『惑う旅人よ。月の光を抱く樹の下、暫しの休息を……』
悠久とも思える並木が立つ長い坂を昇りきった山の一角。
月を抱くようにしてそびえる一本の大樹。
その庇護の下。樹を囲うようにして建つ屋敷があった……
よぅ、見ない顔だな?
ココまで上がってくるのはしんどかったろ。
ま、長い坂を抜けた山の一角にあるんだからしょうがねぇんだが。
所謂旧い屋敷ってヤツで、地下があったり屋根裏があったり……
何でも明治の初めには既に存在してる記述なんてあったり。
ま、ぶっちゃけ管理してる俺でも全容は良く分かってねぇんだわ。
幸いだか、学園に近いんで今は寮として使ってんだ。
あんたもそのつもりで来たのか?
あぁ、只気軽に遊びに来たってのも大歓迎だぜ?
……と、大事なことを忘れてたわ。
「ようこそ、月光樹へ!」ってな?