緑の離宮

    作者:西東西


     数日前。
     教室から抜けだし、学園の中庭で昼寝をしていた一夜崎・一夜(大学生エクスブレイン・dn0023)の元に、七湖都・さかな(終の境界・dn0116)が現れた。
     眠い目をこすり、無言で突きつけられたスマートフォンの画面を見やれば、どこかに掲示されていたポスターを撮影したらしい、写真が映っている。
     ――イングリッシュガーデン一般公開のお知らせ。
     ある、資産家の別荘に造られたイギリス式の庭。
     それが、近日公開されるという。
    「ここ。行きたい」
     一夜はすぐに「わかった」と頷き。
     さっそく、主催者に電話をかけた。


    「その別荘は、庭いじりの好きな資産家が、自分の趣味のために得た場所らしい」
     資産家は時間を作っては、庭づくりに勤しんでいた。
     しかし、昨年の冬を前に、急逝。
     遺族は悲しみにくれ、別荘や庭を閉鎖し、だれも立ち入れなかったらしい。
    「でも、あたたかくなって。花が、さいたから」
     色づいた庭に故人の想いを見てとった遺族は、庭を手入れし直し、一般にも公開すると決めたという。
    「主催者に確認し、一日、この庭を学園で貸し切りにしてもらうことができた。寒さもやわらいできたし、自然の中でゆっくり過ごすには、良い機会だろう」
     興味のある者がいれば一緒に行ってみないか、と一夜が呼びかけて。
     さかなが、パンフレットを手渡して回った。


    ■リプレイ


     訪問当日の天気は、快晴。
     郊外にたたずむ別荘の庭は、一歩踏みこんだだけで都会の喧騒を忘れるほどの静けさに満ちていた。
     陽射しも暖かく、庭のあちこちで季節の花々が咲き乱れている。
    「誕生日おめでとう、さかなさん」
    「ありがとう、アリス」
     久々に故郷の風を感じるわと告げるアリス(d00814)に手招かれ、さかな(dn0116)も並び歩く。
    「この庭の魅力は、なんと言っても自然の景観を取り入れたところにあるわ。18世紀のピクチャレスクの思想に根ざしているの。自然をありのままにってね」
     故国の庭を映したとあって、アリスの解説は的確で。
    「ああ、向こうに冬薔薇が咲いているわね。薔薇は大英帝国の国花。よく手入れされているわ」
     一輪もらいたいけど、もちろん花泥棒は厳禁と、悪戯っぽく微笑む。

    「俺の故郷と雰囲気が近い場所なのだ」
     告げたブレニア(d30672)に誘われ、時成(d31939)も庭の片隅に佇む。
     クレマチスとアカシアが咲く、建物の影。
     道の左右に花と造形物を置き、人工的でありながら、自然そのものを殺さず擦り合わせる技術に目を見張る。
     それは、礼儀や常識をわきまえながらも、素が抜けている。
     『カッチリ』と『ゆったり』が程よく調和した、眼前の彼にも似て。
    「故郷には、アカシアが一面に咲く丘があった」
     風にそよぐ花畑を見やり、郷愁に駆られたブレニアが呟く。
     もうきっと、あの丘に帰る事はないけれど。
    「時成は、行きたい場所はあるのか?」
    「美味しいラーメン屋」
    「そうだな、きっと塩味が良い」
     笑うブレニアの傍らで。
     時成は帰りに食事にでも誘おうと、そっと、考えていた。

    (「――花は好き」)
     大事な友達と一緒なら、きっと、より鮮やかに見える。
     京(d02355)は静佳(d10904)と並び歩きながら、あてどなく花の小道を歩いていた。
     時おり、見つけたベンチに腰掛けて。
     鳥の鳴く声や葉擦れの音に耳を傾け、のんびりと過ごす。
     語りあうのは、他愛ないこと。
    「春の新作スイーツとか、衣替えした街頭とか……。貴方の『好き』とか。趣味や食べ物の好みのことよ? 私、貴方のこと実はあまり知らないじゃない」
     心落ちつけられる場だからこそ、ありふれた会話を重ねたくて。
    「それとね、静佳さん。私、貴方におねだりしたいことがあるの」
    「……改まって。……どんなおねだり、ですか?」
     いぶかる静佳に、京は微笑んで、言った。
    「名前で、呼んでほしいなって。何だかとっても、特別な気がしない?」

