茶席をアメリカンしちゃうんだぜぃ!

    ●某茶室にて
     炉の前で、亭主が無駄の無い所作で茶を点てている。炭火の上では、鉄瓶がチンチンと鳴る。庭園では春風が名残の桜を散らし、どこかで鶯が鳴いている。
     和敬清寂。
     大きな茶会らしく、茶室には10人の客がぎゅう詰めで座っているが、その誰もが、静謐で優雅な時間を楽しんでいた。
     ……と、その時。
     ぱっちん。ぱっちん。
     庭園の方から、全く異質な音が聞こえてきた。
     亭主はじめ、茶室にいる者は、ぎょっとして庭の方に顔を向ける。
    「なんでしょう?」
     ぱっちん音はみるみる近づいてきて、現れたのは。
    「HEY、HEY、HEY!」
     妙に揃ったステップを踏み、指ぱっちんをする、ジーンズにリーゼント、サングラスに革ジャンやスタジャン姿の、レトロアメリカンでヤンキーな若者20名。
     唖然とする茶人たちに、ずらりと庭に並んだヤンキーは言い放つ。
    「HEY、ユーたち、和服で日本茶なんかすすってる場合じゃないぜ! 時代はアメリカン、アメリカンよ!」
     ヤンキーたちは土足のまま茶室に上がり込むと、まず亭主の手から茶筅と茶碗を奪い取り、大きなコーヒーポットを持たせた。中身はもちろんアメリカンコーヒー。
    「HEY、その服も良くないよ!」
     ヤンキーたちが取り出したのは、もちろんジーンズ。
    「アメリカンに着替えさせてやるぜ!」
     ひとりが手始めに、傍らの女性の帯に手をかけて……。
    「きゃあ、あれええええ……」
     
    ●武蔵坂学園
    「……というわけで、この後、お代官様ご無体な帯くるくるシーンが繰り広げられるわけでして。まあヤンキー戦闘員は一般人に危害を加えることはないので、単に着替えさせるだけですけどね」
     話が一段落したところで、春祭・典(高校生エクスブレイン・dn0058)は手鏡を取り、前髪を直した。
     
     先日の戦争で逃げおおせたアメリカンコンドル配下のヤンキー戦闘員が群馬県前橋市の茶会に現れるという予知がなされた。
     茶室は、県所有の明治時代の和風屋敷の離れで、建物自体が県の重文だ。
     ヤンキー戦闘員の目的は日本文化を破壊することにあるので、今回は茶会を台無しにするのは元より、茶器や着物、そして建物の破壊をももくろんでいると思われる。
     茶会は、とある流派の春の茶会で、屋敷を借り切って行われている。戦闘員が現れる時に茶室にいるのは亭主と客10名の合計11名だが、水屋や屋敷の方にも人がいるので、一般人を避難させると共に、茶室に近づけない工夫も必要だ。
     
     典は鏡をぱたりと置いて。
    「茶席への潜入方法は2通り考えています。客として茶席に潜り込むか、庭に隠れて待機するか……これはヤンキー戦闘員ならではの特性を考え合わせて判断してもらいたいんですけど」
     ヤンキー戦闘員は強化一般人としては不完全な状態なため、彼らと同じようなアメリカ人風の言動や服装をすることで、攻撃をためらわせることができるのだ。
    「ですので、庭に隠れる人たちは、予めアメリカン偽装をしておくといいでしょう」
     なるほど、と灼滅者たちは頷く。客として茶席に潜むのも、庭に隠れているのも、初動や避難誘導に有利に働きそうだ。和服の者も、敵出現後はアメリカンな工夫をするといいかもしれない。
    「それから、茶室って狭いですからね、屋内には入らせないで戦った方がいいでしょう。庭に敵が並んだタイミングで、行動開始がいいと思います」
     それはそうだろう。なにせ敵は20人だ。
    「ヤンキー戦闘員はあまり強くないですが、人数が多いので油断はしないでくださいね。それと、どうやら」
     典はキレイに整えられた眉をひそめて。
    「戦闘員たちが日本文化を破壊することにより、ご当地幹部アメリカンコンドルの勢力が強化されるらしいんですよ」
     そんなのは許せない。灼滅者たちは憤る。
    「ですよね、日本の伝統文化、皆さんの力でしっかり守っていきましょう!」


