民間活動~理科室の死の舞踏

    ●放課後の理科室
    「これこれ、この骨格標本だよ、マサ」
    「げほっ、汚ねえなあ。これが先輩の言ってた、放課後4時44分になると踊り出す骸骨ってか?」
    「そそ、我が中学の7不思議の1つらしいよー」
     2人の男子中学生が理科室の隅っこから、忘れ去られたような埃を被った古い全身骨格標本をひっぱりだしている。
    「でもよタク、4時44分なんてオレらフツーに部活で理科室いるじゃん? 踊ったのなんか見たことねえけど?」
     マサとタクは生物部員である。今日は活動の無い日だが、七不思議に釣られて骸骨見物にきたのだ。
     ちなみに理科室は特別教室棟の1階にあり、窓の外は校庭だ。
    「1人きりの時に限るんだってよ。それにこの骸骨踊るだけじゃなく、居合わせた生徒を喰おうとするんだって」
    「なんだそりゃ」
     タクは歯を剥き出して、
    「命をくれ~、脳みそくれ~、ってカンジ?」
    「ゾンビかよ! 色々混じってんなぁ」
     2人はガハハと笑い……するとマサが、突然悪そうな表情になり。
    「おいタク、ちょうどいい。じき4時44分になるから、お前1人で残って確かめてみろよ」
     素早く理科室を出てしまった。
    「えっ、おい待てマサ!」
     タクの目の前でピシャンと廊下側から引き戸が閉められた。
    「ふざけんなよ!」
     タクがバシンと戸を叩くと。
    「何だよ、怖いのかぁ?」
     廊下からマサのからかう声。
    「こっ……怖くなんてないよっ」
     タクは唇を尖らせて戸から手を放した。
    「しょ、しょせん七不思議なんて嘘っぱちに決まってる! わーったよ確かめてやるよ!」
     そうこなくっちゃ、さすがタクちゃん、とマサは廊下から煽る。
     1分間ほどじりじりと壁の時計の針が進むのを眺めているうちに、4時44分になった。
     タクは恐る恐る背後の骸骨を振り向く。
    「ど、どーっせこんなアリガチな怪談、誰かの創作に決まってるっしー……うひっ!?」
     ――骸骨の眼窩が緑色に光り、嘲笑うようにカタカタと顎が鳴って……。

    ●武蔵坂学園
    「サイキック・リベレイター投票により、民間活動を行う事になったことで」
     春祭・典(大学生エクスブレイン・dn0058)が集った灼滅者たちを見回し、語り始める。
    「エクスブレインの予知が行えるようになり、タタリガミ勢力の活動が明るみに出ました」
     タタリガミ達は予知されない事を利用して、学校の七不思議の都市伝説化を推し進めていたのだ。
     閉鎖社会である学校内でのみ語られる学校の七不思議は、予知以外の方法で察知する事が難しく、既にかなりの数の七不思議が生み出されてしまっている。
    「それらについては可能な限り予知を行い、虱潰しに撃破しなければなりません。どうかご協力お願いします」
     典は地図とノートを開いた。
    「このチームに担当して頂くのは、神奈川県の某中学校の理科室に出る『踊る骸骨』です」
     骸骨は4時44分に理科室に生徒が『1人きり』になると踊り出す。そしてその生徒を喰らおうとするという。
    「骸骨自体は、今の灼滅者にとって強敵ではありません。ですので、周囲に被害が出ない範囲で『より多くの生徒・学生に事件を目撃』させる作戦を行ってもらうチャンスです」
     バベルの鎖によって、都市伝説やダークネス事件は『過剰に伝播しない』という特性がある。
     しかし、一般人が直接目にすれば、話は別である。
     目撃者が他人に話しても信じてはもらえないが、直接事件を目にした関係者は、それを事実として認識してくれるのだ。
     一般人の多くに事件を直接目撃させる事で、彼らの認識を変えていくのが『民間活動』の主軸である。可能な範囲で目撃者を増やすことを心がけて欲しい。
    「今回の場合、マサとタクが骸骨について話してるところに割り込んだらいいと思うんですよ」
     そして、チームのうちの1人が『自分が4時44分に理科室に残って確かめてあげるから、証人をいっぱい連れてきて』とマサとタクに頼むのだ。
     そして首尾良く骸骨が具現化したらば、彼らが連れてきれくれた大勢の生徒たちの前で骸骨を倒す。
    「骸骨は地縛霊のようなものですからね、理科室からは出られません。見物人は、廊下や窓の外から室内を見てもらう分には、流れ弾さえ注意すればさほど危なくないと思われます」
     時間的に、特別教室棟の他の部屋や、校庭にも部活で残っている生徒が大勢いるだろう。
    「ただ……ですね」
     典は気障に肩をすくめてから。
    「事件を目撃した一般人に、どのような指示や説明を行うかは重要です。皆さんは『不思議な力で七不思議を倒した人達』ということになりますからね。初めて会う一般人の信用を得、話を聞いてもらうには、それなりの演出や演技は必要でしょう。そのあたりを含め」
     深く頭を下げて。
    「どうかよろしくお願いしますね」


