<オープニング>
「サイキックアブソーバーが俺を呼んでいる……時が、来たようだな!」
教室に集まった灼滅者(スレイヤー)達を前に、神崎・ヤマト(中学生エクスブレイン・dn0002)がそう言うと、灼滅者達は『おいおい大丈夫か?』と言うように顔を見合わせるがヤマトは構わず説明を続ける。
「世界は、邪悪なる超存在ダークネスにより支配されている。この支配に楔を打ち込んだのが『サイキックアブソーバー』によるサイキックエナジーの吸収だ。サイキックエナジーの希薄化により、世界を支配してきた強大なダークネスは活動停止を余儀なくされ、ダークネス達は大混乱に陥った……」
ヤマトは溜めるように数秒間を置いた後、「しかし!」と続ける。
「サイキックアブソーバーが動き出してから22年が経過した今、サイキックアブソーバーが存在する東京武蔵野市を中心とした日本全土で、サイキックエナジーの急激な増加が確認されはじめたのだ。このままサイキックエナジーが高まれば、サイキックアブソーバーの機能が乱れ、その行き着く先は世界中のダークネスが蘇る悪夢の時代の再来に他ならない!」
ここまで一気にまくし立てたヤマトは、一区切り付けて呼吸を整えると説明を再開する。
「日本地域は、他の諸地域に比べてサイキックエナジーの濃度が高く、ダークネスや眷属の事件も発生していたが、今回のサイキックエナジーの増加により、今までお前達が解決してきた事件とは比べものにならない程に大きな事件が発生していくと予測されている!」
ここでヤマトは一旦説明を止め、灼滅者達に事態の危険さが理解できるまで待った所で
「しかし!」と続ける。
「しかし、恐れる事は無い! この時の為に、この学園には、多数の灼滅者が集っており、この俺を初めとする、サイキックアブソーバーを使いこなすエクスブレインの育成も進んでいる。この世界が再び、ダークネスの跳梁を許す事が無いように、お前達も戦うのだ!」
灼滅者達をビシッと指さし、ヤマトは力強く言った。
「さて、今回お前達にやって貰うのは、大発生した眷属の駆逐だ。この中には、眷属と戦った経験を持つ者も多いだろうが、その多くは眷属の中でも下級の個体であった筈だ。現在発生している事件では、この下級の個体だけでは無く、それを率いる中級以上の個体が確認されている。返り討ちに遭いたくなければ、ただの眷属と侮らず、自分と互角かそれ以上の敵であると考えて、対処する事だ!」
ヤマトは地図を広げ、その一点を指さす。
「眷属が発生しているのはここにある廃病院で、ゾンビ──いわゆる腐りかけの人間の死体が文字通り腐るほど潜んでいる。命令を与えるであるダークネスがいない為、積極的な行動は取らず、病院内に迷い込んだ者を殺しているようだ。下級の個体はナースや患者のゾンビが12体。老若男女揃っているから、綺麗なお姉さんやイケメンのお兄さん、ロマンスグレーのおじさまに、小さな女の子のゾンビを前にして、好みのタイプとドンピシャでつい手を出すのをためらうなんてこともあるかも知れんな!」
外見から推察される生前の姿から、攻撃をためらう事が無いように、とヤマトは言ってるようだが、どこか腹立たしく思うのは気のせいだろうか?