    参加者
    橘・千里(虚氷星・d02046)
    九曜・亜門(白夜の夢・d02806)
    荻原・茉莉(モーリー・d03778)
    雪乃夜・詩月(夢誘う月響の歌・d07659)
    津軽・林檎(は寒さに強い・d10880)
    蒼間・夜那(金瞳の夜猟者・d14520)
    由比・要(迷いなき迷子・d14600)
    アスル・パハロ(幸せの青い鳥・d14841)

    ■リプレイ

    ●茶席組1
     鹿威しの音が響く、風雅なひととき。
     着物姿の九曜・亜門(白夜の夢・d02806)は茶席の客達に違和感なく混じり、一部の隙も無く涼やかに背筋を伸ばして座している。
     隣席の蒼間・夜那(金瞳の夜猟者・d14520)も、三日月紋のついた黒の紋付きと袴姿。
     同席の一般人たちは、やけに人数が多くて茶室が狭いとは思っているだろうが、プラチナチケットのおかげで灼滅者たちの存在に違和感を覚えている様子はない。ましてや夜那を男装の麗人と見破っている者はいないだろう。
     本人曰く、
    「だって煌びやかな振り袖とか似合わないじゃん、オレ」
     だそうだが、着てしまえばそれなりに似合いそうでもある。彼女の場合、容姿より立ち居振る舞いが問題になりそうだが。
     もう片方の隣では、アスル・パハロ(幸せの青い鳥・d14841)がわずかにもじもじし始めている。足がしびれてきたのだ。着物は嬉しいのだが、苦手な正座はいかんともしがたい。しかしそれでも窓越しに庭への注意は怠らない。じっと庭組の仲間たちが潜んでいるあたりに目を向ける。
     そのアスルの様子に、亜門もそっと庭へと視線を流すと。
    「(さて、そろそろかのぅ……む?)」
     その視線を待っていたかのように、遠くから、微かに。
     ぱっちん。ぱっちん。

    ●庭組1
     指ぱっちんの音は、庭に潜む仲間達の耳にも届いていた。
    「どうしてストレートにアメリカ文化普及に専念しないんだろうねぇ。それがご当地怪人ってやつなのかな」
     大きな庭石の陰に隠れたカウボーイ姿の由比・要(迷いなき迷子・d14600)は、囁くと、ハットを被り直してぱっちん音の方向をじっと見つめる。
    「そうよね、日本文化を破壊しなくてもできるでしょうに」
     闇纏いを使っているので、少し前に出て様子を窺いながら、雪乃夜・詩月(夢誘う月響の歌・d07659)は同意する。彼女は星条旗プリントのTシャツにジーンズ姿。普段はしない服装なので、新鮮な気分。
     荻原・茉莉(モーリー・d03778)も拳を握って。
    「アメリカンもいいだろうけど日本文化だっていいものだ! 絶対に守るよっ」
     ジーンズとパーカーを着けた橘・千里(虚氷星・d02046)も深く頷いた。人前で話すのが苦手なので口には出さないが、
    「(まったく……日本の文化をなんだと思ってるんだ。『和』の心を壊すなんてさせない! 大人しくNYでハンバーガー食べながら肥え太ってれば良いのだ!)」
     心中では激しく憤っている。
     そうこうしている間にぱっちん音はどんどん近づいてくる。ザッ、ザッ、と揃いのステップを踏む音も。茶室の一般人たちも音に気づき、怪訝そうに庭を向いている。
    「(来る……)」
     灼滅者たちは緊張感を高め、カードに手をかける。
    「(来た……!)」
     ヤンキー戦闘員の集団の先頭が、茶室の前庭に姿を見せた。
    「HEY、HEY、HEY!」
     ジーンスにサングラス、リーゼント。その後にも、同じようなファッションの若者達がぞろぞろと続く。ノリノリで腰を振りながら、揃いのステップを踏んでいる。
     余りにKYな集団の登場に、茶室の人々は呆然とするばかり。庭に3列に並んだKY集団が口火を切ろうとした……その時。
    「HEY、ユーた……」
    「う、Wait!」
     赤白縞模様と青地に白い星の星条旗風戦闘衣装に変身した津軽・林檎(は寒さに強い・d10880)が、ひらりと飛び出し遮った。スタイリッシュモードも使って気合いが入っているが、恥ずかしがり屋の彼女としては、相当思い切った行動なのだろう、ほっぺたがリンゴのように真っ赤だ。

