■第4ターン結果
●ロード・バナジウム
「自己紹介は不要かしら? でも、初対面の人もいるかもしれませんしね。わたし、ロード・バナジウムです」
デモノイドが犇めく蒼色の戦場の中心に、白く輝くように佇む美しい女性……ロード・バナジウムが、蒼井・苺(高校生デモノイドヒューマン・d25547)ら灼滅者に語り掛ける。
「まさか、このサイキックハーツ大戦という晴れの舞台で、このわたしが灼滅者などと雌雄を決せねばならないなんて……。わたし、とても不本意ですわ」
ご機嫌斜めな様子で目を青白く光らせたロード・パラジウムは、鉱石のような両腕を振り回し、灼滅者達に襲い掛かる。
「くっ、さすがはロードですね。凄い存在感。でもっ!」
その暴風のような攻撃に晒された苺だったが、その攻撃に耐えきると、前を向いて正面からバナジウムを睨みつける。
「デモノイドは悪です! だから、絶対に許しません」
デモノイドヒューマンである苺の決意に、ロード・パラジウムは冷笑を浴びせた。
「デモノイドの出来損ないでしかないお前が、ロードであるわたしに反抗するというのか? 身の程知らずもいい加減にしなさい」
バナジウム叱責と共に、彼女の瞳から毒々しい気配を纏った怪光線が放たれる。
だが、苺達灼滅者はその攻撃にも耐えると、徐々に包囲の輪を狭めていった。
「実験でデモノイドにされた人達は可哀想です。でも……正しい心があれば、デモノイドヒューマンになれる可能性があったのです。それなのに……。私から見れば、あなた達こそが、出来損ないですっ!」
そう言い放つと、苺は、エアシューズに体重の全てを預け、そして、しなやかに脚で地面を蹴ると、高く高く跳躍し、重力と共にバナジウムに足を振り下ろした。
パラジウムは、一瞬、苺の姿を見失い、そして気づいた時には致命の蹴撃をその身に受けていた。
ゴホっと血の色をした何かを吐くパラジウム。
その朱色の液体を手でぬぐいつつ、彼女は、言い募った。
「わたしたちデモノイド・ロードは、滅びゆく人類の後継者となる存在……の筈よ!
それは、デモノイドの力をもったまま、人間の姿に戻れること、そして仲間との絆を所有している事が証明している……の……」
そう言って滅び去るロード・パラジウム。
「人類の後継者はエスパーです。それに……プラスコネクトを、絆だなんて認めないのです!」
その死を齎した苺は、塵となって消えたパラジウムにそう告げると、戦場を後にしたのだった。
●ロード・ニオブ
もはや伴うデモノイドも僅かとなったロード・ニオブは、先ほどの戦いで受けた傷も言えぬままに再び灼滅者達と戦うことを余儀なくされていた。
一度は塞いだ傷口もすぐに開き、銀色の鎧は血に濡れ、修復もままならないまま、彼は追撃を仕掛ける灼滅者達との交戦を再開している。
「ならば、一人でも多くの敵を討ち滅ぼす!! お前達に灼滅されてきたデモノイド達の恨みを晴らすためにも!!」
ある意味で、分かり易い人格の持ち主ではあろうのだろう。
その強固な意志は、敵としては天晴と言えるものであったかもしれない。
「でも、それもここで終わり」
その言葉は、遠く離れた場所にいるアンネリーゼ・デアフライシュッツ(七発目は悪魔の弾丸・d26691)の口から洩れた。
もはや残り少ない雑魚に構うことはないと、彼女はライフルの引き金を引く。。
放たれた光は、ロード・ニオブの兜の下にある眼窩に飛び込み、そして貫く。
突撃をしようとした態勢のままにロード・ニオブは倒れ、もはや起き上がることは無かった。
「プラチナへの力の供給も止まったようね。残るはバナジウムとマンガン……先程はウヴァルを倒さずに済んだし、全てを倒す必要は無いのかもね」
レアメタルナンバー達も残る数は僅か。
ロード・プラチナをいつ攻めるか、考慮の余地はあるだろう。
●マンチェスター・ハンマー
「見つけましたよ! マンチェスター・ハンマーさん! いざ尋常に勝負なのです!」
「来なすったね、灼滅者! どうやらマンチェスター・ハンマーさんも、年貢の納め時ってわけだ」
日輪・かなめ(第三代 水鏡流巫式継承者・d02441)の威勢の良い言葉に、マンチェスター・ハンマーは澄ました顔でそう言って見せた。
だが、その瞳に諦めの色は無く、ただ殺意にギラギラと輝いていた。
「ここが最後の大舞台、一花咲かせてみようかなっと!!」
