おせちにはかまぼこだろおぉぉぉ!

    ●小田原駅
     年末の小田原駅は混み合っていた。箱根や伊豆観光の拠点でもあるし、小田原自体が観光地でもある。
     そんな中、コンコースの大提灯の下で、ひとりの男子高校生が観光客を次々と呼び止め、こんな質問をぶつけている。
    「すみません、来年のおせちにかまぼこ入ってますよね!」
     入れる、と答えた者がもちろん大多数だが、数人にひとりは入れない、という答えが返ってくる。
    「うちは洋風おせちだから入れない」
    「うちは中華風おせちだから」
    「かまぼこ嫌いだからー」
     最初はそんな答えを、
    「そうですか……」
     と非常に残念そうに受け止めていた高校生だったが、
    「そもそもおせち食べないしー」
    「かまぼこなんて何年も食べてないなあ」
     などという不届きな答えが続いていくうち、やり場のない哀しみと怒りが積み重なっていき……。
    「くそうっ、正月といえばおせち料理、おせちといえば、主役はかまぼこだろおっ!?」
     広いコンコースに響き渡る大声で叫ぶと、
    「とおっ!」
     見事な宙返りを決めたと思うと、顔が紅白半分ずつのかまぼこの『小田原かまぼこ怪人』へと変身してしまったではないか!
    「日本人なら、正月にはかまぼこ喰え~ッ!」
     かまぼこ怪人は両手一杯にかまぼこを出現させると、呆然とする周囲の一般人の口に、次々と押し込んでいくのだった。
     
    ●武蔵坂学園
     むしゃむしゃ。
    「僕は板わさが好きですね。わさび漬けを添えて食べるのがことのほか」
     春祭・典(高校生エクスブレイン・dn0058)と集った灼滅者たちは、小田原のメーカーのかまぼこを食べている。白身魚の上品な甘みと、ぷりっとした歯ごたえがたまらない。
    「かまぼこ怪人に堕ちてしまうのは、山田・清廣(やまだ・きよひろ)くんという地元の高校生です」
     例によって老舗かまぼこメーカーの跡取り息子で、かまぼこを深く愛している。
    「要するにかまぼこ愛の暴走ですから、彼の愛を正しい方向にむけてやれば、闇堕ちから救出できる可能性は大いにありますので、ぜひがんばって説得してください」
     灼滅者たちは頷いた。こんなに美味しいものが原因でダークネスになってしまうなんてもったいない。
    「彼がかまぼこ愛を暴走させてしまうのは、年末の小田原駅コンコースです」
     ひとりの灼滅者がかまぼこを慌ててごっくんして、
    「ターミナル駅のコンコースじゃ、その場で戦うわけにはいかないよね?」
    「ええ、人気の少ないところに連れ出す必要があります。僕のお勧めは、駅ビルの屋上です」
     典は小田原駅の見取り図を広げた。コンコース北から駅ビルに入り(入ったところは3階)隅っこの階段で3階分上ると屋上へのドアがある。屋上にはベンチや花壇があるが、冬は滅多に人がこない。
    「どうやってコンコースから連れ出したらいいかな?」
    「彼のかまぼこ愛を利用しましょう。コンコースの売店にはもちろんかまぼこ売ってますし、年末とあって各メーカーの屋台も出ています。ここで暴れたら、かまぼこが大量に台無しになるぞー、とか言ってやったらどうでしょう」
     他にも色々手がありそうだ。
    「首尾良く説得してKOすれば、彼も灼滅者として目覚める可能性がありますからね、どうぞよろしくお願いします。それとせっかく小田原までいくのですから、皆さんもお正月用にかまぼこ、買ってきたらどうです?」


    参加者
    土御門・璃理(真剣狩る☆土星♪・d01097)
    桜川・るりか(虹追い・d02990)
    鳴海・優華(飢求焔拳・d03454)
    蓬莱・烏衣(スワロー・d07027)
    小川・晴美(ハニーホワイト・d09777)
    雨来・迅(見定められた雷の宮護・d11078)
    猫乃目・ブレイブ(灼熱ブレイブ・d19380)
    上池・乙葉(小学生ストリートファイター・d21658)

