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早朝の国際空港にて。
大きなトランクを引き連れてあるく人々が、せわしなく眼前を行きかう。
待合ロビーの椅子に座っていたニナ・アナセンは、手にしていた絵本で顔を隠し、こっそりと大あくび。
「すごいあくびね、ニナ」
「うん。とにかく眠くて……」
ニナは母国デンマークで児童文学を学ぶ、大学生だ。
一緒にいるのは3人の学友たちで、夏休みを利用し、日本へ遊びにきていた。
日本の児童文学や、風物詩をたのしんで、今日が帰国日だ。
日本からデンマークへのフライトは、約11時間。
万が一飛行機に間に合わなかった場合、最悪、日程をずらさなければならなくなる。
用心して昨晩は早々に布団に入ったのだが、
「日本の夏って、なんでこう寝苦しいのかしら」
結局、あまり良く眠れなかった。
「……いくら日本が安全でも、ぼんやりしてたら危ないわ」
「単純に、私たちとはぐれる可能性もあるしね」
「そうそう! 居眠りしてたら置いていくわよ。ニナ、しっかり!」
学友たちの声に励まされ、ニナは日本で手に入れた絵本を開く。
傍らには、売店で購入したいくつものエナジードリンク。
(「飛行機に乗れさえすれば、あとはいっぱい寝られるし」)
搭乗手続きの開始まで、あと30分。
半日後、故郷へたどり着いた自分をイメージし、ニナは必死で睡魔に抗った。
●
「これは、私もはじめて予測する事例になるが……。一部のシャドウが、日本からの脱出を画策しているらしい」
任務の説明をはじめた一夜崎・一夜(高校生エクスブレイン・dn0023)の言葉に、「なんでまた」と、もっともな声があがる。
ダークネスはサイキックアブソーバーの影響で、日本国外では活動することができない。
しかし今回予測に現れたシャドウは、日本から故郷へ帰る者のソウルボードに入りこみ、国外に出ようとしているのだ。
「シャドウの目的は不明。また、この方法で国外逃亡が成功するかどうかも、わからない」
しかし対象者を見過ごし、飛行機に乗せてしまえば、なにが起こるかわからない。
「日本から離れることでシャドウがソウルボードからはじき出され、実体化。飛行機が墜落する、という可能性も考えられる。……実際にそうなるかはわからない。だが、用心するに越したことはない」
シャドウが飛行機に乗る前に、撃退する。
そうすれば、あらゆる最悪の可能性を、未然に防ぐことができるはずだ。
「きみたちが接触する者の名は、ニナ・アナセン(Nina Andersen)」
デンマーク・オーデンセ出身の大学生だ。
まずはニナと接触し、ソウルダイブできる状況をつくりださなければならない。
「できるかぎり他の客の目がない場所へ、ニナ・アナセンを連れだす必要があるのだが……」
ニナは3人の友達と一緒に行動している。
また飛行機の出発時間まで間がない事もあり、待合ロビーを離れることを良しとしない。
一般人を従わせるESPならいくつかあるが、せっかくの日本旅行。
最後まで楽しい気分のまま帰国してもらえたなら、それに越したことはない。
とはいえ、
「搭乗手続きの開始時間が近づけば近づくほど、ニナ・アナセンの連れだしは難しくなる。自主的な同行を望む場合は、そのことを、どうか肝に銘じて対応願いたい」
『ソウルアクセス』が成功すれば、後は簡単だ。
ソウルボード内には、ニナの故郷オーデンセの街並みが広がっている。
石畳の道に、屋根の低い家々。
カラフルな壁や小物が眼を楽しませてくれる、のどかな風景だ。
「ソウルボード内では、特に事件は起こっていない。だが、きみたちの侵入に気付いたシャドウが、迎撃に現れる」
シャドウはシャドウハンター同様のサイキックを扱う。
戦闘能力はそれほど高くなく、劣勢になればすぐに撤退していく。
よほどのことがない限り、ソウルボード内で撃退に失敗することはないだろう。
「そうそう。ニナ・アナセンと3人の学友たちは、日本語が理解できない」
挨拶程度は覚えたものの、それ以上の意思疎通を行う場合は、こちらも、なんらかの対策が必要となる。
いろいろと、考えなければならないことは多い。
先行き不安に思いはじめた灼滅者たちに向かい、一夜はなおも続ける。
「くりかえすが、隔離に失敗し、そのまま飛行機に乗せてしまうようなことがあれば、最悪の事態となりかねない」
通常であれば逃して終わる話だが、今回は別だ。
「この機会を逃せば、後がない。その覚悟で、いくつか策を用意して臨んでほしい」
一夜は強く念を押し、頭をさげた。
参加者 | |
---|---|
風嶺・龍夜(闇守の影・d00517) |
榎本・哲(狂い星・d01221) |
ファルケ・リフライヤ(爆走する音痴な歌声銀河特急便・d03954) |
住矢・慧樹(クロスファイア・d04132) |
九重・木葉(贋作闘志・d10342) |
神楽・武(愛と美の使者・d15821) |
上土棚・美玖(中学生デモノイドヒューマン・d17317) |
榊・セツト(蒼空の螺旋・d18818) |
●God morgen.
