SEVENTH HEAVEN

    作者:西東西


     あるゲームセンターにて。
     大音量で洋楽を流すダンスゲームの筐体を取り囲むように、ギャラリーが歓声をあげている。
     ひとりで8枚のパネルを使用し、軽快にステップを踏むのは、60年代風のレトロな衣装に身を包んだ少女だ。
     下着が見えそうなほど短いミニ丈のワンピースから伸びる素足には、ニーハイブーツ。
     少女はゲーム画面に流れるアローをひとつも取りこぼすことなく、観衆を魅了するように踊り続けた。
     やがて画面に『PERFECT FULL COMBO』の文字が出るなり、胸の前で小さくガッツポーズ。
    「やったー! ハイスコア更新っ♪」
     スコアランキングに並ぶ『でぃす子』の名を見つけ満足げに頷き、ギャラリーたちに手を振った、その時だ。
    「……見つけましたよ。裏切り者のラブリンスター一派、『パラダイス・ディスコ』」
     人ごみをかき分け、現れたのは中性的な顔だちの美青年。
     ガラの悪そうな黒服の男を4人ほど引き連れ、少女を取り囲む。
     相手が何者か悟った少女――淫魔は、拗ねたように唇をとがらせた。
    「ちょっと。だれが裏切り者ですって? 悪魔ふぜいが、ラブリンスター様を侮辱しようっての」
    「なんとでもお言いなさい。貴女には、ここで死んでいただきます……!」
    「いけ! 守護者様に続け!」
    「アモン様の仇!」
     青年の声とともに、武器を手にした黒服の男たちが次々に襲いかかる。

     数分後。
     ゲームセンターの床には、満身創痍で倒れる淫魔の姿があった。
     

    「不死王戦争で灼滅したソロモンの悪魔、アモン勢力の残党が、再び事件を起こすという予測が成った」
     一夜崎・一夜(高校生エクスブレイン・dn0023)はそう告げ、一呼吸置いた後に、続ける。
    「現れるソロモンの悪魔一派は、淫魔に対して攻撃を仕掛けようとしている。きみたちには、このダークネス同士の抗争に、介入してもらいたい」
    「……ちょっと待って。ダークネス同士が、争ってるの?」
     驚いた灼滅者の声に、一夜は静かに頷く。
    「そう。仕掛けるのはソロモンの悪魔一派。対する淫魔には、悪魔一派に狙われる心当たりはない」
     かつて不死王戦争で共闘していたラブリンスターが、武蔵坂と接触した事を裏切りととったのか。
     あるいは、不死王戦争の敗北はラブリンスターと武蔵坂による策略だったと思いこんだのか。
     いずれにしても、淫魔にしてみればとんだ言いがかりだ。
    「ダークネス同士の抗争ではあるが、アモンの残党を倒す好機。……となれば、逃すわけにはいくまい?」
     一夜は目を細め、珍しく意地の悪い笑みを浮かべた。
     
    「今回敵となるのは、『守護天使(ガーディアン・エンジェル)』と呼ばれるソロモンの悪魔だ」
     女性と見まごうような中性的な容姿の青年で、背には天使の羽を背負っている。
     美しい外見とは裏腹に、これまでいくつもの事件の裏で暗躍を続けてきた、冷酷な堕天使だ。
    「守護天使は前に立って戦うことはない。攻撃も仕掛けてくるが、主に配下の援護を行う」
     一方、前に立つ黒服の男たち4人は、強化一般人だ。
     各々が武器を手に、積極的に攻撃を仕掛けてくるという。
    「ソロモンの悪魔が持つ『天使の輪を思わせる光輪』には、キュア効果のある列回復サイキックがある。一派全体での回復も手厚い。ただ仕掛けるばかりでは、長期戦となってしまう恐れがあるので、気をつけてくれ」
     なお、戦場となるゲームセンター内にはすでに一般人の姿はなく、人払いの必要はない。
     戦闘は休憩スペースを兼ねた広場で行われているため、足場等を気にする必要もなく、存分に戦える。
     
    「問題は、抗争に介入するタイミングだ。きみたちがどのような作戦をとるかによって、戦況は変わってくる」
     つまり。
     淫魔が襲われるタイミングで介入し、守りながら戦うのか。
     淫魔と悪魔の戦闘の最中に介入し、協力しながら戦うのか。
     淫魔が敗北したところで介入し、消耗した悪魔一派を相手に戦うのか。
    「どの方法をとるのか考え、作戦を練るのが良いだろう」
     「手間をかけるが、よろしく頼む」と、一夜は深々と、頭をさげた。


