●某高校・放送室にて
ーーその昔。
失恋して放送室で自殺した女子がいたという。
覚悟を決めた女子は部室の鍵を締めると、天井にロープをかけてその下に椅子を置き準備を整えた。
その上でレコードをプレイヤーにかけて針を落とし、更に校内放送のスイッチを入れ……そして首にロープをかけ、椅子を蹴った。
「うふふ、我ながらいい出来の学園ホラーだわ。学校中に速やかに広がったのも無理ないわね」
都下、某高校の放送室、ある夜更けのこと。
1人の女が、放送システムをデスク代わりにして自画自賛していた。
女はもっさりした上下スウェットに、ぼさぼさのポニーテールという、徹夜明けの様な疲れた姿である。年の頃はアラサーくらいか。
「そろそろ力を蓄えた頃よね」
女は眼鏡を直して原稿用紙を置き、立ち上がった。そして放送室の棚の隅っこから取り出したのは、波打ち歪んだLPレコードである。女は上機嫌でレコードを、これもかなり古いポータブル・プレイヤーにセットした。
針を落とすと、波打ったレコード盤から、不気味にひずんだショパンのピアノ曲が流れ出し……。
「さあ、出てらっしゃい」
回るレコードからわき出すように、セーラー服姿で長髪の女子高生が現れた。首には輪になったロープがかかっている。
女子高生は宙に浮いたまま、無表情でうつむき、ただ恨みの凝った目を光らせている。
「大分姿がハッキリしてきたわね、良い調子よ。このレコードとプレイヤーは、また放送室に隠しておくからね」
女は優しげに女子高生に語りかけ、
「あなたの話は、学校中に順調に広まっているようだし、じきに誰かがレコードとプレイヤーを探し出して、かけてみようとするでしょう」
楽しそうに含み笑いを漏らし。
「そうなったらあなたの出番よ。積年の恨みと哀しみを、青春とかいう幻想を謳歌している脳天気なイマドキの高校生たちに、思いっきりぶつけちゃいなさい……!」
●武蔵坂学園
「熱心な民間活動、大変お疲れ様です」
春祭・典(大学生エクスブレイン・dn0058)は、集った灼滅者たちに頭を下げた。
「皆さんが、学校七不思議事件に数多く対処してくれたことにより、タタリガミが都市伝説を作り出そうとするタイミングを予知することができました」
七不思議ひとつひとつに対処することももちろん大切だが、七不思議を生み出し続けているタタリガミを灼滅する事が、根本的な解決につながるのだ。
「七不思議を呼び出した直後に襲撃する事で、タタリガミと直接戦う事が可能となるので、元凶であるタタリガミの撃破をお願いします」
そこで戸地田・愛子(まなこは十二歳・d28461)が前に出て。
「今回、皆さんにやっつけて欲しいのは『女流作家』と呼ばれるタタリガミよ」
『女流作家』はいわくありげなモノに目をつけ、勝手に自分好みのストーリーをまとわせ都市伝説化するという迷惑なタタリガミである。
「今回彼女が都市伝説化しようとしているのは、都内の某高校の放送室に埋もれていた古いレコードなの」
そのレコードに学園ホラーっぽい伝説をくっつけ、恨みを持って死んだ女子高生の七不思議を出現させようとしている。
「予知されたタイミングで急襲すれば、レコードの七不思議はまだ生まれたばかり、一般人に被害を及ぼす前に、タタリガミもろとも撃破することができるわ」
女流作家がレコードの七不思議を生み出すのは深夜である。校内に人気はない。
もちろん警備システムはあるが、先に女流作家が侵入する時にある程度壊しているし、バベルの鎖の効果もあるので、警備員がすぐさまやってくるようなことはない。
「ただ、戦闘しているうちにご近所の一般人に目撃されたりして、通報されるようなことがなきにしもあらずかもしれないので、一応人払いはしておきましょうね」
それに、と典も口を挟み。
