<オープニング>
●エクスブレインからの説明(じっくり読んでね☆)
季節は夏真っ盛り。外では蝉が大合唱し、アイスはバカ売れし、農家のおじさんがスイカくれたりする時期である。
しかしそれだけではない。
そう、それだけではないのだ!
「海の……アバンチュールの季節だな……」
エクスブレインの一人、神崎・ヤマト(中学生エクスブレイン・dn0002)がそんなふうに口を開いたものだから、熱さにうだりかけていたスレイヤーの皆さんはちょっっぴり胸がチクっとした。
スレイヤー。灼滅者。この世の悪というか、実体化した都市伝説やダークネスやら眷属やらと戦う彼等だが、年頃の少年少女も多い。
本来なら青春真っ盛りで、『夏休みの宿題とかいいから海行こうぜ海!』みたいなことをファミレスで駄弁りながら過ごしてもいい歳である。
だが悲しいかな、世界は最近物騒なのだ。
サイキックエナジーの急激な増加により、日本各地で異常事態が発生していると言う。
中でも今回手がけるのは『都市伝説の実体化』だ。
「皆も普段相手にしてるだろうから知ってると思うが、人間の思念が集まった都市伝説は稀に実体化する……とは言っても、コインロッカーから声がするとか、トンネルの壁に顔が浮かぶとか、風が吹くとか寒いとか、そういう些細な害ばかりだった。でも今回はちょっと、いやかなり違う」
そう。かなり違う、のだ。
この都市伝説にサイキックエナジーが加わったことで、より『強力な敵』として実体化してしまったのだ。
「このサイキックエナジーを得た都市伝説は、事件の噂が広まってより多くの人が存在を信じることで、力を強めてしまうだろう。そうして強大な都市伝説となってしまう前に、事件を解決せなばならない」
ずっしりと重たい空気が広がる。シリアスな空気である。
冒頭の雰囲気は何だったのかと思う程、エクスブレインとスレイヤー達は黙りこくった。
「そして今回は……この『実体化した都市伝説』を撃退してもらうことになる」
すっ、と差し出されたパンフレット。
そこには、大きな文字でこう書かれていた。
『夏のビーチはアバンチュールでいっぱい! ドキドキでステキな夏を満喫しよう!』
「…………」
「…………」
ひんやりとした和やかな空気が広がる。コメディの空気である。
さっきまでのシリアスは何だったのかと思う程、ヤマトとスレイヤー達は黙りこくった。
「あ、すまん。この裏だ」
パンフレットの裏は真っ白で、いわゆるチラシの裏状態だったのだが、今は手書きで色々とメモが書かれていた。
実体化した都市伝説についてのメモなのだが、その内容をVTRで再現するとこうである。
…………。
……。
●再現VTR(脳内で再生してね☆)
季節は夏真っ盛り!
巷のビーチにはカワイイ水着の女の子に溢れ、この夏こそは誰かとキャッキャウフフするぞと息巻く若者たちも少なくない。
そんな中、色々うまく行って実際にキャッキャウフフできた男女グループがいた。
人数にして大体6~8人といった所だろうか。男女比は均等ではなかったが、皆仲良くビーチ遊びを楽しんでいた。
ビーチバレーにスイカ割りに、バーベキューセットなんぞ取り出して本格的な夏満喫っぷりを見せる程の勢いである。
ひとしきり遊び尽くし、もう夕暮れ時ですしグフフみたいな雰囲気になってきた頃、若者の一人がこんな話をし始めた。
「所でさあ、このビーチの噂知ってる?」
「ビーチの噂って、なにそれ」
女の子は肌についた砂をパタパタ落としながら適当に相槌を打ったが、若者はこりゃいい会話の糸口だぜとばかりに得意満面で言をつぐ。
「このビーチで男女のグループがキャッキャしてるとさ、『出る』んだってさ」
時刻も夕暮れのことである。若者の横顔がかすかに暗くなったのを見て、女の子は不安げに眉を寄せた。
「出るって……え、おばけ?」
「うん。兵隊の生霊がさ、出るんだよ」
「やだ怖いっ! なんで遊んでるだけで兵隊なんか出るの!?」
「それは……」
「それは……?」
どっと沈んだ若者の顔に連動して、女の子も顔も表情を沈める。