マンチェスター・ハンマーが巨大なハンマーを軽快に振るうたび、圧縮された空気が弾丸のように灼滅者達を襲う。
目にも止まらぬ速さで振るわれるハンマーは灼滅者達を次々と打ち倒していった。
六六六人衆の序列2位マンチェスター・ハンマー。
元々個体戦闘力の高い六六六人衆の中、かつてのパラベラム・バレット亡き後、最強の六六六人衆となった彼女の力は、灼滅者達が交戦して来たダークネスの中でも屈指だ。
一撃一撃が必殺の威力を持っている。
彼女とまともに戦うことが出来ているのは、精神防衛戦ではエスパー達によるソウルボードの力を乗せた応援、そして今この場では、殲術再生弾あればこそだ。
それらを加味してもなお、マンチェスター・ハンマーは強敵だった。
まさに一打一殺。
ハンマー振るわれるたびに、標的となった灼滅者やサーヴァントがことごとく倒れていく。
「これだけ殴っても死んでないなんて、全く殴り甲斐のある相手だよ!!」
「凄まじい相手ですね」
かなめは相手の技量の凄まじさに、思わず舌を巻く。
取り回しの悪そうなハンマーだけに、懐に潜り込めば勝機もありそうなものだ。
しかし、マンチェスター・ハンマーはその振るうタイミングを的確にずらし、また抜群の身体能力によって、こちらが飛びかかる隙を潰して来る。
長きに渡り、六六六人衆の第二位の座を揺るぎないものとしていた実力は伊達ではなかった。だが、それでも灼滅者達は幾度でも挑みかかっていく。
「今です!」
仲間達が造り出した隙を、かなめは見逃さない。
巫女拳法着に包まれた体が、稲妻の如くハンマーを掻い潜る。
咄嗟に繰り出されるマンチェスター・ハンマーの足は、その一蹴りでかなめを吹き飛ばすに余りある威力を宿していた。
「ここ……!!」
判断は一瞬。かなめは蹴りを交差させた両腕で受け流す、凄まじい痛みと共に皮膚が裂けるが、それを無視して両腕をかちあげる。
態勢を崩されたマンチェスター・ハンマーの頭の中に、ハンマーを手放し距離を取るか、ハンマーを支えに態勢を立て直すかの選択が生じ、その決断が下されるよりも速く、かなめは彼女へと密着するように接近。
「水鏡流の一撃……ここに!!」
マンチェスター・ハンマーの腹部へと、鮮烈な衝撃が迸る。
「あーあ……これにて一巻の終わりかよ。もっと嫌がることを、幾らでも……」
呟くように言ったマンチェスター・ハンマーの体が崩れ落ち、残されたハンマーが音を立ててアスファルトを砕いた。
●十字卿シュラウド
「させるかよッ!!」
槌屋・康也(荒野の獣は内に在り・d02877)は、その殲術道具を振り回し、攻撃を繰り出さんとしたヴァンパイアを打ち倒す。
十字卿シュラウドを守らんとするヴァンパイア達は精鋭揃いだ。
だが、サイキックハーツとしての力を徐々に増して来た灼滅者達は、その守りを一つ一つ打ち砕いていく。
相手の反撃を受け止めるのは、康也達の役割だ。
「仲間もエスパーの皆も、全部守る! それが俺の役割だ!」
「ククク、威勢の良いことだ。だが、所詮は弱者の戯言よ」
「何だと……!?」
言いながら現れたのは、二振りの剣を構えた男。その姿は、既に報告されている。
「十字卿シュラウドか!」
「その通り、私こそがシュラウド! さあ、弱者よ。私の剣にかかることを光栄と思い、死んでいくがいい」
「させねーよ。その前にてめーらはガッツリぶっ飛ばす!」
康也の足元で、影業が獣の如き姿を取る。
「ヴァンパイアよ、私を守れ。私を守ることこそ、弱者たる貴様らの存在意義なのだからな!!」
十字卿シュラウドはヴァンパイア達にそう言い捨てると、灼滅者達へとその双剣を繰り出し、切り捨てていく。だが、その姿に康也は溜息をついた。
「情けねー大将を抱えちまったもんだな。同情するぜ」
「なッ、何だと!? 弱者の分際で、このシュラウドを嘲るとは無礼にも程が……」
怒り混じりに振るわれる緋色の十字。
それを後方の仲間に通すまいと、康也達ディフェンダーは、全力で守りを固める。
「こ、このシュラウドの剣に耐えるだと!?」
「お里が知れるぜ爵位級ヴァンパイアさんよ。その程度で、守りを抜かせるわけにかいかねぇな!!」
取り出される殲術道具は『病院』謹製殺人注射器。
「太古の吸血鬼さんよ、こいつで最新式の吸血を味わっていきな!」
康也が繰り出した殺人注射器の針は、シュラウドの首筋に深々と突き刺さった。