    参加者
    古海・真琴(占術魔少女・d00740)
    鹿島・狭霧(漆黒の鋭刃・d01181)
    苗代・燈(風纏い・d04822)
    羅睺・なゆた(闇を引き裂く禍つ星・d18283)
    押出・ハリマ(気は優しくて力持ち・d31336)
    シエナ・デヴィアトレ(治療魔で被虐嗜好な大食い娘・d33905)
    立花・誘(神薙の魔女・d37519)
    栗花落・深香(高校生サウンドソルジャー・d38230)

    ■リプレイ

    ●理科室の邂逅
    「これが先輩の言ってた、放課後4時44分になると踊り出す骸骨ってか?」
    「そそ、我が中学の7不思議の1つらしいよー」
     骸骨の埃を払いながら盛り上がるマサとタクの会話に、
    「面白い話してるね。ボクにも聞かせてよ」
     突然割り込んできたのは、ひとりの男子生徒。
     同じ制服(とはいえ、ごく普通の学ランだが)を着ているから、この学校の生徒なのだろうが、顔は知らない。
     だが、落ち着いた物腰から、
    「2年生の先輩……スか?」
    「骸骨の七不思議の話、知らないっす?」
     おそるおそる訊くと、
    「ボク転校生だから、七不思議とか知らなくて。教えてくれるかい?」
     男子生徒……羅睺・なゆた(闇を引き裂く禍つ星・d18283)は、愛想良く応じた。
     と、そこに。
    「何してるんだ?」
     どう見ても高校生の背の高い男子……苗代・燈(風纏い・d04822)がずかずかと理科室に入ってきた。
    「えと、七不思議の骸骨を……卒業生の先輩スか?」
    「うん、ま、そんなもん。七不思議か、いかにもな骸骨だな」
     次々と見知らぬ人物が現れることに戸惑っていると、またまたそこに。
    「学校怪談ですか!」
     大学生か高校生と見える、ジャージ姿の大柄な男女が現れて。
    「え……えと、どなたです?」
    「あ、ボクら体育館借りにきたフットサルサークルの者です。廊下通りかかったら、面白そうな話してたので」
     礼儀正しく答えたのは押出・ハリマ(気は優しくて力持ち・d31336)、
    「職員室探してたら道に迷っちゃいまして……ところで七不思議って?」
     ニコニコと話の続きをねだったのは古海・真琴(占術魔少女・d00740)。
     タクとマサが戸惑いつつも『理科室の踊る骸骨』について説明すると、なゆたがニヤリとし。
    「じゃ、せっかく時間も近いし、ボクが残ってみてもいいかな? 七不思議が本当にあるか、大勢に見てもらったら面白そうだし、人呼んで来てよ」
    「え、マジスか?」
    「うん、早く集めてきてね。時間になっちゃう」
    「俺からも頼む。手伝うことあるなら、つきあうからさ」
     1人を残し、3人の外来者……灼滅者達は、マサとタクを廊下に連れ出した。
      廊下から理科室の戸を閉め、さりげなく時計を確認すると、4時44分まではあと1分ほど。この時間では隣近所の教室と校庭にしか声はかけられないだろうが、骸骨の怪談は今この学校で流行っているようだし、ノッてくれる生徒は少なくないだろう。先に手段を講じてくれているチームメイトもいるし、戦闘が始まれば音や気配を察して集まってくる者もいるだろうし。
     待機しつつ、またはマサタクと周辺の生徒たちに声をかけながら、灼滅者たちは理科室の骸骨を思う。
     薄汚れたプラスチックの骨格標本――正確に言えば模型は、黄ばんで埃だらけだった。
     夜更けになればそれなりに不気味なのだろうが、夕焼けが眩しく照らし、外からは運動部の元気な声が聞こえてくる教室では、もの悲しいばかりで。
     されど、こんなものまで動かしてしまうのが――タタリガミ。
     じりじりと進んでいた時計の針が、44分を指した。
     廊下や校庭側の窓の外に、続々と生徒たちが集まってきた。
    「バッカ、動くわけねーじゃん」
    「生物部、七不思議の実験まですんのー」
     などと無邪気にはしゃいでいるが、これから彼らには恐怖体験をしてもらわなければならない。
     ――その時。
     ガタガタッ、と理科室の中で激しい物音がして。