暫しの沈黙を挟んで、若者はこう言った。
「うらやましいから」
「えっ……」
嫉妬心だったんだ。
他の若者も、なんだかその気持ちが理解できる気がして、ちょっぴり涙ぐんだ。
それならば……幽霊が出ても仕方あるまい、などと思う。
逆にその気持ちが分からない女の子はと言うと、たいした感慨も見せずに首をかしげる。
「ふぅん、だからこのビーチガラガラだったんだ。夏なのに人居ないから、貸切りかと思っちゃった」
「だぁーよねぇー! でもさ、その噂のお陰で貸切状態ならお得だと思わない?」
「思わなくもない、みたいな? でも実際出てきたらどうする?」
「どうするって、噂だよ噂。本当に要るわけないじゃ――」
『ヘイ、ボーイ』
その途端、ぽんっと迷彩服を着たオッサンに後ろから肩を叩かれた。
慌てて振り返る若者。
そして気づく。
奇妙な覆面をした迷彩服男は一人ではなかった。具体的には五人くらいだった。
血走った目!
流れる血涙!
バラクラバと呼ばれる目出し覆面をつけ、殺意の塊のような視線を向けてくる。
ドッキリとかじゃなくて、マジだった。
覆面男が、手榴弾のピンを口で引っこ抜く。
『このビーチで男女グループがキャッキャウフフとか死ぬ覚悟できてんだろうなコラァァァァ!』
「いぎゃあああああああああああああああああ!!」
夕焼け空に響き渡る銃声。
そして爆発音。
若者は最終的には死んだとかなんとかってぇ話である。
●エクスブレインからの説明再び(ちゃんと読んでね☆)
「という、都市伝説なんだ」
「都市伝説なんだ……」
都市伝説らしい。
都市伝説なら仕方あるまい。
「まあそういう噂の所為で、実際は人全然居なくてね、海の家もこれじゃあ仕事になんねーやって他のビーチへ行っちゃう程で、夏真っ盛りだっていうのにビーチがほぼ貸切状態なんだよ。まあ、小さくて狭いビーチではあるんだが」
まあ何というか、ありていに言って可哀そうな話だった。
「で、皆には何をしてほしいかと言うと。このビーチに行ってキャッキャウフフと全力で遊んでいて欲しい。もうこれ仕事だったのかなって思うくらい遊んでて欲しい。暫く遊んで夕暮れ時になれば『実体化した都市伝説』が襲ってくる頃合いになるだろう。銃火器を持った兵隊五人組とかそのくらいだ。あまり強くはないだろう。まあホントどこからともなく現れるし、これ以外に有効な対処法は無いと思っておいてくれ。ほんと仕事の為だから、しょうがなく遊ぶんだから!」
「そうだな、仕事の為にしょうがなくビーチでキャッキャウフフするんだもんな」
「仕事の為とあればしょうがない、遊ぼうじゃないか!」
「ビーチで!」
「夏を!」
「満喫しようじゃないか!」
かくして。
スレイヤー達の夏は始まったのであった。
種類:
難度:普通
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参加人数:8人
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●空白革命より
執筆担当の空白革命です。
サイキックハーツの世界観を楽しみつつ、夏の海をお楽しみください。
後半に出てくるリア充爆破隊の皆さんは、幽霊だとか言われていますが物理で殴れるタイプの連中なので、安心して普通にしばいて下さい。
どうぞ宜しくお願いします。
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●参加者一覧
萬里小路・薔子(d00389)
紅月・聡莉(d00397)
飛倉・寝(d00544)
苗代・燈(d04822)
苑・バサラ(d02157)
不知火・読魅(d04452)
美空・琉璃(d02955)
朝比奈・なみき(d03449)
→プレイングはこちら
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<リプレイ>
●スレイヤーだって夏したい
季節は夏まっさかり!
