.
褪せた鳥居の向こうは何時の頃か廃された旧い社。
とうの昔に神は喪われ、静寂を雨が湿らすばかり。
故に人知れず訪うには都合が良いのです。
約束代わりの小指の骨は丹念に削れるし、
愛され微笑むあの目を抉るなら夜更けに、
振向かぬ手足を結んで繋ぐにも相応しい。
無論私の話ではありません。
しかし空想でもありません、これは確かにあった出来事。
気になりますか、ならば確かめてみては如何でしょう。
今宵も火に入る蛾のように集うはず、
欲に身を窶した人間たちの暗澹たる物語。
七つには未だ足りぬ、摩訶不思議な物語。
ところで貴方、可笑しなことだと思いませんか。
その妄執、その愚かで醜い狂気、此岸の地獄を、
人はまるできららかなもののように呼ぶのです。
――その名を、戀と。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■ 石段の向こうは闇深く、今日のところは
■■■ 残念ながら踏み入ることが出来そうにない。