学園から少し離れた路地裏に、ぽつんとある古風な建物。
元は醤油蔵だった建物を改装したばかりで、
古い家屋の重厚感と、新しい家の木の香りが入り混じる。
小さいながらも庭もあり、なかなかに雰囲気は悪くない――
……但し、未だ看板や表札の類も無く。
***
「――やあ。辺境へようこそ。迷い込むのも珍しい、斯様な処に何用かな?」
さながら前口上の如く、芝居がかった声音が出迎える。
声の主は、悪戯を企む子供のように、きらりと赤紫の瞳を輝かせた少女。
「此処かい?一応、喫茶店……に、なる予定の場所なんだけれどね。
まだ建物の改装が終わったばかりで、開店していないんだよ。」
残念だったかい? と小首を傾げた少女は、ふと思い出したように言葉を続ける。
「叔母に当たる姐様のお店でね。僕は手伝い、というわけだよ。
もし君がお暇なら――若しくは後々のバイト先でもお探しなら、
良かったら一緒に手伝って行かないかい?」
***
*準備中*