クリスマス2013~今年の熱海はコ・ン・ヨ・ク!

    「今年『も』クリスマスはカレカノとしっぽり温泉でも……という夢が敗れ去ったお気の毒なみなさんに、オイシイ話があります」
    「んもう、典ちゃんてば『も』を強調するんじゃないの!」
     常日頃から一言多い春祭・典(高校生エクスブレイン・dn0058)をたしなめたのは、黒鳥・湖太郎(黒鳥の魔法使い・dn0097)。
     典は、ハイハイすみませんね、と軽く受け流し、
    「本当にオイシイ話なんですよ。去年のクリスマスと同じく、僕がご案内するのは熱海の温泉旅館での企画なんですけど」
     熱海には武蔵坂学園が所有する温泉旅館がある。昨年のクリスマスイブは、その旅館の屋上でパーティーをした。何故にわざわざ寒い屋上でパーティーかというと、熱海港ではクリスマスイブに花火大会があるから!
    「そこで今年も温泉&花火つきのクリスマスパーティーをやるんですが」
     それだけで充分豪勢なわけだが、
    「昨年、この企画の参加者から、多数の要望を頂きまして」
     多数の要望って何だろう? と集った生徒たちは首を傾げる。
    「他でもない、混浴温泉に入りたいという」
     ああ~、と納得の声が上がる。
     旅館には男女別浴しかないし、熱海の街中の共同浴場も別浴ばかりだ。
    「その声を一応学園の方に上げときましたらね、なんと今年のクリスマスに間に合うように、屋内温泉プールを増築してくれたんですよ。しかも花火が見えるように、海側は全面ガラス張りで」
     うおおおおおお、と驚きと喜びの声があがる。
    「というわけで、今年のパーティーは水着で、プールサイドでやります!」
     拍手が起こる。なんとラグジュアリー! 武蔵坂学園の懐は∞である。
     はいはい落ち着いて、と典は場を宥め。
    「豪勢になったとはいえ、パーティーはあくまで手作り、準備は自分たちでやらなきゃなりませんからね。それはよろしくお願いしますよ」
     うんうんうんうん、と生徒たちは頷く。混浴温泉プールで花火を見ながらパーティーなんて豪華なことができるのならば、多少の作業など屁でもない。
    「今年、皆さんにお手伝いしてもらうことは4つあります。どれか1つだけ手伝ってくれればいいです」
     典は人差し指を立てて。
    「まずは調理手伝いです。今年も食堂のおばちゃんが1名出張してくれることになってます。おばちゃんはチキンやケーキなどの基本メニューを作ってくれるので、その手伝いと、余裕があれば他に得意料理など披露していただけると嬉しいです」
     中指。
    「それから、おそらく作ったものだけでは足りないので、熱海の街で食料と飲み物を買ってきてほしいんです。熱海名物とかあると、パーティーが楽しくなりますよね」
     薬指。
    「もちろん会場になるプールサイドの設営と飾り付けも必要です。ツリーも学園に飾るものほど大きくないですが、用意します。立食形式なので、テーブルなどの配置もお願いします……で」
     そして小指。
    「これは今年からの仕事なんですけど、温泉プールの掃除をお願いします。旅館には管理人兼湯守りさんがいますので、そのお手伝いです。まあアレですよ、デッキブラシでごしごししたりする、フツーのプール掃除と思ってもらえば」
     典は、ガヤガヤと相談し始めた生徒たちにプリントを配る。
    「当日のスケジュールです。概ねこんな感じで、作業とパーティーまでの自由時間を過ごしてください」
     そのプリントによると。

     設営隊とプール掃除隊は、旅館に到着したらすぐに作業開始。資材や家具は倉庫にある。終わり次第フリータイム。
     料理隊は、夕方17時頃に厨房に集合。それまでは自由。
     買い出し隊は適当に出かけていいが、パーティーの少し前までに必ず旅館に戻ってくること。
     街に出る人には、共同浴場や他のホテルや旅館で無料で立ち寄り湯ができる、入浴手形が支給される(1軒分)。

    「熱海の街って、散策も楽しいのよね!」
     湖太郎はもうわくわくしているようだ。
    「ええ、商店街や歴史的建造物を見て歩くのもいいでしょうし、美術館なんかもありますね。冬の海を見に行ったり、立ち寄り湯も外せませんよね」
     典は気取った笑みでガッツポーズを作り、
    「花火の打ち上げに合わせて乾杯します。みなさん、今年もクリスマスの熱海、大いに楽しみましょうね!」