「さて、それら下級のゾンビ共を倒しても、その後に中級のゾンビが奥の院長室で待っている。そいつは中年の医者の格好をしていて、メスで襲ってくるだけでも厄介だが、生前の仕事柄か、人を効率的に傷つけるやり方を心得ているから、最悪全員解剖されるか、ゾンビの仲間入りをさせられる危険もある。そうならないようせいぜい気をつける事だ!」
下級のゾンビ達との戦いで消耗しすぎて、中級のゾンビと戦う段階でまともに戦える状態でなくなったら目も当てられない、と言う事だろう。
「さて、俺の脳に秘められた全能計算域(エクスマトリックス)が導き出したお前達の生存経路は、今夜午前2時に廃病院の正面入口からと出ている。俺の全能計算域に間違いは無くお前達がミスをしなければ、事件は無事解決だ。しっかり戦うが良い、灼滅者達よ。フハハハハハハッ!!」
高笑いと共に、ヤマトは説明を締めくくった。
種類:
難度:普通
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参加人数:8人
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●たかいわ勇樹より
ご存じの方はこんにちは。初めての方は初めまして。たかいわ勇樹(─・ゆうき)です。
今回こちらでTW4・サイキックハーツβ版シナリオを担当させて頂きます。
それでは以下がオープニングの補足です。
●戦う場所、時間について
ヤマトの指定した時間と廃病院への侵入経路は、彼の言動こそアレですが、灼滅者側にとって最も有利な状況で戦えるために弾き出されたものですからご心配なく。
ちなみに戦う場所は廃病院で、そこら中ボロボロですが、床が抜けて下に落ちると言う事態はまず起こりませんのでご安心下さい。
●ゾンビについて
下級のゾンビ達は灼滅者達が廃病院に入ると問答無用で襲いかかってきますが、逆に言えば誘い出す工夫は要りませんので、その辺は深く考えずにプレイングを作成して下さい。
リーダーである中級のゾンビも院長室に入ると襲いかかってきますのでこちらも同様です。
それでは、皆さんのご参加をお待ちしております。
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●参加者一覧
永冶・新九郎(d00169)
朧・京介(d00170)
宮淵・円(d00447)
ジャック・アルバートン(d00663)
ミケ・ドール(d00803)
風音・菊花(d04788)
風宮・壱(d00909)
宍倉・小映(d03574)
→プレイングはこちら
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<リプレイ>
●夜闇に浮かぶは
午前1時──人通りがほとんど無い夜の闇の中、月の光と街灯に照らし出される白い建物があった。
しかしその建物は窓ガラスのほとんどが割れ、壁もあちこちひび割れ、崩れている箇所もあった。ここがかつて病院だったと聞けば、ほとんどの人が夜は怖がって近寄らないか、逆に心霊スポットとして興味半分、怖さ半分で入るかに分かれるだろう。まさか本当に死者が襲ってくるとは考えもせずに──。
そんな廃病院の入口前に集まる数人の男女。彼らは廃病院に潜むゾンビ達を撃退すべくやって来た灼滅者達だった。
「はは、真夜中の廃病院のゾンビとか、王道だよねー。でも俺、燃やせる物は怖くないよ」
風宮・壱(ブザービーター・d00909)がお気楽な調子で言うと、
「ゾンビ、廃病院、真夜中。肝試しには持って来いだな……怖くない。怖くないからなっ!?」
続く永冶・新九郎(銭打ち槍投げ最後はトンズラ・d00169)の言葉こそ強気だが、風音・菊花(乱列する五音・d04788)の腕を掴みながらでは説得力ゼロだろう。そんな新九郎に腕を捕まれても菊花が文句一つ言わないのは人格者だからか、それとも呆れているのか、何も言わないので分からない。
「死肉、の 匂い……漂って きます」
宍倉・小映(羽虫・d03574)が病院の方を見ながらボソボソと呟くと、
「病院ってさ、こういうのの舞台になるには絶好の場所だろうけど……ゾンビの仲間入りなんて嫌だね、綺麗じゃない」
