ドラム淫魔と半魚人

    ●橋の下で
     都下、荒川の河口近くのある橋の下で、ひとりの少女が一心にドラムの練習をしていた。ピンク色のパンクヘアーに、デニムのジャケットとショートパンツ。ジャケットとパンツにはダメージ加工が施してあり……というかダメージが大きすぎて、露出度がかなり高い。お尻もバストも半分方見えてしまっている。
     しかし彼女はお構いなしに、汗を飛び散らせドラムを叩きまくる。時々、呪文のようにある名前を呟きながら。
    「ラブリンスター様……ラブリンスター様……ドラミィは絶対次のライブで、貴女のバックでドラムを叩いてみせます……っ!」
     実はこのドラム少女、手平金・ドラミィはラブリンスター配下の淫魔である。
     とはいえ、まだ本番のステージでメインのドラムを担当したことはなく、バックダンスついでのパーカッションが主な仕事という下っ端ではあるのだが。
     ドラミィは一心にドラムに向かいつつも、ふと、人の気配を感じた。時々、暗い場所を探すカップルやホームレスなどが通りかかることがあるので、今夜もそんなヤツらだろうとドラミィは思った。
     が、ドラミィは手を止めた。今夜に限っては何か変だ。何が変なのかはわからないが……。
    「……!!」
     ドラミィはハッと気づいて川の方を振り向いた。
     変なはずである、気配は川の方から近づいてくる……!
     振り向いたそこには、5つの影が立っていた。人間と思われるが妙につるんとした4体と、人間にしては大きくて妙にトゲトゲした1体。
    「ラブリンスター配下、手平金・ドラミィだな?」
     そのトゲトゲしたヤツがくぐもった声で問いを発した。
    「そ、そうだけど? そういうアンタは誰さ?」
     その時、橋の上を通った車のライトが、5つの影を照らした。
    「えっ……半魚人!?」
     一瞬の光の中、直立する巨大な魚と、ウエットスーツを着た人間がひらめいた。
    「ドラミィ、覚悟せよ、アモン様の仇!」
    「えっ、仇? 何のことだよ!?」
     驚き立ちすくむドラミィに、半魚人たちは一斉に襲いかかった。
     
    ●選択せよ!
    「最近、アモン派の残党が、ラブリンスター配下の淫魔を襲う事件が多く予知されてることは、皆さん聞いてますよね?」
     集った灼滅者たちは、春祭・典(高校生エクスブレイン・dn0058)の問いに頷いた。
     元アモン配下で強硬派のレヒト・ロートが、不死王戦争の敗因が『ラブリンスター一派』の裏切りが原因であると主張し、配下のソロモンの悪魔に、ラブリンスターに連なる淫魔を次々襲わせているのだ。灼滅者と馴れ合うラブリンスター、許すまじ……というところか。
    「僕が察知したのは、ドラマー淫魔の襲撃事件です」
     ドラマーガール淫魔、手平金・ドラミィは、荒川の橋の下で練習しているところを、半魚人風のソロモンの悪魔オアンネスと、その手下の強化一般人に襲われる。
    「ダークネス同士の争いですから放っておいてもいいんですが、アモン残党を倒す好機なので、よろしくお願いします」
     確かにレヒト一味は、放置しておくとやっかいなことになりそうではある。
    「淫魔ドラミィが橋の下で練習しているところに、半魚人オアンネスと、その配下の強化一般人が4体襲ってきます。放置すれば、多勢に無勢、ドラミィは簡単にやられてしまいます」
     典は指を1本立てた。
    「作戦は3つ考えられます。1つ目は、ダークネス同士を戦わせておいて、淫魔が倒された直後に介入するという作戦です。淫魔も倒せますし、ソロモンの悪魔たちも消耗してますから、有利に戦えます。この場合は、ドラミィが倒されるまで、橋の付近に隠れて待っていてください」
     指が2本になる。
    「2つ目は、ドラミィと共闘するという作戦です。これだとソロモンの悪魔側しか倒せませんが、戦い自体は俄然楽になるでしょう」
     そして3本目。
    「3つ目は、ドラミィを守って戦う、という作戦です。戦いとしては一番キツいでしょうが、ラブリンスター一派に恩を売ることはできそうですよね。2つ目3つ目の作戦を実行する場合には、練習見物のフリをして早めにドラミィに接近しておいて、オアンネスが現れたタイミングで、灼滅者であると名乗るとよいでしょう」
     典は手を開くとパチンと打ち合わせて。
    「どの作戦を選ぶかは皆さんにお任せします。戦力や我々の現状を考え合わせ、よく話し合って決めてくださいね!」