エクスブレインが予測した時刻よりも前に空港へ到着した灼滅者たちは、接触対象となるニナ・アナセンを含む、4人のデンマーク人を連れだす場所を探していた。
「国外逃亡ねぇ。厄介なことをしてくれるもんだな」
「謎が多い事件だけど……。絶対に失敗できないなら、絶対に成功させるまでよ!」
ファルケ・リフライヤ(爆走する音痴な歌声銀河特急便・d03954)と、表情を読まれないようにとサングラスをかけた上土棚・美玖(中学生デモノイドヒューマン・d17317)は、携帯電話のメッセンジャーアプリで仲間たちと情報をやりとりしながら、隔離場所をピックアップしていく。
美玖は併せてDSKノーズを使用していたが、こちらは、特に反応はない。
榊・セツト(蒼空の螺旋・d18818)は事前に空港の地図を確認していたものの、空港内の人通りが多いことに眉根を寄せた。
今から準備をして、はたしてニナたちの誘導に間に合うかどうか――。
「良い場所が確保できなかった場合は、最悪、無理やり隔離するしかありませんね」
セツトの言葉に、仲間たちは無言で頷く。
悩んでいる時間はない。
灼滅者たちはより確実な隔離場所を得るため、行動に移った。
●Hvordan gar det?
今回の作戦は、三段構えで行われる。
第一、第二作戦は、ニナたちの自発的な行動を誘う作戦。
最終手段は、もしもの時のための『強制対応』だ。
神楽・武(愛と美の使者・d15821)は、一足先にニナの傍で待機していた。
「んふっ、なかなか可愛い子じゃないの。オネエさんが色々教えてあげたくなっちゃう♪」
どう見ても中学生には見えないゴリマッチョなオネエさん=武が、ニナたちに生ぬるい視線を向けている。
間近でしなを作る武の存在感は相当のものだったが、ニナたちは一切感知せず、のんびりと談笑を続けていた。
それもそのはず。
武は、『闇纏い』を使用していたのだ。
「反応がないってことは、この子は本当に、ただの一般人なのね」
同じく『旅人の外套』で待機していた風嶺・龍夜(闇守の影・d00517)も、首をひねった。
「そうなると、国外脱出はシャドウが単独で考えたのか……?」
これまでに前例のない事件だ。
ニナが強化一般人であったり、灼滅者の素質がある可能性も視野にいれていたのだが、その可能性はなさそうだ。
とはいえ、ESPが効くからといって、すべてがうまくいくとは限らない。
最初に接触する手はずの仲間が、近づいてくるのが見える。
今は、作戦に集中するのみだ。
(「何気にオオゴトなんじゃねぇの、これって。俺の気のせいか?」)
「飛行機に乗せてしまえば後がない」と語ったエクスブレインの言葉を思いかえし、榎本・哲(狂い星・d01221)は着なれない礼服を整える。
誘導場所は、いまだ確定していない。
腕時計を確認し、九重・木葉(贋作闘志・d10342)はうめいた。
「これ以上は、待てないよ」
搭乗時間は刻一刻と迫りつつある。
木葉と哲は頷きあい、『ハイパーリンガル』と『プラチナチケット』を展開。
ニナたちに近づき、声をかけた。
「ご歓談中、失礼します。予定されているフライトの確認をさせていただいてもよろしいでしょうか?」
顔をあげたニナたちに向かい、木葉は通訳だと申しでて、哲の言葉を伝える。
『システムトラブルが発生しているため、チケットを確認させていただきたいのです』
『トラブルだって』
『ええーっ。飛行機、ちゃんと飛ぶの?』
『それを今から説明してくれるんでしょ』
ニナと2人の友達は、なんの疑いもなくチケットを差しだそうとした。
