運動会2014~クラブ対抗パフォーマンスリレー

    作者:西東西


     新緑の5月。
     梅雨を目前にひかえた5月25日に、武蔵坂学園の『運動会2014』が開催される。
     『運動会』とは9つの組連合にわかれ、各種競技によって得点を競い合う一大イベントだ。
     開催される競技は、多種多様。
     一般の学校でも定番のものから、武蔵坂学園特有のものまで、幅広く行われる。
     クラスメイトや、同じ組連合の者たちと力を合わせ、たちはだかる好敵手としのぎを削る。
     ただひとつの『優勝』を目指して展開される熱き戦いが、今年もまた、繰りひろげられようとしていた。
     

    「――というわけで。この場で説明を行うのは『クラブ対抗パフォーマンスリレー』。通常のリレーとはルールの違う、特殊競技についてだ」
     運動会2014の資料を片手に、黒板の前に立った一夜崎・一夜(大学生エクスブレイン・dn0023)がルールを板書していく。
     『クラブ対抗パフォーマンスリレー』とは、『同じクラブに所属している部員』とともに『4人1組』で行うチーム競技だ。
     走者は所属クラブの特徴を表現したパフォーマンスを行いながら、ゴールまでを走りきる。
     たとえばバスケットボール部やサッカー部なら、ドリブルをしながら。
     体操部ならリボンやボールを使っての技を見せたり、バク転、側転をしながら。
     文芸部なら頭の上に数冊の本を乗せながらなどなど、応援する観衆が見て、楽しめるよう工夫されていることが望ましい。
     なおコースはトラック2周の800メートル。走者1人でトラック半周(200メートル)を担当する。
    「ただし。各パフォーマンスの難度から有利不利が出ないよう、対戦チームやコースは場合によっては調整される予定だ。たとえば、陸上部が出場するならコース上に障害物を多数配置する、スタートを遅らせる、などだな」
     そして各レースの勝敗は『アンカーのゴール順位』によって決まるが、MVPは『パフォーマンスの内容』が最も優れていた参加者に贈られる。
    「つまりレースで1位になれなかったとしても、MVPを目指せば組連合に大きく貢献することが可能なのだ」
     ――レースでの勝利を目標に、スピードを極めるか。
     ――パフォーマンスでの一発逆転を狙い、アピールを重視するか。
     出場チームごとに、多彩な戦略が巡らされることだろう。
    「興味があるなら、同じクラブの者たちと誘いあって参加してみてはどうだろうか」
     そう告げれば、教室内から次々に参加希望の声があがった。
     
     基本事項を説明し終えた一夜が顔をあげると、説明を聞いていた七湖都・さかな(中学生エクソシスト・dn0116)が、ぽつりとつぶやいた。
    「…………ん。ルールは、わかった」
     さかなは今回も、一夜とともに競技運営を手伝うことになっている。
     年に一度の、運動会。
    (「……ん。がんばる」)
     小走りに教室を回り、せっせとエントリー用紙を集めて回った。


