●母岩清水
吹雪の夜。
清水は冬でも凍り付くことはなく、静かに流れ続けている。
――と。
どこからともな、大きな獣が現れた。ポニーほどもある犬……いや狼のような獣だ。そのふさふさとした体毛は銀灰色で、額には黒い星を抱いている。
ワオォーーーーン。
狼は清水の湧く絶壁に向けて、山里を震わせるような遠吠えをひとつ。
そしてまた、どこへともなく去っていった。
――狼の気配が消えた頃。
泉のすぐ脇。絶壁を成している岩のひとつがブルリと震え、積もっていた雪をふり落とした。
岩は、ちょうど人間ほどの大きさで、白っぽい長方形。それが震えながらゆっくりと変化していく……まるで目に見えない彫刻家が削り出しているかのように、上の方から順番に、頭、顔、首、肩、胸……と人型が形作られていくのだ。
岩の中から現れたのは、岩の色のままの40前後くらいの女性だった。修験者の白装束を纏っている。
女性はカッと目を開いた。真っ暗な、奈落のような瞳が、ぐるりと登山口の方を睨み付け。
『……ムスコ……ヲ、カエセ……』
ぎしぎしと呟いた。
●武蔵坂学園
福島・新潟・山形県境に深々と横たわる、山岳信仰の山・飯豊連峰。その信仰が会津地方で特に篤いことは、現在の県境を見ても一目瞭然である。
その会津側の登山口近くに『母岩清水』と呼ばれる湧水が湧き出ており、その脇に『母岩』と呼ばれる、人間の立ち姿を彷彿とさせる岩が立っている。
春祭・典(高校生エクスブレイン・dn0058)は、メモをめくりながら。
「その昔、会津のある村では、男子の成人儀礼に飯豊登山を行っていたのだそうです。成人といっても、昔ですから15歳前後でしょう。現在でも結構難しい山ですから、当時も事故はあったようで」
母岩は、その成人登山で行方不明になった息子を恋うる母親が石化したもの、という言い伝えがあるらしい。
「飯豊山は当時ガッチガチの女人禁制だったのに、その母親は息子を探しに入山する決心をします。水垢離をして祈り、いよいよ登ろうとしたんですが、やはり山の神は許してくれず、清水の傍で岩にされてしまったと」
典は淡々とメモをめくるが、傷ましい話である。
「その母岩を、スサノオが古の畏れにしてしまったわけです」
古の畏れとなった母岩は、息子を恋うる余りか、それとも山の神への怒りからか、息子と同年代の少年が清水を訪れると、岩に引きずり込もうとする。
「冬なので今は訪れる人も少なく、事件は起きていませんが、飯豊山は百名山ですし、清水自体も名水なので、春になれば大勢のハイカーや名水マニアの人々がやってきます」
放っておけば何人もの少年が岩に喰われてしまうかもしれない。
「なんとしても、冬のうちに解決しなければなりません」
場所は福島県喜多方市。登山道に入る手前の母岩清水。清水の周囲は、登山者の駐車場にもなっているので、広さは戦闘するに充分である。
「豪雪地帯の山奥なので、滅多に人は通りませんが、その分駐車場の除雪が行き届いていないのが難点です」
除雪車が道路は通行できるようにしているが、駐車場は清水の回りとUターン分くらいが除けてあるだけだ。
「母岩は鎖のようなもので清水につながれており、駐車場の範囲くらいしか動けませんので、道路まで誘き出すことはできません」
雪中で動けるような準備をしてほしい。
ちなみに、母岩は修験者が持つ金剛杖を武器とする。
「母岩を出現させるには……」
典は心配そうな表情になると、集った灼滅者たちを見回して。
「息子と同年代の15歳前後の男子が、岩に近づいていってください。もし、なかなか出てこないようでしたら水垢離をしてください」
