●
視界いっぱいに広がる稲畑。
緑の海にもぐって、二人で駆けまわるのが、好きだった。
夏休みの、あの日。
「川へ泳ぎに行かないか?」
一番の親友に誘われて、断る理由なんてなかった。
泳ぎなれた川だし、あいつは僕よりも泳ぎがうまい。
危ないことなんて、何もないと思ってた。
なのに、目をはなした一瞬のうちに、あいつの姿が水面下に沈んでいく。
とっさに飛び込んで、引き上げた時にはもう遅い。
さっきまで笑っていた友達は、ただただ、虚ろなまなざしを向けるばかりで。
――どうしよう、どうしよう。こんな状態の彼を置いては帰れない。
「ねえ。……ねえ、一緒にかえろうよ」
そう声をかけると、親友はぎこちない動きで歩きだした。
なんだ。
きみはまだ、歩けるじゃないか。
でも、きみの家族に、なんて説明したら良いんだろう。
――本当のことを言ったら、きっと、みんな悲しむ。
だから彼の兄も、両親も、親友と同じようにしてあげた。
こうすれば、誰も悩まず、悲しまずに済む。
「……ハハハ」
思わず乾いた笑いがこぼれた。
友達を救えなかった僕の手。
その手が、あっけなく命を刈りとっていく。
そして願えば、彼らはまた歩き出すのだ。
「なんだ。命って、こんなにカンタンだったんだ……」
心が晴れていくような感覚。
だけど、どうしてだろう。
どうして涙が止まらないんだろう。
「いやだ……。もうかえりたいよ……」
決して目をあわせようとしない死体に囲まれながら、少年はうめき、部屋の隅でひざを抱えた。
●
「ひとりの少年が、闇に堕ちました」
告げられた五十嵐・姫子(高校生エクスブレイン・dn0001)の言葉に、集まった灼滅者たちが息を呑む。
「少年の名は『宮間・ユズル(ミヤマ・―)』。小学五年生の男の子です。『ノーライフキング』――屍王として闇堕ちし、川で溺れ死んだ友達と、その家族をアンデッドとして操っています」
彼はこれ以上死体が増えることを恐れ、友達の家に潜伏し、世間との接触を一切断っている。
現時点ではダークネスの力を行使しつつ、未だ人間としての意識をある程度残しているようなのだ。
「闇落ちに抗うだけの精神力があるなら、灼滅者としての素質があるのかもしれません。……しかしそうでないのなら、彼を灼滅し、闇の支配から解き放ってください」
彼に接触するためには、その友達の家に行けば良い。
周辺は田畑の多い地域なので、敷地内であれば気兼ねなく戦闘できるだろう。
「ユズルくんは精神的にギリギリの状態です。玄関以外からの進入は、彼に恐怖心を抱かせてしまいます。アンデッドからの不意打ちを受ける可能性がありますので、行わないように注意してください」
不信感を抱かせてしまえば、説得の機会を逃してしまうことも十分にありえるのだ。
「ノーライフキングは高い戦闘能力を持つ個体です。まだ不完全なダークネスとはいえ、彼もすでにかなりの戦闘力を発揮しはじめています」
だがもし、彼にまだ人としての心があるなら。
灼滅者たちの声に、耳を傾けてくれるかもしれない。
「心を動かすことができれば、彼の戦闘力を削ることが、できるかもしれません」
そうすれば、彼との戦闘もやりやすくなるはずだ。
「最良をめざすことはできないかも、しれません。……でもどうか、彼らのためにも最善を尽くしてください。そしてなにより――」
姫子は静かに頭をさげる。
「皆さんも、無事で戻ってくださいね」
参加者 | |
---|---|
神鳥谷・千聖(灼熱・d00070) |
月瀬・一沙(月瀬流二十一代目・d00669) |
風間・薫(似て非なる愚沌・d01068) |
神楽山・影耶(堕ちた天使ッ子・d01192) |
宗形・初心(スターダストレクイエム・d02135) |