    ■リプレイ

    ●第1レース
     リレーへの参加は計26チーム。
     調整の結果、全5レースが行われることとなった。
     第1戦は『魅せる者たち』のレース。
    「【有閑倶楽部】【ディスコ『ダンス・カテドラル』】【赤松式地下リング】【Chaser】【静真撃剣会】、位置について」
     5人の走者を確認し、一夜(dn0023)が右腕を掲げる。
     パァンと銃声が響き、真っ先に飛びだしたのはホワイトピンクアフロの陽桜。
    「ちょいさーの春風、いっきまーす♪」
     ぬいぐるみの縛霊手『はなうた』を手に、華麗にバク転! その横を疾走するのは、道着に身を包んだ拳人だ。模造の薙刀を構えれば、突きの『飛鷹』、薙ぎ払いの『燕舞』、三段突きの『大鴉』と、流れるように型を披露する。追いすがる陽桜が演出用の巻き藁をなぎ倒せば、華麗な演武の連続に観衆から拍手が沸いた。
     続く美鳥はメイド服をひるがえし、トラック内でDJを行う部長・寛子の選曲に耳を傾ける。曲は得意の80年代風。
    「ありがとうございます……がんばります!」
     心遣いに感謝し、可憐なアイドルダンスを披露し観衆に手を振った。
     一方、タロスは次々とライバルを抜き真っ先にバトンゾーンへ。
    「格好いいところを見せなきゃな」
     用意されたロシアンタイガー人形を渾身のスピアー・タックルで豪快に粉砕! ガッツポーズを決め、なゆたを送りだす。
     残る有閑倶楽部が行うのは『大魔術ショー』。タージが用意した箱にくるみが入りこみ、剣でひと刺し! 観衆から悲鳴があがるも、そのまま箱を押し、走りだす。
    「この日のために勉強しマシタ!」
     バトンを受けたエーファは、メイド服姿に模造刀を手に走る。映画で覚えた『サムライ』の剣技を披露するも、
    「しっかり掴まったかな?」
     Chaserの藤色アフロ・晶が陽桜を背負い、猛ダッシュ! 途中、振りかえりざまに二丁拳銃(エアガン)を抜き放てば、連射を受けた巻き藁が吹き飛んだ。
     迫るライバルの姿にエーファは慌てて地を蹴り、走る。
     アイドル風の衣装に身を包ん眠兎も、曲にあわせ、キレのあるダンスで晶の背を追う。
    (「ちょっぴり恥ずかしいのですけどね」)
     完走間際にもう一度ポーズを決めれば、微笑む眠兎に声援が飛んだ。
     地下リングのなゆたはポニーテールを揺らし、先頭を守り快走。アメリカンコンドル人形へ、たて続けに正拳突きを見舞う。
    「きれいに決められるかな!」