    ●茶席組2
     庭組の仲間達が戦闘員の前にナイスタイミングで立ちふさがったのを確認し、夜那がすっくと身を起こし。
    「なんか暴徒がバカやってるから、避難した方が良いんじゃね?」
     ポカーンとしている茶人たちを我に返らせる。
     タイミング良く外からにじり口が開けられ、サポート隊の黒鳥・湖太郎(黒鳥の魔法使い・dn0097)が顔を出した。
    「さ、こちらから避難して下さいな。母屋に参りましょ」
     湖太郎はアスルに勧められた黒地に花模様の振り袖姿。本人は場に溶け込んでいるつもり。
     そのアスルは足のしびれを堪えて立ち上がり、湖太郎と視線を合わせて頷き交わすと、魔導書を小脇に庭に飛び降り盾になる。
     茶人たちはわけがわからないながらも、危険が迫っていることは感じるのか、避難を始めた。それを受けて、亜門はさっと袂を翻し、
    「この身はただ威を狩る者である」
     無貌の白面を被り、霊犬ハクと共に庭に面した窓を固める。
     茶室の外には5名のサポート隊が待機していて、避難誘導を引き継いだ。ラピスティリア・ジュエルディライト(夜色少年・d15728)はお年寄りの手を優しく支える。持ち前のおっとりした雰囲気とアルカイックスマイルが、こういう場合には役に立つ。
     興守・理利(明鏡の途・d23317)は怪力無双を発動すると、足がしびれてしまった若い女性2人を、
    「失礼しますッ」
     軽々と抱え上げ走り出す。彼は、侘び寂びの世界に水を差すアメリカ怪人の無粋さに激しく憤っているので、避難の補助とはいえ、気合いが入っている。
     外法院・ウツロギ(毒電波発信源・d01207)は、母屋への道中を護衛すべく、油断なく身構えながら、一般人たちに寄り添う。

    ●庭組2
     茶室の避難が進む中、一方の庭では。
    「ヘイそこのお兄さん達!」
     林檎に続いて、ジーンズに星条旗パーカーの茉莉が飛びだして、くるんとターンをキメた。ヤンキーたちに親指を突き出し。
    「ミー達と一緒にアメリカンで盛り上がらないか!?」
    「え?」
     敵は、いきなりのリアクションに顔を見合わせる。
    「も、もしかして、ユーたち、アメリカンフレンズ?」
    「イエス、フレンズ!」
     そう答えながらも、茉莉は護符を投げ上げ、戦闘員の足止めを図る。
    「げっ!?」
    「オー、ノー!?」
     護符につんのめった中列の戦闘員たちは、茉莉に、
    「ヘイユ-! フレンズって言ったじゃないか、何す……」
     皆まで言わせず要が進み出て。
    「ヘイフレンズ! 俺は今まで色んな国に行ったけど、アメリカが一番だと思う。広いし、食べ物は大きいし、色んな人がいて楽しいよな!」
     爽やかな笑顔に、星条旗プリントのスカーフが風になびく……が、ウロボロスブレイドを鞭のように振り回して、
    「ぎゃあっ!?」
     やはり中列の戦闘員たちを打ち据え切り裂く。
    「ユーたちッ、いったい味方なのか敵……」
     続いて、敵が体勢を立て直す隙を与えず、サウンドシャッターをかけ終えた千里がすかさず、
    「いやー、さすが世界一の大国アメリカ! お兄さんたち、すごいクールですよーぅ……血祭りだぜーざっしゅざしゅ」
     合成音と共に、全身からどす黒い殺気を放出した。
    「やっぱり敵なんじゃないか!?」
     千里の鏖殺領域に巻かれつつナイフを振り上げた敵を、詩月はひょいと躱し。
    「オーノー、そんなことないデスヨ! フレンズですもんっ」
     なにげに腹黒そうな笑みを浮かべつつ、びしりとフリージングデスを放つ。
    「Ouch!?」
    「Cold!」
    「や、やっぱこいつら敵だろ……!」
     やっと灼滅者たちのスタンスを悟ったらしく、ヤンキー戦闘員たちは武器を取り出したが、そこに、
    「……あ、よろしければどうぞ。そちらも」
     林檎が腕に下げた大きな籠から、ピカピカに磨いたリンゴを配りはじめた。
    「あ? ……どうも、サンキュー?」
     apple-polishは米国では『ご機嫌取り』の意味を持つ。その昔、学童が教師のご機嫌取りにプレゼントしたのが由来らしい。
     褒められたり攻撃されたり。かと思うと、プレゼントはくれるし……ヤンキー戦闘員たちは大混乱。
     ――と、そこに。