    参加者
    長久手・蛇目(地平のギーク・d00465)
    ヴァーリ・シトゥルス(バケツの底は宇宙の真理・d04731)
    リヒト・シュテルンヒンメル(星空のミンストレル・d07590)
    村本・寛子(可憐なる桜の舞姫・d12998)
    海川・凛音(小さな鍵・d14050)
    三条院・榛(どんなに苦しくてもやり遂げる・d14583)
    天霧・彰人(高校生デモノイドヒューマン・d16797)
    御剣・譲治(デモニックストレンジャー・d16808)

    ■リプレイ

    ●MODE SELECT:激 HEAVY
     ソロモンの悪魔・守護天使(ガーディアン・エンジェル)の声とともに、武器を手にした黒服の男たちが次々に淫魔へ襲いかかった。
    「返り討ちにしてあげる……!」
     パラダイス・ディスコが叫ぶと、その身に渦巻き状のツノと、揺らめく尻尾が出現。
     続けざまにギターを召喚し、迫りくる悪魔一派へ攻撃をしかけようとした、その時だ。
     2匹の霊犬が淫魔の眼前に飛びだし、強化一般人たちの攻撃を受け止めた。
    「いっちょ、誠意をみせるの!」
     北海道育ちの村本・寛子(可憐なる桜の舞姫・d12998)がご当地ビームで守護天使を狙うも、敵方の『壁』である龍砕斧持ちの強化一般人に阻まれる。
    「ちょっと! 人間まで邪魔しようっての!?」
    「勘違いしなや」
     ロケットハンマーを手にした強化一般人を無敵斬艦刀で斬り伏せ、三条院・榛(どんなに苦しくてもやり遂げる・d14583)が淫魔に声をかけた。
    「ダークネスゆうても、女の子が襲われてたら助けますわな」
    「このままでは危険です。私たちが守りますので、安全なところへ」
     海川・凛音(小さな鍵・d14050)も戦線に加わり、バイオレンスギターでハンマー持ちの配下へ殴りかかった。
     気がつけば、見知らぬ人間――灼滅者たちが、パラダイス・ディスコを背にかばい、悪魔一派と対峙している。
    「……ふぅん。助けてくれるんだ?」
    「詳しい説明は後です。外にも敵がいるかもしれないので、俺たちから離れないでください!」
     淫魔を狙ったハンマー攻撃をWOKシールドで受けとめ、長久手・蛇目(地平のギーク・d00465)が叫ぶ。
     盾越しに裂傷を受けるほどの、強烈な衝撃。
    (「ハンマー持ちは『クラッシャー』か……!」)
     乱入してきた灼滅者8人を見やりながら、守護天使は悠然と問いかける。
    「人間でありながら淫魔をかばうとは……。さては、貴方たちが『武蔵坂学園の灼滅者』ですね」
     だが、灼滅者たちは誰ひとり「是」とも「非」とも答えなかった。
    「最近身内に『魔王』だの言われとるさかい、『天使』とは相性悪ぅてな」
     榛は無敵斬艦刀を突きつけるよう持ち、口の端をもたげた。
    「その首、貰うで」
     ――情報のひとつとて、悪魔にくれてやる義理はない。
     灼滅者たちの強い意思に、堕天使は微笑む。
    「……良いでしょう。アモン様の件とあわせ、灼滅者集団には幾度も計画を邪魔されてきた借りがあります。淫魔とともに、『天国』へ堕ちなさい」
     声とともに『天使の輪』が輝いたかと思うと、分裂した光輪が灼滅者めがけて飛来する。
     残党とはいえ、ソロモンの悪魔の一柱。
     その攻撃は重く、灼滅者たちの身体に深い傷を刻んだ。
    「天使の姿をした悪魔というのは、滑稽ですね……!」
    「すぐに、回復します」
     リヒト・シュテルンヒンメル(星空のミンストレル・d07590)とヴァーリ・シトゥルス(バケツの底は宇宙の真理・d04731)は、霊犬『エアレーズング』『ポリ』の2匹と手分けをして回復にあたった。
     リヒトの奏でるギターの音色に、ふいに、旋律が重なる。
     それは淫魔パラダイス・ディスコが奏でた、癒しのメロディ。
     共鳴する旋律は前衛たちの受けた傷をたちどころに癒やし、立ちあがる気力をもたらした。
     淫魔は灼滅者たちに向かい、問いかける。
    「キミたち。音ゲーは好き?」
    「もちろんっすよ!」
     音楽ゲーム好きの蛇目が、ハンマー持ちの配下に拳を叩きこみながら答える。
    「ダンスは、好き?」
    「こう見えて、寛子はダンス系アイドルグループの最年少センターなの!」
     可憐に舞い踊りながら、寛子が龍砕斧持ちの配下を翻弄。
    「それじゃ、淫魔はお好き?」
    「…………正直、悪魔のついで」
     御剣・譲治(デモニックストレンジャー・d16808)はぶっきらぼうに言い放ち、己の利き腕を巨大な砲台に変えた。
     死の光線がハンマー持ちの強化一般人を穿ち、毒で侵していく。
    「俺だけじゃない。たくさんの人が巻きこまれて、悲しい想いをしたから」
     ソロモンの悪魔によって、デモノイドの実験台とされた過去。
     恨む気持ちは、もちろんある。
     しかしその記憶に、囚われたままではいられない。
     ――倒し、乗り越え、生きていくために。
    「OK」
     それぞれの回答を受け、パラダイス・ディスコは艶然と微笑んだ。
     頭に乗せていたサングラスをかけ、8人をあおる。
    「目標はソロモンの悪魔『guardian angel』。攻略難度に不足なし。……倒れるまで、一緒に踊り明かしましょ?」