    参加者
    長門・海(魔女で戦う魔法少女・d00191)
    椎木・なつみ(ディフェンスに定評のある・d00285)
    笠井・匡(白豹・d01472)
    今井・紅葉(蜜色金糸雀・d01605)
    火室・梓(質実豪拳・d03700)
    テレシー・フォリナー(第三の傍観者・d10905)
    小柏・奈々(ミスティックシューター・d14100)
    天城・翡桜(碧色奇術・d15645)

    ■リプレイ

    ●ドラミィ
     ドコドコダカダカ♪ と速いテンポの16ビートが夜の川面に響く。
    「……頑張る女の子って素敵だよねぇ」
     堤防の土手に寝転んでいる笠井・匡(白豹・d01472)は、橋の下でひたすらドラムを叩いているガールズロック風の女の子を眺めながら呟いた。
    「話してみても、感じ良かったですよ」
     火室・梓(質実豪拳・d03700)は、練習見物(のフリ)をするにあたり、ドラム女子……淫魔ドラミィと先ほど言葉を交わしてきたのだった。

     ドラミィが手を止め汗を拭くタイミングで、梓は声をかけてみた。
    「こんばんは、格好いいですね。いつもここで練習してるんですか?」
    「ああ、ここなら近所迷惑にならないからね」
     ダークネスも住宅難らしい。
    「練習見させてもらっていいですか?」
    「構わないよ、アンタたちも音楽やってるのかい?」
     気さくに応じた笑顔は、淫魔ということを差し引いてもなかなかチャーミングで――。

    「ふーん」
     匡は梓の話に、微妙に不機嫌そうに唸った。
    「淫魔じゃなきゃ、好みなんだけどねぇ」
     彼もラブリンライブはノリノリで聴きに行ったクチだが、決してダークネスと仲良くしたいわけではない。今回は政治的判断で共闘を選んだが、不本意であることに変わりは無い。
    「ドラムもなかなか上手ですよね。心に響くビートです」
     ドラムを褒めた小柏・奈々(ミスティックシューター・d14100)とて、本音ではソロモンの悪魔も淫魔も嫌いである。特にラブリンスターは大嫌いだ。あの女、スタイル良すぎてあざとい、とか思っている……少々女の嫉妬も混じっていたりするが。
    「上手なんだろうけども……私には、ちょっとやかましいな」
     長門・海(魔女で戦う魔法少女・d00191)はハードな音楽は苦手らしく、顔をしかめ耳を半分掌でふさいでいる。
     天城・翡桜(碧色奇術・d15645)は、気の毒そうに淫魔を見やり、
    「それにしても、戦争のとばっちりを受けるなんて、宿敵とは言えど同情してしまいます」
     確かに、言うなれば今回の一連の事件は、ソロモンの悪魔たちの勘違いというか八つ当たりであるからして。
    「いやいや、面白いよ。ダークネス同士の争いとかって、共闘より、遠目で見物してたいってのが本音だわ」
     テレシー・フォリナー(第三の傍観者・d10905)は皮肉っぽくニヤニヤする。
     今井・紅葉(蜜色金糸雀・d01605)が、仲間の方を向くと大人びた仕草で肩をすくめ、
    「まあ……敵の敵は味方ということよね……ソロモンの悪魔より、好意を持ってくれてるらぶりんすたーのほうがマシだってことでしょ。今のところは、ってコトだけど」
     素早く川の方に視線を戻す。
     紅葉だけではない、灼滅者たちは堤防の土手に寝転んだり座ったりして、のんびりとドラムを聴いているふりをしているが、オアンネス一味の出現に備え、神経は張り詰めている。
     そう言っている間にも。
    「あ」
     紅葉が小さく声を上げ、
    「来たようですね」
     隣に座っている椎木・なつみ(ディフェンスに定評のある・d00285)も腰を浮かせた。確かに何者かの禍々しい気配が近づいてくる。ざぱり、と水音も聞こえたような気がする。
     まだ遠いが、眉を顰めてしまうほどの禍々しい気配と生臭さを灼滅者たちは感じる。しかし、ドラミィは集中のあまりか一向に気づかない。
     灼滅者たちはじわじわと橋の下に近づきつつ、タイミングを計り始める。

