支配された地球を覆せるのは、武蔵坂学園に集う灼滅者(スレイヤー)だけ。
しかし、彼等は常に『闇堕ち』の危機に晒されているのだ。
――― 己の闇を恐れよ。されど恐れるな、その力! ―――
ヒトの魂の奥底には、
ダークネスと呼ばれる邪悪な別人格が存在します。ダークネスは実体を持たない魂だけの存在ですが、宿主である人間の精神が大きく揺らぐ
「闇堕ち」が発生すれば、宿主の人格を破壊し、肉体を奪い取ることができます。
実体を得たダークネス達は、やがて複数の種族に分かれて組織化し、暴虐たる本能と生来のサイキックを駆使し、世界中の人類を歴史の裏側から支配していきました。
そして1600年代前半。東インド会社や徳川幕府の設立をひとつの象徴として、彼らは、複数のダークネス種族による人類の「分割統治」を完成させました。
そう。あなたは気づいていないかもしれませんが、
人類は既に支配されています!
現代は、世界を裏から操るダークネス達による「見えざる圧政」の只中にあるのです。
ダークネスの目的は、人の心に「憎しみ、妬み、焦燥感」といった負の感情を植えつけ、
人類の闇堕ちを促進すること。絶えることの無い戦争や、日々の暮らしに疲弊し充足感を失ってゆくこと……それらは人間の避けられえぬ業だと考えられていますが、実はそうではありません。それらは全て、ダークネスによって外的に植え付けられたものなのです。
どの人間に闇堕ちする「素質」があるかは、ダークネスにも分かりません。だから彼らはこうして、無差別に大量の人間を苦しめる社会を作り上げました。
しかし1990年、世界情勢は大きく変化しました。
東京都武蔵野市にて、超機械
サイキックアブソーバーが稼働を開始したのです。
稼働したサイキックアブソーバーは、瞬く間に全世界のサイキックエナジーを吸収してゆきました。今や、サイキックエナジーが残っているのは
日本列島のみという状態です。
ダークネスはサイキックを操り、精神が枯れない限り老いる事もありません。
しかし彼らには「ふたつの欠点」がありました。
ひとつは、生殖による繁殖ができず、闇堕ちでしか同族を増やせないこと。
もうひとつは、能力を維持する為にサイキックエナジーが必要なこと!
しかも強大なダークネス程必要量は増し、枯渇すると活動不能に陥ってしまうのです。
突如サイキックエナジーを奪われたダークネス達は、大混乱に陥りました。幹部・首脳が機能不全に陥った為、全ての組織が維持不能な程のダメージを被ったのです。
混乱は、ダークネスの配下である「人間の権力者達」にも広がりました。冷戦の終結や通信技術の発達、汎用OSの発展など、1990年を境に、世界情勢は密かな動乱期を迎えていたのです。
世界の動乱とほぼ時を同じくして、ひとつの異常現象が発生しました。それは
灼滅者(スレイヤー)の出生率の増加です。
灼滅者とは、ダークネスに肉体を奪われること無く、己の自我でサイキックだけを行使できる人間の事。これまでは、生まれた灼滅者はダークネスによって皆殺しにされてきましたが、出生率増加とダークネスを襲った大混乱により、子供たちの多くが無事に生育を果たしたのです。
彼らは常に闇堕ちの危機に晒された不安定な存在です。ただしサイキックを駆使してダークネスを灼滅する(倒す)と、しばらくの間、闇堕ちの危機から逃れる「癒し」を得られます。故に彼らは「灼滅者」と呼ばれているのです。
サイキックアブソーバーの創設者達は、年若いこれらの灼滅者達を集めるべく、ひとつの「学園」を設立しました。散り散りになっている彼らを集め、協力してダークネスを灼滅する為の、灼滅者達の互助組織。
それが、皆さんの通う
「武蔵坂学園(むさしざかがくえん)」なのです。
灼滅者は、通常の人間よりも闇堕ちしやすいという欠点があります。
その代わり、例え闇堕ちしてダークネスになってしまっても、
自分の元人格を壊されること無く、魂の状態で耐え続ける事ができます。
通常、ダークネスを灼滅しても破壊された元人格は戻りませんが、
元人格が灼滅者だったなら、肉体と魂を取り戻せるのです。
闇堕ちから帰還した灼滅者は、学園に多くのデータを提供してくれる事でしょう。