●汝、己を赦せ。
何日も何日も同じ夢を見た。
夢から逃げて生きてきた。
いつか夢を見なくなる日がくればいい。
そうやって賢明に生きてきた。
夢を見ることが無くなったなら……自分はきっと、終われるだろう。
夢の始まりはこうだ。
家へ帰るとリビングから明るい会話が聞こえてくる。
父と、母と、妹だ。
ここは正確に義父と義母と義妹と言うべきだろうか。
自分の家族ではあっても、血縁はない。遠く血がつながっていると言われたが、どう見ても他人だった。夜逃げした両親が置き去りにした自分を、遠縁の誰かが引き取った。そういう構図だ。
リビングを通り過ぎ、二階の部屋へ逃げるように進む。
後ろから暖かい声がかけられる。
これだけは夢のたびに違った。
ご飯ができているよと呼びかける母や、こっちへ来て話をしようと誘う父や、一緒に遊ぼうと請う妹などだ。どでも暖かかったが、自分にとってはつらかった。
自分がいることで、三人の暖かい家庭を邪魔していると思うからだ。
だからだ。アルバイトを掛け持ちしたり、友人の家に泊まり込んだり、様々な形で家から自分を遠ざけて暮らしてきた。
この日も、部屋に自分の荷物を取りに来るだけのつもりだった。
この日……そうだ。あの日だ。
部屋に入り、荷物をとり、面倒が起きないようにと窓から外に出る。屋根や柱を伝って下り、そのまま家を出た。いつもやっていることだ。咎められたことは無い。それほどの会話は、したことはない。
そしていつものように夜までバイトをして、友人の家に泊まり込んだ。
友人の家は穏やかに自分を迎えてくれた。無理に自分と仲良くなろうとする家族とは違う、心地よい穏やかさだった。この家の子になりたいとすら思った。
そうして、いつものように朝まで過ごした。
朝起き、いつものようにバイトへ行こうとした。
だが様子が変だった。自分を見て、悲しそうな顔をするのだ。
そして誰かが言った。誰だったのかは覚えてない。
俺が居ない間、暴漢が家に押し入ったという。家族を殺し、家に火をつけて逃げたという。
犯人はすぐにつかまったが、麻薬中毒者でろくに話が通じない人間だったそうだ。
意味が分からなかった。夢の中でもそうだ。いつ聞いても意味が分からない。
慌てて家に行けば、焼け焦げた家だったものがあるだけだった。処理のためか慌ただしく行き来する人々のなかで、俺は立ち尽くす。
そこでいつも目が覚めるのだ。
だが違った。
例の日。
あの事件が起こったのと、同じ日。
突如空が暗くなった。
太陽はまだそこにあるのに。
……いや、太陽ではない。それは月だった。
不思議に思って空を見やると、和服を纏った女がゆっくりと空から下りてきた。まるで月から下りてきたかのようだった。彼女は二匹の犬を連れていた。
犬は自分にむけて吠えるが、彼女が手を翳しただけで消えた。
車が通るに苦労しないだけの大きな道路の真ん中で、自分は妙な女と向き合っていた。
女は言う。音ならぬ、頭に響くような声で言う。
――罪が苦しいか。
自分は何とも言えずにうつむいた。
女は更に言う。
――罪を捨てよ。汝は赦されてよい。
――義父は汝を恨んだか? 義母は、義妹は? 誰もが汝を暖かく迎えていた。無理はしただろう。しかしそれは血がつながろうとも同じこと。愛とは受け入れる心と書く。受容が愛ならば、あの家族が汝にしたことは家族愛のそれだ。
顔を上げると、家族の幻影が見えた気がした。すぐに消えたが、家族は笑っていたように見えた。
――前を見よ、空を見よ。明日を見よ。汝の心にある愛を信じ、罪を捨ててゆくのだ。背負わねばならぬ罪ではない。
女は手を出し、自分へと差し向ける。
――我が手を取り、赦されよ。罪は我が持って行こう。
●月に願いを
「シャドウの動きを察知した。少なくとも(ソウルボート内に限れば)相手に出来るレベルのシャドウだ。俺たちが手を出して大丈夫な事件だろう」