などといつまでも言ってもしょうがないが。蝉が鳴き誰もが薄着になるこの季節、海辺に『都市伝説』が出たとなればスレイヤーたちとてプライベートを犠牲にしてでも退治に行かざるを得ないわけで、世界のなんたらかんたらを守るために感情を殺してクールに任務を遂行しなければならないわけで。
「海風はともかく、日差しが随分強いんですね……」
萬里小路・薔子(風の黒薔薇・d00389)が黒のワンピース水着で砂浜に立っていても全く不自然ではないわけで。
すらりと伸びた手足に日焼け止めクリームをゆっくり伸ばしていくのも任務遂行の為に必要な作業なわけで。
「その姿を俺が網膜に焼き付けていても全く問題はないわけで……」
「何か言いました?」
「いや」
苑・バサラ(金剛夜叉・d02157)はサングラスでしっかりと目を覆った。アロハ一歩手前みたいな半端にチャラいシャツを羽織り、海パンとビーチサンダルという出で立ちがどこまでも似合う男である。
「その水着って新調したヤツか? いいよ、似合う似合う」
「はあ、そうですか?」
バサラのサングラスには薔子の顔……というかその二十センチ下が映り続けているのだが、薔子はあえてスルーした。十四歳にして懐の広さを見せる薔子である。
「今回の『都市伝説』は浜辺で男女が楽しく遊んでいれば出てくるということですから、大人しく遊びましょう。もう、ビーチバレーの準備ができているようですし」
薔子は羽織っていた上着を脱ぐと、そっとクーラーボックスの上に置いた。
砂浜に即席のビーチバレーコートが出来ていた。
「リア充? キャッキャウフフ? 分からない生き物だわ……」
紅月・聡莉(ドーンオブスカーレットムーン・d00397)はツンと顎をあげた。
「ま、とりあえず楽しめばいいのよね?」
眼前を冷やかに見つめ、肩をゆっくりと回し、ビーチボールを軽く頭上へ投げ。
「わたし達の夏は――これからよっ!」
聡莉は目をキランと光らせ、ボールを天へと打ち上げたのだった。
「楽しんでるなあ聡莉」
「輝いてますねえ聡莉さん」
和やかに(それぞれ違う所を)見つめる薔子とバサラ。
「高いボールなら任せろーっ!」
そんな中、飛倉・寝(ゼットゼットゼット・d00544)は箒に乗って飛翔。高い所から鋭くボールを弾いた。
ふぁさぁっと髪をかき上げる所までセットである。
振り向けば、水平線は何処までも続いている。輝く水面。照りつける太陽。水着の女の子。これぞスレイヤーの夏というものだ。
「俺っ、今すげぇ夏を満喫しふぎゅ!?」
キラキラした寝の顔面にビーチボールが高速で叩きつけられた。
気を抜いていたのかもんどりうって転倒、というか砂浜に落下する寝。
てんてんと転がるビーチボール。
苗代・燈(風纏い・d04822)は振りきり体勢のまま彼を見つめていた。
「寝君……ビーチバレーで飛行は反則臭くはないか?」
「だ、だってさあ! 日常シーンで使ってみたいだろ、ESP!」
「……分からんでもないな」
がばっと顔を上げる寝に、燈は無表情のままこめかみを揉んだ。
まあ使ったから近隣住民がどうのという問題は無いし、ちょっとくらいならバレなかったりスルーしてくれるのでいいかなぁと思わないでもない、が。
「その調子で行くと、最終的には『大乱闘スマッシュスレイヤーズ』になるからやめておけ」
「全力でやめる!」
寝は正座して箒を置いた。
ネットとボールを挟んだだけのサイキックバトルとか嫌すぎる。きっと全員KOしたら勝ちなのだ。どこのテニス王子かと思う。
うんうんと頷き合う寝と燈。
そんな彼らをよそに、聡莉はどこか充実した顔でゲームを再開させるのだった。
「さ、どんどん行くわよっ!」
一方その頃。
ぱぽーんというビーチボール特有の音を聞きながら、不知火・読魅(永遠に幼き吸血姫・d04452)はビーチチェアに寝そべっていた。