人形のような無表情でミケ・ドール(凍れる白雪・d00803)は言い、
「綺麗に消してあげるよ」
白い髪をサッとかき上げる。
ジャック・アルバートン(ロードランナー・d00663)も彼女の言葉に「ああ」と頷き、
「ゾンビ相手くらいビシっと決めてやりたいもんだ」
そう言って、野性味のある顔にニヤリと笑みを刻む。そこへ、「こんばんは、みんな。いい夜ね」と声がして、皆が振り向くと、
「ようやく来たか」
朧・京介(高校生ダンピール・d00170)が最後にやって来た宮淵・円(MUDEYE・d00447)に返す。他の者達は「遅い」と文句を言うが、
「約束の時間まではまだ間があるからいいじゃない」
そう円は答えると、白目の部分が金色のカラーコンタクトが明かりに照らされて怪しく光る。
「そろそろ2時だな」
遅い遅くないの言い合いを遮るように京介が言うと、灼滅者達は持参したヘッドランプを装着する。そしてスレイヤーカードを出して、あらかじめ決めておいた決めゼリフを言う。次の瞬間、封印が解除され、灼滅者達は殲術道具で武装した姿になった。
●死の待合室
病院内は、入ってすぐ待合室が広がっているが、かつては来院者や入院患者が座っていた椅子は穴だらけで中からクッションやバネが飛び出し、ライトに照らし出された壁や床はひび割れだらけ、汚れ放題という有様だった。
灼滅者達は入口を背に退路を確保しつつ陣形を組み、周囲を警戒する。すると待合室のそこかしこから物音が聞こえて、音の方向へ明かりを向けると、老若男女様々な人影が立ち上がり、こちらに向かってくるが、体中が腐敗したその姿は、とても生きている人間とは思えなかった。
「うわー……」
そんなゾンビ達の姿を見て、壱が嫌そうに声を上げる。
「確か、ヤマトの情報だと、ここに現れるゾンビは12体だったな」
クラッシャーのポジションに立つ京介が冷静に言うと、
「じゃあ、こいつらは第1波ってわけね」
同じくクラッシャーの円は答え、バトルオーラを両手から立ち上らせる。
「まずは1体──!」
低い体勢で老人のゾンビとの間合いを詰めると、円は手刀で黒死斬を繰り出す。脇腹から首筋に掛けて切り裂かれると、あっけなくゾンビは倒れる。
クラッシャーによる攻撃は更に続き、今度はジャックが無敵斬艦刀で豪快な戦艦斬りを別のゾンビに見舞うと、太った中年男性のゾンビは頭のてっぺんから股間まで真っ二つになって『割れる』。
「やられたい奴から前に出やがれ!」
すっかり高揚した口調でジャックは叫ぶ。
「死体より、生きてる方がずっと楽しいんだけどね……」
対称的に冷めた口調で言うのはミケで、これまた口調とは対称的な凄まじいモーター音を上げるチェーンソー剣による騒音刃で、中年女性のゾンビが腹を切り裂かれて倒れるとほぼ同時に、霊犬の口に咥えた斬魔刀による援護を受けた京介が紅蓮斬で男の子のゾンビを倒す。
クラッシャーが一通り攻撃を終えると、次はディフェンダーの壱が若い男のゾンビをレーヴァテインで攻撃し、炎が燃え移って熱そうに叫ぶゾンビに、
「熱いか? じゃあ冷やしてやるよ」
キャスターの新九郎が言って、妖の槍から妖冷弾をゾンビに撃ち込むと、着弾した箇所が凍り付き、極端な熱と氷で力尽きたかゾンビはバッタリ倒れ、衝撃でバラバラになる。
「北1!」
後方からメディックの菊花が、その場に残るゾンビの位置を端的に言うと、パッショネイトダンスで歌う体勢を整えつつ、痩せ型の中年男性のゾンビを攻撃するが、他の者達の攻撃に比べて傷は浅い。
「ねえ もう そんなに 腐ってるのに なんで 生きてるの」
蔑むような視線でゾンビを見ながら、同じメディックの小映がジャッジメントレイで攻撃するが、裁きの光条に灼かれてもゾンビは倒れず、ミケに向けて骨の露出した右手を振り下ろす。咄嗟にミケは後ろへ身を反らすが、彼女の頬に数本引っ掻き傷が走る。
そうしている間に、奥から更に6体のゾンビがやって来て、ミケと円に2体ずつ、壱と新九郎に1体ずつ襲いかかる。ミケは2体の攻撃をかわすが、円は片方の攻撃をかわしきれず、壱と新九郎も攻撃を食らうが、男2人を襲うゾンビがそれぞれナースと10代の少女の姿をしていたからと考えるのは考えすぎか?
