運動会~コスプレでヒーロー!

    「あらっ、コスプレ競争ですって。楽しそうじゃないの」
     黒鳥・湖太郎(高校生魔法使い・dn0097)が、5月26日に開催される「武蔵坂学園運動会」の競技表を見てはしゃいだ声を上げる。
    「湖太郎さんは毎日コスプレみたいなもんでしょうに……いでででで」
     ツッこんた春祭・典(高校生エクスブレイン・dn0058)は、むにゅ、と桜色のほっぺたをつねりあげられる。
    「異性装ばかりがコスプレじゃないわ。いつもの自分と違うキャラに化けることが楽しいのよ。それにアタシの女装はコスプレじゃなくってよ。これが普段着なのッ」
     はいはいそうでしたね、と典は頬をさすりながら適当に同意しつつ、競技表をのぞき込み、
    「学年や性別関係なくみんな一緒に楽しめるってのはいいですよね。走りで順位はつかないから気楽だし」
    「コスプレしてパフォーマンスしながらトラックを一周して、自分と観客を楽しませることが目的なのね」
    「グループ参加も面白そうですね。とはいえ、組分けの性質上、同じ組連合の人としかやれないですけど」
     クラブで組むと、敵と組むことになってしまうかもしれないからだ。
    「きっと組連合の人と組むのも楽しいわよ。クラスメート同士ならではのコスプレとか、高校生と小学生のコンビだからこそ出来るコスプレってのもありそうじゃない……あらっ、最も優れたコスプレをした者にMVPを授与ですって!」
    「へえ、走りが遅くても、このレースなら1等が取れるかもしれないってことですね」
    「そうよ、コスプレさえ頑張れば誰でも1等賞が取れるのよ。中高生を差し置いて、小学生がMVPを取れるかも」
    「MVPはボーナス得点が加算されるそうですし」
     参加者全員に参加点が与えられるが、MVPには更にボーナス点がつく。
    「鈍足でも運動会のヒーローになれる絶好のチャンスね!」


    ■リプレイ

     ぱぁん!
     トラックにスタートのピストルが鳴り響く。コスプレ競争の始まりだ。

     第1レースは、時代物系だ。
     フィズィ・デュールは、普段の軽快なチャイナ服とは対極の、フルアーマーとフルフェイスヘルムで決めた西洋の甲冑騎士に扮した。手にはに傘を改造した馬上槍。甲冑は本物っぽいらしく、重たそうに歩く……が、ゴール間際敵に遭遇すると(マネキン)猛チャージで敵を蹴散らしゴールになだれ込み、槍を上げて勝利のポーズ。
     普段は着物の鹿島・壱はべるさいゆ風の豪華な洋装に金髪縦ろーるのかつらで、まりー・あんとわねっと風。ふりる付洋傘、ねいるあーと、扇、腕飾りに首飾り……実にごーじゃす。しかも、先生方に近衛役と馬役をしてもらうという、徹底した女王様っぷり。決め台詞は、
    「弁当がないなら、ぱん食い競争に出りゃいいじゃないかい?……うふふ。」
     ジョアニィール・ジョナウレムは、故郷英国のヒーロー、シャーロック・ホームズのコスプレに挑んだ。トレードマークのチェック柄の鹿撃ち帽にインヴァネスコート、パイプにステッキ、紳士的な歩き姿も堂に入っている。髪型はオールバック、髪も茶色に染め、コートの中も茶色のスーツに折り返し無ジーンズ、目はカラコンで青に、と細部までこだわった。
     桜井・夕月は自らのコスプレよりも、皆のを見たいが為に参加を決めた。彼女自身は、神主服と黒い狐の尻尾と耳でなんちゃって妖狐的なコスプレをしている。巫女服と迷ったのだが、ここは敢えて神主服で。尻尾がふさふさなのと、黒狐であることは譲れないこだわりだ。パフォーマンスは、魂鎮めの風の応用で花吹雪を散らす。
     水瀬・瑞樹は、水干・立烏帽子・白鞘巻太刀・扇の白拍子姿。トラック一周するので袴は足首程の長さにし、素足と草履が覗いている。パフォーマンスは巫女舞。生きる故の喜びや悲しみ・苦しみ……私達はいつ闇堕ちしたっておかしくないから「今」を大切にしたい……そんな願いを込めて舞う。
     金髪、青い瞳、長身のイリス・エンドルは巫女服で竹箒に乗った。地面すれすれに走行する箒の上に立ち上がり、スケートボードのようにトラックを回る。半周過ぎると箒はスピードアップし、
    「1位はいただき!」
     イリスはご機嫌で叫ぶ。しかし、スピードの出し過ぎで止まれずに、壁に激突してしまい……。
     片倉・光影は、黄金の鎧&兜で参戦。鎧兜ともダンボールに金色の折紙を貼り付けた手作りの力作である。騎兵槍は妖の槍に厚紙を貼り付けて加工した物だ。光影はトラックを回りながら、槍をバトントワラーのように器用に振り回す。5月の陽光に、鎧兜と槍がきらきらと光る。