    ■リプレイ

    ●まず掃除
     到着した生徒達は、早速作業や街に散っていく。パーティーに向けて気合いは充分だ。

    「張り切ってると思ったら、そういう魂胆だったんですか」
     【純潔のフィラルジア】の静樹(d17431)は、デッキブラシでプールの底をこすりながら苦笑した。
     彼らは『混浴』に一本釣りされたのだ。しかし清純(d01135)は元気がない。
    「夢と希望のコンヨク!! と思ったら水着でしたね解ってた! 油断させつつポロリも……ないよね! 泣いてない!」
     プール掃除にも大勢女子がいるが、大概水着onTシャツでガードは堅い。
    「めげてる場合じゃないぞ。ふふふ」
     秋夜(d04609)は悪魔的に笑んで。
    「底にたーっぷりと洗剤をぶちまけてやったぜ! ほぉらツルツル……罠をかける!」
    「それはいい」
     匡(d01472)もガシガシと底をこすりだす。
    「くくく、リア充共を滑らせる! カノジョの前でカッコ悪く転げるのろりを! 女子がつるんとしてポロリの期待も!」
    「お、俺はじゅんすいにおんせんをたのしみにきましたから!」
     途流(音狂・d08440)が慌てて良い子ぶった、その途端。
     つるん。
    「うわああっ」
     お約束通り先輩達を巻き込んで盛大に滑って転んでしまった。
     カシャン。
     しかも眼鏡割れたし。
    「わあっ」
    「誰だ、ブラシでフォースブレイクをキメたヤツは!」
    「はいはい、今チリトリもってきますから」
     静樹だけが冷静。
     ところで、洗剤まみれでのたうつ彼らの視界の外では、女子達が水を浴び、Tシャツスケスケのオイシイ光景が繰り広げられていたり……。

    ●買い出しと観光
     【聚楽】は日本美術館にいた。作品鑑賞の後は奥庭の茶室でクリスマスお茶席。
    「見に来たというよりは、会いにきたって感じだよなぁ」
     華丸(d02101)は目当ての作品に会えて満足そう。
    「俺は片桐門が興味深かった」
     千早(d00895)は感慨深げ。この美術館には賤ヶ岳七本槍の武将ゆかりの門が移築されている。
    「時間も場所も遙かに経て、ここに辿り着いたんだよな……」
    「私は黄金の茶室に感動したわ!」
     オデット(d02232)が瞳をキラキラさせる。
    「お茶室自体がクリスマスのプレゼントみたいだったわ、キラキラで!」
    「ホントに豪華だったよね。でもお茶はし辛いかも」
     そう言って笑ったのは亭主役の茶子(d02673)。
    「……あ、一句浮かんだわ」
     茶を差し出しながら。
    『クリスマス モミの緑を茶碗に見』
    「ほう……よし、俺も」
     負けずに華丸も。
    『松葉目とモミの緑と抹茶碗』

    「皆で買い物楽しいな! ウェーイ!」
     【有閑】の白乃(d22714)は商店街の菓子店にとびこんでいった。
    「やっぱりケーキは買っておきましょう」
     くるみ(d02009)も続いて店に入り、2人がケーキや菓子類も大量に買い込んで店から出ると、
    「ずいぶん買ったな、オイ」
     荷物係の左門(d23055)が、既に買物包に埋もれている。
    「ご当地飲み物見つけました!」
     続いてフミル(d21106)が酒屋の袋を下げて戻ってきた。中はジンジャーエールと名産の柑橘ジュース。そこにタージ(d00848)もカレー関連のあれこれを大量に買い込んできて、
    「大丈夫かい、さすがにもう持てないんじゃない? 僕も持ってあげられるよ」
     優しげに目を細めたが、微妙に挑発的である。なので左門も、
    「まだ行ける!」
     意地になる。しかしそこに寛子(d12998)が追い打ちをかける。
    「熱海が舞台の携帯恋愛ゲームのお菓子やラムネを買い込んできたの!」
     左門はのけぞる。
    「だから持ってあげるってば」
    「いいっ、俺はやれるっ。うおお、根性ぉぉぉー!」
     ……ぺしゃ。

     智恵美(d00097)とヴァン(d02839)は仲良く足湯に浸かっていた。
    「名産品や、ご当地料理を探すのは楽しいですね」
     智恵美がガイドブックをめくる。
    「ええ……そうだお饅頭、温かいうちに味見しましょう」
     ヴァンは蒸かし立ての饅頭を半分こして渡す。
    「あったかいです~。でも良かったんですか? こんな大切な日に私と……」
     ヴァンは微笑み、
    「ふふ、だからこそ羽坂さんと過ごしたいのですよ」