水垢離を行って入山するそぶりを見せれば、より母岩を刺激し、きっと引きずり出すことができるだろう。
「それから、申し訳ないのですが」
端正な眉が潜められて。
「元凶であるスサノオの行方は、まだ予知しにくい情況なのです。個々の事件を追っていけば、いずれたどり着けるとは考えているのですが……」
参加者 | |
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榊・那岐(斬妖士・d00578) |
龍海・柊夜(牙ヲ折ル者・d01176) |
白鐘・睡蓮(黒天焔之迦具土・d01628) |
赤威・緋世子(赤の拳・d03316) |
月光降・リケ(魍魎猖獗・d20001) |
銀城・七星(瞳に玉兎を抱く少年・d23348) |
ピグマリオン・トリオゾン(ローゼンタール・d23913) |
武藤・雪緒(中学生シャドウハンター・d24557) |
●母岩清水
「スサノオのヤツ、手当たり次第に畏れを蘇らせている……というわけではなさそうだが……」
白鐘・睡蓮(黒天焔之迦具土・d01628)が、雪の上でかんじきの紐を締め直しながら言うと、月光降・リケ(魍魎猖獗・d20001)が頷いて。
「ええ。いったい何か目的をもって動いているのでしょうか? わかっているのはスサノオが具現化する存在が人間に害を為すことだけ」
武藤・雪緒(中学生シャドウハンター・d24557)が、ガイコツをカタカタさせながら、
「悲劇や惨劇のあった場所って、祟りや呪いが残っててもおかしくないからな。社や地蔵を作って畏れ奉るってよくあるし、古の畏れとはよく言ったもんだ」
「しっかし、今回のはなんだか可哀想な話だよなー」
へくしっ、と赤威・緋世子(赤の拳・d03316)は可愛らしいくしゃみを挟んだ。子供は雪の子と言うが、寒いものは寒い。
「同情はすっけど、無関係な周りが巻き込まれちゃたまらねぇ。さっさと倒すしかねぇな」
「ああ、悲しい伝説は私の炎で終焉を彩らせて貰うぞ」
睡蓮は気合いを込めて拳を握り、
「悲しい伝承に、私たちで終止符をうつとしましょう」
リケも同意する……と。
「皆さん、私たち待機組は、ぼちぼち下がっていた方がいいかもしれません」
黙々と駐車場の雪かきをしていた龍海・柊夜(牙ヲ折ル者・d01176)が、囮役の2人の様子を見ながら、仲間たちに声をかけた。
囮役のピグマリオン・トリオゾン(ローゼンタール・d23913)と榊・那岐(斬妖士・d00578)は、周囲の雪を除けながら母岩に接近中。あと数メートルほどの距離まで近づいている。
その傍らには、こちらは水くみ出来る程度には除雪されている母岩清水。清水は冬でも凍ること無く、樋から水盤へと滔々と流れている。但し、岩を穿った水盤は、雪と氷のオブジェと化しているが。
「冷たそうだなあ。水垢離展開にならないことを祈りたいなー」
緋世子が気の毒そうに呟くと、ぶるっと身震いし、
「すでに寒そうですもんね」
自身は寒冷適応を装備してきたリケは、白装束の2人を心配そうに見やる。囮役は、事前に那岐が地元の民俗資料館で調べた、当時の儀礼衣装に近いものを着けている。吹雪でこそないが、しんしんと雪が降りしきる中の白装束は、いかにも寒そうである。
突然、しゅたっと銀城・七星(瞳に玉兎を抱く少年・d23348)が、駐車場の隅にある、大木の枝に飛び上がった。
「どうしました?」
柊夜が驚いて訊くと、
「……一応、飛び上がれるかの確認と、ここに隠れていようかと」
七星は、戦闘に先立ち、雪質や木立の位置などを入念に確認していたのである。木の枝に腰かけた七星は、ESPドリンクバーを発動して胸元から栄養ドリンクを出した。戦闘前に栄養補給して体を温めておきたい。