     伸ばした脚でとどめの回し蹴りを叩きこみ、人形を打倒!
     レースはしだいに熱を帯び、第3走者へ。
     想希は青アフロをかぶり、陽桜と晶を背負い駆ける。
    「これくらい、軽いもんです」
     コース途中の巻き藁を前に、木刀を構える。袈裟斬り、切り上げ、返しての袈裟、横薙ぎと続け、納刀。同時に、ストンと藁が崩れ落ちた。
     響く拍手をよそに、藍(d02826)の動きはぎこちないロボットダンスから全身を駆使した激しいロックダンスへ。DJに合わせ軽快にステップや指差しムーブメントを決めれば、小柄ながらパワフルなダンスに観衆が大きく沸いた。
     トップを守りたいローゼマリーは迫る足音を受け全力疾走。待ち受けるのはゲルマンシャーク人形だ。
    「eins,zwei,――drei!!」
     ラリアットで跳ねあげ、バックドロップホールド! 豪快に地面に叩きつける。
     鶉が駆けだすと同時に、撃剣会の最終走者・天花が振り返った。妹の抜刀を認め、國鷹がバトンを高く投げあげる。駆けこみざま、模造刀で一閃。今度は受け流した天花が斬り返し、神主服の國鷹と巫女服の天花が、入れ替わり立ち代わり剣を交える。寸の間の激しい殺陣に、観衆から大きな拍手がわき起こる。
    「神楽火天花! 全力で魅せます!」
     宣言し、落ちてきたバトンをキャッチ。残る力で、先頭を追いあげる。
     一方、眠兎と揃いの衣装に身を包んだ寛子は、藍を迎えハイタッチ!
    「部長さんだから、バッチリ決めないと!」
     手にしたDJコントローラーでユーロビートを流し、サンプラーやエフェクターを使い、攻撃的なプレイで場を盛りあげていく。
     赤アフロの悟は背に陽桜と晶、想希を姫だっこ。演武は皆を抱えての足技だ。観衆がハラハラと見守る中、
    「連れて行くでゴールへ! うおおお!」
     前蹴り、回蹴り、両足揃えのとび蹴りの末、気合いで体勢を持ち直し、爆走。
     後続の気配を背に、地下リングの鶉は一番でゴール前に滑りこんだ。
    「任せておきなさいですのよ!」
     腰を落とし、アフリカンパンサー人形へタックル! バックドロップで地面に打ち据えるも、体勢をたて直す間に天花に追い抜かれ、惜しくも2位で決着。
     第3走者が走り終えタージが剣に貫かれた箱を開けば、中身はカラッポ。飛びだしたハトを追い立て、ゴール付近を示す。そこには、なんと手を振るバニーガールの姿が!
    「手品じゃないよ、魔法だよ。だって僕は、魔法使いだからね♪」
     くるみがゴールすれば、競技終了の銃声が鳴り響く。

