クラブ同窓会~いつか、どこかのフォトグラフ

    作者:長谷部兼光

    ●永遠の一瞬
     懐かしき学び舎。
     かつての教室。
     変わらないなと微笑して、加持・陽司(世界の篝火・d36254)は陽射しの中に佇む一組の机に手を置いた。
     時が経つのは早いもので、あの日、あの闘いの日々から十年。世界に平穏が訪れ、季節が幾度も廻り、気付けばそれは古い旧い昔の物語。けれども瞼を閉じれば、あの花火のように眩い日々が今でも鮮烈に――。
    「おや、すみません。邪魔をしてしまいましたか?」
     がらりと大きく戸を開けて、現れたのは和装姿の見嘉神・鏡司朗。
    「いや。いいんだ。楽しみは当日まで取っておく」
     先日とある洋菓子店で偶然遭遇(エンカウント)したこの男、今では骨董品店を営んでいると言う。何でも、去年まで気ままに世界を放浪し、その際蒐集した品々を元手に……と言うよくわからない経緯を語ってくれたが……取り敢えず人生を謳歌しているのだけは良く解った。
     兎も角、エクスブレインである彼は未だ武蔵坂学園とそれなりに近しく、それ故ここであったのも何かの縁と、同窓会の為に多少の協力――学園への仲介を頼んだのだ。
    「許可、取れましたよ。当日は武蔵境キャンパスを丸々一般開放してくれるそうです」
    「マジか。太っ腹だな」
     言いながら、陽司は机の上に一冊のアルバムを広げる。
    「写真が語る十年の軌跡……これも一つのジャーナリズム、ですね」
    「ああ。再び集ったみんなの写真をキャンパスの至る所に貼り付けて、一日限りの展覧会だ! 多くの人を招いて、灼滅者も一学生・一個人だったってことを伝えたい」
     学生時代の写真。ここ十年の間に撮った写真。昔の話、今の話。限られた時間の中で、それでも限りなく思い出話に花を咲かせてみたい。きっと皆、それぞれ素敵な思い出を作ってこの十年を過ごしてきたのだろう。
     陽司はアルバムのページを捲り、戻し、また捲り……そして漸く絞り込んだ数枚の写真を手に取った。
     どれも捨て難いが、さあて……どの写真を飾ろうか。


    ■リプレイ

    ●イマムカシ
    「いらっしゃい! 今日は最高の一日になるぜ! 目を幸せにしてってくれよな」
     同窓会当日、武蔵境キャンパスは灼滅者達の今昔を一目覗いてみようと訪れた人々で大賑わい。
     話を聞けば都外から態々足を運んできてくれた人も多く、自然と加持・陽司の口元も綻んだ。
    「あれ、陽司……?」
     聞き覚えのある声音に陽司が振り向くと、ミカエラ・アプリコットの姿があった。朝から素振りのおかしい旦那さんを尾行して、気付けばここに辿り着いたらしい。
    「写真展? わぁ、懐かしい~♪」
    「何だったら旦那さん、校内放送で呼んでみようか?」
    「ううん、大丈夫。皆の写真も見て回りたいし、あかりんもずるいよね。見つけたら後ろから驚かしちゃおうかな」
     ミカエラは陽司に手を振って、エントランスを後にする。
     ……陽司も動く。人の波も大分落ち着いた頃合いだ。皆がどんな写真を選んだのか、沢山見て回りたい。
    「改めて、今日集まってくれた皆に感謝だな!」