「タタリガミは周囲に一般人がいた場合、人質にとって逃走しよう等と試みる可能性があるので、一般人が事件現場に紛れ込まないような工夫はしておくにこしたことはありません」
愛子は教壇から灼滅者たちを見回して。
「これ以上、七不思議事件を作りださせないように、確実に女流作家を灼滅してほしいの。このチャンスを逃さないよう、よろしくお願いするわね!」
参加者 | |
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文月・咲哉(ある雨の日の殺人鬼・d05076) |
天渡・凜(その手をつないで未来まで・d05491) |
糸木乃・仙(蜃景・d22759) |
黒嬢・白雛(天翔黒凰シロビナ・d26809) |
天枷・雪(あの懐かしき日々は・d28053) |
押出・ハリマ(気は優しくて力持ち・d31336) |
アリス・フラグメント(零れた欠片・d37020) |
●夜の学校にて
「こんな時間に、何か学校に御用ですか?」
女流作家が壊したとおぼしき通用門から、校内に潜入しようとしていた灼滅者たちの背中に、厳しい声とライトが浴びせかけられた。
振り向けば、隙なく制服を着こなした2名の警察官。女流作家による潜入では警備システムに影響はでないだろうと予測していたし、もちろん灼滅者たちも行動には細心の注意を払っていたが、もしかしたら音や光の漏れでご近所から通報が行ったのかもしれない。
「あっ、申し訳ません、通報でもありましたか?」
文月・咲哉(ある雨の日の殺人鬼・d05076)が素速くプラチナチケットを発動し、愛想笑いを浮かべて頭を下げた。
「私共この学校の教師でして、大事な資料を忘れたことに気づいて、取りにきたところなんです」
「申し訳ありません、先ほどまで飲んでたものですから、うるさくしてしまったかも。教師のくせにお恥ずかしい」
濃紺のパンツスーツに革スニーカー、大ぶりのバッグと教師らしい服装をした糸木乃・仙(蜃景・d22759)と、
「(社会人に見えるといいけど……)」
きっちりと結わえたポニーテールのシュシュにそっと触れ、女流作家が壊したとおぼしきドアノブをそっと背後に隠した天渡・凜(その手をつないで未来まで・d05491)も、調子を合わせて恐縮した様子で頭を下げた。
「なんだ、先生方でしたか」
プラチナチケットと3人の教師らしい出で立ちが効いたか、警察官は拍子抜けしたように肩の力を抜いた。学校から怪しい物音がする、不良生徒でも入り込んでいるんじゃないかと、神経質な近所の住民から通報が行ったとのことであった。
くれぐれも戸締まりをお願いしますと言い残し、警察官たちが去って行くと、するすると縁石の陰から蛇が這いだしてきて、大柄な少年の姿になった。
「やれやれ、女流作家、ザツな性格みたいだから、学校に押し入る時に騒がしくしたんじゃないっすか」
押出・ハリマ(気は優しくて力持ち・d31336)だ。彼に応じ、
「私たちは静かにまいりましょうね」
暗がりから声が聞こえ、ドアが開けられた。旅人の外套をまとった黒嬢・白雛(天翔黒凰シロビナ・d26809)が、まずするりと暗い校内へと入った。
その後に闇纏いを使ったアリス・フラグメント(零れた欠片・d37020)が入り、姿の見えている者たちも近所の視線がないことを確認してから校内に足を踏み入れ、殿の、やはり旅人の外套を使った天枷・雪(あの懐かしき日々は・d28053)が慎重に壊れたドアを閉めた。
予め手に入れておいた校内の見取り図を手に、迅速に、しかしあくまで密やかにターゲットがいる放送室を目指す。
非常灯の緑色の光にだけ照らされている夜の学校は、ひどく不気味だ。
「ありもしない恨みや年月を勝手に積み上げて、生まれたばかりの子に押し付けるなんて趣味が悪いね。被害を出さない為にも、そんな偽りはさっさと正してしまうに限るよ」
早足で目的地を目指しながら仙が呟くと、ハリマは、