     第2レースの選手がスタート地点に着くと、応援席から可愛いー、という声が上がった。きぐるみ(等)対決なのである。
     スタートで寝ているグレーのクマは白依・くろ。チャームポイントは胸のリボン。のそのそと起き上がって走り出す。しかし途中で障害物!? という演技の壁パントマイム。がんばれー、と連合の応援が飛ぶと、勢い良く着ぐるみを脱ぎ捨て、ねこ耳しっぽつきの美少女戦士に変身!
     謝華・星瞑はペンギンの着ぐるみ。足にはローラースケート、手にはジュースの入ったグラスを乗せたトレイ。途中でジャンプしたりバック走行をしても、ジュースはなぜかこぼれない……?
    「あっ、グラスに透明の蓋がしてある!」
     一番前で見ていた小学生に指され、
    「ばれちゃった、てへぺろ☆」
     シャルロッテ・クラウンは、水着に船長コート・海賊帽の海賊ルックという普段着で歩いていたら、参加者に間違われて巻き込まれた。どうせ出るならと、海賊旗を振り回しながら陽気に歌う。
    「♪よーほーよーほー、いかりをあげろ! ♪ふねがすすむはろまんのうなばら、むかうさきはだいぼーけん! ♪あたいはかいぞく! よーほーほー!」
     海老塚・藍は、白い全身タイツと大根の着ぐるみで、全身大根コスチューム。
     メイクを手伝った湖太郎がスタート地点で見守り、やはり手伝いに回った雨宮・恋と水樹・亜璃子も楽しそうに見物している。
     藍の腕や足も全身タイツのおかげで真っ白で大根のよう……なのだが、大根の着ぐるみは走りにくくて大転倒、せっかくの美味しそうな大根は泥まみれ。
     崇田・來鯉は、戦艦大和の着ぐるみヤマトンである。船体に手足がつき、海軍の帽子が乗っかっている。霊犬のミッキーにも、旧海軍士官風の帽子と制服を着せて共演。時々ミッキーを乗せたり、ラムネやもみまん等を皆に振る舞いつつ走る。
    「暑い……でも、呉を宣伝する為にも頑張るぞ!」
     来栖・清和は段ボール製ライドキャリバーを着用し、取っ手を外した台車に座り、手でこいでゴロゴロと走り出した。一見単なるはりぼてだが、実は色々仕掛けが。付属のスピーカーからバイクのドリフト音と、
    「ライドキャリバー ファイティングモード!」
     という音声、機械音が響き、清和が立ち上がるとなんと人型ロボットに! 応援席へ向けて攻撃の構えをとった後、背中のマフラーから花火を噴き出しつつ、ゴールへ。
     銀・ゆのかは、今回のコスプレ競争にあたり、熱海にある実家の旅館の倉庫を漁ってきた。探索の結果見つけたのは、魔神ロボット的な着ぐるみ。使われずに倉庫の奥深くに眠っていたものだ。結構よくできていて、両腕が発射しそうな感じ……しないけど。

     第3レースは武蔵坂学園らしい(?)魔法少女系対決である。
    『翡翠の魔女っ子☆プチフィーユ』の衣装を着けた緑谷・瑞樹は、スタート前に、
    「魔女オディール、このプチフィーユが許しません!」
     と、湖太郎をビシッと指さした。一瞬面食らった湖太郎だったがすぐに振りを理解し、
    「いつでもかかっておいで!」
     その応えをきいて瑞樹はスタートを切った。しかし終盤で、発動したプリンセスモードのせいで急にスカートの裾が長くなり。
    「ああっ、めっちゃ走りにくい!」
     長南・雅は、
    「絶望を灼やし夜を照らせ、白き天狼キュアシリウス!」
     のかけ声と共に、白基調の空を思わせる装飾つき魔法少女のコスプレで登場した。白いアームカバーに、犬耳、ヒーリングライトの光をバックにと、演出も凝っている。スタートすると、護符で作った敵の式神を、派手なアクションとダンスで切り裂いていく。
     大業物・斬と千景・七緒と笙野・響【7G蘭組】の3人は『ハピキュア』という3人組を結成した。斬と響は日曜朝の魔法少女風、七緒はマスコットのうさぎの着ぐるみ。3人とも手作りでとてもかわいらしい。
    「ほれほれ2人共行くぜ~! めっちゃ目立とうな♪」
     スタート前の斬のかけ声に、
    「お~!」
     と2人はノリノリで応える。
     スタートすると、斬と響はアクロバティックに原作を参考にしたアクションやポーズを次々と決めていく。
    「勇気の白刃、ハピブレイド!」
     七緒はマスコットらしくふたりを応援したり、観客に愛想をふりまく。
    「頑張れ~っピィ♪」
     そしてゴール後は当然3人そろって決めポーズ。
    「「「三人揃って、ハピキュア~♪」」」
     水沢・安寿は角の生えたカバのような怪獣の着ぐるみを着て参加である。一方、相方の一蝶・信志は、自作の戦隊風ピンク。
     安寿は、動きにくい着ぐるみでよちよちと歩きながら
    「(オネエ系ピンクは、さすがに規格外……)」
     とか思っている。しかし信志はノリノリで。
    「(憧れのピンク、張り切っちゃうわ!)」
     トラックの途中、安寿怪獣が、オネエピンクを殴るふりをし、ピンクは派手に吹っ飛ぶ。
    「みんなー、大変、ピンクのピンチよ-、皆でパワーを送って~!」
     信志は場を盛り上げるのも忘れない。