    ●GOOD GREAT!
    「やれやれ。ソロモンの悪魔ってのは、もう少しオツムのいい奴等だと思ってたんだけど、な!」
     強化一般人を高く抱えあげ、地面に叩きつけるや大爆発が巻きおこる。
     天霧・彰人(高校生デモノイドヒューマン・d16797)のご当地ダイナミックが炸裂し、ロケットハンマー持ちの配下が、ようやく1人倒れた。
    「次は、こいつなの!」
     寛子は勢いをつけたウロボロスブレイドを鞭のようにしならせ、龍砕斧持ちの強化一般人を斬り刻む。
     ひるんだ隙を狙い、榛が無敵斬艦刀を振りおろした。
     地面を揺さぶるほどの振動。
    「そのコンボ、引き継ぎますぜ!」
     榛と入れ替わるように、蛇目は敵の間合いに飛びこんだ。
     倒れたまま身動きのとれなくなった配下めがけ、オーラをまとった拳で怒涛の連打を撃ちこんでいく。
     だが、敵もやられてばかりではない。
     ロケットハンマーを手にしたもう1人の配下が、すかさず地面を叩きつける。
     強烈な衝撃派が後方に立っていた灼滅者たちを襲い、至近距離から攻撃を阻んだ蛇目が吹き飛ばされる。
     淫魔の元へはすぐに霊犬『エアレーズング』が走り、パラダイス・ディスコは負傷を免れた。
     だが、度重なる攻撃をその身に受けていた霊犬は、消滅。
    「エア……!」
     リヒトは唇をかみしめるも、すぐに蛇目へリングスラッシャーを飛ばし、癒しと守りを施す。
    「危ないところでしたね。そこであなたに、バケツをプレゼント」
     淫魔を守りながら、ヴァーリはおもむろにバケツを差しだした。
    「これをかぶれば、敵には私とあなたの区別がつきません」
    「えーっ、ホント!?」
     驚きの声をあげてバケツをかぶろうとしたところで、渦巻き状のツノが引っかかった。
    「……入らないじゃない!!!」
     怒りにまかせて守護天使へ向かってバケツを投げつけるが、悪魔の元へ届く前に、配下が一瞬にして斬り捨てた。
    「交流は、後にしてください」
     凛音が静かに叱責し、緋色のオーラを宿したウロボロスブレイドで、接近しようとした配下を薙ぎ払う。
    「てか、ディスコさん。ツッコむとこ、そこなんかいな」
     榛が重ねてツッコミを入れる一方、守護天使は淫魔と灼滅者のやりとりに冷笑を浮かべた。
    「このような浅はかな人間たちにしてやられるとは……。淫魔と結託していたとはいえ、私たちも油断が過ぎました」
    「だからって、その復讐が正当だと思ってるんじゃないだろうな」
     魂を蝕む『デモノイド寄生体』を制御し、彰人は悪魔へ見せつけるように、青に染まった腕を掲げる。
    「……ああ、貴方は。『デモノイドの失敗作』」
     いかにも皮肉といった悪魔の挑発に、彰人の眉がぴくりと跳ねた。
    「彰人」
     同じデモノイドヒューマンである譲治が、すかさず、名を呼ぶ。
     殴り掛かりたいのは、彰人だけではない。
     それは、譲治も同じだ。
     だが、やみくもに殴り掛かって、勝てる相手ではない。
     彰人は胸中にわきあがる怒りを押しとどめ、拳を固めた。
    「お前たちに復讐の権利があるなら、当然『俺たち』にした事に対する報いも、受けないとな」
     たたずむ譲治が、彰人に呼応するように腕を巨大な刀へと変える。
     彼の腕もまた、青い。
     灼滅者たちの攻勢を認め、ロケットハンマーを手にした強化一般人が迫った。
    「お前たちが植えつけた、この力。何万倍にもして、返してやる……!」
     彰人の放った強酸性の液体が、配下の黒服を腐食させる。
     ひるんだところを、譲治がDMWセイバーで一閃!
     守りの薄くなったところへ、さらに追撃を喰らった強化一般人は、その身を引き裂かれ、間もなく絶命した。