宮村・和巳(傷付けたくない殺人鬼・d03908) |
皇樹・桜(家族を守る為の剣・d06215) |
来栖・紅葉(願い星・d06754) |
●そらのいろ、灰色
当日はあいにくの曇り空だった。
空には雷雲が重くたれこめ、生暖かい風がそよぐ。
灼滅者たちは稲畑を横ぎり、目的の家屋の前に来ていた。
家中の雨戸が閉ざされ、来訪者たちを拒むようだ。
「真っ正面から討ち入るってあたり、私好みよねぇ」
ぼんやりと周囲の景色を眺めていた、月瀬・一沙(月瀬流二十一代目・d00669)がつぶやく。
「やべ、初戦だからちっと緊張する。……大丈夫かな」
神楽山・影耶(堕ちた天使ッ子・d01192)は、気を抜けない相手だと拳を握りしめた。
今回の相手は覚醒したてとはいえ、宿敵・ノーライフキングなのだ。
宮村・和巳(傷付けたくない殺人鬼・d03908)は少年を闇にのみこませまいと、意気込んで玄関の扉に手をかけようとしたが、
「待って!」
皇樹・桜(家族を守る為の剣・d06215)が慌ててその腕を掴んだ。
「ユズルを不安にさせないために、派手に音をたてない方が良いだろうね」
来栖・紅葉(願い星・d06754)が言葉を重ねる。
助けに来たのは事実だが、灼滅者たちは『見ず知らずの者たち』だ。
うまく説得できなければかえって不信感を抱かれてしまう可能性もある。
続けて、あえて堂々と来客のように振舞った方が良いかも、と宗形・初心(スターダストレクイエム・d02135)が提案した。
「お見舞いに来た友達、みたいにね」
仮にユズルが不審に思ったとしても、ユズルの友達と顔見知りだったと言えば、うまく立ち回れるかもしれない。
一同は突入後の作戦内容を確認し、隊列を組んだ。
●ともだちは、赤色
和巳がゆっくり引き戸を開くと同時に、少しでもユズルを怯えさせないようにと、神鳥谷・千聖(灼熱・d00070)がESPで一階全体の音を遮断。
前衛の風間・薫(似て非なる愚沌・d01068)、桜が続き、玄関付近に敵の姿がないことを確認する。
玄関は広く、八人が立っても十分な広さがあった。
後衛の初心が後ろ手に戸を閉めると、灼滅者から向かって左手にあったふすまが開いた。
わずかな隙間から、女性が顔を覗かせる。
アンデッドとなったユズルの友達の母親だろう。
灼滅者たちに向けられた顔には表情がなく、目線が虚ろだった。
初心がその姿を認め、唇の端を吊りあげる。
思わずあふれ出しそうになる憎しみを胸中に押しとどめ、笑顔を浮かべた。
「私たち、お見舞いに来たんです」
「おみ、まい」
繰りかえしながらふすまを開け放った手には、無骨な鍬(くわ)が握られていた。
「……意を一にし、心を専らにす」
つぶやいた一沙の言葉で、全員がスレイヤーカードの封印を解き放つ。
「さぁ、狩りの時間だ……!」
ディフェンダーを務める桜が真っ先に飛び出した。
日本刀を手に母親に迫ると、抜刀から繰りだした一撃が敵を捉え、斬り裂く。
先ほどまでの少女然とした様子はなりを潜め、機敏な動きはまるで別人のようだ。
「よそ見してると、あぶないよ」
紅葉は桜の背後から死角に滑りこみ、解体ナイフを一閃。
うめく母親アンデッドの身体深くに刃を刻みつける。
ふすまの奥は畳敷きのリビングになっていた。
両刃ノコギリを手にした男性――おそらくは父親アンデッド。
奥に座していた2人のこどもが立ちあがり、それぞれ鋤(すき)と月鎌を構え、灼滅者たちに迫りくる。背格好から、両手に月鎌を構えたこどもがユズルの友達のようだ。
屍たるアンデッドに説得は不可能。
「させるかッ!」
前進しようとする父親に向かい、千聖は無敵斬艦刀を振りおろした。
ずどんと鈍い音が響き、木造の家屋が揺れる。
巨大な鉄塊に押しつぶされ、父親の片腕が吹き飛んだ。