    「紫崎君は、花とかあんまり似合わないよね」
    「……悪かったな、似合わねぇ男で」
     怒らない宗田(d38589)を見やりながら、澪(d37882)が微笑む。
     アーチを潜りながら、くるっと少しだけ後ろ歩きで景色を堪能して。
    「まるで童話の世界みたい」
    「童話ねぇ」
    「紫崎くんは興味無いの?」
    「俺はあんま、興味無ェかな。んなキャラでもねぇだろ」
     その言葉に、澪が地面に目線を落として。
    「あの……ありがとね」
    「あ? なにが」
    「知り合って以来……ずっと、付きあってくれてるし。だから、その……色々と」
     理由を聞いて、宗田はきょとんと眼を見開いて。
    (「あぁ、気使われてると思ってんのか」)
     澪らしいと胸中で呟き、力任せに撫でてやる。
    「バーカ。俺がお前なんざに気使うわきゃ無ェだろ。ほら、もう少し見たらどっかで休むぞ」
    「あわっ!? ちょっ……い、痛いってばもー!」
     乱暴だけれど。
     それが、宗田の優しさだと知っている。
    「素直じゃないなぁ」
     反論は無視して。
     二人ならんで、花咲く道を歩いていく。

     ――こたつは素晴らしいけど、そろそろ暖かい日差しが魅力的な頃だから。
     駆けまわりたい気持ちを押さえ、呼音(d37632)はお行儀よく散策中。
     ぽかぽか陽気に暖まっていると、眼前に紫月(d35017)の姿が見えて。
     庭の手入れについて真剣に観察する背中、その肩めがけ跳躍!
     ぐえ、と肺の空気を吐く声に続き、
    「重い」
     と、一言。
     通りかかったさかなが、
    「なかよし」
     と、無表情のまま手を叩く。
    「……いきなりで悪いが、此奴をどうにかしてくれないか」
     しばし考え、おいでおいでと手招けば、
    「さかな、雪の時は遊んでくれてありがと」
     呼音はぴったりさかなにくっついて、あたたかいと喜んだ。
     重荷から解放された紫月が、ぐるりと肩を回して。
    「さかな、今日はお誘い感謝と、誕生日おめでとさん」
    「誕生日、おめでと。もう春だよ。こんなに花咲いてるよ」
     きれいだよと跳ねる声に、
    「ん。いろいろ、きれい」
     さかなも、極彩色の庭をじっと、眺める。

     カメラ片手に、優奈(d02148)は深呼吸。
    「ドレスを着たお嬢さんが、お茶したりしてそう!」
     花の香りを満喫する傍で、暁(d03770)はクロッキー帳に線を走らせていて。
     優奈はシャッターをきりながら、良い被写体場所を探しては暁を手招いた。
    「どう? あたし、格好いい?」
     花木に囲まれたベンチに座り、ポーズをキメれば、
    「はーい、優奈。そのまま座ってなさい?」
     くすり笑う暁が、その情景を白の世界に線だけで閉じ込めていく。
     ――人物までを描くのはアンタだけ。特別なのよ。
    「帰って、色を付けるのが楽しみだわ」
    「暁のパレットに、色がいっぱい増えますように!」
     自分も、その中の一つになれたら良いなと優奈が微笑む。
     目に焼き付けた色は、いつまでも鮮明。
     だから写真に負けないくらい、鮮やかに残してあげる――。

