民間活動~バレンタインの女神、但しマッチョ

    ●もらえなかった男子は、23時50分に校庭に集合
     バレンタインデーの夜更け、某中学校の校庭に、30人ほどの男子生徒が密やかに集まってきていた。
    「……夜中の校庭にチョコくれる女子が現れるなんて、学校七不思議としてもあり得ねえ」
    「俺だってそう思うけど、ダメ元で試してみる価値はあるだろ」
    「まあなあ、母ちゃんからの1個だけって悲しすぎだもんな……」
     仲間内でボソボソと囁きあう彼ら、実はバレンタインに1個もチョコもらえなかった(家族除く)非モテ男子の皆さんである。
    「で、その女子、どっから現れるわけ?」
    「空から降ってくるという話」
    「は?」
    「んでもってマッチョ女子という話」
    「はあぁ?」
    「んでもってマッチョ女子を今日中に倒すと、チョコくれるという話」
    「倒すって……戦うわけ?」
    「うん」
    「ってか今日中ってあと10分しかないんだけど? 某霊長類最強みたいな女子だったらどーすんだよ?」
    「こんだけの人数いるんだから何とかなるんじゃね?」
    「も、もし倒せなかったら、チョコももらえず、ボロボロにやられるだけって……」
     とか何とか言っていると。
     ひゅるるるる~~~……どおーん!
    「お待たせえ~!」
     校庭にクレーターをぶち空ける勢いで落ちてきたのは、見るからにマッチョで強そうででっかいお姉さんだった。笑顔のステキな美人だが、身長2メートルくらいありそうだ。
    「わー、大勢集まってくれてるのね、戦い甲斐ありそー」
     マッチョ女子は嬉しそうにホワイトチョコレート色のレスリングシングレットのお尻のあたりを直し、全身の筋肉をムキムキさせると、
    「さあ、かかってらっしゃい。今日中に私を倒せばチョコレートを進呈よ♪」
     後退る男子たちに、チャーミングにウィンクしたのであった。

    ●武蔵坂学園
    「思春期の欲望渦巻くバレンタインには、学校七不思議も活性化するようですね」
     黒絶・望(愛に生きる幼き果実・d25986)が集った仲間たちに語り始めた。
     サイキックリベレイター不照射により、エクスブレインの予知が再び行えるようになり、タタリガミ勢力の活動が明るみに出た。予知されなかったのをいいことに、タタリガミは、学校の七不思議の都市伝説化を推し進めていたのだ。
     閉鎖社会である学校内でのみ語られる学校の七不思議は、予知以外の方法で察知する事が難しく、既にかなりの数が生み出されてしまっている。これらを可能な限り虱潰しにしていかなければならない。
    「私が聞き込んできたのは、埼玉県内の某中学校における、バレンタインのマッチョ女子の七不思議です」
     このマッチョ女子、バレンタインデー夜23時50分になると校庭に現れ、非モテ男子生徒にチョコをくれるという女神のような七不思議なのだが、
    「但しチョコをもらうには、勝負を挑んでくる彼女に、バレンタインデー中に勝たなければなりません」
     そして当然、七不思議である彼女に、男子生徒たちは勝てない。
    「なので、私たちが代わりに戦ってあげようと思いまして。民間活動にも丁度いいカンジですしね?」
     時間までにその中学校に行って、生徒たちに混じりマッチョ女子の降臨を待てばいいだろう。街灯はあるが薄暗いので、女子も男装すれば紛れ込めるだろうし、苦手な人は暗がりに隠れていればいい。
     そこで春祭・典(大学生エクスブレイン・dn0058)が予知した内容を挟む。
    「マッチョ女子は肉弾戦を好むようです。それほど強くありませんが、一般人に被害が出ないよう気を配る必要はあります」
     マッチョ女子は強い相手と戦うことを望むので、灼滅者がきっちり彼女をひきつけておけば、巻き添えをくったりしないかぎり生徒たちに被害が及ぶことは無いだろう。
    「今回は民間活動のいいチャンスでもありますので、周囲に被害が出ない範囲で、居合わせた男子生徒たちに事件を目撃させるよう心がけてください」
     バベルの鎖によって、都市伝説やダークネス事件は『過剰に伝播しない』という特性がある。しかし、直接目にした人間は別だ。
     目撃者が他人に話しても信じてもらえないが、直接事件を目にした者はそれを事実として認識してくれるのだ。
     そこで望がふっと笑んで。
    「マッチョ女子を10分以内に倒し、チョコを手に入れて男子生徒たちに配ってあげられれば、ステキな民間活動になりそうです……ああ、私たちもチョコを持参して、差し上げてもいいかもしれませんね? ダークネスや灼滅者についてお話するとっかかりにもなりそうですし……」


