其の屋敷には、奇妙な噂が在った。
曰く、「鬼が出る」と――。
此処に在るのは武家屋敷と推測される古びた家屋。
其れと手入れを放棄し独創的な世界を創り出している庭園。
名家の表札は削り取られ朽ちている。
嘗て人が居た頃は。
賑わい騒がし、交流も楽しく。
面白い人達が住んで明るい御屋敷だったとか。
時は流れ、現在は存在感が既に幽霊屋敷、其の物。
おまけに隣接する社も荒れ果て寂れ。
近所の餓鬼共には恰好の肝試し場所になっている、そうな。
童子は云った。
「鬼が居たよ!本当だよ!」
現在二匹、確認されているらしい。
◆場面の通り幽霊屋敷。
神出鬼没な鬼二匹が稀に顔出す場所で良ければどうぞ門叩きは御自由に。