    「こういう場所で食べると美味しんだよね~」
     瑠璃羽(d01204)はご機嫌で買ったばかりのソフトクリームに口をつけようとした……その時。
    「ひとくち」
     由燠(d11049)が横から思いっきりパックンした。
    「ああ~っ? 私のソフトクリーム~!」
     コーン近くまで一気に無くなった。
    「……やば」
     さすがにヤバいと思った由燠は、
    「ごめんごめん、機嫌直してよ」
     いきなり瑠璃羽に顔を近づけると、口移しで饅頭を……。

    ●料理班
     手伝いが一段落したところで、舞(d01523)はアモウ(d10041)を助手に、唐揚げに取りかかる。
    「衣つけお願いね」
     しかしアモウが心配で、つい口や手を出してしまう……うちに焦がしてしまったりして。
    「……みんな腹ぺこだから食べてくれるわよね?」
     隣の調理台では櫂(d10945)がイカ揚げ団子を作っている。
    「塩胡椒もいいけど、そのままでもイカの甘さで美味しいの。士騎は何?」
     士騎(d03473)は同じイカで鹿の子揚げ。
    「食感を生かして仕上げるぞ。どうだ、お互い味見しないか?」
    「いいわね」
     笑みを交わす。何より並んで料理するのが楽しい。
     グリルでは厳(d21371)が肉を豪快に焼いている。
    「元気なの多いからな、肉だろやっぱ……ってかオイ」
     背後の調理台にいる真魔(d03748)を振り向くと、
    「どうも甘ったるい匂いがしてると!」
     BIGサイズデザートを大量に作っていた。
    「やってみたかったんだ。人数多いしチャンスだろ」
    「もう充分だろ!」
    「仕上げたら片付けに入るよ」
     真魔は笑うとキラキラのマジパンを手に取った。
     その隣では真神(d22419)が、スポンジ台に豪華なウエディングケーキ並のデコレーションを施していた。しかし真神は、
    「(クリスマス……なにか忘れているような?)」
     実は明日は彼自身の誕生日なのだが……。

    ●温泉プール
     湯が溜まった温泉プールには、作業や観光を終えた者たちが続々と集まってきた。料理も並べ始められている。

     更衣室から出てきたクラリス(d18061)が、必死に胸を隠しているのを見、十六夜(d11790)は、
    「なんで恥ずかしがってるんだ?」
     しかし水着姿を一瞥して納得。
    「そうか、クラ着やせするタイプなんだ」
    「服なら目立たないのですが、水着は……」
     十六夜はクラリスの耳に唇を寄せ、
    「似合ってる。すごく可愛いよ」
     クラリスはますます赤面し、
    「……十六夜さんの水着も素敵です」

     【探求部】の希紗(d02012)は、
    「プールだ~~!! がんばってお掃除したからね! めちゃくちゃ綺麗!」
    「だよな! 磨きたてのプールに入るのは、気分がイイッ」
     銀都(d03248)も清潔なプールを満足げに見渡す。
    「しかしこれだけ広いと泳ぎたくなる……」
    「えっ? 泳いでいいんじゃないの?」
     結衣菜(d06908)は既に手が犬かきだ。丁度通りかかった湖太郎(dn0097)に尋ねる。
    「泳いでいいんだよね?」
    「もちろんよ!」
     ド派手なパレオ姿の湖太郎は、バッチンとウインクをした。
    「やったー!」
     結衣菜は早速バシャバシャ泳ぎだし、
    「じゃあ俺も!」
     銀都も嬉しそうに続く。
     蓮菜(d18703)は掃除で張り切ったので疲れ気味ではあったが、
    「じっとしてたらもったいないっすね!」
     一緒に遊びだす。入部したてだがすっかり馴染んでいる様子。
     しかし一方。
     結衣奈(d01289)は、壁際で棒立ちの蒼玉(d22534)に声をかける。
    「緊張してる?」
     彼も入部したてなのだ。
    「いや……泳げないんだよ。浮くことはできるんだけど」
    「そっかあ」
     結衣奈は気の毒そうに苦笑して、
    「七波くんも静かだね?」
     七波(d01815)も壁際で固まっている。
    「う、うん、修行が足りませんで……」
     実は女子の水着姿が眩しくて困ってたり。
    「なんの修行?……まあ、いいかっ」
     結衣奈は2人に笑いかけると、手で水鉄砲をお見舞いする。
    「記念写真は笑顔じゃないと困るよ!」
     仲間が元気に遊ぶその陰で、統弥(d21438)は藍(d22880)にそっと近づいて。
    「藍さんのイメージにぴったりの水着だね。その……とても可愛いよ」
    「……ありがとうございます」
     藍は照れて俯く。
    「先輩も、その……鍛えていて素敵です」
     ……なんで、こんなにも心が騒ぐんだろう。