「そろそろ俺も隠れておこうっと」
雪緒はスライム体を生かし、柊夜が寄せた雪の隙間にうにょろっと入りこみ、カイロとレスキューシートを体に巻き付けた。
他の待機メンバーも頷き交わすと、それぞれ木立や雪山の陰など、母岩を遠巻きにする位置に身を潜め、ターゲットの出現を待つ。
●母岩出現
「なかなか出ませんね」
那岐は、間近に迫ってきた母岩を見上げ、
「ピグマリオン先輩、水垢離する羽目になったら僕がやりますよ。寒中修行で滝に打たれてましたし、寒い中で水をかぶるのは慣れてますから大丈夫です多分……バベルの鎖があるから、冷たくても凍えることはないはずだし」
ピグマリオンは首を振り、
「いや、水垢離する羽目になったら、2人で頑張ろう。僕は寒冷適応使ってるし……とりあえず、ギリギリまで近づいてみようよ」
「そうですね」
2人は母岩の周囲の雪をせっせと避ける。吹きだまった雪が、岩の腰の辺りまで隠しているのだ。
「ふう……」
少しして、2人はほぼ露出した岩のすぐ傍に立ち、しげしげとそれを眺めた。
あちこち雪がこびりついた、ちょうど人間ほどの大きさの、縦に細長い白い岩。古の畏れに変化するという予知や、悲しい伝承を聞いているせいなのか、奥の方で微かに脈打つ不気味な気配を感じる。
「出ませんねえ……ただ近づいただけじゃダメかなあ」
「うん。でもまあ早まらないでおこう。伝承自体が実話かどうかわからないわけだしね。まずはひとりずつ接近してみよう」
「そうですね……あ、お母さん、と呼びかけてみますか?」
「なるほどね、それもやってみようか」
2人は次の手を相談しながら、何気なく岩に手を伸ばした。感触を確かめたかったのか、雪を払おうとしたのか……しかし岩に触れるか触れないかのところで。
「……!?」
バベルの鎖が、激しく警戒警報を発した。
次の瞬間、ゴキッ、と堅いものが砕けるような音がして、突然岩から2本の腕が飛び出してきた。白く細く捻れた、骨のような長い腕が。
その腕は目にも止まらぬスピードで伸びると、咄嗟に飛び退こうとした2人の腕をガッキと掴んだ。
●戦闘
警戒警報を感じたのは、囮役ばかりではなかった。見守っていたメンバーも一斉にそれぞれの待機場所から飛び出し、2人の元へと馳せる。
「この身、一振りの凶器足れ!」
七星は木から飛び降りながら解除コードを唱え、
「火葬(インシナレート)開始!」
睡蓮は走りながら聖剣を握りしめる。
囮役の2人は、母岩の腕から逃れようともがいているが、ものすごい力で岩の方に引きずられている。雪かきはしたが、堅く締まった根雪までは取り除くことはできず、那岐はスノーシューのスパイクを蹴り込もうとしたが、それでもガリガリと引っ張られてしまう。
「2人を離せ! 姿を現せ!!」
いち早く岩に到着した睡蓮は炎を宿した剣を振りかざすが、母岩の本体は現れず、腕の力をは衰えない。
「まず、2人を助けなければ!」
リケは一緒にスナイパーを務める雪緒に叫ぶ。
「うん、腕を狙うよ!!」
雪緒はスライム体から、青白い炎を母岩の右腕目がけて噴出する。火と見えたそれは冷たい炎で、腕を一瞬のうちに凍らせる。同時にリケは仲間の頭越しに踏み込み、異形巨大化させた拳で左腕を殴り飛ばす。
どちらも腕をへし折るとまではいかなかったが、一瞬力を緩めさせるには充分で、
「助かった!」
「ありがとう!」
囮役の2人は束縛から何とか脱出し、雪の上を転がるようにして、ターゲットから離れた。
母岩は急襲された腕を驚いたように一度引っ込めたが、
バーンッ!
