【Close】のプレートが吊り下がった小さな喫茶店。
看板には【Antique&Music Cafe Echoes】の文字。
ぼんやりと見えるのは、カウンターとテーブル。
そしていくつかの骨董品。
奥にあるのはステージだろうか。ピアノも置いてあるようだ。
お客は入っているのかいないのか、
【Close】のプレートが裏返ることはない。
けれど、時々響く音がある。
音色と声が微かに響く。
ある日、噂を聞いた。
あの喫茶店には幽霊しかいない、とか。
気まぐれな資産家が道楽でやっているお店、とか。
人には話せない特殊な事情を持っている人しか入れない、とか。
扉に触れただけで響くドアベルがあって、
そのベルが鳴るといつの間にかプレートが【Open】になっている、とか。
その噂の中に本当があるのか、
或いはどれも嘘なのかはわからないけれど。
そっと扉に触れる。
固く閉ざされたまま。
けれど、確かに。
ドアベルの音が響くのを聴いた。