    ●骸骨怪談
     バンッ!
     勢い良く戸が開けられて、なゆたが叫ぶ。
    「動き始めたな、七不思議。動きたての所悪いが、僕らの未来のために生贄になってもらうぞ!」
    「ええっ!?」
     集まっていた生徒たちが一斉に、全ての戸や窓を開けて理科室を覗きこみ。
    「きゃあああ!?」
    「うわあ!!」
     悲鳴を上げた。
     理科室の真ん中で、ふらふらと踊り嗤い、虚ろな眼窩を不気味な緑色に光らせている骸骨。その動きは、どう見ても手品の類いではない。
     それに、普通の人間でも否応無く感じてしまう圧倒的な禍々しさを発している。
     ――ダンス・マカブル。
    「ほ……ホントに動いてる」
    「マジで……」
     生徒達は、目の前の超常現象に驚き、怯え……信じられないという思いと、人間としての原初の恐怖にじりじりと退いていく。
    「いくぞ!」
     だが、その恐怖の現場に飛び込んでいく8名がいる――待機、あるいは生徒に混じっていた灼滅者達だ。
     まずは室内にいたなゆたがスレイヤーカードを解除し、ジャージを脱ぎ捨てた真琴と、廻し姿となったハリマがそれぞれサーヴァントを連れて続く。窓からは、2匹の猫……と思いきや猫変身を解除した栗花落・深香(高校生サウンドソルジャー・d38230)と愛猫の雪がひらりと飛び込んできた。
    「行くよ、ハルル」
     武装解除した燈も愛犬と共に骸骨を囲み、
    「さーて、ギャラリーもいるコトだし、いっちょハデにおっ始めましょうか」
     鹿島・狭霧(漆黒の鋭刃・d01181)はナイフをこれみよがしにスピンさせる。
     学校見学の小学6年生という設定でギャラリーに紛れ込んでいた、立花・誘(神薙の魔女・d37519)も、キュアコスチュームを装備して包囲の輪に加わり、
    「みゃー、腕の中から失礼しますの! 目立つように行動するなんて、ドキドキしますの!」
     猫変身で校内を駆けめぐり、ギャラリーを集めてきたシエナ・デヴィアトレ(治療魔で被虐嗜好な大食い娘・d33905)は、女生徒の腕の中から教室に飛び込んできた。
    「え……何、どーゆーこと? アンタたち、一体なに!?」
    「骸骨、退治しよーっての!?」
     事態の急展開に、ことの発端を作ったマサとタクが入ってこようとしたが、
    「危ないので入らないで。話は後で。どうぞ廊下で見ていて下さい」
     誘が丁寧ながらキッパリと止めた。
     マサタクとて危険であることは直感的に分かるのだろう。疑問満載の表情ながらも、大人しく廊下の反対側まで退いた。集まってきたギャラリーも同様に。
     骸骨は相変わらずふらふらとステップを踏み、顎をカタカタと鳴らしている。まるで怯える生徒達を、そして彼らを護るべく慎重に立ち位置を計る灼滅者たちを、嘲笑うかのように。
    「学校怪談ってのは、ある意味タタリガミの原点っすよね……」
     四股を踏みつつ、ハリマは骸骨を睨みつける。
    「ヤツらが本格的に動き出す前に、民間活動がんばらないと!」
     燈は、恐怖と好奇心が入り交じったギャラリーたちの眼差しを感じつつ、彼らが怯えつつもこの場を去らないのは、怖いもの見たさなのだろうと感じ、
    「これだけの視線を浴びながら戦うなんて、今までの仕事と違うから新鮮だな。ま、やることはいつもどーりなんだけどね」
     なゆたも、
    「力を持たない連中を戦いに巻き込むのはポリシーに反するが、ここまで来たんだ。ダークネスを倒すためだったら、僕は揺るがない」
     と、廊下や窓の外に固まっている生徒たちに目をやった……その瞬間。
     ガッ!
     骸骨が大口を開けて飛びかかってきた。まずは自分を目覚めさせた者を喰らおうとでもいうのか。
    「く……っ」
     頭に囓り付かれるのは何とか避けたが、遮った二の腕にがっちりと骸骨の顎が食い込む。
     だが。
    「どすこーいッ!」
     横手からハリマの喉輪が炸裂し、雷鳴の煌めきと共に骸骨を吹っ飛ばした。同時に、愛犬の円が脚を斬りつけている。
    「要するにハデに立ち回ればいいんでしょ、簡単だわ! 骨格標本なんだからちっとは骨のあるトコ見せて貰おうじゃないの!」
     反対側に回り込んでいた狭霧も、よろけた骸骨にガリリとナイフの刃を突き立て、真琴は魔法使いであることのアピールも兼ねて、理科室ごと凍らせる勢いで氷魔法を発動した。
    「ヴァグノ、校庭側をお願いですの……治しますの!」
     シエナは愛機をギャラリーの防御に回すと、自らはなゆたに回復を施そうとしたが、
    「ここは自分で!」
     彼が斧を振り上げて自己回復を施したのを見て、ひとつ頷き素早く攻撃に切り替えると、ヴィオロンテに酸性弾を撃ち込ませた。
     誘はメディック陣を夜霧隠れで包み込み、
    「ハルル、回復メインで頼む!」
     燈は風の刃を見舞う。そして、
    「雪、子供たちを護るのよ」
     深香の歌声が教室を満たし――。
     骸骨に驚き恐怖する生徒たちは、更に、灼滅者たちが次々と繰り出すサイキック攻撃に驚仰天しているようだ。ただ呆然と、理科室で繰り広げられている超能力バトルを見つめている。
     そして骸骨は、敵に囲まれていることに今更気づいたかのように、虚ろに光る眼窩で灼滅者らをぐるりと見回した。