「うわっ!?」
発破をかけたかのように岩が突然破裂し、接近していた灼滅者たちにパラパラと欠片が降りかかる。
舞い上がった雪と砂礫はすぐに落ち着き、岩色をした母岩の全身が現れた。その姿はまさしく息子を思い、禁じられた神の山へと登ろうとした慈母に相応しい……と、見えたのは一瞬で、優しげだった顔はみるみる怒りに歪み、夜叉となる。長い髪は逆立ち、儀礼装束は風に吹き散らされるように広がり、まるで白い炎に包まれているかのよう。そして長い腕には、太い金剛杖が握られている。
「これが……古の畏れ」
ジャリと鎖を鳴らし、母岩が、戦く灼滅者たちに向かって一歩踏み出した。
「よし、行くぞ!」
睡蓮がめらめらと炎を揺らしながら聖剣で斬りかかったのを皮切りに、灼滅者たちは戦いの火ぶたを切った。
睡蓮の剣は杖に遮られ、ガキッ、と木の杖とぶつかったとは思えぬ金属的な音を立てたが、
「うりゃあ、ボディがお留守だぜ!」
緋世子が低く飛び込んで、雷を宿した拳を叩き込んだ。
中衛の七星は突っ込んで行く前衛陣に素早く夜霧隠れをかけ、後方では囮役の2人を柊夜が癒やし、前線へと送り出す。那岐とピグマリオンはそれぞれ聖剣を手にしてポジションに着く。
どおん、と母岩が重たげにまた一歩踏み出した。闇のようにうつろな瞳が、灼滅者たちをじっと見つめる。
「よし、今度は僕らの番だ!」
那岐が剣を振りかざし、ダッと踏み出した……が。
ぶん、と母岩が杖を振り。
「うわあっ!?」
ゴウッと突風が巻き起こり、前衛がなぎ倒される。
「くっ……すごい風っ」
かろうじて踏みとどまった中後衛が踏ん張る。雪緒はにゅるんと接近すると、スライム体から注射針を出して毒を流し込み、七星は絶壁を駆け上がって敵の背後に回り込むとナイフで白装束を切り裂き、リケは、
「悲しいのはお話だけ……具現化したあなたに慈悲は無い」
悲しげに呟くと、力一杯ロッドを叩きつけて魔力を流し込んだ。
その間に、柊夜が心配そうに仲間たちの様子を窺いながら、癒やしの風を吹かせる。本格的な依頼は今回が初めてという仲間が多いので、回復には細心の注意が必要だ。
「ありがとよっ、なかなか強えな! でも段々痛くなるから覚悟しなーっ!」
回復を受けた緋世子が雪まみれになりながらも素早く起き上がり、槍を構えて飛び込んで行く。小さな体の全体重をかけて捻りこんだ槍の穂先は、ガリリと嫌な音を立てつつも堅い岩を深く穿った。
睡蓮はかんじきで雪を蹴りたて敵の懐に入ると、稲妻を散らしながら拳を突き上げ、
「今度こそ届かせます!」
那岐も聖剣を思いっきり振り下ろす……と、ガチン、と鈍い音がして、母岩の体から岩の固まりが落ちた。胴体が大きく欠けたのだ。
「お、すごい、効いてきたみたいだねぇ?」
初の本格依頼参加のため、仲間たちの猛攻に目を丸くしていたピグマリオンだったが、
「ようし、僕だって……たあっ!」
光る剣を振り下ろしながら踏み込む。ガキッと音がして、堅い岩の体に食い込んだ手応えがあった。
「よし……ん? あああっ!?」
飛び退いて離れようとしたピグマリオンに、容赦ない金剛杖の一撃! バアン、とすくい上げるように左足が打たれ、火花が散る。
「ヤバい!」
咄嗟に七星が糸を繰り出し、雪緒が杭を撃ち込んで敵の動きを封じる。こう寒いとスライム体の動きが鈍いような気がしていた雪緒だったが、仲間のピンチにそんなことは頭から吹っ飛んでいた。続いてすかさずリケが顔を連打し引きつける。
その隙に、柊夜がピグマリオンを一旦後方に下げた。
「大丈夫ですか!?」
「……ええ、大丈夫です。痛いけど」
ピグマリオンは痛そうながらも柊夜に支えられて立ち上がり、笑った。どうやら致命傷ではなさそうだ。
「どうせなら、カッコ良く女の子を庇って負傷したかったなぁ」
「ふふ、そんなことを言っていられるようなら、大したことなさそうですね」
柊夜も軽く笑んで、ピグマリオンの負傷した脚を指輪でなぞる。
「よくも……!」