    参加者
    武月・叶流(夜藍に浮かぶ孤月・d04454)
    リリアナ・エイジスタ(オーロラカーテン・d07305)
    極楽鳥・舞(艶灼姫・d11898)
    山田・透流(自称雷神の生まれ変わり・d17836)
    黒絶・望(愛に生きる幼き果実・d25986)
    平・和守(国防系メタルヒーロー・d31867)
    ルイセ・オヴェリス(白銀のトルバドール・d35246)
    神無月・優(唯一願の虹薔薇ラファエル・d36383)

    ■リプレイ

    ●夜更けの校庭にて
     暗い校庭には、30名ほどの男子生徒が集っている。皆が皆、何となくうつむきがちなのは、今日という日の悲哀を反芻しているからだろうか。
     その様子を校門の陰から窺っている灼滅者たちがいた。
    「彼らは、マッチョな女の子からチョコを貰って嬉しいのかな……?」
     囁いて首を傾げたのは山田・透流(自称雷神の生まれ変わり・d17836)。男子生徒たちの感覚が理解できないようだ。
    「思春期の男子は、強いおねーさんにも憧れるんじゃないかな?」
     一方、ウッキウキで好敵手の出現を待ちわびているのはリリアナ・エイジスタ(オーロラカーテン・d07305)。
    「ボクは肉弾戦大歓迎。華麗に勝ってみせようじゃないっ!」
     彼女らが見守っている男子生徒の群の中にも、実は灼滅者が混じっている。
    「この辺だよな?」
     制服姿ではあるが、中学生には見えない大柄な男子は平・和守(国防系メタルヒーロー・d31867)。マッチョ女子が落ちてくる予想地点を慎重に計っている。
    「いいんじゃないか……ボチボチ出現の時間になるな」
     クールに頷いたのは神無月・優(唯一願の虹薔薇ラファエル・d36383)。こちらは中性的な線の細さではあるが、やはり背が高いので、2人とも夜の闇に助けられている部分もある。
     闇に大いに助けられているといえば、男装して紛れ込んでいる女子たちである。
    「こんな風に戦うのはあまり慣れてないけど、わたし達の将来に関わることだし頑張らなきゃ」
     初の民間活動に幾分不安そうなのは武月・叶流(夜藍に浮かぶ孤月・d04454)。
     一方、
    「大丈夫だよー。チョコをばらまく都市伝説にインパクト負けしないよう、ボクらもがんばらなくちゃ」
     ルイセ・オヴェリス(白銀のトルバドール・d35246)と極楽鳥・舞(艶灼姫・d11898)は何か企んでる風の笑みを楽しげに交わす。
     男装女子たちは、いずれもロングコートや帽子で、女らしい長髪と体型を上手く隠している。
    「彼らにチョコを渡してあげたいので、短期決戦を目指したいですね」
     この事件を見つけてきた黒絶・望(愛に生きる幼き果実・d25986)は、垂れてきた髪の一房を帽子に押し込みながら、優しげに男子生徒たちを見回した……その時。
     ひゅるるるる~~~……どおーん!
    「お待たせえ~!」
     でっかいおねーさんがあらわれた!