だが、残る1人の友達が3人を制止する。
物静かな印象を受ける女性だが、木葉と哲を見つめ、はっきりと告げた。
『トラブルの説明をするのに、チケットを取りあげる必要があるの? あなたたちが本当に空港の関係者なら、身分証明書を見せてちょうだい』
木葉はすぐに弁明したが、女性は疑いのまなざしを向けたままだ。
『ごめんなさい。この子、すこし用心深いの』
謝るニナたちは、哲と木葉の言葉を疑ってはいない。
だが、警戒する女性がいたままでは、作戦の遂行は難しい。
「私たちの非礼を、どうぞお許しください。システムの確認がとれしだい、搭乗を開始いたします。このまま今しばらく、お待ちください」
哲は内心冷や汗をかきながらも頭をさげ、木葉とともにその場から退いた。
『チケットくらい、見せてあげれば良かったのに』
『そうよ。あなたのせいで、きっと私たち、いやな客だって思われたわ』
『でも、なにかあってからじゃ遅いのよ!』
今にも口論をはじめそうな4人の元に、住矢・慧樹(クロスファイア・d04132)は『ハイパーリンガル』を使用し、近づく。
『もしかして、みなさんもデンマーク便に搭乗予定ですか? 俺たちもそうなんです。トラブルがあったと聞いて、心配で』
同行するセツトは『ラブフェロモン』を使用している。
4人の女性はすぐに、日本の少年たちに興味を示した。
慧樹とセツトは、ニナが手にしていた絵本を引き合いに会話を進める。
『それ、日本の絵本ですよね?』
『私たち、デンマークで児童文学を研究しているの』
『研究を兼ねて、旅行に来たのよ』
「デンマークといえば、童話作家のアンデルセンも旅行好きだったらしいね」
『アンデルセン……。ああ、H. C. Andersenの日本での呼び名ね』
『この子の名前も、Andersenって言うの。それがきっかけで、童話研究にハマったのよ』
単純でしょ、と笑いあう女性たちに、慧樹とセツトは思わず顔を見合わせる。
そういえばエクスブレインが、ニナの名を綴りつきで教えてくれていた。
『自己紹介が遅れたわね。私の名前は、ニナ・アナセン(Nina Andersen)。あなたたちは?』
微笑むニナに問われ、慧樹とセツトは、改めて名を名乗った。
作戦前は、ナンパの演技ができるか不安だった。
しかし実際に言葉を交わしてみれば、ニナたちの話は興味深く、本心から会話を楽しんでいた。
――隔離準備、OK。
セツトは携帯電話に届いたファルケからのメッセージを確認し、慧樹に目くばせをする。
ニナがあくびをしたのを見計らい、
『お疲れのようですが、大丈夫ですか?』
「搭乗まで、お茶でもどうだい。きっと、眠気も紛れるんじゃないかな」
同じ飛行機に乗るという2人の誘いだ。
すっかり警戒心を解いていた4人は、搭乗時間までならと、同席を快諾。
向かうのは、ついたてで仕切られた無料ラウンジの一角。
半個室に近い場所で、ソファーが並んでいる。
一般人の出入りが自由なため多少の不安は残るが、限られた時間の中では、この場を確保するので精いっぱいだった。
しかし万が一、ニナや灼滅者たちが寝入っている場に一般人が遭遇したとしても、ここなら特に不自然には見えないはずだ。
「God dag! Jeg hedder Miku. 私が、ラウンジまで案内するわ」
慧樹とセツトの同行者を装い、美玖が合流。
たどたどしいながらも堂々とデンマーク語を披露した少女は、すぐにニナたちに歓迎された。
そうして、デンマーク女性4人と3人の灼滅者たちは、和やかに会話を交わしながらラウンジへと移動した。
●God nat.
