地図にも海津にも書かれてない。
国際法上では陸地として取り扱われることはなく、領土や経済水域を決める上での指針にもなりえない。
しかし海をよく知る地元の漁師であれば必ず知っていて、決して近づこうとしない場所がある。
『船の墓場(サルガッソー)』
とはいえ彼女が指す場合、それはとある地域の名前を指すわけではない。
複数の海流がぶつかり合いシンクの排水溝のように一体の漂流物をかき集めたり、ごつごつとした暗礁によってそうした漂流物を引っ掛け堆積させたりするなど、複数の条件が重なった海域に自然発生的に生じた藻屑の山の事だ。
…此処に様々書き連ねたが、要は此処は少女の隠れ家である。
故に、たどり着けるのは彼女だけ。
所謂個人クラブというやつだ。
部員は募集しない。
以上。