     椋(d00894)は、
    「どうして忍がいるのかしら?」
     クールに姉の雲雀(d00708)に尋ねた。
    「だって涙目で頼まれたら断れないじゃない」
     椋は溜息を吐くと、
    「これだからショタコンは」
    「ショタ言うな!」
     話題の主、忍(d01336)が水着姿の双子の間に、嬉しそうに首を突っ込む。
    「涙目にまでなってないよー」
    「まあ、来てしまったものは仕方ないわね」
    「お許しが出たわ、忍。椋にしたい放題できるチャンスよ」
    「わーい、わくわく!」
     忍はさっそく椋に抱きついた。

    「いえーーいっ!」
     【花園】の紅葉(d03937)は勢いよく飛び込んだ拍子に、チューブトップがずれてしまった。
    「ふええっ!」
     慌てていると、りんご(d13538)が手を出す。
    「あら大変、直してあげますわ……うふふ♪」
     紅葉の胸をさわさわ。
    「ちょ、やだっ! 自分で直すーッ!」
     それを見た悠花(d01386)は、傍らの桜花(d17925)に微笑み、
    「桜花さんもずれてますよ。私が直しましょう」
    「え、ずれてない……きゃーっ、くすぐったーいっ」
    「わー、これが噂のもっちあ!」
     もっちあもっちあ。
    「私も触る-!」
     寄ってきたのは杏子(d16586)。
    「やっぱ大きいねー」
    「餅なら涼もいるじゃんかー!」
     触られ放題の桜花は友人を人身御供に差し出す。
    「なんでこっちに振るの!?」
     のんびり温まっていた涼(d20687)は、突然のご指名に逃げる……が。
    「うひゃあぁ」
    「うふふ」
     その涼をがっちりつかまえたのはスミレ(d16787)。
    「水着が乱れてしまいますわよ」
    「ひゃあ、東屋さんの餅とすりつけたりしないでえ!」
    「(これは……禁断の扉!)」
     戯れ合う仲間をドキドキで観察していた奏(d22742)も、
    「わひゃあっ!?」
     いきなり後ろから胸を鷲掴みにされた。タシュラフェル(d00216)の仕業だ。
    「うふふ、私の手には収まらないわ」
    「や、やり返しちゃうよ!」
     由希奈(d01252)は、きゃっきゃうふふの友人達からそっと離れ、過激なスキンシップにおろおろしている静香(d16584)に、
    「ごめん、この後約束があるから抜けるね」
     と、小声で告げた……が、りんごが耳ざとく聞きつけ。
    「あら、夜までご一緒しましょうよ」
     さりげなく伸びた手が。
    「きゃあっ!?」
     由希奈のビキニの紐にひっかかる。
    「事故ですよ、事故♪」
    「きゃあぁ~」
     由希奈は外れかけのビキニを抑えてプールを飛び出す。
    「大丈夫ですか? タオルありますよー!」
     慌てて静香が目隠し用タオルを持って追いかけ、杏子が、
    「彼氏によろしくー♪」
     とひやかした。

     鋼(d03424)と鷹秋(d03794)は、プールの隅でいちゃいちゃしていた。逞しい腕にすっぽりと抱きしめられ、鋼はぼーっと彼氏を見上げる。
    「(色っぽくてドキドキしちゃう……)」
     鷹秋はそんな鋼に、
    「濡れた鋼もマジ可愛い。このまま連れ去りてーが、まずは乾杯して花火みねーとかな」
    「や……可愛いとか言われたら」
     鋼の顔が一気に真っ赤になる。