神崎・ヤマト(中学生エクスブレイン・dn0002)はそんな語りだしで今回の依頼を説明した。
今回のシャドウは、ある一般人の夢に入り込んで夢の根本を破壊するという目的を持っていた。
悪夢を取り除くとだけ言えば、まるで善行のように思えるが、本人が自律的に見ている悪夢であればそれは少々事情が異なる。
「内容がどうあれ、生きるための糧であった悪夢を壊されてしまうというのはまずい。積み木から『形が悪い』という理由でブロックを引き抜けば全体が崩壊してしまうように、それが根源的であればあるほどダメージは大きいだろう……まあ、今回俺たちが持つべき目的はそこではなく、シャドウに戦闘をしかけて追い返すことなんだがな」
ソウルボート(夢的精神世界)におけるシャドウはリアル世界への顕現時よりも大幅にパワーダウンしている。戦闘不能と同時に撤退できるので灼滅には及ばないが、追い返すことは不可能ではない。
そして今回相手にするシャドウなら、それが充分に可能だった。
「まあやり方は任せる。追い返すことさえ出来れば手段は問わないつもりだ。頼んだぜ」
参加者 | |
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犬神・沙夜(ラビリンスドール【妖殺鬼録】・d01889) |
八絡・リコ(火眼幼虎の葬刃爪牙・d02738) |
風真・和弥(壞兎・d03497) |
空飛・空牙(影蝕の咎空・d05202) |
ルリ・リュミエール(バースデイ・d08863) |
斎賀・芥(漆黒の暗殺者・d10320) |
緒方・南(ララバイブルー・d15407) |
カリル・サイプレス(京都貴船のご当地少年・d17918) |
●色不異空、空不異色、色即是空、空即是色。
月の光る夜のこと。
シャドウの手を取ろうとした男が居た。
そんな男のうしろ。
形容しがたい音がして光が落ちた。
「ダメなのです。家族に向き合えなかったことを悔やんでいるなら、それは大事な思い出なのです!」
光の中にはカリル・サイプレス(京都貴船のご当地少年・d17918)がいた。
男の手が、シャドウの手に触れる直前で止まる。
「家族は罪よりも、幸福を望んでいるですよ。飲み込んで、進んでいいはずです!」
続いて。
焼け焦げた家の前に光が沸き、ルリ・リュミエール(バースデイ・d08863)が映し出された。
「罪を捨てたら、家族のことも思い出せなくなる。あなたにとってそれは、捨てていい物なの? あなたがすることは、ちゃんと謝って、泣いて、お別れを言うことだと思うの。それが、人間らしいと思う」
続いて
ブロック塀の上で街灯が明滅し、緒方・南(ララバイブルー・d15407)が浮かび上がった。
「あの場にいたら何か変わった? 他の接し方もあったかもしれない? そんな気持ちがあるなら、なくさないで。大切にして、自分を許せるやり方を探して」
真っ黒な柱が倒れる。
いつかのように炎が燃え上がり、横倒しの柱を照らした。
柱の上に八絡・リコ(火眼幼虎の葬刃爪牙・d02738)が座っていた。
「もてあましてるんだよね。モヤモヤなかんじ。なんでつらいのか、分かる? ハッキリさせないまま捨てちゃったら、多分後悔するんだよ。悲しめなくなっちゃうのは、きっと怖いことだよ」
続いて。
照らし出された表札の横に風真・和弥(壞兎・d03497)が立っていた。
「ちゃんと悲しんだりしたか? 墓参りは? 後悔があるから、今があるんじゃ無いのか」
いつの間にか焼け残ったソファに腰掛けている空飛・空牙(影蝕の咎空・d05202)。
「罪や後悔は全部あんたのもんだ。あんた自身が負うべき過去で、他人が奪っていいもんじゃない」
「同感だな。成功や失敗から、人は前を向いて歩いて行ける。それらをなくして、本当の幸せや愛など感じられるものか」