「去年、宝石博物館で出会った時も残念さが漂ってたっすけど、こんな所に出たとは。設定の安直さも相変わらずみたいっすしねえ……」
敵の残念さを嘆いたが、
「何にしても、ここで決着をつけるっす!」
鼓舞するように拳を握ると、闇の中で仲間たちが頷いた。
放送室は2階にある。足音を忍ばせ階段を上ると、廊下の真ん中あたりの扉から、小さな四角い光がスポットライトのように廊下の床を照らしていた。防音扉なので、小さなのぞき窓しかないのだろう。
その明かりが外に漏れないよう、雪が廊下のカーテンを丁寧に閉め直した。
放送室の扉が鍵をかけてられいたら破壊しなければならず、一手間かかるが、敵のザツな性格からいって、おそらくそれはない……などと考えながら扉に近づき、のぞき窓からそっと中の様子を窺うと。
部屋の真ん中の学習机の上に、古いポータブル・レコードプレイヤーが鎮座している。ターンテーブルの上では歪んだレコード……そして放送ブースの前の椅子に座り、回るレコードを嬉しそうに見つめている、もっさりとした女性の姿があった。
防音ドアと防音壁のせいで流れているはずの音楽は聞こえないが、女性が何かを呟いた……すると。
煙のように、またはホログラムのように。
レコードから、影のような女子高生の姿が現れて――。
●悲しき都市伝説
「――いくぞ!」
灼滅者たちはスレイヤーカードに手をかけ、躊躇なく放送室へと飛び込んだ。
扉を開けた途端、耳に飛び込んできたのは不気味に歪んだショパン。だが、灼滅者たるもの、不快な音楽であっても、戦いの妨げになどなりはしない。
「あーーーっ、去年の博物館のタタリガミ!」
ハリマが廻し姿でどーんと女流作家の真ん前に立ちはだかり、シールドを振り上げて防御力を高めている隙に、白雛が、迷いなくモノトーンの炎をレコードの上に浮いている女子高生に叩きつけた。
女流作家は、都市伝説に自分を守らせようとすると思われるので、まずは盾を奪ってしまいたい。
「な……なんなの、あんたたち!?」
乱入に女流作家がとまどっている間に、灼滅者たちはがっちり包囲を固めていく。放送室のため窓も明かり取りの小さなものしかないし、出入り口も今入ってきた扉1カ所しかないが、タタリガミの逃げ足の早さは折り紙付きだ。凜はサウンドシャッターを発動しながら、扉をしっかり閉め、これ以上通報などされないよう、外に光が漏れないように窓の暗幕も素速く引いた。
仙が、
「ひとつ、誰もいない放送室から、夏休みに閉じこめられ死んだ子の声が聞こえてくる話……」
百物語を呟きながら、指輪からの弾丸を女流作家に向けて牽制気味に撃ち込むと、窓側に回り込んだ咲哉が、白い軍服姿に変身した雪と共にロッドに込めた魔力を都市伝説に叩きこむ。
「ああっ、さてはあんたたち、灼滅者ね!」
幾分我に返ったらしい女流作家が、血走った目をつり上がらせて立ち上がった。
「せっかく育ったところなのに、また邪魔をしようってのね? そうはいかないわ!」
都市伝説にはレコードのパワーで自己回復させながら、おどろどろしい声音で語り始めたのは。
「牛の首……それは恐ろしすぎて話してはならぬ怪談……」
「……うッ」
前衛が怪談の世界らしい幻影に取り囲まれた――遠足らしい子供たちが満載のバス。前に立ち、どうやら怖い話……牛の首の話を児童たちに披露しているらしき教師。その話がよほど恐ろしいらしく、生徒たちはひきつった顔で悲鳴を上げ始め――。
「報告書でも確認しましたが、本当にくだらない結末しか作りませんね。さぁいきますよ三流作家さん。語り部としての格の違いを教えてあげましょう」
その幻影をピシャリと止めたのは、アリスが張った結界であった。閉じていた左目がカッと見開かれている。
「タタリガミが食べて良いお話など1話たりともありません。このお話の結末、変えてみせます」