    「僕もほら、探偵になって張り込みとかするようになったから、それなりに写真は撮ってるんだよね」
     とある教室内、心地良くもゆるい雰囲気を纏った風峰・静が指差したのは、学園近くのあの交差点を複数の日時・角度で観測した写真。
    「こうして見るといつの時代も奇抜な恰好してるよねぇ、ここの学生」
     この傾向は、きっと今も変わっていないのだろう。
    「あとは身内用に、この間の結婚10周年パーティで陽司に撮ってもらったやつ。ふふふ、良いでしょうこれ」
     忘れもしない。陽司自身が万感の思いを込めて撮った、幸福な家族の肖像。
    「陽司兄、素敵な同窓会ありがとね! 私ももうすぐ武蔵坂の学生じゃなくなるから、こうやって振り返る機会を作ってくれてうれしいな!」
     白峰・歌音が広げたのは、武蔵坂にやってきてから過ごした想い出の写真達。
     何時の物かと尋ねれば、何時でも全部と明快な答えが返ってくるだろう。
    「ここでの想い出は、私にとって楽しくて、かけがえなく大切な想い出になった。その想い出をみんなと共有して、これからもっと明るく楽しくすごしていく原動力にしたいな!」
    「そうだな。俺がこの写真を選んだのも言葉にすれば同じ理屈なんだろう」
     お邪魔してるよと会釈をし、月村・アヅマは中学時代に所属していたクラブの、部員達で集まっている写真を数点、壁に貼り付けた。
    「あー……この写真についてか。俺がまだ学園に来てすぐの辺りなんだけど、その頃はダークネスとの戦いにも全然終わりが見えてなくて。俺、元々そういうの血生臭い事とは無縁だったし、正直しんどくてね」
     当時の遣り取りを思い出すように、アヅマは写真を眺める。
    「そんな時に、この人達に会ったんだ。若気の至りで済まされないくらい無茶苦茶してたし、かなり振り回されたりもしたけど、なんていうかなぁ、そうやってバカ騒ぎ出来る事に、結構救われてたんだ。だからまぁ、感謝の意味でというか」
     ……改めて言うと結構恥ずかしいな。
     小さくそう呟いたアヅマははにかんで、誤魔化すように、
    「さて、そろそろ他の写真も見に行くかな」

     中等部三年E組。この教室を選んだのは、アリス・ドールと月影・木乃葉。
     大人になったアリスの仕草。常に無表情だった10年前と比べると、全体的に優しく、柔らかくなったように思う。
    「……武蔵境キャンパス、久しぶりに帰ってきたよ」
    「キャンパス1つ丸々……武蔵坂も相変わらず太っ腹といいますか……陽司君も主催お疲れ様です」
     木乃葉が選んだ写真はRB団として活動していた頃の赤ずきん姿のものと、とある花火大会で咲いた花火の写真。
     そこに映るかつての木乃葉は、同年代の男子の平均と比べても大分小柄だったが、
    「……背。伸びたよね」
    「はい。この10年で20㎝は伸びてますよ」
     あの頃は若かったですね……と木乃葉は苦笑し、
    「この花火、自作だったんですが、これが縁で花火会社に就職して……」
     世の中何の経験が役に立つかわかりませんね、と頬を掻く。
    「……私は今、小学校の教師をやっているの」
     そんなアリスが展示したのは中学二年の修学旅行、沖縄の国際通りでショッピングを楽しむ陽司、木乃葉、アリスの写真と、中学卒業式の際、皆で正門に集まって撮った記念の一枚。どちらも、懐かしい。
    「……加持はカメラマンになったんだってね……すごいな………高校の頃に話してた夢を叶えたんだ」
     なんの、まだまだこれからさ。陽司はそう言って、
    「そうだ。二人とも、時間があるなら後で――」