     第1レースは撃剣会が逆転1位。2位が地下リングで、底力を見せたChaserが3位。始終観衆を魅了し続けたカテドラルは4位。有閑倶楽部が5位で幕となる。

    ●第2レース
     続く第2戦は『仮装者たち』のレースだ。
     調整のため、今回のコースには障害物も置かれている。
    「【たんきゅーず女子!】【たんきゅーず男子!】【ましろのはこ】【花の語り部】【シス・テマ教団】【黄昏の屋上】、位置について」
     呼びかけに続き銃声が響けば、インバネスコートに鹿撃ち帽を被った藍(d22880)が飛びだした。
    「ゴール先に、この事件を解く鍵がある!」
     探究部の宣伝看板を持ち、猛ダッシュ! 次々に平均台やネットをくぐり抜けていく。
     その背を追うのは、白い天使服に身を包んだ遥斗だ。
    「やるからには、全力で挑まないとな……!」
     黙々と障害物をこなし、バトンを繋ぐことに専念。名探偵姿の七波も、空のパイプをくわえ考えるそぶりで後に続く。
     4番目には、茨姫をモチーフにしたドレスをまとうアルジェント(男性)の姿。
    「ごきげんよう。今日はいい天気ですね」
     薔薇の花を撒き、踊る。
    (「終わったら奢ってもらいますからね! 絶対!」)
     内心憤慨する少年を追い抜き、シス・テマ教団の海飛が前にでた。バトンゾーンに突入するも、
    「あ、あれはゲルマンシャーク様?! そのフカヒレ食わせろください!」
     次走者のクーガーに幻視を視た海飛が突進! もみくちゃになった教団員2人の横で、
    「そう、簡単なことだったのだよ!」
     七波が探偵風に叫びながら、バトンタッチ。起き上がろうとした海飛の頭を、犬変身した子犬姿の央がふぎゅると踏みつけた。
    「義兄様! 早く、早く!」
    (「アルクー! 後は任せたー!」)
     バトン代わりの『白わんこのぬいぐるみ』を、アルクレインへ。ウェディングドレスの裾をたくしあげ、アルクレインは用意したたくさんのブーケを観衆席に投げこみ、駆けた。
    「負けてはいられません!」
     花の語り部・ことなも、白い花のドレスにティアラ姿。花篭を手に、マーガレットの花を撒き追いかける。
     降りそそぐ花々をよそに、探究部男子の宥氣は全力疾走。かと思えばコースの長さを測ったり、メモを取ったり忙しい。
     一方、出遅れたクーガーもライバルを追う。そこへ、眼前に見える平均台。
    「障害物? 突っこんで壊すぜ!!」
     ロケットを体現したかのような走りでスピードを上げるも、
     ――ピーッ!
     笛が鳴り、『魔人生徒会代理』の腕章を付けたさかなが駆けつける。
    「……壊しちゃ、だめ」
     学園の備品は大事にと注意を受け、痛恨のタイムロス!
     その間にも探究女子は先頭を守り、次点を追うのはリオンだ。
    「佐門さん、そのエアガトリングを……柊さんにお願いします!」
     何か言い間違えた気もするが、気にしない。
    「赤城さん、頑張って!」
    「謎は解けた!」
     続くアルクレインや宥氣も、手にしたバトンを次へ繋ぐ。
     ジョウロを手にした語り部の一夜(d23354)は、桜柄の着物に白い小袖を被り、
    「私は、月に霞んだ櫻です」
     と、朗々そらんじる。桜の花弁を舞い散らししずしず駆ければ、観衆の拍手が見送るように続いた。
    「ここからはぁ、任せてくださいぃ」
     亜綾は勇み教団服のレプリカを着こむと、のそのそと走りだす。気持ちだけは最速を目指したが、割とゆっくりだった。眠気をおして走る姿に、観衆がちょっと和む。
     探究女子最後の走者・結唯へとバトンが渡り、このまま走れば1位確定、だったのだが。
    「ここに、隠されていた真実が!?」
     虫眼鏡を手に、観客席へ突進。
     一方、ましろのアンカー・司は、
    「僕はそもそも大天使……って。痛い痛い痛い!」
     なんやかんやあって仲間たちに虐げられていた。
    「目指せ1位です!」
    「イチゴ大福食べ放題ですよー」
     無責任な応援に背中を押され、
    「お兄ちゃん、絶対一番取ってくるって約束したんです」
     病気で走れない妹のために!と泣き落としを開始。だが、
    「みんなー! 短い間だけど、私の歌を楽しんでね~!」
     腹を括ったミスト、もとい屋上の女装アイドル・雨霧心がマイクを手に颯爽と追い抜き。探究部男子の代走・結衣奈も虫眼鏡で地面を覗きながら全力疾走!
     歌うミストに励まされ、黒髪に白雪姫のドレスをまとったメルキューレ(男性)も白百合を散らしながら、踊るように走っていった。さらに亜綾がのたのたと迫るのに気付き、司はようやく走り始めたが、順位を覆すには遅すぎた。
     ラストは女装男子2人がわずかの差でゴール!
    「みんなのココロをフォースブレイク☆」
    「砕けた氷と百合の花は雪のように、なんて」
     互いを見やり、照れくさそうに笑み交わす。
    「これでこのコースの全ての謎の探求は終了だよ!」
    「探求部にも遊びに来てくださいね!」
     完走する面々を遠くに見やり、
    「これはゲルマンシャーク様の追悼記念! 無念に散ったあの御方が安らげるように、全力で」
     ――ピピーッ!
     障害物に突進しようとする着ぐるみ姿のワルゼーを、笛の音が追いかける。