すかさず凜が、
「人数はこっちが多いけど……力量はどっちが上か。戦ってみないとわからないね。でも押し切ってみせる!」
白雛に癒しの帯を伸ばして回復する。
「助かりましたわ!」
白雛は幻影を振り払うようにぶるんと首を振ると、罪救炎鎌ブレイズメシアを大きく振りかぶって女子高生に踊りかかった。ハリマは再び盾を振り上げ、愛犬・円の手助けも得て前衛を怪談のダメージから回復する。咲哉の白刃がレコードプレイヤーを抉り、雪の伸ばした影業・黒雪が、女子高生をきつく縛り上げると、その姿が大きく揺らいだ。
「ちょっと、止めてよ、せっかくここまで強くなったのに!」
女流作家が癒しの物語を唱えようとした……が、それを察知した仙は、蛇剣をすかさず作家の腕にジャキリと巻き付け。
「自分たちの世代って、物心つく頃からずっと携帯音楽プレイヤーでね。レコード見ても分からない人も多いと思うよ。設定を間違えたね」
「あたしがトシだって言いたいわけ!?」
「それもそうだけど、話も暗くてつまんないよ。自分だったらね、語る話は受け継がれる音楽のことにして……祖母から聞いた昔話の体裁でね。外地から帰らぬ曾祖父を想い、曾祖母と祖母が繰返し聞いていたというそのレコードは、娘である母が受け継ぎ、今ではその子である女子高生の携帯音楽プレイヤーに取り込まれて愛聴されている……なんて展開はどう?」
「な、なによそれ、おもしろいじゃないの……で、でもねっ、そんなイイ話は都市伝説になんないのよ!」
挑発した分、仙は、女流作家が原稿用紙から放った呪の紋章に射抜かれてしまったが、仲間たちはその分都市伝説へと攻撃を集中させることができる。
まずは凜が素速く仙へとStergazesから癒しの矢を撃ち込み、アリスが鎌から放った黒い波動が首の縄を封じ込める。白雛が伸ばした影の刃がセーラー服を切り裂いて、ハリマは雷を宿した手で喉輪を見舞う……と。
バチバチッ!
ショートしたかのようにレコーダーから火花が散り、針が飛んだのか、ピアノ曲がブツッと途切れ。
「――いただきだ」
苦し紛れに投げられた光で形作られたレコードをかいくぐった咲哉が、愛刀・十六夜を抜き、一閃した。
散り散りに切り裂かれたセーラー服と共に、創られた悲しみが桜の花びらのように部屋中に散って……。
レコードは割れ、音楽は消え。
女子高生も、無へと還った。
●女流作家
「よ……よくもッ」
粗大ゴミと化したレコードプレイヤーを前に、せっかくの作品を滅された女流作家は怒りにうち震えているが、灼滅者からすれば、これでやっと本丸へと刃が届くというもの。
ここからが本番とばかりに、仙が足止めを狙って果敢に踏み込んでいき、雪がマテリアルロッド・落涙に魔力を載せて続く。
「あたしはそう簡単にやられないわよ!」
しかし残念なキャラとはいえ、彼女もタタリガミである。仙の刃は甘んじて受けたものの、雪の一撃は原稿用紙から発された炎の勢いで相殺されてしまった。
だがアリスがすかさず鋼の帯を射出して、
「この話のエピローグがひらめきました」
挑発的に嘯く。回復に徹してきた凜も、ここでは氷魔法を発動し、
「さぁ……断罪の時間ですの!」
白雛が激しい炎を灯した鎌の切っ先を敵に突きつけた。
「作家として作品を育てたい、その気持ちは分からんでもないけどな」
咲哉は杖に魔力の火花を散らしながら、踏み込むタイミングを狙っている。
「生憎と悲劇は好みじゃないんだ。この物語の結末は、俺達でハッピーエンドに書き換えさせて貰うぜ。ほら、登場人物が作者の思惑を超えて勝手に動き出すなんて、良くある話だろ……っ!」
ぐっと踏み込んだその瞬間、
「生意気言ってんじゃないわよ、創作の苦しみも知らないガキ共が……出でよ、闇の石油王!」
女流作家も叫び、2人の間に、いかにもアリガチな中東風ちょいワルイケメンが立ちはだかった。だが、