     【Snow Rose】は大量の風呂玩具に囲まれていた。主に千代(d05646)が持参したものだ。
    「玩具スルメイカ! これで気分は海! 玩具プリンも浮かべとこうかな!」
     燈(d08173)が目をキラキラさせて。
    「燈も持ってきました! パンダさんのビーチボール! ハメを外し過ぎてる人は、これで撃退してもいいよね?」
     見やったのは、プールサイドに仁王立ちで高笑い中の青士郎(d12903)
    「クリスマス! 温泉旅行! 混浴ッ!!! フハハハハ!! これぞ浪漫!」
     女子の冷たい視線に気がついて、
    「彼女の水着姿に興奮しないのは逆に失礼だろうが! アディは脱いだらすごいんだぞ!」
    「……うゅ?」
     言われているエイダ(d11931)はきょとんとしている。
     一葉(d06508)がアヒル二等兵のネジを巻きつつ、微妙に剣呑な口調で。
    「鼻血でプールを赤くしないで下さいね……ところで、このアヒル物凄い勢いで突進するので当たると痛いんですよ」
    「ラブレス、下がっていろ」
     心葉(d05961)が危険を察してエイダを庇う。
    「あの、青士郎さんがなんか大きな声を……」
    「気にするな」
    「え、ええ、楽しそうだから大丈夫……?」
     その青士郎は女子達からイカやビーチボールやアヒルの集中攻撃を受け始めた。
    「よくやるな……グラサンが曇って良く見えないが」
    『愚羅惨道』と書かれた水着姿の黒(d10402)は、はしゃぐ仲間たちを眺める。
    「混浴は確かに浪漫だと思うが、男たるもの聖戦(覗き)に赴いてこそだと思うんだ」
     なんてイキがってはいるが、実は混浴が恥ずかしいのだ。グラサンが曇って幸い。
    「その意見へのコメントは差し控えますが、公衆の面前で阿呆なことを叫ぶ宿木殿に攻撃はやむなしと存じます」
     貴久(d04002)は銚子と猪口を盆に載せ、それを湯面に浮かべちびちび。ただし中身はスポーツドリンク。
     シャクティ(d23077)は仲間の様子に呆然。
    「お風呂っておもちゃを使っテ遊ブところだっタのでスか?」
     ネパール出身の彼女はそもそも風呂に馴染みがない。
    「身体を洗っタりするところと聞いてタのでスが!?」

     ジュリア(d21635)は、
    「温泉も初めてですが、水着も恥ずかしいですね」
     慣れない格好に落ち着きない。
    「双葉さんは堂々としてらして……水着もお似合いです」
     スクール水着姿の双葉(d21545)は、
    「あら、ジュリアさんも似合ってるわ」
    「ところで、戦争でのケガは大丈夫ですか?」
    「今は大丈夫、動けるわ」
     ジュリアは顔を赤くして、
    「い、一応、痕になっていないか……見せてくださいませんか?」

     【吉祥寺高1-2】の六(d04660)は些か混乱していた。
    「温泉=ゆっくり浸かるもの。プール=泳ぐとこ……すると温泉プールは?」
    「いいんだよ、ゆっくりして」
     昴(d03592)が宥める。
    「あ……うん」
     六は肩まで湯に浸かり、髪をヘアピンで止め直す。
    「準備で疲れたしな……ぐだぐだ出来るかと思ったんだけど」
     昴の愚痴に、陽丞(d04224)が、
    「一仕事させちゃってごめんね。でも皆で温泉に入る事も滅多にないんだし、大目にみて欲しいな」
    「ここんとこバタバタしてたしな」
    「うん、のんびり気兼ねなく過ごせる友達がいるって、本当に贅沢な事だなって思うよね」
     窓越しに星空を見上げる。
     リン(d04621)が、そんな仲間を見回して。
    「細い奴、ばかり」
    「お前だって細いだろ。今夜はしっかり食えよ」
     昴が言い返す。
    「おにぎり、食う。音無こそ、ちゃんと、食え。御灯も」
     綴(d02019)は、大勢で外出自体初めてで戸惑い気味だったのだが、今は落ち着いている。顎まで湯に浸かりながら、ぼそりと。
    「食えばいいってモンでもねえだろ……そういうお前は偏食しすぎだ」
    「……煉は」
     偏食を指摘されたリンは、傍らの煉(d04756)をじろじろと眺め回す。
    「な、なんだよ?」
    「……ないすばでーだな、ちょっと、羨ましい」
    「えっ……て、何でそんな感想が出る!?」
     煉は思わず胸を腕で覆う。胸部装甲はサラシで抑え、水着はストイックなタンキニで、隠蔽は完璧のはずなのに!?