    ●オアンネス
    「ドラミィ、覚悟せよ、アモン様の仇!」
    「えっ、仇? 何のことだよ!?」
     唐突に現れた半魚人と意味不明な事態にひたすら呆然とするドラミィに向けて、大鎌とナイフが向けられた瞬間、武器を持った灼滅者たちが淫魔と悪魔たちの間に飛び込んだ。
    「いくら相手が淫魔だって言っても、女の子1人に大勢でっていうのは頂けないね」
     匡はフェミニストっぽい台詞と共に、おもむろに無敵斬艦刀を出現させる。
    「むっ、何奴!?」
    「何なのアンタたち? 一般人じゃないわけ?」
     誰何する声が、正面と背後から同時に発せられた。
    「私たちは、武蔵坂学園の灼滅者!」
     なつみがシールドを構えてオアンネスに迫りながら答える。
    「あっ、ラブリンスター様のライブに来てくれた子たちかい? あたしもちょこっと出てたんだよっ」
     ドラミィからは嬉しそうな声。
    「何だと! お前たちが灼滅者か!! アモン様を滅ぼしたッ……うぐうぬぬぬ」
     オアンネスからは恨みのこもったうめき声。
    「ドラミィ、ソロモンの悪魔を叩く絶好の機会だよ、一緒に戦おう!」
     海が足下に夜の闇よりも更に黒い影を引きつけながらドラミィを振り返る。
    「うん、それはいいけど……ってかさ、そもそもどうしてあたし、このキモい魚野郎に狙われなきゃなんないの? それに仇って何のことさ。アンタたちは事情わかってんの?」
     そもそも勘違い&八つ当たりであるから、ドラミィが事態を全く理解していないのは無理もない。
    「それは悪魔たちを倒した後で説明しますね。話すと長くなりますので」
     翡桜もシールドを構え、こちらは手下に近づいていく。
    「ええい、ごちゃごちゃとうるさい!」
     オアンネスが怒りの声を上げた。不気味な深緑色の鱗に覆われた体表が怒りのせいかLEDっぽく淡く光っている。一方親分を守るように前列に立った4体の手下の方は、陸に上がってもゴム製の黒いウェットスーツにゴーグル、シュノーケルも外さず、シュゴー、シュゴー、とボンベのような音を立てている。
    「おのれ、やはりラブリンスター一派と灼滅者は裏で結託していたのだな!」
    「ハァ、何言ってんの? お客さんとケンカしたくないだけだっつーに」
    「結託してるわけじゃないんだけどなあ。頭悪いんだねぇ」
     ドラミィも匡も勘違いを正そうとするが、
    「うるさい! どちらもアモン様の仇には違いない、この際、まとめて消してくれるわ!!」
     聞く耳持たぬオアンネスが水草の絡みついた大鎌をぶうんと振り回すと、夜の闇を揺るがすような波動が、ドラミィと近くにいた後衛の奈々とテレシーを襲った。
    「わあっ!」
    「おっと!」
     ドラミィはスティックを取り落としそうになっただけだったが、奈々とテレシーは波動の圧力にもんどりうって倒れる。
     ドラミィの巻き添え……とも言い切れない。奈々は、ゴージャスモードでマイクロミニスカートをひらひらさせながら、
    「三下悪魔のそのまた使い魔の登場ですね!」
     と、ヤジを飛ばし、テレシーに至ってはビハインドのフォルスにテーブルと食器を並べさせ、箸でドラミングをし、
    「おおーーーっと、あんた達何やっちゃってんの、天才ドラマー淫魔ちゃんはこっちよ! ちゃかぽこ! くねくね!」
     と、明らかに挑発していたのだから。
     ふたりを助け起こしながらドラミィが。
    「大丈夫かい、アンタたち割と軟弱なんだね」
    「だ、大丈夫ですっ、これが作戦なんだからっ」
     奈々が強気で言い返しながら起き上がっている間に、
    「よくもやりましたね……たあーっ!」
     なつみがすかさず手下を飛び越えオアンネスに接近すると、シールドを平手打ちのように振るって鰓のあたりをひっぱたいた。
     手下担当もこの隙を逃しはしない。
    「はじめるわよ!」
     紅葉は指輪に口づけすると、夜空に輝く十字架を出現させて武器を封じ、続いて梓がロッドから竜巻を引き起こしウェットスーツを切り裂く。
    「エルザマリア、捕まえて!」
     海は影を放ってがっちりと1体を捕まえ、それに匡がオーラを載せた拳を叩き込んで河原に打ち倒す。
    「いきます!」
     近づいてきた他の1体を、翡桜がナイフで腕を切りつけられつつもシールドで押し返し、ビハインドの唯織が霊撃で追い打ちする。
     素早い連係攻撃に、あっという間に動ける手下は2体だけになった。
    「どんどんいこう!」
     手下係は次の餌食へと殺到する。
    「へえ、弱っちいのかと思ったら、なかなかやるじゃん」
     ドラミィが楽しそうに笑い、
    「これならあたしは、魚野郎に集中できるよ!」
     スティックをくるくるっと回すと、激しくドラムを打ち鳴らした。
    「!!」
     味方である灼滅者たちも背中に圧力を感じるほどの、すさまじい音圧だ。下っ端とはいえ、さすが淫魔と言ったところか。音が空気の塊のような波動になり、オアンネスにぶつかっていく。
    「ぐあっ!」
     オアンネスがのけぞったところに、
    「お返しよ!」
     奈々がご当地ビームを撃ち込み、
    「ホァチョーーー!」
     なつみが雷を宿した拳でアッパーカットをぶちかます……と、
    「おのれ!」
     オアンネスは、至近距離にいるなつみに鎌を振り下ろし、血がしぶく。
    「くっ!」