     高等部3年2組。教室に鏡司朗――エクスブレインが居る光景は、次々と舞い込む事件に奔走した日々を思い出す。
    「やぁ戦友。組連合から共に歩んで、いつの間にか加持とも十年来の付き合いだ」
    「組連合……今となっては懐かしい響きだ。このキャンパスも……」
     木元・明莉が陽司を迎え入れ、神崎・摩耶は教室に集った皆を眺めて微笑む。
    「思い返せば、『垓王牙大戦』がその始まりだった」
     明莉はその頃から撮り溜めていた『日』の写真を展示し、当時を振り返る。
     太陽、白夜、そして、
    「金色の月……か」
     淳・周が呟き、明莉が頷く。二人の脳裏に過るのは、一匹の炎狐だ。
    『彼ら』の事は私もよく思い出すと、摩耶は示す。
    「近江八幡・安土山。2015年、2018年、2028年の3枚だ。見嘉神は足を運んでいないはずだが、見知っているだろう? 炎獣、影、不死王と我々の、縁と絆が交錯した地だ」
     摩耶は未だ明確に覚えている。崩れていった躯と、最後の言葉。
     炎の月の思い出を胸に、摩耶は凛と笑む。
    「あいつらは、笑って行ったんだ。アタシたちが笑って無けりゃ、きっと化けて出てきちまうさ」
     10年前と変わらぬテンションのまま、周は写真を披露する。学生時代に撮った写真は国内の名所的な自然風景中心で、卒業後より先の日付の物は、世界各地の遺跡や大自然がメインだ。
     聞けば、周は今、考古学者として、ヒーローとして世界中飛び回っていると言う。遺跡荒らしと直接やり合うこともあるのだとか。
    「あ、この写真なんかは結構よく撮れてるぞ! インドの象の群。精神世界の……と、置いといて! 見嘉神はこの10年どんな風に過ごしてきたのか聞いてみたいかな」
    「そうですね……直近ではフランスで料理の修行をしてみたり、エベレストを登ろうとして諦めたり、南極でペンギンと戯れたりしていました」
     人生に対して節操が無さすぎる。諸々束縛されていた反動かも知れない。
    「見嘉神の依頼は、とにかく想定外のことが多かったぞ?」
     あくまでも、私はあなた方の水先案内をしただけですよ、と、鏡司朗は柔和に笑んで摩耶に返す。今の世界の形を決めたのは、あなたがたの力です、と。
    「皆の写真で展覧会、加持らしいな。見嘉神もお疲れさんだぜ」
     鈍・脇差もまた、皆の写真を見て回る。丁度、半分くらいは見終わっただろうか。
     脇差の選んだ景色は、糸括の大きな木。
    「加持も覚えてるだろう。仲間と過ごしたあの屋敷で10年前に撮ったものだ」
     春夏秋冬。大切な時を共に過ごしたこの木もまた、掛け替えの無い仲間だった。
     中でも、脇差が気に入ってるのは花が散った後の新緑の枝が広がる風景。
     文字通り花は無いけどな、と脇差は苦笑する。
    「降り注ぐ陽の光に向けて、葉を枝を空いっぱいに伸ばす様子に……生きている木の力強さを感じてな」
     なんて、中々照れくさいなと脇差がごちるその横で、そんなことは無いだろうと言い切る明莉の手元には、もう一枚の日の写真。
     こっそり隠し撮った、向日葵着ぐるみ姿のミカエラ。その向日葵のポケットの、メイド服を着たうさぎのアップリケを指でなぞり、
    「大戦後、俺が闇堕ちした頃に、俺を想い、これを付けたらしいんだ――早く戻ってこい、と……当時は、恋心ではなかっただろうけど、それでも」
     この時点で明莉以外の全員が気付いていたが、黙っていることにした。何を黙ったかと言えば、
    「ほんと、不器用で、愛くるしい『俺の太陽』……なんてね♪ ま、本人にゃ絶対内緒……?」
    「な、な……なんで知ってるの~! てっか、この写真、ナニ? いつどこでどーやって撮ったのー!?」
     ミカエラの接近をである。
    「な、なななな何でココいるのっ!?」
     明莉は赤面しながら写真を隠すがすでに遅く。同じく真っ赤なミカエラに、全て露見してしまったのだ。
    「なんで自慢げ……う~! ……帰りのラーメン、スペシャルで奢りだからね!」

