゴを凄みのある笑顔でにらみつけると、
    「Ja!」
     フォルケが歯切れよく応じ、ナイフを握って躍り掛かる。ギィは頭上に黒く燃える逆十字を出現させ、紅緋も指輪からの弾丸でバッタの機敏な動きを妨げる。周は怪人に負けじと光り輝くビームを撃ち込んで、リョウが毒の波動をそそぎ込むと、明らかにイナゴはその緑の体を更に青ざめさせている。
    「……ゲテモノは美味しいって相場は決まってるだけど見た目の問題はしょうがないわなぁ。って訳で苦労はお察しするが、こいつをくれてやるわけにはいかん……いただきっ!」
     そこにレオンが嬉々として射出した鋼の帯は、ザクザクとイナゴ怪人の全身に突き刺さり。
     どっかあああん。
     これで子分は全て排除したことになる。さあ、残るはボスばかり! と振り返ると。
    『よ、よ、よくも、かわいい子分共をー!』
     どっすん。
     今度は徒がハチノコに投げられた。パワーアップされたダイナミックほどではないが、それでも怒りにかられた投げは強力で、慌ててミサが回復に当たる。
     これ以上、パワーアップした攻撃を集中されてはならぬと、5人と1体は急いでボス戦線へと加わっていく。
    「さあ、行くっすよ!」
     ギィが黒い炎を纏った大刀を振り上げてつっこんだのを皮切りに、灼滅者たちは総攻撃に出る。
     抑え役達の頑張りにより、ボスも大分ダメージを受けているし、バッドステータスも蓄積している。しかし、スサノオの力によるパワーアップはあと2回残っているので油断は禁物だ。
     と、言っている間にも。
    『お……おおお、体に力が漲ってくるぞ……!』
     回復サイキックを発動した様子もないのに、ハチノコ怪人の全身の傷がみるみる癒えていく。
    「これもスサノオの力ですか……いけませんね」
     フォルケは素早くスコープを覗き、
    「抑えます!」
     射撃で牽制する。この機を逃さず、璃羽と徒はリミットが近い体力を少しでも補うべく、鋏から怪人のエナジーを吸収する。周は炎を纏った拳でぶんなぐり、レオンは足下に滑り込んで、深々と刃を突き立てる。紅緋は突き出した掌から漆黒の毒弾を撃ち込み、
    「名物を広めようという努力は買いますが、もうちょっとよその人にも受け入れやすいようには出来ないでしょうか? 虫の形がなくなるまですり潰して、ペースト状にするとか」
    「んー確かに」
     ギィが頷いて。
    「フレンチの場合、食材の元の姿が分からなくなるまで潰した上で、ソースで仕上げるのが基本っすからねぇ」
     刀でハチノコをぐりぐりする……と。
    『言わせておけばっ』
     ハチノコ怪人の全身が光を帯び、一回り膨れ上がった……これは、もしやまたパワーアップ!?
    『虫は古来からの栄養食、健康食なんじゃ! 先人の知恵をなんと心得るかーーーー!』
     叫びとともに放たれたビームは目を覆うほど目映く、後方で献身的に回復を続けているミサを狙う……!
     ビシッ。
     しかしそれを、彼女のビハインドが止め……そして消えた。
    「!!」
     ここまで幾度もいい仕事をしてきたリョウであったが、限界だったようだ。
    「……?」
     当のミサはビームが遮られ不思議そうな顔をしているが、仲間たちは敢えて指摘せずに次の攻めに出る。
     今のが3度目。ということは、もうパワーアップに怯える必要はないのだ。ここは一気に勝負に出るしかない!
     緋色を帯びた影が延び、怪人をギリギリと縛り上げた。紅緋の影縛りだ。同時にギィが逆十字を頭上に出現させ、背後に回り込んだフォルケが、ナイフを走らせて傷口を容赦なく開く。周の影はヒーロースーツを縦横無尽に切り裂き、レオンの氷弾が怪人の残り少ない体力をさらに奪う。ここは勝負所と、ミサも十字架からの砲弾で氷を畳みかけると、徒と璃羽が、最後の力を振り絞って飛びかかり……!
     ジャキン!
     左右から鋏の刃を勢いよく閉じた。
    『グガ……』
     ハチノコ怪人の胴体がまっぷたつに切断され、そこからドロッとキモい黄色の汁が垂れてきて。
    「……う」
     灼滅者達が思わず引いた、その時。
     どっかああああん!
     ひときわ大きな爆発音が響き渡った。


    「うーん。ここが中枢なんだろうけど、こりゃ情報が取れるとか、そういうブツじゃねえな」
     灼滅者達は疲れた体にむち打って、スサノオの体内を更に掘り進めた。そして行き当たったのは、力の源というか、結節点のような場所であった。何者かの記憶や意志を得られるような物体ではない。
     レオンや周はしきりに残念がっていたが、
    「さ、やるべきことをやりやしょ。大地に還してやらなきゃ」
     ギィが斬艦刀を構えると、
    「Ja、速やかに撤退した方が良さそうですしね」
     フォルケもライフルの照準を合わせ、皆も破壊用のサイキックを準備する。
     徒が神妙に、
    「もう誰にも利用されるなよ、さよなら」
     と呟くと、レオンも感傷的な顔になり。
    「もういい加減利用されるのも嫌だろうし、ね。ナミダ姫によろしく伝えといてくれ……あばよ迷い狼。地獄で会おう」

    作者:小鳥遊ちどり 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2017年12月27日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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