    「ちょ、ちょっとなつみ、しっかりしてよね!」
     すかさずテレシーが回復を施す。
     その間に手下は着々と倒されていき、
    「これで……ラスト!」
     匡が無敵斬艦刀を思いっきり振り下ろし、オアンネスは丸裸となった。いや元々半魚人であるから、服は着てないけど。
     灼滅者たちは素早く敵を包囲した。これで全員がオアンネス攻撃に専念できる。
    「手下は全然大したことなかったですね」
     梓が嘲るように。
    「アモンなんて所詮は私達に倒される程度のダークネス。その一派の残党なんてただの雑魚ですもんね」
    「なんだと……ッ」
     オアンネスの体表の光が強くなる。人間だったらぴしっと青筋を立てているカンジか。
    「だーよーねー」
     海も煽り立てる。
    「そこの魚マン! 負けを認めず、只言いがかり吹っかけてるだけの明らかにダメダークネスだ。草葉の陰でアモン様も嘆いておられるぞ~~、ば~かば~か」
    「ゆ……ゆるさんッ!」
     オアンネスはふるふると鱗を振るわせてまだらに点滅させた。
    「まとめて凍らせてくれるわ!」
     鰭っぽい腕を灼滅者に向けて突き出した。
    「うわっ!」
    「ひえっ!」
     前衛をすさまじい氷気が襲う。強烈だがしかし、オアンネスが前のめりで攻撃してくるのは望むところである。ソロモンの悪魔を倒す貴重な機会、あっさり退散されてはもったいない。
    「あたしが溶かしてやるよ!」
     ドラミィがシャラシャラとシンバルを優しくトレモロした。軽やかな音に、身体が芯から温もっていく。
    「淫魔に癒やされるとかどうなの……」
     匡が複雑な表情をしながらも拳を握り、
    「でも、とりあえずありがとう!」
     オーラを宿してオアンネスに連打を見舞う。続いて紅葉が指輪から弾丸を、梓が迸る炎を撃ち込んだ。
    「ヒャッハー! いいぞいいぞ、やっちまいな!!」
     ドラミィははしゃいでドラムを叩きまくる。
     奈々が前に出、
    「えいっ!」
     シールドでオアンネスを押しやりながら、
    「悪魔なのに義理堅いのね。すでに滅びた者なんか忘れて、他の大悪魔に仕えるとかしたらどう?」
     と、探りを入れてみる。
    「そんなことができるか! アモン様は我々の希望であったのだ。ベレーザのような日和見な輩と一緒にするな!!」
     オアンネスたちレヒト派は、美醜のベレーザ派とは一線を画しているらしい。強硬派と穏健派といった感じか。
    「我々はあくまでアモン様の仇を取る!」
     アモンが鎌を振り上げ、奈々が飛び退く。
    「きゃー、フォルス、私のことはちゃんと守りなさいよっ」
     危険を察知したテレシーは、ビハインドの背中に隠れながらシールドリングを発動する。それでもオアンネスの放った無数の刃が、後衛とドラミィを切り裂く。
    「いったーいっ」
    「やりやがったな……」
     ブロークンなデニムを切り裂かれますます露出過多になったドラミィは、ドラムから怒りの波動をぶちかます。
    「ぐあっ!」
     オアンネスがその衝撃にひっくり返った。じたばたしている。半魚人であるし、体中にダメージを受けているので、素早く起き上がることができないのだ。
    「今ですっ……とおーーーーっ!」
     なつみが高く飛び上がると、手刀に宿らせた剣型の光が味方にも眩しく感じられるほど強く輝き、オアンネスの目を眩ませた。
    「ぎゃっ!」
     起き上がりかけていたオアンネスが思わず鰭で目を覆った瞬間、光の手刀がざっくりと腹を裂いた。魚っぽい内蔵がにゅるりとはみ出る。
    「続いていきますよ!」
     翡桜が影で敵をすっぽりと包み込むと、すかさず唯織が霊障派を撃ち込み、テレシーも影の刃を伸ばす。
    「あたご流格闘術ぶちかまし!」
     海が戦艦のように体当たりして立ち上がりかけたオアンネスをよろめかせ、
    「毒を喰らいなさい!」
     紅葉がデッドブラスターで続く。
    「く……くそう……不本意だがここは一旦」
     集中攻撃を受けたオアンネスは、身体のあちこちから緑色の液体を流しながら、よろよろと川の方に後退っていく。
    「逃がさないよ!」
     奈々がマジックミサイルを撃ち込み、梓も影を伸ばして斬りつける。すっぱりと、肩のあたりに大きな傷が開いた。
    「梓さん、グッジョブです……アタタタタターッ!」
     なつみはオーラを宿した拳で連打し傷をえぐる。
    「ぎゃああーっ!」
     傷口から緑色の液体が迸り、オアンネスが身の毛もよだつ絶叫を上げる。
    「そこだ、やっちまいな!」
     ドラミィがシンバルを1枚、オアンネスに投げつけた。パッシャーン、といい音を立てて、シンバルは頭を直撃し、オアンネスは目を回す。
    「淫魔なんかに言われなくたって……たあーっ!」
     匡が鰓の辺りを狙って渾身の戦艦切りを見舞う!
    「ぐわぁぁあああああっ!!」
    「うわっ」
     オアンネスも断末魔の叫びを上げたが、灼滅者たちも悲鳴を上げた。何故なら、深く切り裂かれたオアンネスの身体から、驚くほど大量の緑色の飛沫が上がり、灼滅者たちに降り注いだからだ。
    「やだあ、生臭いっ」
    「ばっちいよー」
    「うわあ、ぺっぺっ」
     飛沫が収まり、灼滅者たちがオアンネスのいたはずの場所を見ると――そこには、汚らしい緑色の水たまりが残っているだけだった。