     結局、第2レースは屋上が1位。僅差で2位語り部。3位4位には宣伝もやりきった探究男子・探究女子が続き、5位ましろ。6位に教団という結果で終幕。

    ●第3レース
     第3戦は『演者たち』のレースだ。
    「【スタジオ・プラスチック】【撫桐組】【正義の味方部】、位置について」
     響く銃声とともに、各演者が前に出る。
    「敵は、本能寺にあり!」
     蒼の武者鎧に身を包み、叫ぶ美咲が演じるのは明智光秀。まばゆく反射する額の光に数名の観衆がウッと目を押さえたが、晴天なので仕方ない。
     お次は、赤グラサンの草之助。
    「オラァ出て来いやァ! 借りたカネは返すモンだ」
     小道具の机と椅子を蹴り飛ばし、先を急ぐ。
     最後に謳歌演じるタコ怪人が観客席に迫り、ぐわっと威嚇。しかし、
    「あんまり怖がられて、ない?」
     観衆の声援を受けながら、あれ?と首を傾げ走りだす。たどり着いた先には、舞子の姿。
    「ベルトのない貴様に何ができる! 食らえ、オクトパスインフェルノ!」
    「愛があれば、負けないわ!」
     舞子はバック宙キックで反撃。ベルトを回収し、『おこめピンク』に変身し疾走!
    「遅いぞ、金柑頭!」
     禍々しい鎧を身に着けた織絵は、信長を演じる。バトンと火縄銃を携え駆けだせば、ひるがえるマントが紅蓮の炎のように身を包んだ。そして、
    「『奴』と協力して、追い詰めます」
     黒服、サングラス、ハットのヒットマン・理央が草之助の密命を受け、走りだす。コース脇に置かれた『組員』ハリボテをスタイリッシュ(モデル)ガンアクションで撃ちぬけば、一斉に拍手と歓声が沸いた。
     一方、ピンクの前に現れたのは、イカ怪人の太郎。
    「悪は滅ぶべし! おこめキーック!」
     バク転からの大ジャンプで攻撃をしかけるも、
    「お前の力はこの程度か! 必殺、イカドリル!」
     攻撃を受け耐えた怪人の反撃を受け、ベルトを奪われてしまった。太郎は黒マントをひるがえし、観衆をイカ足で威嚇して回る。
    「依頼だ。標的は『撫桐娑婆蔵』」
    「応、きっちり仕事はしてやらあ」
     第三の刺客は、灰色スーツに金の腕時計をつけた宗嗣。バトンを受け取り、「何見とんだワレェ!」と先を行くイカ怪人と張り合ってみたり。
    「私達の屍を越えろ、蘭丸!」
    「おのれ、明智殿。気が狂ったか」
     和服にポニーテール姿の祇鶴は、蘭丸を演じる。謀反に倒れた信長を残し、ほかの走者が行き過ぎたのを確認。自らも走りだし、駆けぬけたコース上で次々と爆破を演出していく。
     エリザベスはグラウンド照明の上に佇み、コートの裾をなびかせていた。バトンゾーンにイカ怪人の姿を見いだせば、
    「お前の走りは、そこまでだ!」
     華麗なジャンプで地面に降り立ち、すれ違いざまに変身ベルトを奪取!
    「【正義の味方部】がいる限り、悪の好きにはさせんぞ」
     台詞とともに一撃! そのまま走り去る。
    「馬鹿な、この私が……!」
     余韻を残し、バタリと倒れたイカ怪人を残し、1位でゴールしたエリザベスは笑顔で観衆に手を振った。
    「お命、頂戴に参りました」
     宗嗣が告げ、同様の風体をした娑婆蔵を睨めつける。娑婆蔵はバトンを受け出走しつつ、祇鶴と蝶胡蘭のバトン渡しを見守り、あえて送りだす。
    「クライマックスだし、ド派手に行ってみようかな♪」
     本能寺の形の着ぐるみを着た蝶胡蘭は、燃えさかる本能寺を演出し全力疾走! 悠々ゴールすると、着ぐるみから緊急脱出。『本能寺の変』を締めくくった。
     宗嗣と理央は頃合いを見計らい、娑婆蔵めがけ殴りかかる。観客席側に弾き飛ばされれば、
    「ご迷惑掛けちまって申し訳ねえ」
     何かあれば連絡をと、ちゃっかり名刺を手渡し。
     幾度かのやり取りのすえ宗嗣と理央を始末し、草之助を下せば、娑婆蔵は侠らしく肩で風切り、ゴール。
    「いかな刺客にもめげずに目指した道を往く! 撫桐組は侠の磨き砂でござんす!」