    ■リプレイ

    ●駅ビル屋上
    「これでよし!」
     土御門・璃理(真剣狩る☆土星♪・d01097)はドアの階段側に『清掃中』の札を貼ると、パンパンと手をはたきながら冬の海風が吹きすさぶ屋上へと戻った。駅が海に近いので容赦なく冷たい風が吹き付けてくるが、おかげで年末の駅ビルとはいえど屋上に人気はない。
    「お疲れでござる」
     璃理を労った猫乃目・ブレイブ(灼熱ブレイブ・d19380)は、大きなショッピングバッグをベンチの下に押し込んでいる。戦闘中に踏んづけたりしないようにという用心だ。バッグの中身は大量のかまぼこ。
    「ずいぶん買ったんだねー?」
     璃理は半ば呆れながらもブレイブを手伝う。
    「拙者かまぼこ好きなのでござる!」
    「まあ確かに、好きな食べ物に夢中になること自体は誰にでもあることだが」
     けだるげに肩をすくめたのは鳴海・優華(飢求焔拳・d03454)。
    「度が過ぎちゃあいかんよなあ」
    「そうだよねえ」
    「全くでござる」
     彼女らが思い浮かべているのは当然これから戦うことになる『小田原かまぼこ怪人・山田清廣』のことである。
     璃理が腕組みをして。
    「でも、かまぼこは間違ってもおせちの主役じゃないですよね。昆布巻きや田作りのが美味しいかな。あ、でも黒豆には勝ってるかなー。ちなみに私は栗金団が一番好き! あ、清廣くんにはオフレコで☆」
    「オレさ」
     蓬莱・烏衣(スワロー・d07027)が自分の顔を指して。
    「かまぼこって実はあまり食べた事ねーんだよな」
    「そうか、烏衣は米国出身か」
    「うん、おせち自体あんまり食べたことねーしな。折角の機会だし食べてみてぇな……って、まずは清廣を正気に戻してやらねぇと、だけどな」
     4人は頷くと、ビル階段に続いているガラスドアに目をやった。もうじきあのドアの向こうに、仲間に引き連れられたかまぼこ怪人が現れるはず――。
     ブレイブは仕上げとばかりに屋上の真ん中で殺界形成を発動し、璃理は、
    「マジカル・クルエル・るるるるる~♪ 魔砲少女・真剣狩る☆土星! 土星に代わって成敗です!!」
     シャキーンと決めポーズと共にサウンドシャッターをかけ、敵が来るのを待ち受ける。