4人の隔離に成功すれば、あとは時間との戦いだ。
ニナたちがソファーについたのを見計らい、
「こーいうの見ると、不安になるかもしれないしな」
ファルケと哲は『プラチナチケット』を駆使し、ラウンジへ続く道に立入禁止のロープを張り巡らせた。
「一時はどうなることかと思ったが……。なんとか、うまくいきそうだな」
ようやく使い慣れない敬語を使う必要がなくなり、哲が嘆息する。
談笑を続けるニナたちの様子を見守りながら、武は『魂鎮めの風』を使用した。
「今は、お眠りなさい。素敵な目覚めを迎えるために……」
もとより、疲れもあったのだろう。
4人はすぐに寝息をたてはじめた。
「搭乗開始まで、もう十五分もないよ。急ごう」
木葉が腕時計を確認し、龍夜を促す。
「任務、開始だ……」
龍夜はニナの手に触れ、すぐに『ソウルアクセス』を発動した。
灼滅者たちが再び目を開けると、そこには童話世界を思わせる石畳の街並みが広がっていた。
屋根の低い家々はカラフルな壁に彩られ、素朴ながらも、街全体がポップな印象を受ける。
ニナのソウルボードは、故郷であるデンマーク・オーデンセの情景を写しとっている。
こののどかな風景が、目的不明のシャドウが向かおうとしている土地なのだ。
その街並みに、灼滅者たちのものとは違う足音が響く。
眼前に、1体のスズの兵隊。
赤い制服に、黒い筒のような帽子。機銃を構えた凛々しい姿。
しかし二本あるべき足は一本が失われ、片足立ちで、跳ねるように進みくる。
その胸元に浮かぶのは、『ハート』のスート。
「現れたな、シャドウ!」
哲は間合いに飛びこみ、すかさず妖の槍を振りかざした。
しかし、シャドウは素早く間合いを取り、哲の攻撃をいなした。
「まずは俺の歌でも、聴くといいさっ!」
歌うファルケの影業が走り、シャドウを捕える。
動きを封じられ、反撃のために漆黒の弾丸を形成しはじめたシャドウへ、
「さっさと退場願おうか!」
慧樹は妖の槍『明慧黒曜』を手に、捻りを加えた一撃を放つ。
「この美しい街に、お前を行かせるわけにはいかん」
龍夜は漆黒の殺気を放出し、
「――悪夢よ、来たれ」
シャドウを覆い尽くすと同時に、自らの能力を高める。
「いったい、なにを画策しているの!」
美玖は天星弓を構え、問いかけながらも強烈な一撃を撃ちこんだ。
シャドウは転げるように弾き飛ばされるも、すぐに、片足で立ちあがる。
木葉はシャドウの弾丸を跳ねかえしながら、先ほど説得に失敗した女性を思いだす。
遠い異国。
比較的安全と言われる日本にいたとて、旅行者に不安はつきまとう。
(「できるだけ、予定の便に間に合うように」)
そう願うものの、繰りだした拳は、寸前でかわされてしまう。
「日本から出る意味、分からないとも思えないケド。アンタはここで潰すワ……!」
武は『封神祭器・天佑』を掲げ、力いっぱい叩きつけた。
流しこんだ魔力がシャドウを内側から破壊し、その脇腹が弾ける。
セツトは同様の事件の報告書にあった、シャドウのスートを思いかえす。
これまですべてのシャドウのスートが確認できたわけではないが。
(「このシャドウも『ハート』。ですか」)
他にも手掛かりになる情報を引き出せやしないかと質問をなげかけるも、シャドウは一貫して、沈黙を貫いた。
セツトはしびれをきらし、チェーンソー剣を唸らせシャドウの腕を削ぐ。
多勢に無勢。
片腕と銃を失い、勝ち目がないと悟ったシャドウは灼滅者たちに背を向ける。
「逃がすかよ……!」
哲と慧樹の閃光百裂拳が閃き、怒涛の連撃が叩きこまれる。
「奥義裏の弐、虎討。虚ろなる影に眠れ、ダークネス!」
弾き飛ばしたシャドウの身体は龍夜が無敵斬艦刀を振りおろし、石畳に打ち据えた。
かさむ仲間たちの傷は、ファルケや美玖がすかさず癒し、戦闘を支える。
「オラオラァッ! ぶちのめすぞグルァァッ!」
