武蔵坂学園から徒歩10分。
昭和の面影を残す、褪せた板張りの道場。
その中央で、黙々と形稽古に励む男が一人。
「……集金か。勧誘か。宗教と新聞ならば、間に合っている」
物音か、気配か。
いずれにせよこちらに気づいた男が、ゆっくりと振りかえる。
「……その身にまとう気配。武蔵坂の学生か」
男の目が、細まる。
「クラブを探しに来たか。ここは、見ての通りの道場だ」
「とはいえ、戦う術が知りたいのならば他所を当たれ」
「ここは、灼滅者としての力ではなく、人間として心を鍛えるための場所だ」
男の頭上に掲げられた墨書きは『心身一如』。
「それでも構わないのならば、俺に拒む理由はない」
「ちょうど休憩をしようと思っていたところだ。時間があるのならば、茶に付き合え」
歓迎、されているのだろうか。
道場の主はぶっきらぼうではあるが、悪い人物ではなさそうだ…。
『茶に付き合いますか?』
・YES
・NO