    ●全員集合!
    「お待たせ、なの!」
     和服姿の3人と霊犬1頭が駆け込んできた。茶席組が戦闘に合流したのだ。振り向けば、茶室は最後まで責任者たるべく居残っていた亭主がサポート隊に連れられ、にじり口に潜り込もうとしているところ。
     避難誘導が無事に済みそうなことに、何よりメンバーが揃ったことに、灼滅者たちの意気は大いに上がる。
     ――が。
    「Oh、和風のヤツらがきたぜ!」
    「あいつらなら、迷わずやれるぜ!」
     ためらいなく攻撃できるターゲットが現れたことに、ヤンキー戦闘員たちも俄然張り切ってしまった。
    「ヘーイ、指ぱっちん、スタート!」
     どこからともなくどっかで聞いたようなミュージカル風の音楽が流れてきて、ヤンキーたちは一糸乱れぬステップを踏み始めた。そしてステップに合わせてぱっちんぱっちん。
    「……うっ」
     指ぱっちんは音の圧力となって踏み込もうとしていた前衛たちを押し戻す。ひとりひとりの威力は大したことはないのだが、何せ20人、ここまでの庭組の攻撃に傷ついた者も多数いるが、まだ人数が欠けるところまでいっていないので、まとまればそれなりの威力を発揮する。
     特に、和服のままのアスルと夜那は、ダイレクトにその影響を受けてしまい……。
     ふらり、とふたりが武器を構えて味方の方に向き直った。目が据わっている。
    「まあ、大変! 正気に戻って!!」
     詩月が慌ててシールドリングを飛ばし、林檎も癒やしの歌声を響かせる。
     その間に亜門はバッと着物をはだけ、襦袢姿になる。何と襦袢は星条旗柄。
    「やれやれ、そなたらは大仰に過ぎる。どうせならば、粋に楽しみなさい……清浄なる風に依りて、諸々の穢れを祓い給え!」
     台詞と共に、風の刃が竜巻のように巻き起こり、
    「WA-A-A-A-A-H!」
     中衛の1体を切り裂いて再起不能にした。
    「ああ、危ない」
     ぶるぶるっ、と、ぱっちん攻撃を受けた要が頭を振って。
    「アメリカンにしてなかったら、俺も危なかったよ……アメリカが好きなのは、大好きな人がアメリカ出身だから、なんて口走りそうになっちゃった」
     後半は小声で気持ちを立て直すと、茶人たちが戻って来ないよう殺界形成を発動した。そして拳を握って敵のただ中に突っ込んで行き、また1体を殴り倒す。ナイフを構えて応戦しようとする者もいるが、カウボーイ姿の要への刃はためらいがち。
    「ヘーイ、縛られろーびりびりー」
     千里がすかさず除霊結界を発動して更に矛先を鈍らせたところに、回復を受け、襷をかけて気合いを入れ直した夜那が、
    「カモン! ガキ共!! サムライが相手してやっぜ!! カリフォルニアロールは旨いよな!」
     聖剣で斬り込んでいく。
    「アメコミとハリウッド映画もイケてんぜ!」
     着物のままではあるが、一応アメリカ文化を褒めているので、
    「ユー、一体どっち……ぐえっ!」
     敵はそれでも一瞬怯み、切り倒されてしまう。
    「よっしゃ、黒船来航!」
     知る限りのアメリカ文化を並べているだけという気もしないでもない。
     続いて茉莉も、
    「真っ青なケーキも斬新だよねー。あの蛍光カラーは他の国では出せないよねー!」
     ヤンキーたちが怯んだ隙間に入り込み、
    「とうっ、ハリウッド映画のアクションシーンの真似だー!」
    「AAAGH!」
     また1体を首尾良く蹴り倒した。が、
    「キャウン!」
    「あっ、タロさん!」
     一緒に斬り込んだ霊犬のタローは、アメリカンな演出をしていないため、まともにナイフを喰らってしまった。
    「あーあ、だからお揃いの星条旗のリボンしようって言ったのに……」
     茉莉に抱き上げられて下がるタローは、それでも首を振る。クールガイとしてはリボンは許せないらしい。
    「ルー、和の心、壊させない、ですっ」
     アスルは下がる茉莉とタローを庇って最前線に立ちふさがると、果敢に魔導書を掲げる。魔導書から敵に向けて光線が発せられ、
    「オーマイガッ!」
     原罪の紋章を刻まれた敵前衛は怒り、ナイフを振り上げてアスルに詰め寄ろうとする……と。
     バサアッ!
    「アメリカ、カウボーイ、かっこいい、です!」
     アスルは敵をひきつけるだけ引きつけるとタイミングよく和服を脱ぎ捨て、要とお揃いのカウボーイ姿になった。着物の下に着込んでいたのだ。
    「うっ!?」
     反射的に躊躇してしまったヤンキーたちに、
    「り、リンゴビーム、だべ!」
     すかさず林檎がご当地ビームを撃ち込み、亜門が、
    「因果は巡りて応報するものと心得よ……ハクよ、合わせるぞ」
     蛇剣で捕縛した敵を、ハクが斬魔刀で斬りつける。
    「ほーれ、もう一発、凍れー!」
     千里が氷魔法を発動し、
    「ヘーイ、BOM! ですヨー!」
     詩月もマジックミサイルを撃ち込む。
     灼滅者の畳みかける攻撃に、いつしか敵は半分ほどになっていた。しかし前衛のリーダー格らしいヤンキーがよろよろしながらも、
    「ヘ、ヘイ、ボーイズ、アメリカンコーヒーでCheers!」
     号令をかけると、ヤンキーたちは一斉にでっかいマグカップを取り出して呷ろうとした……その時。
    「ていっ、タローさんの仇っ」
     ガッシャン。
     茉莉のキックが情け容赦なくリーダーのカップを蹴り落とした。
    「Oh! この悪魔め!!」
    「ふふふ、アメリカンびいきもここまでだ!」
     茉莉は素早く飛び退き、入れ替わりに仲間たちが一斉に突入していく。
     夜那は、
    「撫で斬りだ! 根切りだ! ヒャッハー!!!」
     嬉々として『緋焔』で斬り込み、亜門は『連環式七星剣・輪廻』を振り回して敵の回復を妨げる。アスルは『El nombre de la estrella*』を開いて爆破呪文を唱え、千里は『デプスネイル』を掲げて結界を張り直す。
    「ハーイ、ここが勝負どころですネー!」
     メディックの詩月も光の輪を撃ち込み、林檎もギターを激しくかき鳴らす。
    「炊きたてご飯ダイナミック!」
     すっかりアメリカびいきの仮面を外した茉莉が、豪快に敵を投げ落とすと、残すはリーダー格らしき1体だけ。
    「この……Motherfuc×××どもめ!」
     聞くに堪えない悪態をつきながらやけくそで突っ込んでくる最後の敵を、要が異形化させた拳でがっつり受け止めて……打ち抜いて。
    「……Oh,no……」
     ヤンキー戦闘員は、最後までアメリカかぶれな態度を貫いて滅んだのだった。