テンション高く拳を繰りだす武の攻撃が、さらにシャドウの身体を歪に変形させ。
「そろそろ、終わりにしない?」
続く木葉の拳が確実に敵を捕らえ、ダメージを与えていく。
セツトは利き腕を巨大な砲台に変え、一撃を放つと同時に、叫んだ。
「リフライヤさん!」
バイオレンスギターを手にしたファルケは、セツトの声に応えるようにシャドウの間合いに飛びこんだ。
「歌って魂に響かないなら、直接叩きこんで響かせるのみっ」
勢いよくマテリアルロッドを振りかぶり、
「くらえ! サウンドフォースブレイクっ!!」
打撃と同時に、魔力の奔流をシャドウの体内に流しこんだ。
爆散するスズの兵隊の姿に、灼滅者たちは勝利を確信した。
だが。
「……あいつ、逃げるわ!」
龍夜は追いすがろうとする美玖を、制止した。
今回の主目的は、『シャドウを飛行機に乗せないこと』だ。
「深追いは無用だ。行かせろ」
そうして、ぼろぼろになったスズの兵隊は、灼滅者たちの目の前で瞬時に姿を消した。
●Hej hej!
『お客様、お客様』
眠りについていた4人に、木葉が声をかける。
隣には、再び『プラチナチケット』を使用した、哲の姿。
「長らくお待たせし、大変申し訳ありませんでした」
『搭乗手続きが始まったって』
慧樹は哲の言葉を翻訳して伝え、自分たちは急きょ、次の便に乗りこむことになったと説明する。
『今日は本当にありがとう! すごく楽しかった!』
『私たちも、旅の最後に素敵な時間を過ごせて嬉しかったわ』
ニナは微笑み、慧樹と握手を交わす。
慧樹は別行動していた旅の仲間だと告げ、龍夜や武、ファルケを紹介。
「絵本は言葉を超えて、思いを通じわせてくれるのが素晴らしいな」
龍夜の言葉に、ニナは嬉しそうに頷く。
『私、あなたたちと出会って、やっぱり児童文学は「Lingua franca」たりえるんだって、確信したの』
「リンガ・フランカ?」
武の言葉に、ニナが笑う。
『「共通語」ってことよ!』
サングラスを外し素顔を見せた美玖は、4人と抱き合って盛大に別れを惜しんだ。
用意していた手作り動物クッキーと折紙、大好きな絵本にデンマーク語訳を添えたものを手渡す。
「Ogsa, komme til Japan!」
ファルケは日本の情景を。
セツトは日本の童話を描いたポストカードを手渡し、告げる。
「Hav en dejlig, Nina!」
「Tak! Pa gensyn!」
『きっと、オーデンセにも遊びに来てね!』
大きく手を振り、ニナたちは搭乗ゲートの向こうに消えていく。
木葉は和柄の飾りが施された飴を、最後に残った用心深い女性に手渡した。
『どうぞ、よい空の旅を』
女性はしばし木葉と哲を見つめた後、
「Undskyld...og アリガトウ. Hav en god dag.」
静かに微笑むと、「Farvel」と小さく手を振り、去っていく。
「……榎本。翻訳、いる?」
「いや。なんとなく、わかったかも」
英語の成績は散々だし、デンマーク語なんてさっぱりだけれど。
柄にもなく、後で辞書でも引いてみようかと、思う。
「また、日本に来てくれたら嬉しいね」
木葉はそうつぶやき、自分の分の飴を口に含んだ。
陽光に輝く空の翼に、心を通わせた異国の友人たちが乗りこんでいく。
その勇姿を最後まで見届けるため、8人は展望台へ向かい、競うように駆けだした。
作者:西東西 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年9月9日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 1/素敵だった 8/キャラが大事にされていた 0
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