さあと流れる黒とゆらり揺蕩う海のグレー。真面目で感受性高く思慮深く、見えるものが多くて脆い。いつもどこか遠くを見ている。脳裏を掠め泳ぐは青と白。海が好き。海の底を描くことが好き。そう在るために友人を落とそうと殻を閉ざし、すくわれる。惨めさも寂しさも消えやしないけど。その先で漸く見えたのは、四角い雪景色。郊外のアトリエ、壁一面。青い絵の具を集めていつかもう一度映したい色は。彼の日の――光射す深海。