     3チームは最後に全員で手を繋ぎ、観衆へ向け感謝の礼を繰りかえした。校庭はしばしの間、演者たちを称える拍手で満ち続けた。

    ●第4レース
     第4戦は『走る者たち』のレース。
     走ることに重点をおく者たちの闘いとなるが、より多彩な障害物も加わる。
    「【えんけつぶ】【すーぱーふぁーむ☆あかいくま】【トレイサーズ】【ひんにゅーぶ!】【双銃刃教会】、位置について」
     銃声が鳴り、一番に飛びだしたのは唯。クラウチングスタートでしっかりと地を捉え、加速する。
     稜は体操着をぴったりと着こなし、貧乳を強調。観衆からの「女子体操服なのに胸がないな」「女装か?」の声に、
    「誰が女装だっ!」
     と即座に反論。バトン代わりのまな板を手に、唯を追う。
     ハードルや平均台、跳び箱等の障害物が現れれば、嫌でも速度は落ちる。
     そこで追い上げたのが、あかいくまの月夜だ。手押しの一輪車に農具や野菜、植物を入れ走るため、本レースは彼らのみ、障害物が免除されている。
    「お野菜を作ったり、不思議な生物が共存しているですー♪」
     宣伝をしつつ、コーナーをドリフト。土煙をあげながら、続く直線を全力で駆け抜ける。
     一方、トレイサーズのアリスは通常より長い平均台の前で跳躍。ひと息で飛び越え、走り続けるアクロバットで観衆を沸かせていた。彼らはパルクール・XMAの愛好家であり、障害物走はお手の物。走る勢いに乗せ身体を縮めれば、特設されたカートを難なく潜り抜け、次々に他チームを追い越した。
     長めの鉢巻の先にたなびく炎を燃やし、先頭を行く唯のバトンは桜太郎へ。
    「人事は尽くした!」
    「障害走だって望むところだっつーの!」
     豪語し、出走。ハードルを飛び越えるたびに、炎の羽を演出。さよなら体操着と、涙をのむ。
     その炎を追うは、白兎。無駄のない動きでハードルすれすれを飛び越え、跳び箱上で華麗な足技を披露。
    「アクロバットも、あくまで移動の1要素なのです」
     兎のごとき身軽さで、ついに先頭へ踊りでる。バトンを託せば、弾かれたように菖蒲が走りだした。
     続くレオンは『ひんぬーこそが選ばれし戦死!』と書かれたたすきを掛け、スライディング! 居並ぶハードルを一気にすり抜ける。
    「これも摩擦の少ないひんぬー(男)の成せる技!」
     色んな意味で観衆を圧倒。月夜へとまな板を託す。
     練習を繰り返したアンダーハンドパスは、手のひらに吸い付くよう。受け取ったバトンを握り締め、葵も走った。
    「力に自信はないけど、速さなら……!」
     炎で動物を形づくり、想いを繋げるのだと懸命に障害物に挑む。
     先行く菖蒲は特設された高層跳び箱の前で跳躍。手をかけ、駆け登り、一気に飛び降りる。
     続いて『貧乳は歴史だ』というたすきを付けた月夜が、まな板を手に飛びだした。
    「中世において高貴な女性に是とされたのは貧乳だ。言わば貧乳ではなく、貴乳と言う訳だ」
     始終クールな表情で高説を披露し、走る。
     葵から意思とバトンを受け取り、アンカーの淼が追う。学園最速にかけて喰らいつくも、障害物が行く手を阻む。
     圧倒的な速さで1位を手にしたのは、トレイサーズの裁。
    「パルクールの本質は、最短距離を効率的に最速で移動すること!」
     連結平均台の上を走るや、中空で側転。ハンドスプリングを織り交ぜ、あっという間にゴールへ飛びこんだ。
     嘉月も最後のバトンを受け、一輪車の小回りを利かせコーナリング!
    「農園では新鮮で健康な作物が採れます!」
     観衆へ声をかけつつ、諦めずにゴールを目指す。
     樹咲楽は『貧乳』と書かれたまな板を掲げ、笑顔を絶やさず最後までアピール。
    「ひんにゅーぶで~す、よろしく~」
     前を走る一輪車を追い、ラストスパート!
     小太郎は十文字の銀の置物をバトン代わりに、全力疾走。最後まで堅実に走り続けるも、逆転はならなかった。