    ●マッチョとバトル
    「きたね! あなたの敵はわたし達だよ!」
     ダイナマイトモードを発動した叶流が凛々しく叫び、灼滅者たちはマッチョ女子と生徒たちの間に素早く割り込んだ。次々とカードを掲げ、装備を整え、そしてこの時とばかりにインパクト充分のアピールで引きつけていく。
    「マジピュア・ステップアップ! 愛の戦士、ピュア・コキノ! 残念ながら貴女の相手は私達です。そのチョコレート頂戴します!」
     白いロリータドレスに花弁を模した赤いコートを羽織った望は、更にアルティメットモードを発動し、魔法少女感バリバリである。
     マッチョ女子に張り合うようなビキニのリングコスチュームに変身したのはリリアナ。やはりアルティメットモードを発動し、ぐっと指を突きつけ。
    「チョコで誘いボコボコにしようなんて許さないよ。さあ、相手はボクらだっ」
     透流も堂々と立ちふさがり、
    「男子生徒さんたちは後退りをしている。つまり、戦意を喪失している……不戦敗扱いでいいと思う。歯応えのある相手と戦いたいんだったら、私たちが代わりに相手になる」」
     とマッチョ女子に宣言した後、生徒たちの方を振り返り。
    「みんな、冷静に考えて。普通に考えたら、空からマッチョな女の子が降ってくると思う? これは超常現象……そして、私たちは超常現象を極秘で解決する組織の人間」
    「そうだよっ、アレは都市伝説、超常の存在なんだ……はうっ?」
     勢い良く腕を広げたルイセのシャツの胸元のボタンが弾け、男子生徒たちが一瞬、おおっ、となる。
     だがルイセは平気な顔で、
    「ふっ……ボタンが飛んでも戦わざるを得ない、灼滅者ってのは因果な商売さ。でもっ!」
     バッと男装を脱ぎ捨てると、現れたのはメロン柄のビキニ。
    「残念! 水着は飛んだりしないさ! これ以上を期待するのはお色気マンガだけにしておきなよね!」
     現実を見ろ! と言わんばかりであるが、思春期真っ盛りの男子たちにとっては、女子大生のビキニだって充分なごちそうだし~。
     更に。
     ばさっ。
     と、コートを脱ぎ捨て、舞が扇情的なビキニ&ホットパンツの姿になった。自慢の爆乳を見せつけながらウインクし、
    「戦うのはお姉さんたちに任せて見ててね♪ 後でチョコあげるから♪」
     男子生徒たちは、露出度の高い綺麗なお姉さん達にすっかりポーっとなっているが、その目を覚ますかのように、
    「さあ、もっと下がって見ていてくれ」
     ダイナマイトモードを使い、筋肉を引き立てるセクシー露出の迷彩服を身につけ、ボディビル風に筋肉をムキムキさせながら登場したのは和守。おまけに、
     ドカン……ぴきぴき。
     鋼鉄拳で地面を殴りつけ、校庭を地割れさせた。
    「このような力が無いとあのマッチョ女子には太刀打ちできない。君らが対抗できる相手ではない」
     生徒たちは恐れをなして更にずりずりと後退し、
    「とりあえず、流れ弾に当たらないように注意しておくれよね」
     優が面倒くさそうに、生徒たちを追い払う手つきをした。
     彼にとって、ダークネス退治は『癒し』を得るためでしかなく、一般人庇護欲は欠片もないのだが、一般人にケガをさせたりしたら面倒なことになると予想するくらいの分別はあるし、もしケガ人が出たら医師の役目として手当はしてやるつもりである。
     生徒たちは灼滅者たちによって、マッチョ女子から完全に引き離され、いよいよ戦場は整った。
     さて、肝心のマッチョ女子はというと。
    「いいわよーーー、やりましょーーーっ♪」
     灼滅者たちの出現と、その旺盛な戦意に大喜びでにっこにこだ。
    「あなた達、強そうだものね。楽しみだわ!」
     既に、か弱い男子中学生たちなど眼中にないようだ。やはりより強い者と戦うことを望む性質らしい。
     マッチョ女子は、包囲を完成しつつある灼滅者たちを舌なめずりして見回すと、スッと腰を落として戦闘体勢になり。
    「さあ、遠慮無くいくわよっ!」
     目にも留まらぬスピードで、地面を強く蹴り、長い腕を伸ばした。
    「ぐ……っ」
     素早いタックルでベアハッグを喰らってしまったのはリリアナ。
    「あぐぅ、な、なんてパワー…」
     体格差がありすぎ、単純な抱き締めでも相当苦しい。リリアナの顔に血が上り、真っ赤になっていく……だが。
    「離せ!」
     透流が鋭く槍を突き出したと同時に、和守がボディビルのサイドチェストのようなポージングから、目映いビームを撃ち込んで引きつける。
     反撃にマッチョ女子の腕が緩み、リリアナは身を屈めて締め付ける腕からするっと抜け出した。そして肉薄しているこのチャンスを逃がすまいとばかりに、
    「全力超えた120%の力で叩き込むよっ!」
     高く跳び上がると、鬼の拳を脳天に思いっきりぶちこんだ。
     もちろんリリアナには、間をおくことなく優のShekinahから癒しの矢が撃ち込まれ、ビハインド・海里は傍らで霊撃を放つ。
    「あ、すぐに終わらせるのでちょっとそこで待っていてくださいね?」
     望は、男子生徒たちに呼びかけておいてから、鬼の拳を握って殴りかかり、叶流は、
    「……それにしても大きいね」
     見事な筋肉の敵を見上げて感嘆したが、
    「でも、どんな攻撃でも耐えきってみせるよ! 強そうな敵だけど、わたし達も負けないから!」
     鋭く影の刃を伸ばした。ルイセは鋼の帯を射出し、舞は炎を宿したエアシューズで蹴りを見舞いながら、
    「小悪魔な私としては生徒の反応を見るのも楽しいから、戦いながら、自慢のおっぱいを見せてメロメロにさせてあげる。きっと、その方が色々うまくいくはずよ♪」
     サイキック技だけでなく、動く度にぷるん♪ と揺れる胸をも生徒たちに見せつけてたり。
     集中攻撃を喰らったマッチョ女子は、
    「わあ、あなた達、やっぱり思った以上に強いわ! そうこなくっちゃ」
     痛がることもなく、笑顔で。
    「思いっきり戦って、バレンタインを楽しむわよー!」
     嬉々として掴みかかってくる。
     民間活動とか、チョコレート奪取とか、生徒たちも護らなきゃとか、色々考えることは多いが、マッチョ女子が好敵手であることは間違いないようである。

