武蔵野市某所。
アングラ演劇華やかなりし時代は賑わっていたのだろうが、今では忘れ去られて久しい小劇場だ。
埃塗れの大量の鬘や衣装、大道具が折り重なり、危険な廃墟と成り果てている。
壊れたスピーカーからの唸り声のような音といい、淀んで生暖かな空気といい、夢の中を泳ぐようにも思える。
経路を示す指のマークを暫し辿ってステージ上に立つと、中央には奈落が黒々と口をあけていた。
明かりが届かずはっきりとはしないが、思いの他に深い。
生身の人間であれば怪我は免れないだろうが、灼滅者なら何の問題もないだろう。
……底には絢爛な装束に身を包んだ骨が五体、
ゼラチンペーパーの破片の、曼荼羅めいて鮮やかな色彩の中に転がって居た。
眩暈のするような冷気があなたの理性を曇らせる。
ここは奈落の底、よもや人間の支配の及ばぬ土地である。