     校庭に林立する、程良く広い壁面も今日ばかりは余すとこなくカンヴァスだ。
    「わたくしのお嬢様な写真が火を吹きますわ! と言うわけで、自慢の一枚を持ってまいりましたわ!」
     小向・残暑がぴたりと貼り付けたのは、手ブレが物凄い空撮写真。
     写っている皆がわちゃわちゃしてて、なんだかよくわからないことになっている!
    「残暑さんこれは!?」
     陽司も思わず敬語だった。
    「これを見るたびにあの頃の楽しいことを思い出しますわね!」
     なんてわかりやすい解説だろう。
    「色んなことがありましたわ、これからも色々あると思いますわ。写真を撮って残しておけばあの頃の思いもすぐに思い出せますわね!」
    「けど。いざ、選ぶとなると迷っちゃうね」
     良い思い出があればあるほど、きっとそうだろう。その中で琶咲・輝乃が選んだ一枚は、
    「高等部に入ったばかりの頃に絵で大作を描いてみようとして、サイキックハーツ大戦の様子を大きな画板で描いたんだけど、その工程で写真を撮っていたんだよね」
     この写真を見ると、どれだけ大変だったか改めて思い出す。完成した時の達成感もひとしおだった。
    「……私も、写真なら手持ちが結構あるよ。ほら、この壺とか最近仕入れたヤツなのだけど。綺麗な上に金運アップの効果まである。お一ついかが?」
     ただ、効果には個人差があるかもねと、壺を勧める空井・玉の今の職業は、個人貿易商。
    「なんて、冗談はさて置き。私が寄稿したのはこれ、沖縄の海で撮ったマンタの写真。13年と15年の修学旅行。この為に水中カメラ買ったんだっけな、懐かしい……と、25年に私用で寄った時の分。同一個体が映ってるの、判るかな?」
     マンタの寿命は20年、あるいは40年以上あると言う。それだけ長生きなら、マンタの方もしばしば巡り合う玉の事を覚えているのかもしれない。
    「学園全体でなんて、凄いよね……っと、俺の方で用意した写真はバリスタ学部の4年間のだね」
     神鳳・勇弥が提供したのは写真は概ね何の変哲も無い物だが、時折物騒な攻城兵器(バリスタ)が混じっている気がするのは気のせいだろうか。木の精だろう。
    「担当の角野教授なんて、すっごく手先が器用で3Dラテとか神懸ってたよ」
     写真の中。ティーカップの上に寝そべるのはミルク泡のわんこだ。
    「こっちの写真は運動会だね。そうダね……自分ノかふぇノ宣伝ニネ、頑張ッタリネ」
     歴代の仮装リレーで勇弥が扮したその姿。とても雄々しくフェミニンだ。
     心中、察するに余りある。脇差は勇弥の肩をそっと叩いた。
    「皆の思い出写真もいいね。写真を撮る人によって同じような場面でも表情が違うのが、また面白い」
     風が戦ぐ。皆の写真を見た輝乃は、満足そうに微笑んだ。
    「そういえば。写真の整理していたら、糸括の芸術発表会の時の写真が出てきたよ。なつかしいよね……わっきちゃんの絶対領」
    「ちょっと待て!」

     榎・未知がビハインド・大和と手分けして教室に展示するのは、大事な義息子『大和』との家族写真。
    「大和は、名前だけじゃなく見た目や雰囲気まで、相棒の面影があるんだ。何か運命感じるだろ。今は5つ位の大和だけど、その先も生き続けて、大人になっていく姿を見られるんだな、と思うと嬉しくて。その過程を欠かさず撮り続けていこうってな」
     花見。海で砂のお城作り。ハロウィン。雪だるま。忘れ難い一瞬の記録。
    「と言う訳で、10年後も20年後も、またこういう展覧会開いてくれよな陽司さん!」
    「おいおい。締めるのはまだ早いぞ。陽司、久しいな……本を出版したら教えておくれ、学園の図書館に入れて貰えるように頼もう」
     魔法使いも、今は司書教諭。ニコ・ベルクシュタイン(花冠の幻・d03078)が持ち込んでくれた写真の主役は、大和と同じくもう一人? の家族であるトイプードルのアレクサちゃん(♀)。
    「茶色いぬいぐるみのようで可愛いだろう。何をしても可愛い子でな、ついつい事あるごとに写真を撮ってしまっていたらえらい枚数になってしまったので、折角だから是非見てやって欲しい」
     ニコのイチオシ・膝に乗って来て其のまま寝てしまった様子を撮ったワンショット。その破壊力は凄まじく。
     動画もあるとニコは言うが、いけない。これ以上は危険だ。

    「招待してくれてありがとう、よーじくん。よかったら、みんなで見ていってちょうだい」
     しんと静かな保健室に、荒谷・耀が展示するのは、【2021年 9月26日 つかさ誕生】と題された、生まれたばかりの赤子を抱く耀の写真から始まる、娘の成長記録。
     すやすやと寝ている写真、ハイハイしている写真。
     初めて立った時の写真、化粧品でイタズラしてる写真。
     一緒にハンバーグ作った写真、教会にお手伝いに行った時の写真。
     それから――今年小学校に入学した時の写真。
     これは歴史だ。一人の人間がこの世に生を受けてからの克明な足跡であり、
    「可愛いでしょ? ……この子が生まれて来てくれたおかげで、また『未来』に目を向けられるようになったの」
     一人の人間が、絶望した世界に再び向き合った徴。
    「希望ある未来に子供たちを送り出すためにも、頑張らないとね」
    「そうですね。より良い明日を子供達に」
     そう、木乃葉は同意した。