    ●駅コンコース
    「――お正月にはかまぼこですよね!?」
     悲鳴に似た声で観光客に尋ねまくる男子高校生――山田清廣を、雨来・迅(見定められた雷の宮護・d11078)は心配そうに見つめている。彼の実家のおせちは毎年小田原のかまぼこなので事態は深刻である。
     年末の人混みの中であるが、ターゲットはすぐに見分けることができた。冬休中だというのに律儀に学生服を着込み、手にはバインダーと筆記具。マーケットリサーチか、冬休みのレポートのためにアンケートを採り始めたのかもしれないが、今となっては観光客に掴みかからんばかりに質問をぶつけているだけ。その様子は痛々しくさえある。
    「大好きなものを理解してもらえなかったら……寂しい、よ……でも無理強いはダメですよね」
     上池・乙葉(小学生ストリートファイター・d21658)が淡々と、しかし気の毒そうに呟く。
    「そりゃそうだわ。でも、かまぼこはおせちという立派な舞台があるんだから、まだいいわよ」
     小川・晴美(ハニーホワイト・d09777)は唇を尖らせる。島原のご当地スイーツ『寒ざらし』ヒーローの彼女としては、かまぼこ程度のマイナーさで嘆くのは贅沢だろうと言ってやりたい。
    「むしろおせちからかまぼこを外して、寒ざらしに替えられないかしらね……」
     寒ざらしをおせちに突っ込む方法を考え始めてしまった。
     彼らがいるのは改札前に提げられた、巨大小田原提灯の下。待合わせスポットなので、人混みに紛れ清廣の近くで待機できている。しかし気づくと1人足りない。
    「そういえば、るりかちゃんはどこ?」
     迅が見回すと。
    「――かまぼこ、かまぼこ、かまぼこだらけっ。ここはかまぼこ食べ放題会場ですかっ!?」
     桜川・るりか(虹追い・d02990)は、コンコース中の売店や出店のかまぼこを嬉しそうに試食しまくっていた。
    「あ……いいなー」
     乙葉が人差し指を唇に触れたが、
    「後にしときなさいよ、いつ清廣さんが暴れ出すかわからないわよ。るりかさんも呼び戻さなきゃ……」
     と、晴美がるりかに声をかけようとした瞬間。
    「くそうっ、正月といえばおせち料理、おせちといえば、主役はかまぼこだろおっ!?」
     清廣の魂の叫びがコンコースに響き渡った。大勢の人々が思わず足を止めてしまうほどビリビリと。
    「(――今だ!)」
     灼滅者たちは人混みをかき分け清廣に接近する。るりかもかまぼこもぐもぐしつつ駆け戻ってきて、ターゲットを囲む。
     宙返りしてかまぼこ怪人への変身を遂げた清廣が着地したのは、4人の灼滅者たちが立ちふさがる囲みの中だった。
    「なんだお前たちは!」
     灼滅者たちを睨めつけたかまぼこ怪人の、かまぼこ型かぶりものの左半分は白、右側は紅。衣装は職人風の白衣に、めでたい五色の縞マント。そして両手いっぱいに強制試食用のかまぼこ。
     かまぼこをごっくんしたるりかが、コンコースに並ぶ店を手でざっと示しながら、
    「ね、ここで暴れると君の愛するかまぼこが誰にも食べてもらえる事なく沢山台無しになっちゃうよ」
    「そうよ、お店に迷惑かけて折角のかまぼこの1年で一番の晴れ舞台、台無しになるわよ? 文句があるならあっちの屋上で話を聞くわ」
     晴美が階段の方を顎で指す。乙葉も、
    「お店の人も悲しみますよ……」
     と言い添えると、ぬいぐるみのふりをして乙葉に抱かれているナノナノのオレンジさんも、
    『まぁ落ち着きな。大好きなモノを普及しようって奴がそんな顔してちゃいけねぇ』
     というカンジでいなせに頷く。
    「おいしいかまぼこを、今買っている人もいるわけだしね」
     迅が穏やかに、しかし強い眼差しで清廣を見つめて。
    「かまぼこ愛について、俺たちとじっくり語りあおうじゃないか。ただし、用意されたしかるべき場所で」
    「ははあ……」
     かまぼこ怪人はもう一度ぐるりと灼滅者たちを見回して。
    「そうか、お前たち俺と勝負しようってんだな?」
     灼滅者たちが深く頷くと、清廣は鼻の穴を膨らませて言い放った。
    「受けてやろうじゃん! 小田原かまぼこの実力、見せてやるぜ!!」