「学校怪談って、作者不明のまま広がるだけっすけど、作家としてそれでいいんっすか? このままじゃ絶対ヒットしないっすよ?」
「うっさいわね、それはそれ、これはこれよ!」
ハリマが、イケメンの幻影を蹴散らすように力強い摺り足で割り込んで。
「だって、この1年、学校怪談以外も書いてたんでしょ? どんな話書いてたんです?」
「なんであんたにそんなこと……ぐぼっ」
しゃべりで気をそらしておいて、鋼鉄の拳を思いっきり腹にぶちこむ。守られた咲哉も、めいっぱいまで魔力を込めたロッドを、突きつけるように作家の胸へと押しつけた。
「ぎあっ!」
さすがのタタリガミも放送台に叩きつけられて悲鳴を上げ、そして。
「あ……あんたたち、随分……」
両手で傷口を押さえ、呻いた。
言葉にはされなかったが、おそらく『随分、強くなっている』と言いかけたのだろう。
そう、タタリガミを暗躍させておくしかなかったこの1年間、灼滅者たちには色々あった。そして、強くなった……!
ハリマに回復の帯を伸ばしながら、凜が堂々と叫ぶ。
「七不思議を題材にしたホラー小説は嫌いじゃないよ。だけど、現実にそれが現れて暴れ出すというなら、わたしたちが止める!」
――やれる!
確信を得た灼滅者たちは、攻撃を間断なく畳みかけていく。
女流作家の攻撃も強烈なものではあったが、灼滅者たちは癒し合い、庇い合い、チームワークでしのいでいく。
何度か刃を交えるうちに、タタリガミはじりじりと押されていき……。
「……こうなったら、一般人を巻き込んで」
放送機器のスイッチに手を伸ばした。
「やらせないよ」
だが、その卑劣な動きさえ、灼滅者たちは可能性として視野にいれていた。
雪が冷静に影で縛り上げて放送機器から遠ざけ、仙が蛇剣を伸ばしてその手を弾き飛ばす。アリスが怪談を語って毒をそそぎ込み、白雛が死の刃で回復を妨げる。
「どすこーーーいッ!」
ハリマの渾身の喉輪にのけぞった女流作家だったが、続いて切り込んできていた円をぎりぎりでかわすと、
「そこを突破すれば……っ」
放送室唯一の出口である扉を背に守るようにして、前衛に交通標識の黄光を照射していた凜に向けて、原稿用紙を開いた。
「やらせませんわ!」
大事なメディックを守るべく、またターゲットを絶対に逃がすまいと、壁を蹴って横っ飛びに射線に飛び込んだのは、白雛。
白雛は激しい炎に包まれてしまったが、逃げ道を絶たれた敵の背後から。
「鼬ごっこもここで終わりだ。寝不足なら、ゆっくり眠りに就くといい」
クラッシャーたちの日本刀の閃きと、魔力が迸るロッドが襲いかかった。
「ぐあああああっっ!」
2人分のエナジーが、自壊したかのようにタタリガミの身体を幾つかの部分に分裂させた。その部分部分は、次第に空間に薄れ、溶けていく。
「あ……あたしが消えたら……あたしの物語はどこへ……」
こうして女流作家は、恨めしげな呻きを残し、物語の深淵へと消えたのであった。
「……おやすみ」
咲哉が刀を納めた音が、パチンと夜に響いた。
速やかに後かたづけを終えた灼滅者たちが、現場を後にしようとした時。
「ちょっとだけ、待ってください」
振り向けば、割れたレコードをそっとつなぎ合わせながら、アリスが都市伝説の気配を左目にすくい取っていた。
「わたしと共にいきましょう……放送室にだけ流れたラブソングは、彼からのOKサイン。そんな結末に変えてあげますから……」
作者:小鳥遊ちどり |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2018年3月12日
難度:普通
参加:7人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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