「今の痛かったなぁ……お返し、するよ」
白い頬に傷から赤い血が流れる顔をわずかに歪め、普段よりも更に冷たい口調でミケは言うと、頬に傷を付けたゾンビの首を黒死斬で斬り飛ばす。円も制服の胸を引き裂いた、肥満体でいかにもオタク風な男のゾンビの頭を黒死斬で叩き割って仕返しする。
ジャックはミケを襲ったゾンビの片方を戦艦斬りで両断すると、
「俺の刃が、お前の因果ごと断ち切る」
そう呟きつつ、(「どうだ、かっこよくね?」)などと心の中で自分に酔っているが、周りに突っ込まれるのは嫌だからか、懸命に顔に出ないようにする。
京介が霊犬の斬魔刀と同時に紅蓮斬で円を襲うゾンビのもう片方を切り伏せた後、壱が少女のゾンビをレーヴァテインで斬りつけるが、倒れずに歯噛みしていると、
「ナース! 我々凡人かっこ一部かっことじは彼女等に飽くなき憧憬を禁じえませんッ。あの白衣に何人もが魅了──」
状況をわきまえず、ナース姿のゾンビを前に感想を述べる新九郎に、壱が我慢できず「ナースならゾンビでも良いのかよ!?」と突っ込みを入れ、他の仲間からも冷たい視線を送られ、
「あ、もういい? うざい? ごめん」
あっさり新九郎は謝りつつ、旋風輪で周りのゾンビ全てを攻撃すると、少女のゾンビはガックリと膝を突いて倒れる。
その後菊花が神薙刃でミケを襲った残り1体を切り裂き、小映がセイクリッドクロスからの光線で追い打ちを掛けるが、ギリギリの所で立っており、ナースのゾンビと一緒に新九郎を襲う。
だが既に数は8対2、加えてゾンビは片方が満身創痍で、戦いの流れが灼滅者に傾いているのは明白だった──。
●流血の院長室
それから1分後、待合室にはボロボロに崩れたか、人型を留めていてもかなり腐敗が進行した、かつてゾンビだった死体が転がっていた。
「君が生きてる時に会いたかった、なんてね。……ごめんね」
少女の死体に向かって、壱は手を合わせる。更にそれから少しして、
「良し、10分経った。それじゃ行こうか」
京介が言うと、壊れたソファーに座るか横たわって休息を取っていた灼滅者達が立ち上がる。
「悪いけど、荷物を預かって頂戴」
壁にもたれかかって倒れている死体の口に、円がヘッドランプを咥えさせ、即製のフロアスタンドライトにすると、
「何不気味なオブジェ作ってんだよ!?」
当然と言うべきか、ジャックが文句を言い、菊花が「……前衛的」と呟きはしたが、ほとんどが嫌そうな表情をする。
「こんなのを芸術に含める気かよ!? 金貰ったって欲しくねーよ!」
ほとんど絶叫に近い新九郎の不平に、流石にミケが「……静かに」と制止し、うやむやのうちに一行は次の戦いへ向かう事になる。
「…………」
小映はじっとヘッドランプを咥えた死体を見ていたが、他の仲間が出発すると、急いで後を追うのだった。
一行は待合室から病院の中へ向かって廊下を進み、途中床のタイルが剥がれていて躓く事はあったものの、特に敵に出遭う事もなく、病院の奥にある『院長室』のプレートが付いたドアの前に到着する。
「──行くよ」
円がドアノブに手を掛け、蝶番が錆びて外れかけたドアを開けると、白衣を着た中年のゾンビがデスクに座っており、それが纏わせている雰囲気から、一目見ただけで先程のゾンビ達とは桁外れの存在だと、灼滅者達は直感で理解できた。
「こんばんは、先生。久方ぶりの急患よ。腕は鈍ってない?」
それでも相手に気圧されまいと、円は軽口を叩きながら他の仲間達と一緒に室内へなだれ込み、急いで先程の戦いと同じ陣形を組む。そこへ院長(仮称)がデスクを乗り越えてジャックへ向けて跳びかかり、白衣から取り出したメスで斬りかかる。ジャックは無敵斬艦刀で受け止めようとするが、院長はメスを振り下ろす動作を途中で止め、刀をかいくぐってメスを突き出し、ジャックの左の肩口を刺す。
「フェイントかよ!?」
ジャックは刺された箇所を抑えるが、すぐに手を離し、「けど、そう来なくっちゃなぁ!」と獰猛な笑みで続けて言うと、戦神降臨で精神を高揚、肉体を活性化させる。
直後、円が院長の腕を掴み、地獄投げで頭から床に叩き付けるが、院長は何事も無かったかのようにすぐ立ち上がる。
「ゾンビの分際で、頑丈な頭ね」
忌々しげに円が呟くと、続いてミケがズタズタラッシュを繰り出し、院長の白衣とその下のシャツを切り裂くが、チェーンソー剣越しに感じた手応えに、「──浅い」と漏らす。
京介も霊犬と同時に紅蓮斬で斬りかかるが絶妙なメス捌きで弾かれ、新九郎の螺穿槍も院長は身を捻って脇腹をかすめる程度に終わる。
「短期決戦は、やっぱり無理そうだね」
