飛べない羽根など意味は無い!

    ●蒲田・夜
    「はぁ……はぁ……はぁ……」
     ひとりの男が、夜更けの東京下町を必死に走っていた。苦痛に歪む男の顔は餃子。背中には半透明の白い羽根。
     彼が駆け抜ける町並みには、町工場と商店と温泉銭湯が建ち並ぶ……そう、ここは蒲田。彼の正体は『蒲田羽根つき餃子怪人』である。
     地元で地味に餃子活動を続けていた彼は、今、恐ろしい敵に追われている。
    「何なんだ……何で六六六人衆のロードローラーが俺を」
     彼を追っているのは黄色いロードローラー。
    「宇都宮か浜松からの刺客なのか? それとも?」
     追われる理由はサッパリわからない。ただ、ゴゴゴゴ……と重たい音を立てて追いかけてくるそれと彼との間はみるみる縮まっている……と。
    「うわっ!?」
     餃子怪人は、何かに躓いて転んでしまった。見れば、酔っ払って道の真ん中で寝てしまったオッサンではないか。
    「オッサン! こんな時にこんなとこで寝るなよ!」
     蒲田では良く見る光景とはいえ、必死で逃げる彼にとってはめっちゃ迷惑な障害物。しかしご当地怪人である彼は、羽根つき餃子を愛する地元民を見捨てて逃げることはできない。このまま放置していけば、オッサンがロードローラーに踏まれることは確実。
    「ちくしょう!」
     彼は毒づきながらもオッサンを道の端に転がしていく……その間に。
     ゴゴゴゴゴ……。
     ロードローラーにとうとう追いつかれてしまった。
     絶対絶命である。
     餃子怪人の繊細な羽根が震え、ロードローラーは嘲笑う。
    「­――飛べない羽根なんか、意味ないよね♪」
     
    ●武蔵坂学園
     パリリ……。
    「ん、美味しい。飛べない羽根にも意味はありますよねえ」
     集った灼滅者たちは、春祭・典(高校生エクスブレイン・dn0058)の感想に深く頷く。
     彼らが食べているのは、蒲田の羽根つき餃子(お持ち帰り用)。パリパリの羽根が特徴だ。今や全国に羽根つき餃子を出す店はあるが、蒲田の老舗が元祖らしい。少なくともそう主張している。
    「皆さん既にご存じでしょうが、謎に包まれた六六六人衆『???(トリプルクエスチョン)』が動きだし、外法院ウツロギさんを闇堕ちさせてしまいました」
     典は餃子を食べながら事件について語り始めた。

    『???』は、灼滅者『外法院ウツロギ』を闇堕ちさせ、分裂という特異な能力を持つ六六六人衆を誕生させた。それが序列二八八位『ロードローラー』。二八八位というのは、かつて『クリスマス爆破男』が占めていた序列で、彼がその空位を埋めたわけだ。
     元ウツロギの『ロードローラー』は、分裂しまくって日本各地で次々に事件を起こそうとしている。そのうち黄色のロードローラーは、何故か各地の餃子怪人を襲いまくっている。
     彼が餃子怪人に拘る理由は……不明だ。
     
    「僕が予知したのは『蒲田羽根つき餃子怪人』が襲われる事件です。ロードローラーは強敵ですが、餃子怪人と共闘すれば、有利に戦うことができるでしょう」
     典は蒲田の地図を広げて。
    「餃子怪人とロードローラーは、この商店街をダーッと南下してきます。で、商店街の南の外れに、予知にあった酔っ払いのオッサンが寝てまして」
     オッサンの位置に赤鉛筆で印がつけられた。
    「僕の提案としては、餃子怪人が近づいてきたところで、皆さんがこのオッサンを、これ見よがしに助けてやるってのはどうかと」
     何のために? 灼滅者たちが首を傾げる。
    「決まってるじゃないですか、共闘を申し込み易くするためですよ!」
     地元民を助けてくれたとなれば、餃子怪人も共闘を受け入れやすい気分になるだろう。
     予めオッサンの近くで待機しておき、餃子怪人とロードローラーがギリギリ危険のない距離まで接近してきたら、オッサンを道の端など、危険の無いところにどけてやる。その過程で、地元民への親切っぷりを餃子怪人にアピールし、共闘の申し出に持っていこう。
    「注意していただきたいんですけど、ロードローラーは外法院さんと似た顔を持ち、似た口調でしゃべりますが、単なる分裂体ですから説得や懐柔などはできません」
     あくまで灼滅対象である。
    「それから」
     典はすました顔で、羽根つき餃子をまたひとつつまみ。
    「ロードローラー灼滅後、餃子怪人をどうするかは……皆さんにお任せします」