     庭園の中にガゼボを見つけたニコ(d03078)と未知(d37844)は、ベンチに腰かけ小休憩。
     御伽話の世界を思わせる景観に、しばし魅入って。
    「ニコさんの実家って大きいんだよな? 庭もこのぐらい立派だったりするの?」
    「確かに屋敷は屋敷だが、庭はこんなに立派ではないよ。周りは鬱蒼とした森に囲まれているしな……」
     なんだかホラーな響き!と未知が笑い、伸びをした、その時だ。
    「見て! あそこにアーチがある! ああいうのくぐりたくなるんだよな」
     一緒に行こうぜと手招かれ、「勿論」とニコも後を追う。
    「植物のアーチってさ、何となく結婚式っぽいよな。――な、なんてな!」
     はぐらかすように、背を向けようとした未知へ。
    「そ、そう言う事なら、手を取って共に歩かねばなるまいな」
     ほら、とニコが右手をさし出して。
    「……ニコさん、王子様みたい」
     照れ臭そうに手を乗せ、未知が笑った。

    「御手をどうぞ? Lady」
     掌を差しだした颯人(d17307)に「一丁前に子供扱い?」と眉根を寄せ、彩(d14693)は仕方なくといった様子で手指を重ねた。
    「ねぇ、この中で俺に似合う花ってどれ?」
     ズル賢く、遠まわしに何かを探るような言葉。
    「白いマーガレットがよく似合う。シンプルで、愛らしさがあって」
     ――誰の傍にでもそっと寄り添えそうな、優しさ。
     俺の一番好きな花だと、颯人が告げて。
    「彩ちゃんはね、カサブランカ。優美で気品高くて、一見手を伸ばし難いのに、実はずっと純粋で繊細で、触れれば甘く馨る」
    「――……は?」
    「歳下だからって、見縊んないでよ。凛と背筋伸ばして強がる姿も、美しくて愛おしいんだ」
     映画のような台詞に、頬が染まる。
     上がる鼓動、体温。
     すべて隠そうとする彩の耳に、秘め事ひとつ。
     ――君の花が綻ぶところは、俺だけが知ってれば良いと願う。
     誰より傍で寄り添い、一杯の優しさを注ぐから。

    「花がいっぱいで、とても綺麗です……」
    「今の花の見頃は?」
    「鈴蘭水仙、スミレ、チューリップ」
    「クリスマスローズ、チューリップ、ジューンクラブアップル。それにハーブの類か」
    「そろそろアネモネも咲く頃ですね……」
     問いかけるマサムネ(d21200)に、返す水鳥(d20122)。
     どちらも、実際のイングリッシュガーデンに佇むのは初めてのこと。
    「春のガーデンは、本当に生き返ってる気分です……」
    「生き返るって感じ! マジで油絵の世界って感じ」
     緑の迷宮の中。
     水鳥の手をしっかりと握りしめ、歩く。
     行きついた先は、だれも知らない秘密の花園。
    「水鳥はどんな花好き?」
    「特に好きな花、は……。今、季節じゃないんですね……」
    「そっか。じゃあまた見に行こうな、何度だって」
    「そうですね……。次、その花が咲いていたら、また一緒に見に行きましょう……」
     花のアーチの下で、二人寄り添って。
     そっと、約束の口づけを交わす。

    「わあ……素敵なお庭ね!」
     スケッチブックをとり出した百花(d14789)が、「いっぱい撮ってね?」とエアン(d14788)にカメラを手渡して。
    「しっかり研究して、理想の庭造りの参考にしよう」
     メモをとる百花の真剣な横顔を、こっそり写真に収めたりして。
     石を敷いた小さな道や、茂み。
     そして花々。
     かつてエアンが暮らした庭の記憶を辿るように、二人、のんびりと巡り歩く。
    「アーチの下にベンチを……こんな感じでどう?」
    「いいね。絡ませるなら、白い薔薇がいいな」
    「うん、ももも白がいいな」
     スケッチブックに描いた理想の庭を覗きこみ、微笑み交わす。
    「夏になったら、薔薇の下のベンチでランチをとるの」
    「木製のベンチに、ももと座りたい」
     暖かく穏やかな時間を、二人で――。