だが、まだ倒れたわけではない。
なおも立ち上がろうとするアンデッドに対し、
「往生際が悪いで!」
薫の刃が閃き、その脚を一刀両断。力尽きた父親の骸が畳の上に崩れ、灰塵と化す。
和巳は妖の槍を回転させて突撃し、兄弟アンデッドの進撃を阻む。
「本当はアンタ達も助けたいんスけど……すまないッス!」
前衛が立ち回る一方、中衛で周囲に注意を払っていた一沙は母親の動きを捉えた。
「こちらの隙をつこうなんて……甘い!」
和巳の背を狙った攻撃より早く、母親アンデッドに日本刀を振りおろす。
もう一押しと踏んだ初心が、天星弓を掲げた。
「とどめよ。……懲罰の十字架を受けなさい!」
天井に出現した十字架が、一帯をまばゆい光で満たす。
聖光に呑まれて母親が灰塵と化すそばで、影耶は愛用のマテリアルロッドでトンと床を叩いた。
「ちょっと順番が狂ったけど……!」
目には見えないフリージングデスの効力で、アンデッドが急速に熱を奪われ、凍りついていく。
兄弟が動きを鈍らせたのを見てとり、桜が踏みこむ。
「これで、三体目だ!」
ためらうことなく、一刀。
緋色のオーラをまとった日本刀が兄アンデッドを捉え、その身体を分断した。
分かたれた身体が床に落ちるより早く、薫と千聖が、ユズルの友達に迫る。
薫は一瞬目を閉ざすと、
「あんさんの友達も充分苦しんだはずや。……堪忍やで」
居合斬りでその身体を一閃。
逆さ十字を眼前に、千聖は誰にともなく、つぶやいた。
「……あいつは戻れる。戻してやる!」
赤に引き裂かれた少年は最期に天井に手を伸ばすと、そのまま、なす術もなく消えていった。
●おもいでは、闇色
屋外では雨が降り出したらしい。
戦闘を終えて一息つくと、あたりを包みこむように雨音が響いていることに気づいた。
雨戸が閉ざされているため外の様子はうかがえないが、地鳴りのように雷がとどろいている。
ユズルが姿を現していないところをみると、一階での戦闘は気づかれずに済んだようだ。
灼滅者たちは隊列を整え、不用意に音を立てないよう静かに階段をあがる。
どの部屋にユズルがいるかは、すぐにわかった。
たったひとつだけ扉が閉ざされていたのだ。
念のために他の部屋を覗いて確認したが、ほかに人の気配はない。
目線を交わして頷きあい、ゆっくりと扉を開ける。
八畳ほどのフローリングの部屋だった。
稲畑を臨む大きな窓が開けられ、ひるがえるカーテンの隙間から雨が降りこんでいる。
床には何冊ものアルバムと、油性マジックで黒く塗りつぶされた写真が散乱していた。
その床を見下ろすように、ひとりの少年が佇んでいる。
窓際の二段ベッド脇には、二つの勉強机。
男の子向けの玩具やサッカーボールも転がっている。
おそらく、ここは兄弟のこども部屋だったのだろう。
一同が部屋に入ったのを確認し、紅葉が静かに声をかけた。
「ぞろぞろとごめんね。宮間ユズル君……で、あってるのかな?」
呼びかけられ、少年が顔をあげる。
アンデッドにも似た、虚ろなまなざしだ。
「……だれ」
闇堕ちした少年は着実に『屍王』へ向かいつつあるのだろう。
その肌は青白く、頬はこけ、生気を失ったようだ。
「君を助けに来た」
千聖が単刀直入、はっきりと告げる。
「……たすける」
「宮間はん、友達の家族もろとも、あんさんを救いに来たで」
続く薫の言葉に、ユズルの瞳が揺らいだ。
「……ともだち」
手にしていた写真を握り締め、頭を抱えるようにうめく。
「こないんだ……さっきから………よんでるのに、だれも」
おそらくアンデッドを呼び続けていたのだろう。
しかしアンデッドの闇は、先ほど灼滅者が討ち払った。
「……本当は分かってるんでしょう? あんな状態を、『生きてる』とは言わないわ」