トランクスタイプの水着にTシャツというどこか少年めいた格好だが、読魅はれっきとした女の子である。
「ふっふっふ、ビーチでイチャつくカップルを演じてやれば効果も抜群と見た。ほれ琉璃、瑠璃はどこだ!」
「はーい!」
水鉄砲片手にどたどた走ってきた美空・琉璃(夢色不思議少女・d02955)に、読魅は眉を寄せた。
「なんじゃその恰好は」
「何って……」
自分を見下ろす琉璃。バカンス気分満点の水着に、水鉄砲、カラフル浮輪という出で立ちであった。
なんか、見てるだけで元気出てきそうな子である。
「キャッキャウフフ的装備?」
「ふむ、確かに。じゃが今は妾にオイルを塗ってくれ」
ずいっとサンオイルを突き出す読魅。
「頼むぞよ。妾は日に弱い故、よく塗っておかぬと灰になるのじゃ。ほらダンピールじゃし?」
「えっ、ダンピールって普通にお日様の下闊歩してない?」
「気分じゃ気分」
ふふんと鼻を鳴らす読魅。
「ということで、塗れい!」
「いいよー、まず背中からね。ぬりぬりー」
「妾、今仰向けなんじゃが」
「えっ……冗談だよ冗談。お腹から塗ろうね!」
「今『えっ』て言ったよな? ナチュラルに妾の胸と背中間違えたじゃろ!?」
「そんなことないよー。あっ、ホットケーキみたい……じゅる」
「食べるなよ!? 間違っても食べるなよ!?」
「それはフリと見ても」
「フリじゃないわ!」
じたばたと暴れる読魅と、それを押さえつけつつオイルをだばだばかける琉璃。
そんな二人の横で、朝比奈・なみき(小学生シャドウハンター・d03449)は顔を覆っていた帽子を外した。
「んー? なんか想像してたのとズレてるような……?」
「まあ、人が集まるというのはそういうものだ」
手際よくパラソルを立てる燈。
なみきは分かったような分からなかったような顔をしつつ首を傾げた。
●夏の海はドキドキがいっぱい
ビーチバレーも一通り遊び尽くし、ゴージャス寝による空中スマッシュを18歳ボディに変身したなみきと琉璃が弾いて最終的には聡莉と寝による空中戦に発展するという非常にカオスな展開になりつつも、一同は遊びの舞台を砂浜から海へと移したのだった。
「冷たくてきーもちーい!」
浮輪にはまってばしゃばしゃやる琉璃。スレイヤーともなれば泳げないってこたぁないのだが、ここはやはり気分である。浮輪でぷかぷかすると楽ちんだし。
「んー……ん?」
ちらりと横を見る琉璃。
どこからか思い切り遠泳していた寝がざばっと水面から顔を出した。
目が合う。
寝は顔を半分水に沈めた。
つぶらな瞳を瞬かせ、琉璃は首を傾げた。前髪から雫が落ちる。
「どうしたの?」
「な……」
「な?」
「なんでもねえええええええええええ!」
高速クロールでどこかへ突っ走り始める寝。
「寝くんどこ行くの!? バーベキュー始まるよ!」
「バーベキュー!」
寝はクイックターン。先程以上のスピードで浜辺へと突っ走り始めた。
その一方。
「にゃー、そんなに水かけたらずぶ濡れになっちゃうじゃない!」
「……そうだな」
きゃっきゃしながら手を翳すなみき(18歳モード)。
燈は無表情のまま水をかける仕草を継続していた。
「って、もう違うでしょ! そこは『いいのいいのどうせ水着なんだか!』でしょう!」
「そういうものか?」
「そういうものなの! じゃ、もう一回ね! にゃー、そんなかけたら……!」
再び手を翳すポーズをとるなみき。
そんな時、浜辺の方から薔子の声が聞こえてきた。
「バーベキューの準備ができましたよ。皆さんどうぞー」
「む……分かった今行く」
キリッと振り向いて浜辺へ歩いていく燈。
なみきは例のポーズのまま固まり、しゅいんと元のサイズ(8歳モード)に戻った。