     【武蔵坂HC】の鐐(d04707)が、水着姿の女子部員を見渡して。
    「うむ、水着が華やかでいいな。綺麗処に囲まれて役得だ」
     飛将(d02264)も頷いて。
    「目の保養になりますな」
    「わー、そんなこと言われたらその気になっちゃうよ? ありがと~~♪ でも何にも出ないよ♪」
     織姫(d02912)がはしゃいで応じたところに、
    「おや、何も出ないんですか?……っと!」
     ぱしゃっ!
     飛将がお湯をかけた。
    「きゃ! む~飛将さん、やり返すよ、鐐さんにも!」
    「お、水かけかい? ボクもやるっ」
     極楽気分でお湯につかっていた夏奈(d06596)も参戦する。
     好弥(d01879)は、
    「皆さん若いですね……」
     混浴が気恥ずかしいのもあって、陰に隠れて大人しくしていたのだが、
    「えいっ!」
    「きゃっ」
     夏奈にいきなりお湯をかけられた。
    「ぼけっとしない!」
    「そうだよ、パーティーまでに腹を減らしておこう」
    「じゃ、鬼ごっこしましょうか!」

    ●乾杯!
     おばちゃんと料理班の力作が揃った。豪華なケーキにチキンにターキー。唐揚げにイカ揚げ。温泉饅頭を始めご当地菓子に、スナックにデザート、和菓子。グリルした肉に、鯵丼に温泉卵、怪しい茸も盛ってある。柑橘ジュースに炭酸飲料、そして何故か熱海のペナント。盛りだくさんである。
    「料理が揃いましたので、始めててください。花火の時間には声をかけますので!」
     典(dn0058)の声がプールに響く。

    「お料理、食べに行こうか」
     司(d13919)が声をかけると、
    「うん……」
     麒麟(d14035)もプールから上がってきたが、何故かもじもじしている。
    「ご飯が水着って、ちょっと恥ずかしいかな……」
    「じゃあ僕の上着を羽織るといいよ」
     司が上着を羽織らせてやると、、
    「あ、ありがと……」
     麒麟は顔まであったかくなった。

     【SCS】の3人は並んで湯に浸かり夜空を眺め、故郷を思い出していた。神楽(d09482)が呟く。
    「クリスマスに花火っつーと、地元の祭り、思い出さん?……なんや、笑うな!」
     碧(d04624)は、神楽の神妙な様子に綻んでしまった顔を引き締めると、
    「慌ただしい1年だったけど、楽しめたかな……また来年も、みんなで楽しめたらいいわね」
     センチな独白に、由布(d04486)と神楽はぽかーんとして。
    「姉様、何か拾い食いしました?」
    「してないわよッ!」
     碧は両側に腕を伸ばしヘッドロックをかます。
    「痛いー」
     由布は悲鳴を上げながらも、
    「(……そうですね。みんなで仲良く同じ方向を向く日が続けばいい)」
     と、願う。
     
     長門(d18026)と榛名(d18027)の兄弟も、湯に浸かって静かに夜空を見上げていた。
    「なァ榛名、お榛よォ……悪りぃ一年じゃァ、なかったろ」
    「うん。友達も出来たし……何より、兄さんがいてくれたから」
    「俺も悪かなかった」
     兄が犯した許されざる罪を思う。しかし罪はふたりで背負っていく。兄弟2人で仲良く、ずっとずっと、幸せでいたいから。
    「来年も、再来年も……ずっといい年にしようね、兄さん……」

    「もうすぐ花火が上がりますので、飲み物を取ってください!」
     典の号令に、生徒たちは乾杯の用意をし始める。

     要(d21460)は2人分の飲み物を持って、幼なじみの祈(d21237)の傍らに座った。
    「ねえ」
     祈は要に寄りかかって黒のマイクロビキニの胸を押しつける。
    「どう? おっきくなったでしょ?」
     要はへらりと本音の知れない笑いを浮かべて、
    「昔は真っ平らだったのにね、良かったじゃん」
     と軽く躱す。祈は、
    「もうちょっと照れるとかなんとか……」
     唇を尖らせ飲み物を受け取った。

     グラスを手に全員が夜空を見上げる……と、待ち受ける静けさの中、きゅるる、と遠く音が聞こえ。
     ぱぁん!
     大きな窓を埋め尽くすかのように、光の花が咲いた。
    「乾杯-! メリークリスマス!!」
    「「「メリークリスマース!!」」」

    作者:小鳥遊ちどり 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年12月24日
    難度:簡単
    参加:84人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 6/キャラが大事にされていた 8
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