    ●PERFECT!! MARVELOUS!!!
     残る敵は龍砕斧持ちの配下2人と、ソロモンの悪魔一柱。
     灼滅者たちの傷も増え続けてはいたものの、『メディック』として立つ淫魔の強力な支援を受け、ほぼ全員が攻撃に集中できていた。
     灼滅者たちの猛攻を受け、強化一般人たちの動きは目に見えて鈍っていた。
    「これ以上傷を負いたくなければ、その淫魔をこちらへ引き渡しなさい……!」
     悪魔の声とともに灼滅者たちの身体が内から凍りつきはじめるも、淫魔は尻尾を揺らし、歌で、ギターで、癒しのメロディを奏でる。
     凍りついた身体はたちまちに癒え、灼滅者たちはギターの音色に乗り、踊るように戦い続けた。
    「ソロモンの悪魔が八つ当たりとは……落ちたものですね」
     凛音がつぶやき、振りあげたバイオレンスギターで配下を殴打。
    「ここまで、です」
     契約の指輪『Mi Amor』を掲げたヴァーリの呪いが、あっという間に配下を石へと変えていく。
     祈るように手のひらを合わせ、放出したオーラで石像を粉砕。
     せめてこの強化一般人が、最期を意識する間もなく逝けたならと、リヒトは祈らずにはいられなかった。
     最後の1人となった強化一般人は捨て身の勢いで迫ると、手にした龍砕斧で次々と灼滅者たちを薙ぎ払った。
     しかし、配下1人に対して、灼滅者は8人。
     再び淫魔の支援で傷を癒した灼滅者たちは、留まることなく攻撃を繋げていく。
    「これで、終わりっすね!」
     蛇目のマテリアルロッドが、強化一般人を穿つ。
     流しこんだ魔力は瞬時に配下の体内を駆けめぐり、身体を内部から破壊する。
     破裂によって半身を失った配下は、声もなく倒れ、絶命した。
     もはや、ソロモンの悪魔の盾となる者は居ない。
    「今度こそ、くらえ!」
    「ケリを、つける」
     彰人、譲治の2人が迫るも、
    「おどきなさい」
     魔術によって生み出された竜巻が灼滅者たちを襲い、2人は大きく弾き飛ばされた。
     その一撃によって、悪魔の抑えに回っていたヴァーリの霊犬『ポリ』が消滅。
     凛音をかばった寛子も深手を負い、倒れた。
     ヴァーリとリヒトが急いで寛子を後方へと退避させたが、後衛位置にさがってなお、寛子はパラダイス・ディスコを守ると言ってきかなかった。
    「……どうして、そこまでするの?」
    「淫魔と灼滅者。相互理解は難しいかもしれないけど……。寛子は、あなたが他人とは思えないの!」
     ディスコ『ダンス・カテドラル』の部長として。
     ダンス好きの同志として。
     このまま、パラダイス・ディスコを悪魔に引き渡したくはない。
    「身の程知らずの灼滅者たち。淫魔をかばったとて、いずれ、貴方がたも支配されるだけ」
     堕天使の掲げたマテリアルロッドが輝き、目に見えない冷気が灼滅者たちの身体から体温を奪っていく。
    「狙った獲物を籠絡し、利用価値がなくなったとみれば、捨てる。それが『淫魔』のやり方です」
     諭し、ささやくような声に、灼滅者たちの心は揺さぶられた。
     パラダイス・ディスコはサングラスをかけたままで、その表情は見えない。
    「……淫魔たちを倒した、その後は? また、何かするつもり?」
     沈黙を守っていた譲治が、静かに問いかける。
    「良くお考えなさい。これは罠なのです。しかし、一派の淫魔を殺していけば、完全に淫魔の思惑にはまることからは逃れられ――」
     ゴッと鈍い音が響き、淫魔の振りかざしたギターが悪魔を吹き飛ばした。
     壁に打ちつけた悪魔を見おろし、パラダイス・ディスコは、言った。
    「あたし、話の長いオトコって、嫌いなのよね」
    「おのれ……! 格下の淫魔ごときが!」
     怒りをあらわにした悪魔の言葉は、そこで途切れた。
    「僕らの『友人』を侮辱されるのは、気にいりませんね……!」
    「ラブリンスターとは、さらなる友好関係が望めそうなんです」
    「友好的である限り、仲良くしていきたいっすね!」
     リヒトが、ヴァーリが、蛇目が。
     淫魔への想いを胸に、次々に攻撃を重ねる。
     灼滅者たちの体力は、限界間近。
     パラダイス・ディスコは返り血のついたギターを手に、再度ビートを刻む。
     癒しと、湧きあがる気力が、灼滅者たちの背中を押し続けた。
    「そろそろ、逝っとけ!」
     彰人のDESアシッド、譲治のDCPキャノンが炸裂し、反撃に出ようとした悪魔を再度弾き飛ばす。
     ウロボロスブレイドを手にした凛音、寛子が続き、悪魔の体力をそぎ落としていく。
    (「この私が、人間ごときにやられるなど、あってなるものか!」)
     悪魔は己の失態を呪い、すぐに退転を試みた。
     だが、時すでに遅し。
     守護天使は、戦闘に深入りしすぎていた。
     いかに悪魔とて、疲弊した身で逃れられる退路は、もはや無い。
     それでも突破を試みようとした、刹那。
    「待ちや。まだ終わってへん」
     つぶやくと同時に、榛は地面を蹴った。
     手にした無敵斬艦刀を振りかぶり、跳ねる。
    「うおらぁぁぁあああああ!!!」
     守護天使はすかさず光輪やマテリアルロッドで守りを固めようとしたが、榛の一撃は守りごと打ち砕き、悪魔の首を薙ぐ。
    「ギャアアアアアアア!!」
     転げ落ちた首がすさまじい悲鳴を発するも、続けざまに投げた無敵斬艦刀が頭蓋を粉砕。
     ようやく、静寂が戻る。
    「言うたはずや。その首、貰うてな」
     灰と化し、消えゆく悪魔を見やり、榛は満面の笑みを浮かべた。