「あれ?」
「夏、海、遊びと言えば……!」
「バーベキュー!」
「キュー!」
琉璃と寝、そしてなみきは串に刺した肉を両手に持って天に掲げた。
もしかしたら今日一番輝いている瞬間かもしれない。
そんな彼らを微笑ましく眺めながら火の調節をする薔子。
皆が海でばしゃばしゃ遊んでいる間に黙々と準備を進め、ある程度焼いたりという甲斐甲斐しいお世話をしてくれたのも彼女だった。十四歳にして既に大人の包容力を見せる薔子である。
「お肉はまだありますから、ゆっくり食べて大丈夫ですよ」
「肉ばかり食べてないで、野菜も食えよ?」
と言いつつ豪快に牛肉にかじりつく燈。
やや厚切りにした牛肉に塩と黒胡椒を振ったものである。背景は海。そして水着美女。これが美味くないわけがない。歳が歳ならビールを要求するシチュエーションである。
大人ならざる読魅はぴょんぴょんと跳ねて燈に腕を振った。
「燈め、そう言いつつ自分も肉ばかり食っておるではないか! 妾にも回すのじゃ、さっきからピーマンばかり回って来とるぞ!」
「うん、野菜を食べろ。小学生なんだから好き嫌いはいかんぞ」
「高2じゃ! お主の五コ上じゃ! ええい外見で判断しおってこのっこのっ」
腕をぐるぐるさせる読魅。その額を片手で抑える燈。
聡莉はそんな彼らをよそに、自分の分の肉をちょっと強めに焼いていた。
無表情にパチパチ焼ける肉を見下ろす様は、どこか実験中の魔女のようでおどろおどろしかったのだが……。
ここぞという所で、聡莉の頬に冷たい缶ジュースが押し付けられた。
「ひゃっ!?」
普段絶対に出さないような声を出して背筋を伸ばす聡莉。
反射的に空の串を握って振り返ると、バサラが両手を上げて降参のポーズをとっていた。
喉にぴったりと串の先端が当たっている。
「ち、ちがうんだ。俺はただキャッキャウフフ的なことを再現するためにだな」
「……」
「あとこの体勢だとその、谷間の部分が」
「っ!?」
聡莉は胸を腕で覆うと、バサラの顎に掌底を入れた。喉を串刺しにしなかったのはせめてもの情けである。(多分平気だろうけど)
もんどりうって倒れるバサラ。
まったくもうと呟いて調理中の肉へと振り返ると。
「……あ」
肉がこんがりと丸焦げになっていた。いやもうこんがりっていうか『ごんがり』だった。額に手を当てる聡莉。
「ぬ、抜かったわ……」
「あら、まあ。失敗してしまいましたね。大丈夫、私に貸して下さいな」
薔子は優しく微笑んで丸焦げ肉を取り上げると、『ブイヨン』で肉をブイヨン化。コンロで作っていたスープに混ぜてくれた。
「ESPを使える機会があって良かったわ。たまには使いたいですもんね、ブイヨン」
「……あ、ありがとう」
頬に朱をさし、聡莉は目を反らした。ついてにバサラは踏んでおいた。
●都市伝説だって夏したい!
浜辺で遊んで海で泳いで、キャッキャしながらバーベキューして、気づけば日暮れ。海にも夕日がかかっていた。
「いやあ、夏したなあ……」
額にバッテンの絆創膏を貼りつつ、やり遂げた顔で夕日を眺めるバサラ。
そんな彼の肩を、ぽむんと誰かが叩いた。
振り返ると……。
『人生楽しいかあ? そうかぁ、よかったなあ……!』
血涙を流したバラクラバのオッサンが立っていた。額には雄々しい刺繍で『リア充爆破』と書かれている。
普通に考えたら嫉妬に狂った変態なのだが、間違うなかれ彼等こそが実体化した都市伝説『リア充爆破隊』。スレイヤーが倒すべき敵である。
『貴様等、死ぬ覚悟が出来てるんだろうな?』
「それって、あなたたちのことを言ってるのよね?」
『えっ』
更に後ろから肩ポンされる爆破隊のオッサン。
振り向くと、聡莉がスレイヤーカード片手に立っていた。
「悪いわね」
こうして始まったリア充爆破隊VSスレイヤー戦!