睡蓮が怒りを抑えつつ、背中に炎の翼を顕現させた。その炎は前衛の仲間達を包み込み破魔の力を与える。その炎に勇気をもらった緋世子は、拳にオーラを宿して飛び上がると、
「うらぁ! 剛拳連打だぁああ!!」
母岩の振り上げた腕をかいくぐって連打を見舞い、那岐は禍断刀【蒼風】で岩をも切り裂く一刀を繰り出す……と、母岩が両手と杖を高々と差し上げ、雪空へと視線を向けた。まるで天から何かを召還するかのように……。
「拙い!」
狙っているのは自分ではない。振り返れば、七星が次の攻撃に向けて、雪の上に黒々とした影を引き寄せている最中。
「七星さん、危ない!」
那岐は声を限りに叫んだ。
「!?」
七星は本能のままに雪を蹴って横っ飛びに転がった。ビシャーン! と強烈な稲妻がたった今彼が立っていた場所を直撃した。
「あ……ぶねえ」
ギリギリで避けたが、それでも赤い髪がぶすぶすと焦げている。しかし気にしている暇はない。七星は雪の上を転がったまま素早く影を放つ。
影がすっぽりと食らい付いたところで、雪緒がするすると近づいて毒注射を打ち、リケが欠けた胴体を狙って鬼神変を叩きつける。
「僕も、もう一働きできるよ!」
回復成ったピグマリオンが風の刃を巻き起こし、那岐が敵の足下に雪の上を滑り込み、
「息子さんの所に逝かせる為にも、ここで鎖を断ちます!」
ガキッと脚に刃を突き立てる。
『グ……グウウ……』
初めて母岩がうなり声を上げ、足下の那岐を蹴り飛ばそうとしたが、那岐は素早く跳び退って避けた。
ピキ、と、母岩の脛に大きなヒビが入った。気づけば、全身に細かなヒビが入り、ポロポロと細かい欠片が落ちてきている。
母岩がまた杖を振り上げた。
「(来るか!?)」
攻撃に身構えた灼滅者たちであったが、母岩はくるりと杖を回し、彼女の周りをふわりと雪煙が覆った。
「なんだ!?」
「……あっ、集気法なんじゃないですか!?」
柊夜が後方から叫び、咄嗟にフリュスケータから制約の弾丸を撃ち込む。雪煙のため、命中したかどうかはわからないが、
「そうか、みすみす回復させておく手はないな」
睡蓮がロッドを構え炎を宿す。
「いくぞ、緋世子!」
「おうっ!」
緋世子もロッドを構え、2人は雪煙の中に果敢に突っ込んで行く。
「派手にぶっ飛びな!」
「母の心は私の火勢として共に過せ! 救導火!!」
雪煙の向こう、2人の叫びと共に、炎と魔力の光が眩しく炸裂した。
次の瞬間、2人は右と左に飛び退き。
ピシリ、と堅いモノが割れる音がして。
ガラガラガラ……。
母岩は、雪煙と共に崩れ落ち――そして、消えた。
●祈りとラーメンと温泉と
不思議なことに、崩れ消えたはずの母岩は、いつの間にか元通りの形で清水の脇に立っていた。但し、戦い前に感じたような、不気味な生命の気配はすっかり失せている。
灼滅者たちは岩に手を合わせ、鎮魂を祈る。
「息子さんに会えるといいね」
ピグマリオンは気障な仕草で持参のカーネーションを供えると、
「ああ寒い、寒いなー、こう寒いと人肌が恋しくなるね。誰か温めてくれないかなー」
と、女性陣をちらりとサングラス越しに見やったが、
「睡れーん! 温かいものでも食べにいかね?」
「ああ、それは良い考えだ、緋世子」
「あ、私喜多方ラーメンを食べてみたいんですけど」
「おお、リケ、ナイスアイディア!」
聞いちゃいない。
「あの~、すみません……」
そこに、最後まで岩に手を合わせていた那岐が唇を震わせながら、おそるおそる口を挟む。
「その前に温泉に寄ってもらえませんか? このままだと風邪ひきそうで……」
作者:小鳥遊ちどり |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2014年2月7日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
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