     エスニックの大判ストールを羽織りひとり歩くのは、月子(d08603)。
     ナチュラルな衣装に合わせた控えめな刺繍模様を風になびかせ、気の向くまま庭を巡る。
    「綺麗ですね、とても」
     春の息吹を全身で感じながら、蔦のアーチをくぐる。
     そこには、木製のベンチでうたた寝をする陽桜(d01490)の姿があって。
    「思わずうとうとなんて……してませんよ?」
     月子の気配に目を覚まし、うーんと伸びをひとつ。
    「ご一緒しても、良いですか?」
     声をかければ、喜んでベンチのスペースを空けてくれた。
    「お昼寝して、目を覚ましたら不思議の国でした、とかありそうですね」
     言った矢先にアーチの先から現れたのは、白い少女。
    「さかなさんは、さしずめ白うさぎさん、でしょうか?」
     首をかしげるさかなへ、月子がお祝いを告げて。
    「七湖都さんにとって、実り多い一年となりますように」
    「ありがとう、月子」
     礼を告げるさかなの袖を引き、陽桜は一眼レフカメラを掲げ見せた。
    「よかったら一緒に、庭園内を散策しませんか?」

     すれ違いざまに声をかけたのは、紗夜(d36910)。
    「七湖都先輩はそうか、珊瑚だったか」
    「そう。さんご」
     第三者には謎会話だが、補足無しでも通じるあたりが、二人らしい。
    「結構、洋な雰囲気の庭なんだね」
     石畳の上を選び歩き、緑のアーチを潜り抜ける。
     ――葉の緑。
     ――花の鮮やかな彩。
    「彩の組みあわせって、大事なんだよね。ここは彩が喧嘩しないように、考えられて植えられてると思う」
     光の先を見やれば、影に佇む柚羽(d13017)の姿。
     片手挙げ先ゆく紗夜の背を見送り、さかなが歩み寄る。
    「柚羽」
    「一緒に、日向ぼっこをしませんか?」
     示した先には、二人掛けのベンチがあって。
    「陽の光があたたかい。それを感じられるのは、何てことない様に思えて、とても大切なことだからと、誰かが言っていました」
     先に腰掛け隣を示せば、さかなも座って。
     まどろみを誘うぬくもりの中。
     鳥の声。
     小さな風の音。
     ならぶ、黒と白の少女。
     ――触れてみたいと思うけど、触れられない。
     未だ言語化不能の、感覚的な好意。
     ふいに、ほっそりとした右手を陽光に透かすようにかざし、不思議そうに白が言った。
    「きえなかったの。さっき。触れたのに」
     あの日、『別の黒』にも言った。
     ――触れたら、もっとほしくなる。
     ――『己の半身』が、全部もっていってしまう。
     でも、そのまじないは。
    (「きっと解ける」)
     そんな確信を抱きながら、黒い少女はまぶたを閉ざした。