    参加者
    嵯神・松庵(星の銀貨・d03055)
    月見里・无凱(深淵紅銀翼アラベスク・d03837)
    黒木・摩那(昏黒の悪夢・d04566)
    イブ・コンスタンティーヌ(愛執エデン・d08460)
    水瀬・ゆま(箱庭の空の果て・d09774)
    倉澤・紫苑(ソニックビート・d10392)
    齋木・桃弥(星喰む夜叉・d22109)
    姫城・砦(夢見るポニー・d26698)

    ■リプレイ

    ●ツッコミ処は満載
     灼滅者たちは、じっとオッサンを見守っていた。彼らが待機しているのは、閉店した花屋のちょいとシャレた看板の陰。酔っ払いが気持ちよさげに寝ているのは道のド真ん中で、商店街も外れだし、夜中でほぼ人通りが無いからいいようなものの、もう少し早い時間帯だったら、絶対色んなモノに踏まれる場所である。
     オッサンを見守りつつも、灼滅者たちの思いは、どうしてもこれから戦うことになるであろう敵へと至る。
    「なんかやたら謎が多いわよね。ロードローラーだったり、餃子怪人ばっかり狙ったり」
     倉澤・紫苑(ソニックビート・d10392)は腕組みして唸る。
    「ウツロギ本人とは、僕はまったく面識ないけど……」
     月見里・无凱(深淵紅銀翼アラベスク・d03837)は、いつも通り淡々とはしているが、
    「なにかとやらかしてくれる御仁だと……特に美術室とかで……風の噂で聞いてはいます」
     それなりに困惑しているようだ。
    「六六六人衆のロードローラーって、字面がすでに凄くシュールですしね」
     ボソリと言ったのはイブ・コンスタンティーヌ(愛執エデン・d08460)。彼女はウツロギのクラブの後輩なので、謎の闇堕ちに思い当たるフシがあるのかないのか。
    「六六六人衆さんの二八八位っていうのは、ネタ系って決まっているのでしょうか……?」
     水瀬・ゆま(箱庭の空の果て・d09774)も首を傾げたが……どうなんだろう?
    「僕も外法院さんと面識はないが……それでもツッコまずにはいられないというか」
     普段は冷静沈着な齋木・桃弥(星喰む夜叉・d22109)も当惑を隠しきれない。皆が言うとおり、ツッコミ満載な事件であることは間違いない。けれど、
    「けれど、とりあえず真面目に仕事をせねば」
    「ええ、でも」
     不安そうなのは、姫城・砦(夢見るポニー・d26698)。
    「わたし、病院から武蔵坂へ来て初めてのお仕事なんです。流石に病院にもロードローラーの姿になる知人は今までいなかったですし、ダークネスとの共闘ですし、不安です」
     無理もない。何ともつかみどころのない敵であるし、よりによって餃子怪人との共闘作戦である。
    「うむ、ダークネスとの共闘も珍し……」
     嵯神・松庵(星の銀貨・d03055)は、指折り数えて。
    「あれ、そんな珍しくもない、か?」
     彼自身は3回目の共闘になる。
    「まあ、とりあえずは分裂したあいつを、一台一台潰していかんと話にならんだろうからな」
    「この分裂っぷり、G1匹見たら30匹どころじゃないな……」
     无凱の例えがひどい……と、黒木・摩那(昏黒の悪夢・d04566)が。
    「静かに! 何か聞こえない?」
     沈黙を促すと耳元に手をやった。仲間たちもそれに倣って耳をそばだてる……と。
     ゴゴゴゴ……。
     遠く地鳴りの音と、駆け足の足音が聞こえてきた。商店街の北方に目を凝らすと、人影が凄い勢いでこちらへ向かってくるのが見えた。
     灼滅者たちは看板の陰で一斉に立ち上がった。