眉間に皺を寄せて壱は言い、WOKシールドを右手の親指で弾き、左手でキャッチした後に右手の甲に重ねると、小映からヒーリングライトで治療を受けているジャックにソーサルガーダーを張る。菊花もパッショネイトダンスを踊って院長を牽制しつつ、歌う態勢を整えた──。
その後も戦いは続いたが、灼滅者側の攻撃は院長に決定打を当てるには及ばず、逆に数で圧倒的に劣る院長のメスは的確に灼滅者達の体を切り裂いていく。メディックも懸命にサイキックで治療し、それでも追いつかず深手を負った者、出血が多い者は一旦後方に引いて治療に専念するが、この場のサイキックでは治療しきれない傷が、時間の経過と共に増えていき、同時に体力も消耗する一方だった。
「みんな聞け」
荒い息を吐きながら、ジャックは言葉を繋ぐ。
「今、俺達は、撤退するか否か、決めなきゃならない状況だ」
ジャックの言葉に、周りから「ああ」「はい」と返事が来るが、その声にも戦闘開始前ほどの力は無い。
「だが、向こうも俺達の攻撃で相当ダメージを受けている。攻めるか退くか、口ではなく、動いて示せ!」
そう仲間と自分を鼓舞するように言うと、無敵斬艦刀を大上段に構え、体に残った力を振り絞って院長に躍りかかる。
「刃を焦がすは俺の魂、燃えちまいな!」
言葉通り、魂をも燃やさんばかりの覚悟でレーヴァテインの炎を刀に宿し、一気に振り下ろす。灼滅者達にも負けず傷だらけになっていた院長は回避も防御も間に合わず、左の肩に深々と刀身が食い込む。そこへ続いて他の灼滅者達もその後の事を考えずに殺到し、円の黒死斬、京介の居合斬り、新九郎の螺穿槍が院長の体を斬り、裂き、抉る。メディックも回復を捨てて攻撃に掛かり、
「……滅却」
菊花の神薙刃が院長の体に更なる傷を増やし、小映のジャッジメントレイが傷口から内部を灼いていく。
「みんな、どいて!」
連続攻撃でぐらついた院長を、壱が地獄投げで床に倒した所へ、ミケが影を宿したチェーンソー剣を高々と掲げる。
「死体は土へ還れ」
死刑を宣告する執行吏の如く言い、ミケがトラウナックルを院長の胸板に叩き付けるように振り下ろす。チェーンソー剣が院長の胸を抉ると、そこから引きずり出されたトラウマに追い打ちを掛けられたらしく、凄まじい苦痛の形相を顔面に刻みながら院長は事切れ、直後院長の体は砂のように崩れて跡形も無くなった──。
●束の間の休息
バタッ、バタバタッ──。
院長が消滅するや、灼滅者達は糸が切れたように音を立てて床に倒れる。
全員呼吸はしているらしく、胸は上下しているが、しばらくの間、呼吸音のみが院長室に流れる。
「マジ疲れた……」
およそ10分後、沈黙を破ったのは壱の一言。
「同感……」
「右に同じ」
菊花と京介も億劫そうに同意する。
「しっかりしろよ。これからこういう敵がバンバン出るんだぞ!」
そう叱咤するジャックだが、
「私達と同じように倒れてるジャックくんに言われてもねぇ……」
円の意見に周りからもうんうんと声が上がる。
「ん……動いたら甘いもの欲しいよね」
ミケが何気なくそう言うと、新九郎が「だったら!」と跳ね起きる。いきなりの行動に動揺する仲間達に、新九郎は続けて言う。
「マカロンがおいしい喫茶店、オレ知ってるんだけど、これからみんなで行かね?」
新九郎の提案に反対する理由もなく、寝たおかげでいくらか体力が回復した他の者達も起き上がり、傷の応急処置に掛かる。
「……でも、今は深夜よね。その店、開いてるかしら?」
「その時は、開くまで待てば良いのさ!」
ミケの不安そうな問いに、新九郎は楽天的に答えると、応急処置も済んで灼滅者達は撤収に掛かる。
待合室まで戻った所で、小映はふと足を止め、未だ闇が広がる院内を振り返る。
「ここ コバエ の 生まれた 場所の 匂いが しました……」
ぽつり、と語りかけるように言うと、仲間に続いて小映も出口へ向かうのだった──。
作者:たかいわ勇樹
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重傷:なし
死亡:なし
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種類:
難度:普通
結果:成功!
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出発:2012年8月20日
参加:8人
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