    ●お食事はいかが?
     川でオアンネスの体液を洗い流しながら、ドラミィが翡桜に、
    「そうだ、悪魔をやっつけたら、あたしが狙われた事情を説明してくれるって言ってたよね?」
    「ええ、お話します……けど」
     翡桜はちょっと困った顔になり。
    「さて、どう説明すればいいやら……」
     梓がひょこっと顔を出して、
    「お腹も空きましたし、食事に行きません? ドラミィさんも一緒に。食事しながらゆっくり説明したらいいじゃないですか」
    「ええっ、淫魔と食事?」
     匡は微妙に嫌な顔になって小声で呟く。
    「まあまあ、そういわないで匡さん」
     なだめるように袖を引っ張ったのは奈々だ。
    「ドラミィからも情報収集できるかもしれませんよ」
    「ああ、それもそうだね……」
    「んー、あたし、人間みたいに食べる必要ないんだよね、ダークネスだからさ」
     ドラミィは迷うように頬に指を添える。
    「行きましょうよ、みんなで」
     紅葉が川岸から立ち上がると微笑んで。
    「これ以上馴れ合うつもりはないけど、情報交換はしたいもの。それにドラミィさんのドラムは素敵だったわ。いつからぶりんすたー様のバックで叩けるようになるといいわね」

    作者:小鳥遊ちどり 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年7月8日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 10
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