ソファの背に腰掛け、黒焦げの人形を放り捨てる斎賀・芥(漆黒の暗殺者・d10320)。
割れたガラスを踏んで、犬神・沙夜(ラビリンスドール【妖殺鬼録】・d01889)が首をこきりと慣らした。
「お前もまた家族を愛していたから、つらいのだろう。自分で作った壁を悔いているのだろう。ならば罪は、お前なりの愛なのかもな。捨てるか受け入れるか、自分で決めろ」
「そんなことを言っても、俺は……」
手を止めたままの男を見て、シャドウは息を吐いた。
頭に響くような声でなく、音としての声で言った。
「見知らぬ他人が知ったようなことを言う……滑稽だな、私も含めて」
そしてシャドウは、どこからともなく長い羽衣を抜き出し、天に向けてひとふりした。
激しい嵐が生まれ、周囲の景色ごと吹き飛んでいく。
空牙が瓦礫の上を駆ける。
彼に対応してか、瓦礫の内側から複数の犬が飛び出してきた。
が、ほぼ一瞬で真っ二つに切り裂かれ、空牙の背後へ転がり落ちる。
「争うならば構わない、正直殺気をおさえるのが難しかったところだ。狩り尽くしてやる」
「傲慢な言い分だな。家畜につばを吐かれた気分だ」
シャドウは虚空に鬼火を生み、一個の弾丸に変えて空牙へと飛ばした。
剣を翳してガードする空牙だが、目の前で剣が砕け、そのまま彼の肩を貫通していく。
シャドウのすぐ後ろ。影のように現われる沙夜。鋭く放った拳がシャドウの頭部を丸ごとはじき飛ばした。
まるで砂糖細工の人形を壊すかのようにだ。
内側からあふれ出るものはない。それこそ砂糖細工のそれと同じだ。
更に言うなら、シャドウは砂糖のように溶けて消えた。
否、消えてはいない。
沙夜の頭上に鬼火の群れとなって集まり、元の和服女性を形成したのだ。その時には既に沙夜の身体には羽衣がぎっちりと巻き付いていた。
左右からわき出た犬が沙夜めがけて飛びかかる。
「ファルコン!」
左右それぞれに割り込む芥とファルコン(ライドキャリバー)突きだした剣と機銃がそれぞれ犬を貫き、跡形も無く消し去った。
キッとシャドウをにらみ付ける芥。
「過去の罪を引き抜いては、彼は壊れてしまうのではないか? 引いてくれればこちらも戦う理由は無い。諦めて貰えないだろうか」
「同じ言葉を返してもいいぞ。今すぐ引けばこの女は殺さないでおいやろう」
シャドウが羽衣を引くと、沙夜に巻き付いていた衣が急激に締め付けられた。目を見開き、血を吐き漏らす沙夜。
その途端、ガトリング射撃がシャドウを襲った。光の粒子になってかわすシャドウ。その動作を読んでいたかのように、リコが衣をナイフで切断した。
ぐったりした沙夜を抱き起こし、南が手を当てた。自ら取り出したかのような光のあぶくが彼女へしみこみ、意識を取り戻させた。
「痛いところを遠慮なしについて勝手ばかり……人の心をなくしたものの導きなんか、いらないわ」
「それは『人心に惑わされたい』という意味か? それとも無神論者の主張か?」
「どちらでもないわ。そんなの――」
「人の心を壊すのが、許せないんだよっ!」
ブロック塀を踏み台にして飛びかかるルリ。
その反対側からはカリルとヴァレン(霊犬)が同時に飛びかかり、ブレードによるクロスアタックを繰り出した。
右側からはルリの鬼神変。左からはカリルたちの斬撃。ちょうど挟まれる形になったシャドウは瞬間的に光に溶け、離れた位置で身体を再構成させた。咄嗟に武装を解除して頭をぶつけるルリとカリル。
追撃をかけるかと思われたシャドウだったが、直立不動のまま特別な動きは見せなかった。
したことといえば。
「どうする」
問いかけのみである。
灼滅者たちへの『続けるか?』という問いでもあり、男に対しての問いでもあった。
男は俯き、上げかけていた手を下ろした。
対して、和弥が空牙たちの前に腕を翳して制止させた。
