深い、深い、森の奥…光すら届かないのではと思われるような深く。
人の歩く道すらない、木々の隙間を縫って歩き漸く辿りついた先にある
まるで人々から忘れ去られたのではないかと思わせるような洋館。
森の奥深くにあるにも関わらず小奇麗で、しかし年月の経過を思わせる景観。
薄灰色の煉瓦、時折手入れはされているらしい庭園、外からも窺える
填め込まれた縦長の大きなステンドグラス――光を受けて尚鈍い。
大きな黒い観音開きの扉は、鎖がかかっているものの、鍵はかかっていない。
押して開けば、じゃら、と音がして中へと足を進めることが出来る。
入るか、出るか、退くか、進むか、自由だ、勝手だ、好きにしろ。
「誰か来たのか、入るのならさっさと入って扉を閉めろ。そうでないならとっとと失せな」
常に不機嫌そうな、睨むような目つきの青年の無感情な声が、響く。
入部するにあたって【鈍色万華鏡-立札-】をご覧下さい。