     第4レースには、黒服とエプロン系が並んだ。
     とはいえ、穗積・稲葉のテーマは執事ではなく、義賊的マジシャン怪盗だ。シルクハットにノースリーブの燕尾服、黒い長手袋に小粋なステッキ。自分への罰ゲームの意味もあるので、うさ耳うさ尻尾も装備。
    「怪盗、聖なるうさ尻尾、参上! 今宵、あなたのハートを頂きに参ります」
     神乃夜・柚羽は、以前から密かに制作していた衣装を身に着けた。髪は黒いリボンでツインテール、ホワイトブリムに銀色の鈴付きチョーカー、そして黒い和風メイド服。エプロンを付けて黒ニーソ。黒猫耳と黒猫尻尾……黒猫和風メイド完成。応援席に飴を配りながら、柚羽は満足感と達成感を味わっていた。
    【武蔵境高1-4】の森沢・心太と水瀬・ゆまは、メイドと執事である。ただし男女逆で。心太は、機会があったら女装すると約束していたのだ。
     ゆまは自分そっちのけで、心太の女装に心血を注ぎ込んだ。結果、長い黒髪ウィッグを後ろで束ねた、男性ホルモン何処と感じの大和撫子風に仕上がり、むしろゆまは自分の男装に自信がなくなってしまった。しょんぼりするゆまに、トラックを粛々と歩き終えた後、心太はゴールで礼をしながら、
    「似合ってますよ、ゆま」
     と囁き、ゆまは動揺してお盆に載せていた水をこぼしてしまった。
     永舘・紅鳥も執事である。ただし、アメリカンショートヘアの猫耳としっぽつきの『猫執事』。紅鳥は、スタート前に招き猫ポーズで「にゃん♪」と言って湖太郎に大接近し、
    「ふっきってるわね……」
     と呟かせた後、営業スマイルで「にゃん♪」と媚びを売りまくりながらトラックへと出ていった。
     白伽・雪姫と、霜月薙乃もエプロン姿だ。しかし彼女たちはメイドにあらず。運動会前、雪姫は薙乃に夢を語った。
    「私、ロールケーキになりたい!」
     しかし薙乃に説得され、ケーキ屋の制服風に落ち着いた。白いブラウスにフレアスカート、バンダナにエプロンでスタイルはおそろいだが、雪姫はピンク系、薙乃は水色である。
     並んでトラックを一周しつつ、雪姫が歌う。薙乃は、歌いながらも雪姫が自分のバスケットの中身に注目しているのに気づく。中身は作りのケーキやクッキーだ。
     薙乃は雪姫に笑いかける。
    「これが終わったら一緒に食べようね」

