新年の足音。
吐く息が空気に白く拡散するこの年の瀬。
俺は立ち尽くしていた。
かつて行われた大規模な工事はなんだったのだろう。
多くの火薬を使ったダイナマイトの爪痕はどこに行ったのか。
目の前には俺が作業小屋として使っていた掘っ建て小屋と
見覚えのない、建物が一つ
はぁ、とため息を一つ
また厄介ごとに巻き込まれたのだろうということは想像に難くない。
周囲に神出鬼没な彼女の姿も見えないところを見ると、すでに中にいるのかもしれない。
ともあれ
「いかにゃ、ならんのだろうなぁ」
扉から見える建物内は闇
何かを引きづるような音もする。
とりあえず、あからさまに避けて作業小屋の方へ向かう。
「うん、頼れる友人たちに力を借りよう。そう、武蔵坂は、絆の深さで、今までの戦いを乗り切ってきたんだ」
そうしよう、そうしようと、小屋の電話に手をかける。
こんな面妖な事態。
俺だけが巻き込まれてたまるか。
という気持ちがないとは言い切れないのだ