    ●TOTAL SCORE:AA
    「キミたち、ありがとね」
     戦闘後、淫魔はサングラスを外し、素直に礼を述べた。
     ヴァーリやリヒト、寛子は淫魔との交流を望んでいたが、もはや灼滅者たちに、遊ぶだけの体力は残っていない。
     しかしソロモンの悪魔一派を前にここまで戦えたのは、淫魔との共闘があってこそ。
     灼滅者たちが淫魔を守ることを最後まで諦めず、その誠意に、パラダイス・ディスコが応えたからだ。
    「何かあれば、こちらに連絡をください」
     今後も共闘できれば、お互いにとって利益があるはずと、凛音が連絡先を書いた紙を渡す。
     対応を決めたら学園に知らせてほしいと、譲治も続けた。
    「キミたちのこと、ラブリンスター様に伝えておくわ」
     パラダイス・ディスコはもう一度頭をさげると、身をひるがえし、去って行った。

     今回の戦闘への介入が、どう出るのか。
     現時点では、まるでわからない。
     だが少なくとも、一体の淫魔の信頼を得ることはできたはずだと、8人は感じていた。
     戦闘中、灼滅者たちを鼓舞し続けた、メロディ。
     その旋律が彼らに力を与えてくれたことは、間違いないのだから。
     
     

    作者:西東西 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年7月11日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 11/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 7
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