     第4レースはトレイサーズが1位で圧勝。2位の炎血部が健闘し、3位4位はあかいくまと貧乳部がほぼ同着で並んだ。双銃刃は5位で幕を閉じた。

    ●第5レース
     最終戦は、最も『連携』が試されるレース。
    「【ご当地の友】【武蔵坂学園宇宙部】【武蔵坂軽音部】【料理研ニャンコ】【料理研ワンコ】【股旅館】【静かな礼拝堂】、位置について」
     銃声が鳴り渡ると同時に、マイクを手にした朋恵が走りだす。歌うは、オリジナルの応援歌。
     キジトラ柄の猫耳を装備した玲が、巨大パフェ『恐山』を抱え、
    「協力して巨大な敵に立ち向かう。この団結力が股旅館の象徴と言えましょう、えぇ」
     黙々と食しながら、続く。
     直人の扱うものも、食品。クラブで販売している『ジャッジ麺』をトレイに乗せ、走る。
    「汁を溢さぬ、華麗な走りを見せてやろう!」
     真顔で宣言するも、隙を見てつまみ食いする姿も観衆は見逃さない。
     麦も首からトレイを下げていたものの、
    「栃木といったらイチゴでしょー」
     走りながらイチゴ飯を手早く包み、いなり寿司を作成。空っぽの弁当箱に『イチゴ寿司』を詰めていく。
     残るチームは、設置されたテーブルで作業に勤しむ。猫と犬のアップリケが付いたエプロンを着用し、陽己は味付けの混ぜご飯を握り、紬は具沢山の大きなおにぎりを弁当箱に詰める。
    「おにぎりだけなら、形も崩れまい」
    「中身を落とさないように……!」
     そろって、出走。
    (「可能な限り、前に出る」)
     決意を胸に、ヴィントミューレは整備員を装い第2走者・レイのもとへ急ぐ。メインロケットに据えるのは、補助ロケット(左)だ。
    「行け! 俺たちの夢をのせて!」
     取りつけ完了とともに、レイは空を裂いて飛ぶように地を蹴った。
     朋恵の歌を受け、紫苑はワイヤレスアンプを使いベースを弾き、バトンを繋ぐ。
    「音が増えてくって、何か豪華になる感じがするのです!」
    「メンバーが順番に出てくるって、オーケストラみたいじゃない?」
     部員の協力で焚かれたスモークを満足げに見やり、ノリノリで旋律を紡いでいく。
     一方、バトン代わりのパフェを見やり、黒猫耳の龍治は思わず声をあげた。
    「もっと食えよ!」
    「もう、食べられません」
     託された龍治は豪快にパフェを食すも、脇腹が痛む。ふと目に入った『いつでも全力』の鯛焼きが、くじけかけた背中を押した。
     30秒あれば地元アピールは充分と豪語したクラレットは、額に三日月を戴き、模造の陣太刀で茹で枝豆を潰す。走り終えるころには、
    「『仙台ずんだの和え物』完成~!」
     手早く弁当箱に詰め、バトンタッチ。
    「バトン代わりの麺を食う奴がおるかっ!」
     直人へツッコミ、迦月が走りだす。ジャッジ麺とトレイ。ジャッジメントレイ。
    「あっ、座布団没収は勘弁!」
     観衆の視線を受け、迅速かつ丁寧にことを運ぶべく集中する。
    「百目鬼、後は頼んだ」
    「野山で鍛えたこの脚で、頑張りますよ!」
     八重子は託された弁当箱に、かつおの出汁が薫る彩キンピラを詰めていく。準備が整えば霊犬の椿も猫耳帽子を被り、一緒になって走る。
     1人と1匹を追うのは、志歩乃。
    「私はミニオムレツ、だよー!」
     紬をねぎらい弁当箱を受け取れば、人参、グリーンピースに白米を混ぜる。ここへきて詰めたものを乱すにはいかない。細心の注意を払い、猛ダッシュ!
     朋恵の歌、紫苑のベースに重ね、葉月が奏でるはギターの旋律。コーラスも添え、より華やかさが増していく。
    「武蔵坂学園、ファイト! オー!」
     しだいに広がる観衆の手拍子を受け、葉月は笑顔で弦をかき鳴らし、歌い続けた。
    「でかした、龍!」
     パフェは思いのほか減っていないが、零さずにすむ程度には少なくなっている。速度を落さず走れそうだと、虎次郎はフルーツや生クリームを口に運ぶ。
    「しかし、甘さに殺意を感じるっすね、これ」
     続き先頭を走るのは、力生。麺が減っていることに気づき、替え玉一丁を追加投入!