    ●ダンス・マカブル
     戦闘に突入し、6~7分程経った頃。
     カシャン。
     陶器のような乾いた音を立て、誘の伸ばした影の刃が、骸骨の頸骨を砕いた。
     ぐらりと骸骨はバランスを崩して倒れ込んだが、同時に眼窩を眩しく光らせ、ビームを発射した。
    「しまった!」
    「危ない、伏せて!!」
     放たれた緑の光線は、骸骨が傾いたせいであらぬ方向……廊下側を薙ぐように走る。
    「いやあああ!」
     生徒たちの悲鳴が響き渡る。
     ディフェンダー陣はギャラリーに警告を発しながら、一斉に廊下側へと飛び込んで、一般人たちの盾となった。
    「……っ」
     ディフェンダーを8枚も揃えていたことが幸いし、一般人が傷つくことだけは免れたが、危なかった。
     ――もう、充分だろう。
     メディックたちがディフェンダー陣の傷を癒している間に、灼滅者らは、廊下で怯え凍り付いているギャラリーたちを見やる。
     戦いを敢えて長引かせたことにより、都市伝説である骸骨の恐ろしさと、それに対抗する存在である灼滅者を、彼らの脳裏に深く刻み込むことができただろう。
     片足を打ち砕かれ、膝立ちのような姿勢になっても、相変わらずゆらゆらと不気味なダンスを続けている骸骨。
     ――ケリをつける!
     灼滅者たちは、最後の攻勢に出た。
    「いくぞ!」
     燈がガトリングガンの連射で敵を釘付けにし、なゆたが鬼の拳で殴りかかる。深香は雪にパンチを命じると、鋼の帯を鋭く射出した。シエナはヴァグノジャルムに突撃させ、ヴィオロンテの蒼い刃で斬り払う。真琴は、これ以上ギャラリーに敵の攻撃を向けさせてはいけないと、愛猫・ペンタクルスのパンチと共に、シールドで殴りつけて引きつけようとする。
     ガタン。
     左腕の骨が、肩から抜け落ちた。だがまだ骸骨は踊り、嗤い続ける。
     その不気味な壊れ方に、またギャラリーから悲鳴が上がった。
     骸骨は、バランスを失ったその姿でも、踏み込んでいたハリマに喰らいつこうと首を伸ばしてくる……が。
    「させないわ!」
     狭霧がナイフを掲げて毒竜巻を放った。竜巻は、壊れかけの敵を粉砕する勢いで包み込む。
    「ナイスタイミングっす!」
     低く構えていたハリマは轟々と鳴る竜巻に飛び込んで、骸骨の首っ玉を掴むと。
    「どりゃああぁ!」
     渾身の力で投げを放った。
     バキリ。
     無機物が砕ける音がした。
     パラ……パラ、パラ……。
     かろうじてつながっていた骨が、次々と関節から外れて、落ちて。
     ――残ったのは、粉々になったプラスチックの破片だけ。