    ●かまぼこ愛とは
    「さあ、どいつから来る!?」
     屋上で8人の灼滅者と3体のサーヴァントと対峙した清廣は、ぶん、とかまぼこ板を振り回した。かまぼこ板と言っても長さ2m、幅は70㎝ほどもある巨大なものだ。殴られたらかなり痛いだろう。
    「お前がかまぼこ怪人かぁ」
     先陣を切って進み出たのは烏衣。
    「かまぼこっておせち入ってたんだ? オレ、正月におせちとかあまり食べた事ねーし、しらねーな~」
    「な……なんだとうっ!?」
    「来い!」
     挑発にのった清廣はかまぼこ板を振り上げた。烏衣もがら空きの清廣の胴を狙い、拳に雷を宿らせて振り上げる……が。
    「まずは喰ってみろーっ!」
    「むぐっ?」
     意表をついて、烏衣の口にかまぼこ(普通サイズ)が突っ込まれた。ご丁寧に板は外してあるが、驚いて一瞬動きを止めた烏衣は、
    「うわあ~~っ!?」
     ばっこし巨大かまぼこ板で殴り飛ばされた。
    「つ、烏衣殿!」
     メディックのブレイブと、学ランに鉢巻き姿のオレンジさんが、宙を舞う烏衣を慌てて追いかける。
    「ホムラマル、カバーに入れ!」
     優華は霊犬に回復のカバーを命じ、自らは
    「いい加減にしろ阿呆め! 好きな食い物が不遇ってだけで一々キレてんじゃねぇよ……小せぇ男だな!」
     清廣を叱りつけつつシールドを広げて仲間たちに防御を施す。
    「なんだと! これでも喰らえ、伊達巻きぐるぐる!!」
    「げっ!?」
     優華の下半身に唐突に出現した黄色い巨大伊達巻きがぐるぐるっと巻き付いた。足をとられバッタリ倒れてしまう。
    「知った風な口、利きやがって!」
    「させないよっ!」
     倒れた優華の上に振り上げられた板を、璃理が日本刀で振り払い、
    「貴方の愛はその程度か!! かまぼこをちょっとディスられた程度でひねくれんな! 本当に燃える様な愛を持ってるならば歌え! 笑え! 宣伝せよ!」
    「しらたま、優華さんを!」
     晴美、またの名をご当地魔法少女ハニーホワイトはすかさず霊犬に回復を命じてから、
    「無理やり口に押し込んでも、かまぼこイコール嫌な物ってイメージしか付かないわ! もっと良い所をアピールすべきなのよ!」
     影で清廣を縛り付けておいて、
    「ぐむっ!?」
     その口に寒ざらしを無理矢理流し込んだ。
    「ほらほら美味しい寒ざらしも、無理矢理食べさせられたら台無しでしょ?」
     ぶはあっ、と清廣は大量の白玉団子を吐き出し、
    「つーか、窒息するわっ!」
     げほげほと咳き込む。
     迅が握っていた拳を降ろし、
    「君のかまぼこ愛は認めるよ。でも、かまぼこの素晴らしさを広める方法は乱暴なやり方以外にもあるだろう?」
    「でも……」
     悔しそうに清廣が語ったところによると。
     かまぼこの生産量・消費量はここ20年ほどジリ貧の一途だという。しかも若年層に特にその傾向が強い。
    「このままじゃ、どんどんかまぼこが衰退するじゃん……」
    「ボクはかまぼこ大好きだよ!」
     るりかが元気に手を挙げて言い、乙葉も、
    「私も食べますよ……かまぼこ。お正月に限らず」
    「実家のおせちは、毎年小田原のかまぼこだよ」
     迅も言い添える。
     うつむいていた清廣の顔(かまぼこ型)が、上げられる。
    「ほ……ホントか?」
    「ホントでござるよ。拙者もかまぼこ好きでござるが」
     回復を終え、烏衣と共に戦陣に戻ってきたブレイブが力強く頷いて。
    「おせちに拘るのがいけないのではなかろうか。どんな使われ方をしようと、かまぼこがおいしいことに変わりないにござるのに」
    「そ……そうか?」
    「俺もそう思うな」
     優華が腕組みをして。
    「若年層で消費が少ないってことは、それだけ広める余地があるってことだが、若いヤツはおせち自体食わねえだろ?」
    「うん」
    「そこをお前が工夫して広めりゃいいだけの話だろうが。やり甲斐ありそうだぞ?」
    「そうは言うけど、どうやって?」
     今や清廣はすがるように灼滅者たちを見回している。怒りと焦りにかられた短絡的な行動を自省し始めているようだ。
     烏衣が鼻血の痕を手の甲で拭きながらニヤリと笑って。
    「なあ、お前、強いんだな……うちの学園来いよ」
    「……え?」
     戸惑う清廣に、灼滅者たちは武蔵坂学園について説明する。
    「まずは学園でかまぼこ広めようぜ。そもそも人数多いし、好きな奴沢山いると思うしな!」
    「ボク、いくらでもお手伝いするよ。それに、ボクの知らない食べ方があったら教えて欲しいもんっ」
     るりかも嬉しそうに言う。
    「本当にかまぼこが好きなら……皆を笑顔にしなきゃ。今、貴方のかまぼこは泣いているわ……」