    ●餃子怪人も困ってる
    「おじさん、大丈夫ですか!」
     救助担当の桃弥が、待ってましたとばかりに颯爽と商店街に飛び出した。下半身黒馬のケンタウロス型に変じた砦も慌てて続く。
    「こんなところで寝ていたら、踏まれますよ、餃子とかロードローラーとかに」
     桃弥が抱き起こすとオッサンは薄目を開け、
    「……ん? アレ、ここ、どこ?」
     桃弥から、心配そうに覗き込んでいる砦に視線を移し、ニッコリして。
    「あ、お馬さんだ……ねえ、お馬のおネエちゃん、おじさんね、こないだの皐月賞で」
     オッサンの競馬話は、桃弥の魂鎮めの風によってサックリと中断された。こうしている間に餃子怪人とロードローラーがどんどん近づいてきている。他のメンバーもカードを解除しつつ路上に出、背を差し出す砦と、そこにオッサンを積もうとしている桃弥を手伝ったりガードしたり……と、その時、情況に気づいたらしくおーい、と餃子怪人が手を振りながらやってきて。
    「お、お前たち、地元民を助けてくれたのか!?」
     ぜえぜえ。
     オッサンを商店街から連れだそうとしていた桃弥は、また颯爽と餃子怪人を振り返って。
    「あれに轢き殺されるのはさぞ辛かろう。この殿方も、そして貴方も」
     カッコヨク言い残して、
    「危険の無い場所に置いてきますね」
     パカパカと蹄の音を立てる砦と共にその場を一旦後にする。
    「そりゃ轢かれたら辛いよな」
     餃子怪人はみるみる近づいてくるロードローラーを振り返って焦る。
    「大体、どうして俺があんな妙なのに追っかけられなきゃなんだ!?」
    「理由は俺たちも知りたいところだが」
     松庵がすかさず共闘を申し込む。
    「我々も奴とは敵だ。ここは蒲田民に被害が出ないうちに手を組んで奴を倒さないか」
     紫苑も続けて、
    「私たちとしてもアレを野放しにしておくわけにはいかないのよ。好き勝手暴れられると色々困るし。それに私、羽根つき餃子好きだしね! ぱりぱりおいしい!」
     无凱も調子を合わせて。
    「特に羽根は、もう芸術品の域ですよねー」
    「そうだろ、最高に旨かろう?」
     餃子怪人は褒められて相好を崩すが、そんな場合じゃないから。
     しかし、灼滅者たちもそんな場合じゃ無いのに、このシュールすぎる情況を目の当たりにして呆然としていた。摩那は、
    「(羽根って、餃子のおこげ、なのね!)」
     餃子怪人の背中と、首回りの宣教師の襞襟のような羽根を見て、激しく納得していた。
    「(確かに餃子のおこげはおいしいけど、それを名物にしちゃったんだ……それで世界征服とかすごく厳しそうだけど……うーん、がんばれ)」
     イブとゆまは、
    「ウツロギ先輩……なんて姿に」
    「外法院さん……何と面白……じゃなくて、おいたわしい姿に……!」
     武器を構えることも忘れて、敵に見入っている。
     そうしているうちに、ロードローラーは着々と、ゴゴゴゴゴ……と迫ってきて――。
     上部に不自然に生えたウツロギの首が嘲笑を浮かべ。
    「――飛べない羽根なんか、意味ないよね♪」