    ●チョコレート奪取
     その後も灼滅者とマッチョ女子は、気迫とサイキック感あふれるバトルを繰り広げていたが、
    「いくわよ、覚悟なさい!」
    「きゃあっ!」
     戦いが始まって数分経つ頃、マッチョ女子が放ったオーラ弾が、舞の胸に命中した。いっそう激しく自慢の爆乳が揺れ、男子生徒達の視線が集まっているのがわかる。
     倒れ込みながら舞は、
    「(胸に注目されるのは嬉しいけど、不思議な力で戦ってるってのも、見てくれてるよね?)」
     なーんて考えちゃったりしているが、優がすかさず撃ち込んでくれた癒しの矢は、相変わらず冷静きわまりない。
     マッチョ女子は相変わらず戦いを楽しんでいる様子だが、当然灼滅者のチーム攻撃により、かなりのダメージを受けているはずである。ホワイトチョコレート色のシングレットも、あちこち破れてマッチョなりにセクシーになってきた。
    「そろそろ……ケリをつけたいね」
     透流が呟いてエアシューズに炎を乗せて蹴り込んでいき、
    「ええ、バレンタインのうちに終わらせましょう」
     望が両手を延ばし、マジックミサイルを撃ち込んだ。和守が雷を宿した拳でアッパーカットをかました隙に、リリアナは大きな注射器を構えてつっこんでいく。
     叶流はちらりと校舎の壁面の大時計を振り返り、まだバレンタインが終わるまで4分ほどあることを確認してから、黒々とトラウマを宿した拳を、割れまくりの腹筋にぶちこんだ。海里は、回復に専念している主の分までと顔を晒し、ルイセはメロメロ☆ベリーメロンを激しくかき鳴らす。回復成った舞も、足に宿した炎を叩き込むと。
    「いったあ……い」
     間断ない連続攻撃に、さすがのマッチョ女子もよろけて膝をついた。
    「……今だ」
     透流がすかさず飛びかかっていく――が。
    「真の格闘家は、最後まで勝負を諦めたりしないのよ!」
     傾いた姿勢にも関わらず、太い腕が華奢な首を刈ろうと襲いかかってきて……!
    「――させるか!」
     筋肉では負けんとばかりに飛び込んだのは、和守であった。
     ガッシュ!
     強烈なラリアットに和守はふっとばされたが、優がクールに受け止めて、包帯を巻いてやる。
    「ありがとうッ」
     庇われた透流は一瞬にして体勢を整え直すと土を蹴り、高く跳んだ。めらめらと燃える炎を宿した足が、ムキムキの左肩を蹴り倒すと、マッチョ女子はドウとばかりに校庭に仰向けに倒れた。すかさずそのまま左肩をぐっと踏みつける。
     同時に、背後に回り込んでいた望が、精一杯の魔力を込めた望杖・カルディアを右肩に振り下ろすと、目映い火花が炸裂した。
     2人の力が、マッチョ女子の両肩を地面へと押しつける。
    「ワ……ワンッ!」
     生徒たちからカウントの声が上がる。誰からともなく発生した、灼滅者たちを応援する声だ。
    「ツー!」
     マッチョ女子は弱々しくもがくが、2人の力は緩まない。
    「スリーーーッ!!」
     カウントスリー! 灼滅者の勝利だ!!
     バレンタインのマッチョ女神は横たわったまま、弱々しく、けれど清々しく笑んで。
    「……いい勝負だったわ」
     冬の夜風に吹かれ、揺らぐように消えていった。