    ●風流は死せず
     戦い済んで――。
    「……ふっ、アメリカ最大の功績は髭のオッサンの鳥屋だと思うが、他は興味ないな」
     夜那が呟いて剣を鞘に収めた。
     アスルも大きく息を吐いて。
    「アメリカ、思ってたより、強いだった……」
    「お疲れのところ悪いけれど」
     詩月が辺りを見回して。
    「少しお庭とか、整えた方がいいんじゃないかしらね?」
     確かに、気をつけたつもりではあるが、戦闘のせいで少々荒れてしまっている。
    「そうですね……」
     林檎が頷き、
    「うん、綺麗にしてから帰ろう」
     要が早速働きはじめ、皆も続く。
     千里はゴミ拾いついでに窓から興味深そうに茶室を覗き込む。意外と風流好きなのである。
    「(こういうところで、のんびりしたいもんだな……)」
     茉莉も並んで覗き込み、
    「和菓子残ってないかな-。お腹空いちゃった」
     残念ながら、サポート隊が一般人避難の後、茶器なども壊されないようにこっそり撤去したので、茶室は空っぽである……が。
    「……あ、何と」
     亜門が、庭に落ちて真っ二つに割れてしまっている花器を見つけた。床の間に飾ってあったものだが、避難の際に蹴り出されてしまったか。
     亜門は丁寧に拾い上げて、しげしげと眺めてから薄く微笑み。
    「ふむ……これは接げば良い景色になりそうじゃな」
     茶の道は、ただ壊した程度で廃れるほど軟ではない。

    作者:小鳥遊ちどり 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年4月25日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 7
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