灼滅者達によって救出された人狼の少女、叢雲・ねね子。
彼女は、自分達の種族について、やや緊張した面持ちで話し始めた…。
(1)人狼とは(結論)
「おら達は人間じゃなくて、ニホンオオカミっていう動物ずら!
ニホンオオカミは、全員人狼で、つまり全員灼滅者ずら。
人狼は子っこにスサノオを継承する必要があって、継承すると弱くなるずら。
外国に行ったニホンオオカミもいるし、西洋狼みたいな姿になる者もいるずらよ。
それから、人狼がみんなおらみたいな喋り方をする訳じゃないずら。
……ぶっちゃけ、大事な事はそれだけずら。この後は、一族の細かい来歴を語るずら」
(2)人狼の伝承
「大昔も大昔、まだ地球にそれほど人間もダークネスも住んでなかった頃の話だそうな。
スサノオ大神という超デカいダークネスが現れて、日本中で暴れまわっていたんだと。
おら達人狼のご先祖様は、そいつをやっつける為の戦を始めたんだと。
ただの動物な筈のご先祖様達が、どうやってスサノオ大神と戦ったのかは分からねぇ。
でも、ご先祖様達はその戦いに勝利した。
そして、スサノオ大神をバラバラにして、みんなで喰らっちまったんだと。
スサノオ大神は倒せたけど、死んだ訳じゃなく、しかも成長巨大化を続けていたそうな。
だからご先祖様達は、スサノオの破片を喰らうことで、自分達の魂の中にスサノオを
封印することにした、という訳なんだべ」
(3)人間への変異
「ところが、スサノオを自らの魂に封印したご先祖様達に、異変が起こったんだべ。
ご先祖様達は、みな、人間の姿になっちまったんだ!
人間は魂の中にダークネスを持つ。それ以外の生物は、魂の中にダークネスを持たねぇ。
……だからおら達は、人間の姿になったんだと。
そんな訳でおら達は、自分達の事を
人狼もしくは
ニホンオオカミと呼称しているずら」
(4)スサノオの継承
「おら達は、自分の魂に巣食うスサノオを、
自分の子っこに継承する能力を持ってるずら。
魂の中にいるスサノオは、封印された状態でも、日々力を増してゆく。
いっぽうオラ達は、年をもらうとだんだん封印が弱まってくるだ。
だから、いい感じの年齢で子っこをこさえて、スサノオを継承しなきゃなんねえだ。
スサノオを継承したら、自分の中のスサノオは物凄く小さくなるから、灼滅者としては殆ど役立たずになっちまう。
でも、その代わり、生まれた子っこは、生まれた時から灼滅者に覚醒しているずら。
そう、おら達人狼は、その全員が、
生まれた時から灼滅者なんずら!」
「そんな訳だから、おら達は宿命的に
ダークネスの天敵でもあるずら。そのせいで何度か絶滅しかかったけんども、オオカミになって逃げおおせたり、スサノオ大神への警戒心からダークネス同士が牽制しあったり、何だか最近ダークネスの勢力が弱まったとかで、どうにか決定的な絶滅は免れて、こんにちに至るという訳なんだべ」
(5)人狼の使命
「おら達は滅びる訳にはいかねぇ。普通の灼滅者とは違い、おら達が死んだら魂の中のダークネスも一緒に死ぬ訳でねぇ。ただ、スサノオの封印が解き放たれるだけだ。
スサノオの封印維持は、おら達人狼の最大の使命だ。他にも、闇堕ちしてスサノオになっちまった仲間の灼滅等が、今までの人狼の一番の使命だった」
「……だが、おらは武蔵坂を見て考えを変えただ。
灼滅者が、ダークネスに支配された世界を変えるべく戦う。
そんな事は、今まで一度も想像しなかっただ。でも、メチャクチャ素敵な考えだべ!
だから、スサノオ退治だけでなく、他のダークネスとの戦いにも、積極的に参加させて欲しいだ。どうかこの通り、よろしくお願いするだ」
「それから、おらのつがいにふさわしいオンタも見付けねばな!
おらはまだまだ灼滅者を引退する気は無いけれども、いつかはつがいになって、子っこをこさえねばなんねぇからな。
まぁ、つがいは別に人狼で無くても構わねぇから、誰かしら嫁に貰ってくれると思うんだけど。……でも、都会はべっぴんさんが多いからなぁ……」
(6)人狼の人造灼滅者
「そういえば、あの『病院』も、武蔵坂学園の傘下に入ってるって聞いたべ。
……人狼でも、時に、灼滅者になれないまま生まれる子供がいるだ。
そんな子は大抵、しばらく里で様子を見て、本当に覚醒しないようなら、早めに子っこを作らせるか、厳しい里では殺してしまうだ。闇堕ちしたら危険だべからな。でも聞くところによると、『病院』で人造灼滅者というのになって、戦う力を得た人狼もいるそうだべ。
おらは見たこと無いけれども、その覚悟と闘志には敬意を払うずら」
●関連するあらすじ