     遠く手を振るマサムネに手を振り返しながら、【糸括】のメンバーたちも庭を楽しんでいた。
    「うわあ、すっげえ! 絵本の中の世界みたい!」
     はしゃぐポンパドール(d00268)の傍らでは、
    「よし、あれは薔薇だ」
    「こっちはチューリップだな」
     薔薇で飾られた石壁や門を指差す明莉(d14267)を見やり、脇差(d17382)が張りあっている。
    「お花がパッーと咲いてらっしゃって、とても綺麗ですわ!」
     花のアーチを往復する残暑(d36555)に、
    「円錐の樹木に円形の花壇っ、ひとつひとつがね、個性を持ってるなのね」
     杏子(d17363)が丁寧に解説を入れていく。
    「なるほど。花の個性を活かすために、どこの花壇に何の花を植えるか、計算されつくしてるんだな」
     感嘆の声をあげながらスマートフォンで周囲を撮影する千尋(d07814)へ、
    「ね、ね、ミモザの花、ってあるかなあ? おれのすっげえたいせつなひとの好きな花なんだ」
     せめて写真に撮って帰りたいと、一緒に花探しを始めて。
    「はい、お花のティーカップ、召し上がれ」
     杏子が猫サーヴァントと共にミニチュアのカップに花弁を集め、手渡していく。
    「わーい、杏子様ありがとうございますわ、とても可憐ですわ!」
    「うおっキョンすげえねえコレ! ホントに飲めそう!」
     花カップに鼻面を突っ込んだミカエラは、明莉がひょいと救出。
    「このお庭を作った人は、本当に植物が好きなんだね」
     猫ミカエラ(d03125)が午後の陽射しに目を細める様子を見やりながら、輝乃(d24803)が呟く。
    「これは図鑑と魔術書で見たヤツだな。近代魔術結社はイギリスに多いからな」
     こんな珍しい植物まであるのかと感嘆しながら、勇司(d38358)はあちこち目移りしているようだ。
    「ここの主は、何を想ってこの庭を作ったんだろうな」
     ふと零した明莉の言葉に、改めて庭を見渡す。
     ――あるじ亡きあとも、連綿と息吹めぐる庭。
     隅也(d37654)は仲間たちの言葉に耳を傾け、「なるほどな」と思つつ、静かに庭園を眺めていた。
     花については詳しくなく、造り主が何を思ってこの庭園を作ったのかもわからない。
    「……わからないが、ここが造り主や遺族にとって思い入れの深い場所だというのは、なんとなくだが、理解できる気がする」
    「大事にされていた場所だからかな。居心地もいい感じだな」
     勇司の言葉に、一同が頷く。
    「一緒に遊びに来れる仲間がいるって、いいことだね」
     勇司の言葉に、何人かが頷く。
    「いつかみんなでイギリス行って、本場のイングリッシュガーデンを見るのもいいね」
    「いいね、イギリス」
     千尋の言葉に、すぐに明莉が賛同の意を示す。
     カモミールの茶をふるまえば、何人かがうたた寝を始めて。
     視線を移せば、琶咲も眠りに誘われていた。
     花に囲まれ、穏かに眠るその様子に、
    (「――花ある君と思いけり」)
     いつだったか、国語の授業で聞いたような詩の一節が頭に浮かぶ。
    (「あれもまた、恋の歌だったろうか」)
     起こさないよう、脇差はそっと、上着をかけて。
    「にゃ~」
     ――今日は幸せな日になりそうだなあ。
     と、猫のミカエラは大きく伸びをした。

     桜堤キャンパス3-6の3人は、万感の想いを胸に花咲く庭を歩いていた。
    「高校生活も、とうとう最後でござるな」
    「なんか早く感じるね」
    「中二の編入から皆と一緒であったで、感慨深くもあるの」
     サーニャ(d14915)、咲耶(d16119)、ルティカ(d23647)の順に言葉を繋ぎ、改めて眼前に広がる自然に目を移す。
    「ミモザの木陰が気入りじゃが、手折る訳にも行くまいて。咲耶殿とサーニャ殿はどこを気に入ったかの?」
    「拙者は、さっき見たチューリップの通路が良かったかな」
    「私は、お花の下を通れるとかお家の周りがいいと思うけど」
     三人三様。
     笑い交わしながら、未来の姿に想いを馳せる。
    「進学先は考えておるかえ? 水を向けるも、我自身も決めかねておるなあ」
    「私も、まだはっきりとは決めてないのよ」
     そんな二人とは対照的に、
    「大学では、身近な世界を学んでいくつもりでござる。天文学部も楽しそうだし、グルメ学部なんかも気になるでござるな」
     観光学部で、日本や世界を知っていくのもいいかなとサーニャが笑う。
    「サーニャ殿はらしいやもな。さかな殿にも聞いみようぞ。探検がてら探してみるかえ」
    「探検、いいかもしれないね。まずはお誕生日おめでとうって、言わないとね」
    「いざ、突撃取材!」
     ほどなく、もう一人のクラスメイトはすぐに捕捉され。
     誕生日の歌の合唱を受けたさかなは、目を見開いた後に、「ありがとう」と、頷いた。
     進路を聞かれた後、しばし、考えて。
    「ずっと、哲学、したかった。けど。今は、なんでもしてみたい」
     その声音が、今までになく明るく聞こえて。
     サーニャは3人の手を取り、円陣を組むようにして、言った。
    「今は決まらなくても大丈夫! 未来の道は、常に皆の前にあるのでござる!」

     おなじ時間を過ごした、かけがえのない仲間たちへ。
     今日の日の、春の陽光のごとく。
     かがやく未来が訪れることを願って――。

    作者:西東西 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2018年4月10日
    難度:簡単
    参加:36人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 9/キャラが大事にされていた 3
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