     ――そして後には、置き土産のチョコレートの山が。

    ●チョコ活 
     というわけで、マッチョ女子のチョコレートを無事に奪取し、持参のチョコレートも合わせ、バレンタインデーのうちに男子生徒たちにプレゼントできることになった。
    「お待たせしました! 欲しかったのはこれですよね? それと、私からもはい、ハッピーバレンタイン♪」
     望とルイセは自分で持参したものも含め、チョコレートを配りながら、今回の事態について説明している。
    「都市伝説をはじめとする、人々を狙うダークネスという存在がいて、それに対抗するのがボクたち武蔵坂の灼滅者さ」
    「もし今回のような事件を発見したら、速やかに私達に連絡してくださいね」
     リリアナも、
    「噂には気をつけて。むやみに広めたりすると、都市伝説具現のきっかけになったりするからね」
     ヒーローらしくきりっと忠告しつながらも、チョコレートは気前よく撒いている。
     一方男子たちは、チョコレートを男からもらっても嬉しくなかろうと、サイキックやESPの実演を行っていた。
     和守はオーラキャノンを格闘ゲーム風に発射してみせ、ゲームファンの男子たちに歓声を上げさせている。
     優はというと、一般人に関心はないが、それでも仲間たちの活動の邪魔はすまいと、無関心そうな姿勢のままではあるが、空飛ぶ箒の実演を見せている。
     さて、女子たちのチョコ配りであるが。
    「私たちが今回姿を現したのは、みんなにも超常現象が本当にあるんだってことを知ってもらうため」
     透流はそう簡単にあげないよ、まずは話を聞いて、といわんばかりに、チョコレートをぎゅっと抱えこみ、
    「今回の超常現象はみんなに害を与えないものだったけど、危険な超常現象もある。そういったときは、私たちに連絡をして欲しい。約束してくれたら、チョコをあげる」
     ひとりひとりからしっかりと言質を取りながら配っている。
     一方、自慢の胸をいちいちぎゅっと寄せて谷間を見せつけながらプレゼントしている舞は、
    「なんで冬にそんな服装なんですか? 寒くないんですか?」
     純朴そうな男子に今更ながらツッこまれ、
    「ふぇっ……私の趣味だけど……ダメ?」
     改めて恥ずかしくなっちゃったりして、赤面もじもじ。
     そして叶流は。
    「あまり料理は得意ではないけど、わたしもチョコ作ってみたんだ。よかったらどうぞ」
     手作りのちょっと不格好なチョコレートを、微妙に恥ずかしげに配りながら。
    「もしこれと似たような事件があったら、すぐに連絡してね」
     時刻は0時を過ぎたが、灼滅者と男子中学生たちのバレンタインデーは続く。
     きっと、灼滅者たちの存在と戦いぶりは、チョコレートの甘さと共に、男子生徒たちのハートに深く刻まれたことだろう。

    作者:小鳥遊ちどり 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2018年2月21日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 3/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
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