    ●民間活動
     灼滅者たちが、紛い物の骨の山を見下ろしていると。
    「……終わったスか?」
    「入っていい?」
     理科室の入り口から、マサとタクが首を突っ込んだ。
    「もういいわよ……あ、そうだ、あなた達」
     狭霧が腰に手を当てて。
    「度胸があるのはいいけど、あまり危ないトコに首突っ込むんじゃないわよ? 今回は運が良かったわ。私達がこの場に駆けつけたんだから」
     説教していると、
    「き、君たちは一体!?」
    「うちの学校の関係者じゃないね?」
     廊下と窓から、教師らしき大人が1人ずつ入ってきた。ギャラリーは生徒だけかと思っていたが、いつの間にか教師も加わっていたらしい。やっと我に返って問いただしてきたようだ。
     中学生は頭が柔らかいし、超常現象にもアニメや映像で免疫がありそうだが、大人はそうはいかないだろう。面倒臭いが仕方ない。まず年長の狭霧がシュッと表情を引き締めて事態を説明しはじめる。
    「今の戦いで解るように、我々は害を成す者ではありません。むしろ先ほどのような敵を倒すために、日々活動しているのです」
     誘も。
    「わたくしたちは超常の力を持っていますが、それでも敵が強大であることは、戦いぶりを見て、おわかりかと思います」
     教師たちも、骸骨の恐ろしさと、生徒達を護るべく戦っていた彼らの姿を目の当たりにしているので、不審そうではあるが一応頷く。
    「戦いにこの学校を使わせてもらったことは、お詫びします」
     なゆたも再び猫を被って神妙に頭を下げた。
     神妙な様子はしているが、内心、
    「(闇に潜んで戦ってきた灼滅者も、こうして表に出て具体的に説明すると、なにやら可愛く聞こえるもんだな。まあいいさ、何であろうとダークネスと戦えるならな)」
     と、少々面白がっていたりもするのだが。『灼滅者講座』をまとめたレジュメも用意してきたので、必要なら渡すつもり。
     3人が教師たちに説明を試みている間に、サーヴァントをつれている者は、生徒たちとの交流を計っていた。
    「ふふ、可愛いでしょう?」
     深香は真琴と共に、ウィングキャットを撫でさせて。
    「危ない事はしちゃダメよ。弟が……義理の弟が、昔からよく巻き込まれる子でね……弟には戦う力があったけれど、皆には同じ思いをさせたくないのよ」
     今は理解できなくても、いつか自分の想いが届くといいと願いつつ、今はまず自分たちの存在を知らしめることが重要と、
    「私達の能力で、こんな事もできるのよ」
     自らも猫変身して歓声を上げさせる。
     シエナは、
    「こんな事もできますの」
     ヴィオロンテに机をお手玉させてサイキックの実演を見せたり、ヴァグノジャルムに騎乗させたりと、荒技で交流中だ。
     燈とハリマは、
    「おとなしいヤツらだから、触っても大丈夫だよ」
     犬好きの生徒たちに霊犬をもふらせながら語っている。
    「さっきみたいな人々を襲う怪異が、実は世の中には数多く存在してるんっス」
    「俺たちは灼滅者っていう異能力者。人知れず、ああいう存在と戦っているんだ」
     燈は居合わせた生徒たちと連絡先を交換し。
    「キミ達ももしかしたら今回のような事に巻き込まれて、命が危険に晒されるかもしれない。助けてほしい事あったら教えろよな? なんでも聞いてやるから、さ」
     ここに居合わせてしまった一般人たちは、超常現象が実在することを、そして灼滅者の存在を知った。
     それをどこまで理解し、信じるかには個人差があるだろうが……。
     誘は、戦場だった理科室と、そこで交流する灼滅者たちと一般人たちを見回し。
    「今のところは――超常現象に巻き込まれても、助けてくれる奴らがいる、位のことが伝われば御の字でしょうか」
     小さく呟いた。

    作者:小鳥遊ちどり 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2018年2月6日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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