    ●打倒ロードローラ(黄)だ!
     その台詞に、灼滅者たちは我に返り、餃子怪人を含める形で素早く陣を引き、人払いのESPを発動する。
    「……飛べない羽根は意味ないですか……それはわたしに喧嘩売ってると思っていいんですね?」
     ゆまが剣呑な表情で影の翼を広げた。
    「飛べない羽根がどんな物か、とくと思い知って下さいー!」
    「いや多分、俺に言ってるんだと……」
     餃子怪人が何か言っていたが、黒い翼は大きく羽ばたいてロードローラーに襲いかった。
     影に縛られ一瞬動きが止まった敵に、すかさず灼滅者たちは攻撃を仕掛ける。イブから発された殺気がじわじわと敵を締め上げ、无凱はアンティークコイン型のシールドを展開し前衛の防御を高める。摩耶が側面に回り込みローラーに槍を突き立てると、当然ガキン! と金属音がしたが、それでも妙な手応えと共に鋭い槍先が突き刺さる。松庵はロッドで敵の肩口(ロードローラーだけど)から魔力を流し込み、紫苑はギターを激しくかき鳴らす。
    「お前ら、なかなかやるな!」
     餃子怪人は、灼滅者たちのチームプレイに感心した様子で、
    「お前らとなら、この妙ちくりんな重機を倒せそうだ。ぜひ一緒に戦おう!!」
     そう言うとロードローラーの目前に跳びだして、
    「くらえ、必殺羽根ぱりぱりキックを……うわっ!?」
     ブワッ。
     もちろんロードローラーもやられっぱなしでいてくれようはずがない。面白すぎるビジュアルとはうらはらに、凶悪な殺気が車体から噴き上がり、前衛と餃子怪人を包み込んだ。あからさまな黒い意思に灼滅者たちは気圧されてしまったが、しかし、ローカルで地味でもさすがはダークネス、餃子怪人は一瞬怯んだだけで、
    「負けるか! いつか餃子の王道となる羽根つきを舐めるなー!!」
     強烈なキックが、ロードローラー前面の『殺戮第一』ロゴをべっこしと凹ませた。
     餃子怪人が共闘する気になってくれたことと、強力な助っ人となりそうであることを確認し、灼滅者たちの意気は上がる。
    「分裂体とはいえ、ウツロギ先輩救出の糸口にはなるはず……!」
     イブは今夜の敵との遭遇を喜ぶ。
    「何体出てきたって、何度でも愛してあげますよ、先輩!」
     イブの影がしゅるりと伸び、愛撫するように絡みつく。そのタイミングを逃さず、紫苑は大きく跳ぶと、トレードマークの『虚』の目隠しを着けた顔をシールドで殴りつけて。
    「私たちをぺっちゃんこにして、タペストリーとかポスターにしようったって、そうはいかないわよ!」
     ゆまと无凱は、両側から挟み撃ちにするように聖剣を鋭く振るって『六六六建設』のロゴにザックリと傷を付けた。无凱の深紅のローブが翻るのに呼応するかのように、ソードの刃が炎のようにゆらめいた。摩耶は槍から氷弾を撃ち込み、松庵はロッドに仕込まれた日本刀で抜き様にきりつける。
    「いいぞいいぞ! 今度は俺が、もちもち皮ダイナミックを見せてやる!!」
     餃子怪人はすっかり仲間のような顔で、敵の側面に掴みかかった……が。
     ギュルン!
     一瞬にしてロードローラーが餃子怪人の方に向き直った。
     ウツロギの顔が、餃子怪人に向けてニヤリと嗤った。
    「潰してあげる♪」
     そしてまた重機とは思えないスピードで餃子怪人に迫る……その時。
     パシーン!
     最後方から氷弾が前ローラーを狙って撃ち込まれた。灼滅者たちが驚いて振り向くと、砦が妖の槍を構えており、その傍らには桃弥。オッサン救助隊が戻ってきたのだ。
     オッサンは予め下見しておいた、商店街を出ですぐの雑居ビルの外階段の下に押し込んできた。
    「ぷぎゅる」
     変な声がして今度は前方に視線を戻す。砦の氷弾は一瞬敵の動きを遅らせたが、結局逃げ切れなかった餃子怪人がローラーに轢かれていた。
    「わあ、餃子怪人ってば!」
     ディフェンダーたちが駆け寄って、慌てて引っ張り出す。
    「いててて……」
     餃子怪人は何とか立ち上がったが、羽根が欠け、もっちりした皮から具がはみ出てしまった。
    「僕が回復しよう」
     桃弥が縛霊手を掲げ、イブがビハインドのヴァレリウスに、
    「ヴァリーさま、お願いします」
     怪人のカバーに入らせる。
    「むむ……すまない。世話をかけるな」
     癒やしの光を受けると、はみ出した具がにゅるっと皮の中に吸い込まれてちょっと気持ち悪い。
    「餃子の中身なんて、元々潰れてるじゃん♪」
     ロードローラーは調子にのって、重機らしからぬ軽快な動きで今後は灼滅者たちに迫る。
    「私は餃子が好きなのよ! 潰さないでちょうだい!!」