風に舞う写真を拾いあげる。
顔を塗りつぶされた二人の少年の姿に、初心は眉根をひそめた。
アンデッドには激しい嫌悪感がある。抑えきれない敵意がある。だが宿敵とはいえ、救える命は救いたいとも思うのだ。
しかし、ユズルはまだ友達の『生』を諦めてはいなかった。
「いきてる……いきてるよ! 僕はだれも、ころしてなんか……ない!」
唐突な叫びとともに、彼の頭上に十字架が浮かぶ。
「いけない!」
「皆、避けるっス!」
とっさに桜、和巳、薫がその身体を呈し、ユズルの前に出た。
堕ちてなお白く輝く十字の光の筋が、容赦なく三人の身体を貫く。
「……ッ!」
影耶はすぐさま桜に駆け寄り、ジャッジメントレイを施した。
「お前、そうやって、このまま一生ここで暮らすつもりなのか!?」
冷めたい瞳を、さらに冷たい色に染め、闇に堕ちた少年を見据える。
「ほら、しっかり! 立てる?」
初心のヒーリングライトを受け、和巳が頷き、槍を支えに立ちあがった。
「俺は刺されても、血まみれになっても、絶対怯まないッスよ!」
ユズルの背負った十字が、まごうことなく己の扱うそれと同じと見て、薫は叫んだ。
「宮間はん! 逃げるな、戦え! それがうちらの十字架や!」
日本刀を構え、一沙がどす黒い殺気を放ち、周囲を鏖殺領域で覆いつくす。
「あくまでも戦うというのなら……死力を尽くす以上の礼儀は無いわよ」
戦闘こそが己の役目と、対する一沙の決意も固い。
傷ついた仲間を背に、千聖は説得を続ける。
闇を招いた引き金は不幸な事故だと。
罪悪感にさいなまれ、恐怖にとらわれていただけなのだ、と。
「手を伸ばせよ。引っ張りあげてやっから、こっちこいよ!」
ユズルの間合いに踏みこみ、手を伸べる。
だが、闇に脅かされつつある少年は、その手を見てかぶりを振った。
「いやだ……あんたたちなんか、しらない……!」
相手が手を出すまではと攻撃を控えていた紅葉が、千聖の死角からユズルに迫った。
もし彼がこのまま闇に堕ちるというのなら、紅葉は全力でそれを阻止するつもりだ。
どんな形であれ、彼の願いを叶えるために――。
繰り出された解体ナイフの刃を避け、屍王は部屋の奥へ逃げこんだ。
護身用にするつもりだったのか。置いてあった鉈を手にとり、灼滅者たちへ向ける。
その切っ先が震えているの見、紅葉は目を閉じた。
「……ねぇ、ユズル君。君にまだ日常を望む意志が、闇に抗うだけの意志があるのなら――」
哀れな屍王は桜の振りおろした刃を受け止めることもできず、その身に傷跡を刻んでいく。
妖の槍を突き出し、和巳は震えるユズルの攻撃を受け、血を流しながらも説得を続ける。
命は簡単ではない。こんなにも重いものなのだ、と。
「必ず、俺達が絶望から引っ張りだしてやるッスよ!」
かつて己も闇堕ちし、同じように家族をアンデッドとした。
その経験があるからこそ、薫も叫ぶ。
「宮間はん、闇に身を任せたらあかん……これ以上は、生き地獄やで!」
「……もう、僕に、かまわないで……!」
なおも拒絶するユズルだったが、攻撃の手は止まりつつある。
「家族はどうするんだよ! 両親を心配させ続けたままでいいのか!」
続く影耶の言葉に、少年が目を見開いた。
初心はその変化に気づき、攻撃から薫の回復に切り替える。
「あなたはまだ帰れる場所に居るわ。だから、『戻って来なさい』」
かけられる言葉の数々は、着実にユズルの心を揺さぶった。
――助けられなかった友達。
――何日も会っていない両親。
――そして、目の前で叫び続ける見ず知らずの者たち。
「……かえりたい」
足元に散らばる写真に、稲畑が写っている。
一緒に帰りたかった友達は、もう、居ない。
「……かえりたいよ……」
友達の家族もまた、同じ運命を辿った。