いわゆるひとつの『状況終了』である。
シャドウはそれらを確認すると、男の後頭部に手を当てて言った。
「これ以上は無駄なようだ。そしてここから先はお前の知るべき世界では無い。夢の中で眠っていろ」
パチンと音がして、男は気を失った。
思わずシャドウを殺しそうになった空牙だったが、和弥の『大丈夫だ』というささやきに身体を止めた。
軽薄そうに笑い、和弥に問いかける。
「いいのか? 狩りは始まってるんだぞ?」
「分からないか? 俺たちのうちまだ誰も倒れていない。既に2~3人は倒れていておかしくない頃なのにだ」
「…………」
空牙は暫く殺気をむき出しにしてシャドウを睨んでから、手にしていたナイフを納めた。
そして戦う意志無しという意味で頭の後ろで腕を組んでみせる。
「好きにしな。俺はもう知らねえよ」
「物わかりがいいんだな。狩人ごっこはおしまいか?」
「露骨に煽るなよ、仲間の邪魔はしたくねー」
軽そうに笑って背を向ける空牙。
冷ややかな目でそれを見やるシャドウ。
暫く沈黙した後、場を『もとのまま』の光景に戻した。
●不生不滅、不垢不浄、不増不減、是故空中。
シャドウは自らの膝を枕にして男をソファに横たえた。
見ようによっては善良そうだが、その気になれば首をへし折れる以上、人質にとられているも同然だった。
それらを飲み込んだ上で、焦げ付いたパイプ椅子に腰掛けるカリル。
「Moonさんとお見受けします。名前を教えてください」
「お前がそう思うのならそうなのだろう。今からそう呼べばいい」
「ちゃんとした名前を知る必要が、あるんじゃないですか」
「我はダークネス、汝らは灼滅者。少なくともお友達ではあるまい。なんなら『糞野郎』と読んで貰っても構わないぞ」
「……」
とりつく島もない返答である。早速はぐらかしか、とカリルは小さく息を呑んだ。
『やってしまうか?』というアイコンタクトを芥が送ってくるが、手を翳して拒否する。
一緒にルリへ『質問をどうぞ』のアイコンタクトを送ってやった。
頷くルリ。
「あなたに質問をしたいんだけど、いい?」
「嘘しか言わないが、したいだけするといい」
「嘘しか?」
「ああ、『我は今より嘘しか言わない』」
「……わかった」
精神的な距離を保ったまま、ルリはその場に腰を下ろした。
地べたにどっかりと、である。
「あのね、まず、オルフェウスと被ってるって言われない?」
「『おるへうす』とはなんだろう。インド辺りの郷土料理だろうか?」
「……もし連中と敵対しているなら、協力できないかな」
「それはいい提案だ。今すぐ全員闇堕ちして我が配下につくがいい」
手強い。
ごくりとつばを飲み、ルリは続けた。
「望みを教えて。手伝えるかもしれないよ?」
「七つの玉を集めて不老不死になるのが望みだ。専用のレーダーを作ってくれ」
「……う、ううん……」
頭痛がしてきた。
「最後に、あなたは何者なの? どういう種族なの?」
「われわれは宇宙人だ」
「……う、うぐ」
芥と空牙が『やっぱり殺そうか?』という視線を送ってきたが、首を振ってキャンセルした。
大体ここでどのように痛めつけたところで、シャドウ相手にたいしたダメージを与えられるとは思えない。せいぜいが嫌がらせである。
本気で殺し合いに発展すれば全滅必死。よくて誰かを闇堕ちさせてイーブンに持ち込む程度だ。そして、相手もそれを分かっている。
一方で状況を分析しきれなかったのか、遠巻きに構えていたリコが沙夜の肘を小突いてきた。
「ねえ、なんであの状況から質問会に行けたの? よくわからないんだけど……」
「そうですね。まず……」
沙夜は服をめくって脇腹のアザを晒して見せた。
「奴が本気でこちらを潰すつもりだったなら、もう一押しでこちらの頭数を一人つぶせました。空牙さんの時にしても同じです。標的を分散させることで、わざとこちらを全員生かした状態で戦闘をしていたんです」
