武蔵野市、某所。
夕方にならぬと開かない古書店があると言う。
「――――♪」
小さく聴こえる童謡に誘われ、扉を開ければ其処は。
只、真白の空間が広がっていた。
否、よく見ればその白は全て本で構成された物。
天井まで届く本棚に、白を纏った本が綺麗に整えられ並べられている。
掛けられた白い梯子、白いカウンター。
あなたが目を奪われていると、いつの間に居たのか、横にぴょこり。
橙の髪に菫色の瞳をした小さな少女がいた。
「いらっしゃいませ! ちかちゃん、ちかちゃん、お客さん」
「んぁ」
声に応じ、白いカーテンを潜り出て来たのは少女と同じ髪と目の色の青年。
些か歳が離れている様だが、兄妹だろうか。