     乙葉が清廣の顔を気持ちをこめて覗き込む。
    「……うん」
    「わかってくれたみたいだね」
     迅が拳に再び雷を宿らせつつ。
    「でも、今のままの君を学園に連れて帰るわけにはいかないんだ……君の中の黒い思いを、俺たちに祓わせてもらわないと」
    「え……?」
     ブレイブがちょっと悲しそうに。
    「怪人になってしまっては正しく良きものを伝えられはしないでござろう?」
    「そうか……」
     清廣はぐっと両の拳を握りしめ。
    「わかったっ! かまぼこの将来のためだ、存分にやってくれ!!」
     目を閉じて仁王立ちになった。
     灼滅者たちは改めて武器を構え直し、
    「よし、いい覚悟だぜ!」
    「ごめんね、すぐに終わらせてあげるからね……っ」
     烏衣とるりかが高速回転させた杭を撃ち込んだのを皮切りに、集中攻撃を浴びせはじめた。
     晴美が縛霊手で抑え付けたところを、迅が雷を宿した拳で殴りつける。璃理は、鋼糸の結界を張り巡らして敵の動きを封じ、
    「ターゲット、確認……」
     乙葉は片膝をついた射撃姿勢から、高速演算モードで精度を上げた弾丸を連射した。弾丸は見事命中、ぐらり、と清廣の身体が揺らぎ、膝をついた。
    「……うう」
     呻きが聞こえ、大分弱ってきている、と思いきや。
    「!!」
     彼の右掌から紅白のネオンのようなビームが発せられた。そのビームはるりかへと向かう、が。
    「やらせるかっ……ぐっ」
     迅が身体を張って受け止める。迅はビームになぎ倒され、身体から体力が奪われていく。
    「清廣くん!?」
     灼滅者たちは清廣に詰め寄る。解ってくれたのではなかったのか? かまぼこヒーローとなるために、堪えるのではなかったか!?
     清廣は青ざめた顔を上げた(かまぼこだけど)。
    「すまない! ついやっちまった!」
     苦しさのあまりにドレイン効果のあるビームを撃ってしまったようだ。
     倒れた迅には、ブレイブがすかさず指輪をかざす。
    「大丈夫でござるか!」
    「ああ……大丈夫だ」
     迅は苦しげに起き上がり、
    「俺はいいから、早くケリをつけてやってくれ!」
     清廣もビームを撃ってしまった右手をぎゅっと押さえ込みながら、灼滅者たちに頷いてみせる。
    「もうちょっとだけ辛抱しろよ!」
     烏衣が決意を固め拳に雷を宿して飛びかかり、るりかも懐に飛び込むと、
    「清廣くん、ガマンだよ! かまぼこを好きになってもらうためだよ!!」
     必死で呼びかけながら渾身の連打を放つ。晴美は影で縛り付け、璃理は、
    「さぁ行きますよ、かまぼこ怪人! かまぼこならかまぼこらしく、私の糸でスパッと切られるのですね☆」
     目にもとまらぬ速さで糸を繰り出し、乙葉は炎弾を大量に撃ち込む。優華は盾で殴りつけ、メディックのブレイブもここぞとばかりに寄生体から作り出した毒液を飛ばし、サーヴァントたちも攻撃を加える。立て続けの一斉攻撃だ……と。
     ぱたり。
     跪いていた清廣がコンクリートの上に倒れ伏し、その身体をまるで蒸し器のような湯気がもうもうと包み込んだ。
    「清廣くん!」
    「清廣さん!?」
     灼滅者たちは驚いて清廣を救い出そうとしたが、湯気の勢いに近寄れない……が、すぐに白い湯気は晴れて。
     そこには、学生服姿の生真面目そうな少年が横たわっていた。

    ●かまぼこ買って学園に帰ろう
     数分後に清廣は無事に目覚め、灼滅者たちは一安心である。
    「ああ、腹減ったなあ!」
     彼を介抱しながら、烏衣が大きな声で言う。
    「そうだね、皆でかまぼこ食べにいこう」
     るりかが嬉しそうに答える。
    「そうだな、折角だから買って帰りたいしな」
     優華もいつものけだるい感じに戻って言う。
    「お土産の分も買わないとです」
     乙葉が言うと、オレンジさんも、
    『ナノォ~』
     と同意した。
     戦闘前にすでに買い物したブレイブも、
    「拙者ももっと買い足したいでござるよ」
     張り切っている。
    「俺は、お正月用の紅白の他に、ミニカーとかの変わり種を買いたいんだけど」
     迅が言うと、ベンチに横になった清廣がおずおずと。
    「あの……よければ、ウチの店に寄ってください」
    「ぜひ寄らせてもらうよ」
     灼滅者たちは笑顔で答えた。

    作者:小鳥遊ちどり 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年1月10日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 1
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