鳴梟荘

五日市街道キャンパスにほど近い拝島駅から、電車で北上して10分弱、さらに北東へ歩いて30分。埼玉との県境、鬱蒼と茂る森の中にそれはあった。

急勾配の切妻屋根を持った三階建ての洋館。元々白かったのだろう壁は薄灰色に濁り、幾つも並ぶ長方形の窓ガラスは所々ヒビ割れている。
しばらく整備されていなかったことは明白で、建物内の惨状まで想像すると陰鬱な気分にならざるを得ない。

裏手には、元はホテルだったのだという別の建物も控えているが、この有様ではそちらを使うのは当分後か、下手をすれば永遠に放置することになるだろう。

木漏れ日の差し込む空を見る。風に撫ぜられ、木の葉がなびく。そして視界の端――洋館の天辺に、くるくると回る黒い風見鶏が見える。

いや、鶏の形をしていないのだから、厳密には「風見梟」とでも呼ぶべきだろう。

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