    「唸れ、俺の上腕二頭筋! 受け取れ、俺のジャッジ麺トレイ!」
     筋肉天使、もとい力生の気合いに、観衆もやんやと声援を送る。
     玉は応援歌を背に、補助ロケット(右)を設置。
    「多段式で切り離して行く形式なら、後の走者が楽だったのに……!」
     嘆きながらも、録音していたロケットハンマーの噴射音を再生! 勢いに乗せ、最後の追い上げにかかった。
     一方、弁当詰めチームは三つ巴状態。明海が料理するのは、ワラスボの干物。すこし怖い顔の魚を叩いて、切って、油で揚げて。さっとソースに通せば、
    「『揚げワラスボの甘辛味』、完成です!」
     志歩乃の声援を受けたオリヴィエが担当するのは、『鶏もも肉の詰め物焼き』。ナッツに果物、香り野菜を刻んでもも肉で包む。
    「かけっこも、一番を目指すんだ!」
     砂埃が入らないよう丁寧に包み、少年は走る、走る。
     華月もまた、手作りから揚げを弁当箱に添える。味の染みたから揚げは、サクサクジューシー。
    「美味しいお弁当ですよー。お料理研究同好会です!」
     宣伝がてら声をあげ、慎重に。でも、できる限り急いで駆けた。
     葉月からのバトンを受け取り、錠はバスドラムを背負い、躍るように打ち鳴らす。
    「運動会に参加してる皆へ、イカしたナンバーをお届けってな!」
     手拍子で聴衆を煽れば、ラストスパートへ向け会場が大きく湧きたった。
    「これは、いいものだ!」
     手にしたジャッジ麺トレイを掲げ、由宇は浮かぶ具すらも動かぬニンジャ走りで快走。しかし!
    「つまみ食いしてもOKよね! 食べられとる形跡あるし!」
     誘惑に負け、箸を伸ばしたのが命取りに。
    「後は、この父に任せろ!」
     白猫耳をつけたくるりがメッセージ入りのたい焼きを飲み下し、残りのパフェごと飲み物のように胃に流しこむ。
    「美味しいご飯は股旅館で! ごちそうさまでしたー!」
     空のパフェ容器を手に、ゴールをきり合掌。
     安寿が作るのは、忘れちゃいけないデザート! 寒天、サクランボ、キウイを使った『フルーツボンボン』をラップに包み、リボンで可愛くラッピング。対する藤孝が手にするのも、デザートだ。
    「おかずを食べる間もゼリーはひんやり、デザートを食べる頃には冷凍リンゴは溶けてシャーベットに!」
     考え尽くされたひと品に、観衆からも「食べてみたい!」の声がかかる。
    「「あとは、ゴール目指して一直線!」」
     この時には由宇もゴールに駆けこみ、組み上げたロケットを背に、希紗がラストスパート!
    「いつか本物に乗って、宇宙へ行くんだ!」
     スペースシャトルが飛ぶがごとく勢いで、ゴールめがけて突っ走る。
     來鯉は最後まで慌てず、用意していたもみじ饅頭を丁寧に焼きあげた。温もりの伝わる弁当箱を手に、見守っていた仲間たちと共に、掲げる。
    「「「「4人合わせて、ご当地お土産セット!」」」」
     手をつなぎ、揃ってゴールを駆けぬけた。

     結果、1位軽音部。2位股旅館。3位ニャンコ。4位礼拝堂。ワンコは5位で惜しくも抜かれ、6位7位に宇宙部と、手間を惜しまず本場の味にこだわり抜いたご当地が続いた。

     全ての競技が終了し、残すはMVPの発表のみ。
    「井の頭中学2年C組、神泉希紗!」
     未来への希望にあふれた、力強いパフォーマンス。
     宙を目指すまっすぐな意思を受け、手作りロケットは青空を裂き、灼滅者たちに見送られどこまでも飛んでいった。
     
     

    作者:西東西 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年5月25日
    難度:簡単
    参加:92人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 5/感動した 1/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 13
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