ここは巨大樹がある丘。
この大樹の麓には竜が住むと言われており、この丘はドラゴンズヒルと呼ばれた。
太古の昔、王となる者達は―竜託―と呼ばれる
大樹の竜からの神託を得るために単身にて丘を登ったといわれる。
竜もまた人々と同じく代を重ねていき
―時には人々と共に邪竜と戦い、後に神竜と崇められ
―時には人々が禁忌に触れたが為に災厄を振りまき邪竜として討伐され
―時には人々と関わりを殆ど絶ちひっそりと生涯を終えたものもいるという
そして神話の時代を終え、科学が発展してきた現代――
竜は人々より忘れ去られ、立ち寄る者はいなくなった。
信仰を失い、衰退していくだけとなった竜も
人々と関わることを止めどこかへ飛び立ったという。
丘には大樹だけが残った。
大樹は依り代としていた竜を失い、枯れていった。
――そして幾許かの月日が流れたある日のこと
枯れた大樹へと飛び立つ竜を見たと噂が流れたのだった。