「そういう余裕があったってこと?」
「バベルの鎖で実力差を見る限り、相当ギリギリだったでしょうね。私たちが邪魔に入ったことで例の男性から罪を奪う計画は失敗しているわけですし、仮に負けても撤退するだけで済むという算段だったのでは?」
「あえてのフリータイムってことかあ。じゃあ……ボクが気づいたこと、この場で言っていい?」
こくんと頷く沙夜。
リコは頷き返し、小さく手を上げた。
いい加減質問するのに疲れてきたルリが、バトンタッチのサインを送ってくれたので、一歩前に歩み出る。
「あのね、さっきの男の人……」
表札を見やる。
『白鳥』と書いてあった。
「白鳥さん、さ。自分が居ない間に暴漢が入ったんだよね? それで火をつけて逃げたんだよね」
今更何の話を、という顔の沙夜たちをよそに、たどたどしく語る。
「『どこから』入ったの? ふつう頭のおかしい人が玄関に尋ねてきたからって、招き入れたりしないよね。戸締まりだってしてる筈だし、もしうっかり裏口が開いてたんだとしても、逆方向にある玄関から逃げ出した筈でしょ?」
「…………ん」
頭の回復をはかっていたルリが唸った。
この場合進入路は一つしか無い。
男が普段から家を抜け出すために使っていた窓だ。
それも二階の窓。
普段から鍵を開けていると知っている人間でなくては、そんなところからの侵入は考えない。
和弥がこめかみをおさえて言った。
「この人のことをよく知る人間がやったってことか? もしくは――」
「それ以上探る必要があるか?」
鈴の転がるような声でシャドウは言った。
言葉をとめる和弥。
「我はシャドウ。夢をすべるダークネス。彼の精神を崩壊させ、絶望のエネルギーを得るべくソウルボートに進入したまでだ。人間など我らにとって家畜にすぎない。家畜の言葉に、家畜の心に価値を感じる牧場主がいようか? 汝らのいう協力とやらも、家畜の牛が自ら乳搾りを手伝うようなものだ。全くあべこべな話だ」
「そうか。分かった」
深く頷く和弥。
「話は終わりだ。これ以上はコストの無駄だろう。帰らせて貰う」
「待って」
ここがいいタイミングだろうと、南が声を上げた。
「あなたで三つ目なの。ねえ、全部が現われたら何が起こるの?」
「愚問よな。望遠鏡で新しい星を見つけたとして、星はずっと古くからそこにある。汝らの『観測』も、万能ではないのだろう?」
「……そう、それも」
「ああ、『我は嘘しか言っていない』」
鬼火の群れへと溶けるシャドウ。
カリルが追いかけるように手を伸ばしたが、光は彼の手をすりぬけて空へと消えてしまった。
現実へ帰った彼らは、男の家からそっと姿を消した。
明滅する街灯の下を歩き、リコがぽつりともらした。
「嘘しか言わないって言ったのに、なんで質問を続けたの?」
「『自己言及のパラドクス』だ」
腕組みをして、芥が言った。
「嘘しか言わないと言う言葉も嘘だとするなら矛盾になる。つまり、情報を取捨選択する必要がある」
「あのなかに本当の話があるかもってこと?」
「さあな。全て偽りかもしれない。それに奴は結局無傷で撤退している。とんだ食わせ物だ」
「ふうん……」
少年少女の姿は、明滅する光のなかに消えた。
消えて、見えなくなった。
作者:空白革命 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2014年1月24日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 10/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 12
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