ずらりと並んで銃を構えた爆破隊たちはまず照準を読魅の胸元へと当てた。
「まずは男からだ!」
「こら待て妾は女じゃ! 分からんかこの溢れる魅力!」
バッとシャツを脱いでビキニ水着を晒して見せる読魅。
爆破隊は読魅の胸と顔を交互に見た後、顔を見合わせて頷いた。
「男だな」
「貴様等楽に消えれると思う出ないぞ!」
キシャーと叫んで刀を振り上げる読魅。爆破隊の一人を月光衝で豪快にぶった切ると、血走った目で別のヤツを睨んだ。
『ヒィ、バケモンだ!』
「お主が言うな!」
「ああ、気持ちは分かるが……」
リングスラッシャー片手に拳を握る寝。横目で睨む読魅。
「コホン。リア充を爆破したい気持ちは分かるが、でもやっぱ人を殺しちゃいけねーよ!」
寝はマジックミサイルを連射。爆破隊をどかどかと蹴散らしていく。
燈もそれに合わせてバレットストーム。ガトリングで右から左にばーっと薙ぎ払ってやった。
「別に仕事でしょうがなく海遊びしてたんだからな。仕事なんだからな!」
『嘘だ、絶対楽しんでいた!』
「お肉すげえ美味しかったです!」
『畜生コノヤロウ!』
血涙を流して手榴弾を乱れ投げしてくる爆破隊。
燈たちは爆発に晒される……が。
「回復なら任せて下さい。どんどん撃って構いませんよ」
薔子が清めの風を展開。自分を含め燈たちを即座に回復していく。メディックポジションということもあってその回復量は凄まじいものがある。爆破でうけたダメージなど一発回復である。
『まずいぞ、こいつら爆弾が通用しないぞ!』
「それだけじゃないわよ」
聡莉がデッドブラスターを叩き込む。ジャマーポジションの効果もあって爆破隊はより沢山の毒に苛まれることになった。
そこへバシバシとマジックミサイルを叩き込んで行くなみき。
「何が合っても、関係ないひとを巻き込んじゃいけないんだよ!」
『そんなこと言われても俺達爆破隊だしっ』
微妙に食い違う会話をしつつも滅茶苦茶スムーズに駆逐されていく爆破隊の皆さん。
最後の一人になった所で琉璃が突撃。
相手をぐいっと担ぎ上げ、華麗なフォームで海へとぶん投げた。
「ていっ!」
「――からのぉ、トドメ!」
そこへバサラが空中キャッチ。オッサンの身体を反転させると、頭から海面に叩きつけてやった。
最後に残ったのは水面から足を突き出すオッサン。
それもまた、しゅおしゅおと儚げに消滅したのだった。
ぱちぱちと花火が弾ける。
「というわけで、最後までキャッキャしようじゃん?」
「花火を準備してきて良かったな」
線香花火をつまんでクーラーボックスに座るバサラと燈。
「あー楽しかった。また皆で海行きたいねっ」
「だねっ、行こ行こー!」
「っていうか俺現実に帰りたくない!」
花火を両手に持って走り回る琉璃と寝。
聡莉はそれを見ながら打ち上げ花火に火をつけた。
打ちあがる小型花火を見上げ、なみきはふっと息を吐いた。
「海、かあ」
……その一方。
「フッフッフ、身体中灰だらけになって焦るが良いぞよ」
読魅はビーチチェアに灰をまんべんなく塗っていた。
この後寝そべった誰かが悲鳴をあげ、犯行バレた読魅が吊るされたりするのだが……それはそれである。
線香花火を見下ろす薔子。
「こういう夏の過ごし方も、いいですね」
ぽたんと花火がバケツの水へ落ちて、今日の終わりを告げた。
作者:空白革命
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重傷:なし
死亡:なし
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種類:
難度:普通
結果:成功!
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出発:2012年8月20日
参加:8人
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