そして、その力を命と共に遠慮なしに吸い上げる。
「こいつで、全部だ!!」
「バ、バカな。このシュラウドがアァァァアァァ!?」
絶叫と共に消滅する十字卿シュラウド。
だが、それを成し遂げた康也は、やはり強い違和感を覚えていた。
「確かに強くはあったが、侯爵級ヴァンパイアっていうのは、こんなもんなのか?」
「いや、朝はもっと強かったぞ」
直接交戦した9I薔薇の灼滅者達が、そう伝えて来る。
「なんなんだ、この感じ……」
サイキックハーツ大戦の影に隠れ、さらになにがしかの意図が蠢いているのを、灼滅者達は感じ取っていた。
●戦神アポリア
戦場を朱に染め、戦神アポリアが戦場を舞う。
全身全て凶器。
凶器にして狂気。
戦神の名に相応しい戦いで、灼滅者の侵攻を3度に渡って退けたその武勇は、ハンドレッドナンバーの座にあったものの面目躍如であったろうか。
だが、その戦力も既に尽き、4度目の灼滅者の猛攻の前に、配下の六六六人衆たちは悉く沈められていく……。
いつしか戦場に立っているダークネス側の戦力は、アポリアただ一人となっていた。
「不甲斐ないのぅ。じゃが、この戦神アポリアが、簡単に倒せるとは思わぬことじゃ。妾とお主ら、どちらかが滅びるまで戦い合おぞ!」
戦場にたった一人で残されながらも、誇り高く戦い抜く覚悟を示すアポリア。
その姿に、牧瀬・麻耶(月下無為・d21627)は、戦いの手を少しだけ休めた。
「自分はそれでいいっすよ。でも、そうでは無い人もいるっすから……。話を聞いてあげても良いんじゃないっすか?」
その麻耶の言葉に続けるように、数名の灼滅者達がアポリアに呼びかけた。
「俺達はお前を救えると思っている」
「サイキックハーツとなっていたアンリも救出できたのだ。だから、この手を取って!」
そう手を差し伸べる者達。
だが、その灼滅者の声も、戦神アポリアは何の感銘も与える事は不可能であった。
「今更、人間として生きる道などありはしないじゃろう? 妾は『戦神』の名を冠する、元ハンドレッドナンバーにして、黒の王の腹心なのじゃから」
アポリアは、問答無用とばかりに凶器を振るう。
「それも、生きてこそだよ!」
「剣樹卿アラベスクが灼滅されれば、あなたは消えてしまう!」
「これは、救出では無い。取引なんだよ」
だが、アポリアに呼びかけに答える様子は欠片も無い。
それを確認し、救出を叫ぶ灼滅者達を、麻耶は手で制した。
「これ以上は無駄っすね。こうなれば倒すしか無いっす」
麻耶の判断に、救出を考えていた者達も納得せざるを得なかった。
戦神アポリアの救出は不可能である……と。
「愁嘆場は終わりっすよ。戦神アポリアは業を重ね過ぎたっす。きちんと灼滅する事が自分達の使命っすよ」
麻耶の言葉に呼応するように、灼滅者の攻撃が次々とアポリアに降り注ぐ。
アポリアもまた反撃を行うが、衆寡敵せず、その命は次々に削り取られていき……。
そして、
「いい加減飽きたんスよ。闇の中に消えるっすよ」
麻耶によって無造作に生み出された影に飲み込まれ、断末魔の言葉すら残さず、闇の中に消えていく。
「さぁ、時間が無いっす。急いで次の戦場に向かうっす」
アポリアを灼滅した麻耶は、沈鬱な表情で言うと、共に急ぎ戦場を立ち去ったのだった。
・(5)(8)の制圧により、(19)の戦力が大きく減少!
・(12)(14)(16)の制圧により、(20)の戦力が大きく減少!
→有力敵一覧
→(5)ロード・バナジウム(6勝1敗/戦力580→0/制圧完了!)
→(8)ロード・ニオブ(3勝0敗/戦力60→0/制圧完了!)
→(9)ロード・マンガン(3勝0敗/戦力3960→3180)
→(10)八波木々・木波子(3勝0敗/戦力1460→680)
→(12)戦神アポリア(3勝0敗/戦力680→0/制圧完了!)
→(13)ジョン・スミス(0勝2敗/戦力2200→2200)
→(14)マンチェスター・ハンマー(5勝0敗/戦力960→0/制圧完了!)
→(15)朱雀門・継人(4勝2敗/戦力2980→1940)
→(16)十字卿シュラウド(17勝0敗/戦力3360→0/制圧完了!)
→(19)ロード・プラチナ(1勝1敗/戦力9280→4419)
→重傷復活者一覧
→死亡者一覧
■有力敵一覧
戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。