     紫苑がお世辞とも本音ともつかない叫びと共に、敵の正面から跳び退きつつ再びギターをかき鳴らし、ゆまは運転席付近に『Exusia-Blaze』を振るう。桃弥は戦う仲間の後方からそっと清めの風を吹かせ、不在の間のダメージを一掃する。摩耶は側面に回り込みつつ杭を撃ち込み、イブは赤薔薇のステッキブーケ『Der Rosenkavalier』を後輪の車軸に思いっきり突き立てた。すると、部品がぽろりと落ち、ガガガガ……と、何かがつっかえるような音がして、目に見えてロードローラーの動きが鈍くなった。
    「むむ……」
     ずっとニヤけていたウツロギの顔が、今夜初めて険しくなった。
    「でも、動けなくなってもこれがあるもんね♪」
     商店街のアスファルトに濃く落ちていた重機の影から、ぶわあっ、と無数の黒い蝶々が舞い上がった。その蝶々は踏み込んできていた松庵を包み込もうとする。
     しかし。
    「影を操るのはお前の専売特許ではないぞ!」
     揺らめく炎のような松庵の影が、蝶を押し戻す。
    「さあ、せっかく動きが鈍ってきたのですから、一気に行きましょう」
     ブラックフォームで強化した无凱の影がロードローラーに喰らいつき、
    「はい、がんばります!」
     砦が流鏑馬のように駆け抜けながら射った矢は正確に動力部を貫き、
    「これにトラウマなんてあるんだろうか……」
     呟きつつもここが勝負処とみて、メディックの桃弥も影を放つ。
    「肉汁じゅわっとビーーーーム!」
     すっかり元気になった餃子怪人は頭部からビームを迸らせ、紫苑のシールドはフロントランプを叩き割った。
    「ヴァリーさまも攻撃を!」
     イブはビハインドに攻撃を命じつつ、自らは影を前輪に絡みつかせ、ゆまはその前輪と車体の隙間に聖剣を突き刺す……と。
     ぷすん。
     ロードローラーの装甲の隙間から、煙が上がった。
    「むん……まずいね」
     ウツロギのほっぺたがぷうと膨らんだ。
    「こうなったら、何としても餃子だけでも潰しちゃうもんね!」
     ガガッガガガガ……耳障りな音を立てガクガクしながらもロードローラーは餃子怪人の方に向き直った。しかし、
    「させないよ!」
     ディフェンダーの3人+ビハインドが間に飛び込んで、渾身の力で敵の前身を阻止した。敵がいいかげんポンコツになってきていたのもあるが、4人分の力が合わさりロードローラーの動きを止めた!
    「すごいぞ、そのまま押さえておいてくれ!!」
     餃子怪人は素早く側面に回り込むと全体重を車体にかけ、
    「うぐぐぐ……どうりゃあああ!!」
     ガッターン!!
     ロードローラーを横倒しにした。
    「どんなもんだ! ほら、やっちまえよ!」
     どや顔の餃子怪人に促され、クラッシャーが同時に飛びかかる。松庵は雷を宿した拳で煙の出ているあたりをボコボコに殴りつけ、摩耶は槍を構えると、
    「羽根の恐ろしさをとくと味わうといいわ!」
    「あっ、それ俺のキメ台詞」
     思いっきりウツロギの顔目がけて突き下ろした。すると。
     ガガガガガ……。
     ロードローラーは悲鳴こそ上げなかったが車体を激しく震わせて……。
    「危ない、伏せてください!」
     最後方からの砦の悲鳴に、反射的に地面に身を伏せた次の瞬間。
     ドッカアアアアン!

    ●また会う日まで
     派手に爆発したロードローラーは、不思議なことに何の残骸も残さなかった。いや、分裂体であるので、不思議ではないのかもしれないが。
     餃子怪人はというと、平和裏に、しかし妙にカッコつけて、
    「俺はいつでも蒲田にいる。また会おうぞ!」
     と言い残して去っていった。
     ゆまは怪人に教えてもらった羽根つき餃子のレシピメモをポケットにしまうと、
    「とりあえず商店街の平和は守られましたね」
    「よかったですよ、蒲田の羽根つき餃子のおいしさは別格ですからね」
     イブもホッと息を吐いた。
     怪人が去って行った方角を見やって桃弥が、
    「敵対の様子が無くて助かりましたね」
     松庵が頷いて。
    「ああ、次に会う時は敵かもしれないがな……」
     无凱が少し考え込む様子で。
    「ロードローラーだって末端ですしね」
     そう、ロードローラーは今夜のアレだけではないのだ……と。
    「ああっ!」
     突然紫苑が大声を上げ、仲間たちはぎょっとする。
    「お腹空いたから餃子食べたいんだけど……怪人に羽根つき餃子の美味しいお店きいとけばよかったね!」

    作者:小鳥遊ちどり 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年5月19日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 7
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