     第5レースの走者たちが位置につくと、応援席がざわめいた。ダークネスや眷属、妖怪が並んだからだ。
     八重葎・あきは、ぎょうざのかぶり物と『おもてなしの街宇都宮市』を象徴するメイド服を着ていた。宇都宮ぎょうざがたっぷりと盛られたお皿を片手に笑顔で、
    「ご当地グルメ選手権で1位の宇都宮ぎょうざをこれからもよろしくねっ☆」
     観客に配りまくり、営業に余念がない。
     天宮・睦月は白いカーテンを巻きつけ、ミュールを履き、首からは手鏡を下げ、蒼白いメイクという気合いの入った不気味ないでたち。スタートすると、影業を頭上に逆立て……正にメデューサ! 応援席をひとしきり威嚇すると、ゴール前で手鏡をおもむろに覗き、影を全身にまとわりつかせて石になり、転がってゴール。
     火土金水・明は全身を包帯で包み、ミイラ男のコスプレで臨んだ。しかし、包帯は黒。熱を吸収する黒全身でトラック一周は灼滅者といえどもつらく、ゴール前でダウン。担架で運ばれながら、明は。
    「赤色の包帯にすればよかった……」
     その隣にも全身包帯の2人組が現れた。【3C桜連合・トンカラトンFC】の御門・心と零零・御都である。2人はスタート直後、
    「トンカラトンと言え!」
     と叫んだ。今こそトンカラトンの素晴らしさを広める時! という意気込みだ。トラックを走りながら振る刀からも、
    「トン、トン、トンカラトン」
     という音が鳴る。
     ゴール直後にも当然、
    「トンカラトンと言え!」
     魂の絶叫。
     メイニーヒルト・グラオグランツもトンカラトンである。しかしちらちらとほどよく肌を露出させている。
    「トンカラトンと言え!」
     という声が応援席から飛ぶと、メイは俯き気味に、
    「と、トンカラトンと言え……」
     恥ずかしげに応える。萌えツボを押さえた、ある意味あざとい作戦?
     
     最後の走者たちが現れると、また応援席が沸いた。多くが、ふおおぉ、という感じの男子の鼻息である。なぜならセクシー系だから!
     ヴァイス・オルブライトはもじもじしていた。
    「(――だ、騙された……ッ。よりによってこんな衣装とは……ッ)」
     罰ゲーム仕様の超セクシーマカオ式バニーガールを仲間に用意されてしまったのだった。ナイスバティに良く似合っているのだが、レースが始まると彼女は文字通り脱兎のごとくトラックを駆け抜けてしまった。残念。
    【8H百合連合】のラーナ・セルクシノエと笑屋・勘九郎はチアリーダー。セクシー対決だが、男子も出たっていいのである。見えそうで見えないプリーツスカートがポイントだ。元気いっぱいにトラックを回りながら、今日のために練習した息の合ったダンス、アクロバティックな側転、馬飛びなどを披露する。ちなみに、スカートの下はホットパンツなので安心(残念?)。ゴールすると、ふたりはくるりと観客の方を向き、
    「可愛い女の子かと思った? 残念、お姉さんでした♪」
     「可愛い女の子かと思った? 残念、男の子でしたー!」
     津野森・樹は花魁風である。化粧も決まっている。暑いのを我慢しつつトラックをしなを作りながら優雅に歩いていく。応援席にお茶を振舞いつつ、
    「暑うおすな~、わっちの組を応援しなんし」
     しとやかにありんす言葉でアピール。しかし暑い。
     己斐之原・百舌鳥は、赤と黒のフリルつきミニ浴衣、色は黒と赤。三つ編みには赤い結紐に鈴。足元はサンダル。パフォーマンスは体操競技っぽいもの。大きく腕を広げて、袖を翻し、ステップ。鈴を鳴らして、つま先で跳ねて、兎のように踊る。笑顔は絶やさず、お客さんにウインク。まずは自分が楽しくなくっちゃ!
     妖孤の英霊・妲己に扮したロン・メイファンは、アーサー王をモチーフにした女騎士の阿剛・桜花とトラック上で立ち合っている。
     ミオは道士っぽい服を露出多めにアレンジし、スカートのスリットから美脚をおしげもなく覗かせて、艶っぽくカンフーの足技演武を披露する。
    「はいやぁー♪ 化かされたいアルー? こんこんっ♪」
     桜花は、白銀の鎧&青いスカート。スカートが短くて恥ずかしがっていたのだが、競技が始まるとノリノリ。剣を力強く振り回し、空手の回し蹴り・ジャンプ蹴りを披露。
    「必殺、イクスカリバー! おのれ雌狐! 無駄無駄無駄ですわー!!」
     姫条・セカイは、セクシーといえばこの人! のラブリンスターのコスプレを選んだ。
    「(同じ立場と姿になる事で見えてくるモノもあるはず。あの人をもっと理解する為にも!)」
     ラブリンスターの登場はセカイにとって衝撃的なものだったのだ。ライブを思い出しながら、彼女の歌や踊りを再現。Hな部分は無理だが、胸もそんなに負けていない。たぶん。

    「――色々あって、おもしろかったわねー!」
     競技が終わり、組連合の応援席に戻った湖太郎である。
    「あとはMVPの発表を待つばかりだけど……ねえ、誰がとると思う?」

    作者:小鳥遊ちどり 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年5月26日
    難度:簡単
    参加:44人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 9/キャラが大事にされていた 6
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