己が、そうしてしまった。
「罪を背負い」
紅葉が、途切れた言葉の続きを紡ぐ。
「闇に抗い」
一歩一歩、哀れな屍王の前に歩み寄る。
「前に進む覚悟が、君に、あるのなら」
ユズルは眼前の少年と、その背後に佇む者たちを見た。
手を取れば、友達と同じ目にあわせてしまうかもしれない。
また、誰かをころしてしまうかもしれない。
「僕達が、君の望みを、叶えてみせよう」
恐怖に抗いながら、ユズルは彼らの言葉を信じ、もう一度だけ、願いたかった。
在るべき場所を、願いたかった。
「うちに、かえりたい……!」
少年が頷くのを、紅葉はしかとその目に焼きつける。
「――分かった」
(「君の望み、確かに聞き届けたよ」)
彼の友達の運命には、間に合わなかった。
だが彼が耐え切るというのなら、灼滅者は、その手を離しはしない。
紅葉の刃が赤いオーラをまとい、舞う。
「君は戻れる。贖うことはできる」
千聖が呼応するように無敵斬艦刀を構え、「絶対に助ける」と心から願う。
「……ノーライフキングだ……? そんなの、糞ッ食らえだ!」
「みんなの分まで、君も生きないと……幸せにならないとダメッス!」
「あとちょい、痛いの我慢して欲しいッス!」と、和巳が槍を繰り出し、
「不浄の命を刈り取る、神風の刃よ!」
初心の神薙刃が、少年の身体を、幾重にも打ち据えていく。
「一人で立てなくても、手を貸してくれる人間って意外といるものよ」
一沙は赤い逆さ十字越しに、「目の前とかにね」とささやく。
攻撃に次ぐ、攻撃。
呼吸をすることさえ難しい。
そう感じながら、ユズルはその一撃、一撃に耐え続けた。
「いい加減目ぇ覚ます時間やで」
十分に体力を削いだとみて、薫と影耶がそれぞれの武器を構える。
「俺たちを信じて――」
「あんじょう、気張りや……!」
叫びとともに、一閃。
繰り出された慈悲の一撃が少年の身体を撃つ。
「うぁああああ!!」
灼滅の苦しみに屍王が悲鳴をあげ。
幼い少年の身体は、その場にくずおれた。
●まどのそと、――
倒れたユズルを囲う仲間たちを見守り、影耶はずっと口をつぐんでいた。
「あんまり、ひとの事言えないんだよな……」
やがて少年が目を開き、初心と桜が呼びかける。
「戻ってきたわね?」
「身体は? 痛むかな?」
覗きこむ顔を見つめ返し、ユズルは頷き返した。
彼自身の意識があることを確認し、千聖はその身体を抱きしめ、髪を撫でる。
「がんばったな! 怖かったよな、もう大丈夫だから!」
「ちゃんと、一人で立てるじゃない」
一沙もほっと息をつき、肩の力を抜いた。
「十字架は重い。せやけど、支えてくれる味方がここには居るさかい」
「安心して身を任せてや」と告げる薫の横で、
「まずは俺と友達になって欲しいッス……!」
和巳は少年に向かって手を差しだす。
「……きみたち、だれ?」
改めて紅葉が武蔵坂学園について説明し、「君さえ良ければ」と前置きする。
「学園に、こない?」
全身は痛むが、意識ははっきりしていた。
『仲間たち』の手を支えに立ちあがる。
風が頬を撫でるのに気づき、ユズルは窓の外に視線を移した。
はためくカーテンの向こうに、稲穂の海と、七色の虹が見えた。
作者:西東西 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2012年9月6日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 9/感動した 7/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 2
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