    「すっごいね! 僕も飛んでるみたいじゃん」
     静は感心し、
    「そうそう、こういうのを期待して足を運んだんだよ」
     部長のは中々らしくて良いねと玉が頷き、
    「……ステキすぎて、反則だよー、あー姉……」
     教室に一歩踏み込んだ歌音は両手で口を塞ぎ思わず感涙する。
    「よーじくん、教室一つ、まるっと貸してくれてありがとー!」
     アメリア・イアハッターが作り出した『空』はそれ程までに雄大だった。
     天井や壁や窓には隙間なく様々な日時の空の写真を。
     部屋に入った時に上を見上げると朝の空。
     進んでいくと夜の空になっていくように。
     そして床には、空から学園を撮った写真を敷き詰めて。
    「あっ、陽司君の写真ありますよ?」
     木乃葉が美香に床に貼られた一枚の写真を指差す。
     学園を映した写真には、生徒達が空のカメラに向かって手を振っているものも数多く。
    「その通り。もしかしたら、過去の君や友達が、今の君に手を振ってるかもね?」
     一仕事終えたアメリアはどんなものだと胸を張る。
     それは正しくfly high――扉を開けば、まるで空を飛んで昔の学園を見下ろしている感覚に浸る。

     からの調理室。出迎えるのはとても美味しそうな食べ物の写真達。
    「ねぇなんで飯テロ……飯テロでしょ?」
    「実は此処そういう趣旨のアレなの? 何だったら私も闇堕ち時に勝手に作られてた食レポフォルダ解放するけど?」
     静と玉の抗議が程良く空いた皆の腹に響き渡り、
    「やっぱり唐揚げ隊(Fly High)だったんだ……!」
     ふとした拍子にミカエラは10年前の学園祭を思い出す。
    「……いや、これはただの飯テロ用写真じゃなくてですね。戦争の時の特設大食堂のご飯なんですよ」
     調理室の主・坂崎・ミサは説明する。
    「地方に行った時は地方の、海外に行った時は海外の料理とかを並べましたね。それらを食べて、こんなに美味しい物を産んだこの地を守らなければならないと決意を固めたものです」
     印象深いのはサンシャインシティの餃子とか、フィレンツェで食べたイタリア料理とか。
    「おいしかったです……」
     飯テロでは。
    「背景に食堂の様子も写ってますよ。食事から見えてくるものもあると思います」
     言われて、人々はミサの写真を覗き込む。
     ありったけのご飯と格闘する成長期の少年少女達の姿が、そこにあった。

     最後の一枚、山岳ガイドをしている三蔵・渚緒の写真を見終えた御鏡・七ノ香は、ほうと息を吐く。
    「子供の写真。皆さんの写真。思い出、日常、表現。一つ一つの作品に思いが溢れていて、どれも見入ってしまいます」
     耀先生がお母さんになっていく。ミサさんの食べ物に風景が見える。
     木乃葉さんの花火が誇らしげ。静さんの幸せな結婚式。
     ニコ先生と未知さんの溢れる家族愛。
    「そして、アメリアさん。アメリアおねえさんの空。私もあの空に憧れて、Fly highに来たんだなあ、と改めて思い出します」
     たった一日の同窓会。けれど一日で幾度の十年を体験しただろう。

    「皆さんお元気でしたか。私は元気です♪」

    ●暖かな陽射しの中で
     そう言えば、主催の写真をまだ見てないな、とアヅマは言った。
     陽司はにやりと笑い、今から撮るんだとカメラを構えた。
     アリスが加持も入らないとと促して、タイマーが回る。
    「ンじゃ最後に、こうして皆の写真と皆を入れて! こいつァ奇跡の一枚になるな!」
     カメラが瞬くと同時、同窓会は終わりを告げる。

    ●いつか、どこかのフォトグラフ
     そして出来上がった写真は、20年目の第一歩。

     だから。
     ここから先の後日談(おはなし)は、

     また――十年後に。

    作者:長谷部兼光 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2018年11月22日
    難度:簡単
    参加:22人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 2/素敵だった 10/キャラが大事にされていた 0
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